-は-

【ハーディー・バラックス】
 六本木の赤坂プレスセンター敷地内にある米軍へリポート。米軍機関紙スターズ・アンド・ストライプス東京支社の裏手になる。このあたりの通りを星条旗通りと呼ぶのはここが語源。もともとは近衛師団歩兵第五連隊があったところを戦後米軍が接収したものだ。青山公園が隣接しているのでヘリ見物にはいいのだけれど、溜池の米国大使館に出入りする米政府のお偉方が使うヘリポートだから、時節柄すぐに警官がすっ飛んできて職質されるぞ。逃げると過激派か何かだと思われてマジで追いかけてくるから、逃げずにきちんと職質に応じよう。

【バーティカルキューピット】[vertical cupid]
 T-4を使用したブルーインパルスの演目の一つ。ソロの2機がスモークでハートを描き、4番機がロールをしながらハートを射抜く。ハートの大きさはT-2の描いていた『ビッグハート』の半分ほどで、T-4の旋回能力の高さが伺える。家族連れやアベックなど一般のお客さんには大いにウケる演目。

【パーティゴ】
 →空間識失調

【ハーモ】《S》
 京都では夏の魚と言えば鱧である。小骨が多いために身に細かく包丁を入れる骨切りを行う必要がある。…って違う!機関砲の照準調整を行う射場のことで、Harmonizationの略である。

【ハイジャック】[High jack]
 飛行機の乗っ取りをハイジャックと言うのは、アメリカの西部開拓時代に駅馬車強盗が「Hands up high, Jack!」と脅したのが語源だという説がある。ホントかどうかは知らないが…。

【バイスター】
 ロッキード社が計画した双発ワイドボディ旅客機。計画倒れで立ち消え。

【バイセンティニアル・バード】[Bicentennial bird]
 1976年のアメリカ建国200周年を記念した塗装を施した機体。星条旗をイメージした赤・青・白のトリコロール塗装の超ド派手なのとか、ワンポイントで独立当時の13州を表す13個の星とか、'76の数字とか、200周年記念のシンボルマークとか、白頭鷲とか、リバティベル(打ち鳴らしすぎて亀裂が入ってしまった、いわゆる自由の鐘)が入ったものなどがあり、そのバリエーションは米軍の全航空部隊の数を凌いでいた(指揮官機と一般の機体で異なる場合があるため)とも言われ、誰もその全容を掌握できた者はいなかった。もうヤンキースピリッツ全開である。この頃試作されていたり、配備が始まったばかりのF-15やF-16にも記念塗装が施されていたのだが、あれから30年にもなろうというのに、今なお米空軍の主力機だったりするのだから、新型戦闘機の開発周期も随分長くなってしまったものである。

【バイセンバード】《F》
 バイセンティニアル・バードの略。日本の航空ファンはこう呼んでいた、と今のうちに記録にとどめておかないと、もうそろそろこの頃の人々は草葉の陰に隠れてしまうからね…。→バイセンティニアル・バード

【ハウスカラー】
 航空機メーカーが試作機やデモンストレーション用などに施す塗色。ごくまれにカスタマーが飛行機ごとデザインも買い取る場合がある。

【はかいききゅうなんしょうぼうしゃ】[破壊機救難消防車]
 空港用化学消防車の自衛隊での呼称。→空港用化学消防車

【はかばポイント】[墓場ポイント]《F》
 飛行機の撮影ポイント。有名だったのは、大阪(伊丹)空港の墓場ポイント。伊丹市下水処理場の北側で、ターミナルからは滑走路を挟んで反対側。レンズは100mmもあれば充分楽しめた。過去形なのは隣の下水処理場屋上にスカイランド原田という公園ができて、閉園日の水曜日以外はほとんど変わらない条件でより多くの人が撮影できるようになり、航空機撮影目的での立ち入りは禁止となったため。そもそも墓地への立ち入りは今まで『大目に見てもらっていた』のだから、ここに眠る人々に感謝を捧げた上でスカイランドに移動するのが筋というものだ。真っ正面が接地帯で午後順光だが、バックが少々五月蠅く、タッチダウンする瞬間を狙って流し撮りというのが良かろう。伊丹へはじめて撮りに行く人は、墓場ポイントよりも、とりあえずRunway32エンド、通称『32エンド』の大迫力を体感されることをお勧めしよう。標準レンズでも楽しめる。離陸機の撮影や子供連れの飛行機見物なら反対側のRunway14エンドが公園として整備されているのでお勧め。32エンドのように、子供が飛行機に驚いて泣き出すということも少ない。まあ、伊丹はどこも楽しいぞ、関空は撮るとこなくてつまんないけど。
 また、石川県小松基地のRunway24エンドにも墓場ポイントと呼ばれる場所がある。こちらは長いレンズが必要で、しかも腹気味。周りに邪魔なものが多いが、墓石に乗るのは御法度ですぞ。
 さらにかつては、海を渡って香港啓徳空港にも墓場ポイントがあった。かの有名なRunway13へのアプローチを撮るのだが、撮影場所がかなり高い山なので、機体は目線の高さ、つまり飛んでいる真横から撮るというおいしいポイントだった。夕方、街明かりをバックに流し撮りが最高だったんだけどねぇ、墓場だけに額に札を付けた人が
ぴょんぴょん跳びはねながら出てきそうで、暗くなると怖さも半端じゃない…。

【バキュームフォーム】
 模型工作の技法の一つで、マイナーな飛行機のキットやラジコン機のキャノピーを作るのに用いられる。もっと身近なところではコンビニ弁当の透明蓋などの食品包装材やブリスターパッケージなどがバキュームフォーム製だ。バキュームポンプに繋がった箱の開口部に型をセットしておき、熱して軟らかくした塩化ビニールやスチロールの樹脂板を型に当て、バキュームポンプで箱の中の空気を吸い出して樹脂板を型に密着させて成形し、不要部を切除して作られる。そのためあまり厚みのあるものは作れず、模型を作る際には接着面積の確保に一苦労する。樹脂板を熱することから『ヒートプレス』と呼ぶ人もいるが、ヒートプレスは熱した樹脂板に型を押しつけて成型する。複雑な形にはヒートプレスよりもバキュームフォームのほうが向いているようだ。

【ばくだん】[爆弾]
 ひらがなで書くと、どこか妙に牧歌的である。航空機から投下される爆発物の代表的なモノ。先を丸めた円筒形やラグビーボール型で、尾部には命中率を上げるために安定翼を備えている。第一次大戦の初期に、飛行機から砲弾を投げ落としたのが始まりといわれ、のちに砲弾の尾部に安定翼を取り付けたものが爆弾の原型である。現在では、各種センサーで目標を捉え、安定翼を動かして目標に向かって落下するようにした『誘導爆弾』というのもある。
 弾という字が示すとおり、本来は飛んでくるか、あるいは落下してきて爆発するモノを指し、植え込みやゴミ箱などに『仕掛けられている』ものは爆弾ではなく『爆発物』である…と揚げ足取りをしておこう。

【パスファインダー】
 パスファインダーのパスとは、獣道のことで、パスファインダーとは『獣道を見通す者』つまりハンティングの案内人のこと。これが転じて『爆撃先導機』のことを言う。爆撃隊を爆撃目標へ誘導し、信号弾などを投下して爆撃隊に目標を示すのが役割。敵地へ先頭を切って突入し、爆撃隊に目標を示すからには、腕っこきの搭乗員を揃えた爆撃機でなければパスファインダーは勤まらない。

【ハセモノ】
 レベル・モノグラムの1/48飛行機プラモデルと、ハセガワの日本語説明書、デカール、パッケージを組み合わせ販売しているもの。要するに輸入プラモデルのローカライズ。ハセガワとモノグラムで、ハセモノである。ハセガワ自身がそう呼んでいる正式名称である。

【はちはちかんたい】[八八艦隊]
(1)帝国海軍が、戦艦8隻、巡洋艦8隻を保有しようとした計画。大正時代に計画された。当時の日本にとっては国の金庫を逆さに振ってもまだ足りない大事業だったが、このころから諸外国との軍拡競争が激化し、戦艦8隻、巡洋艦8隻ぐらいでは全然足りないということになってしまった。
(2)護衛艦8隻、艦載対潜ヘリコプター8機で構成される、護衛隊群と呼ばれる海上自衛隊の艦隊。ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)1隻を核とし、ヘリコプター搭載汎用護衛艦(DD)5隻、対空誘導弾搭載護衛艦(DDG)2隻によって一箇護衛隊群を構成する。DDGを除く各艦に艦載対潜ヘリコプターが搭載され、DDHは3機を、DDは1機を搭載する。4箇護衛隊群で護衛艦隊が構成され、海上自衛隊の主力をなす。新八八艦隊とも呼ばれる。さてここで問題です、護衛艦隊は何隻で構成されるでしょう?…32隻?残念でした。護衛艦隊旗艦が加わって33隻です。日本の最低限度の生活を支える船団の護衛が、たった33隻。少ないねぇ…。

【ハチロク】《F》
(1)花輪線龍ヶ森三重連で有名な、国鉄の8620型蒸気機関車のこと。
(2)秋名のハチロクといえば、トヨタのAE86。レビン、トレノのことである。
(3)古い怪獣映画でおなじみのノースアメリカンF-86Dセイバードッグや、初代ブルーインパルスのF-86Fセイバー戦闘機のこと。まあ、だいたいは86Fのほうを指すようだが…。

【ハチロクブルー】《F》
 →86ブルー

【バックロール】[Back roll]
 ラジコンヘリによる曲技飛行で、後退しながらロールを行う大技。前後左右全く逆になり、飛行特性も前進時とは異なるので慣れないとかなりとまどう。とまどっているうちに墜ちる。まさか実物のヘリコプターでやる奴はいないだろう。編者はこれで2機のラジコンヘリを墜落させ、うち1機は再起不能のスクラップになった。

【パッセンジャーステップ】
 
一般には『タラップ』と呼ばれ、飛行機への乗降をする際に使用する、荷台部分に階段を載せた車両のこと。本書では一般的な呼称である『タラップ』を使用している。

【パッチ】
(1)いわゆるワッペンのことである。但し、ワッペンと呼ぶのは素人さん丸出しである。通を気取るならパッチと呼ぼう。飛行服や作業服、ジャンパーなどに縫いつけるかまたはフックテープ(商標名、マジックテープ)で貼り付ける。部隊毎のパッチ、航空団のパッチ、艦船毎のパッチ、さらには作戦参加記念のパッチに競技会優勝記念パッチというのもあるし、ネームを刺繍して名札代わりに使うネームパッチというのもある。だから二つ三つパッチが付くのは当たり前。米海軍のエヴィエィターなどは、自分が渡り歩いた飛行隊のパッチを背中にずらりと貼り付けていたりする。『フライトジャケットはエヴィエィターの履歴書』と言われる由縁である。パッチのコレクションを紹介したムック本も数多く出版されている奥深い世界である。航空祭に行くと、テントの下で各部隊がパッチを売っていて、朝一番から飛行機そっちのけでレアもののパッチを探し歩くファンは大勢いる。とは言え、一枚3,000円近いお値段ともなると、なかなか…刺繍職人さんの工賃を考えると、あながち高いとも言い切れないのだが、何とかなりませんかね。昔はフェンスの外で写真を撮っていると、隊員さんが自転車でやって来て「パッチ買わないかい?」と声を掛けてきて、フェンス越しにやりとりするということもあった。懐かしいなぁ…つ〜か、端から見ると、それってめっちゃ怪しい…。

(2)機体にあいた穴を塞ぐ、いわゆるつぎ当てのこと。機体に穴があいたままだと雨漏りするし(全日空がその昔運航していたDC-3は米軍払い下げのC-47改造機で、大戦中に機銃弾食らった穴から雨漏りしていたそうだ)与圧掛けても空気がどんどん逃げてゆくし、外板を燃料タンクの壁にしているインテグラルタンクだと燃料ダダ漏れである。それよりなにより機体の強度が落ちるので穴の上から板を貼って塞いでしまう。このパッチあての接合処理をちゃんとしないと、パッチを当てた圧力隔壁が割れて、吹き出した空気でその上にある垂直尾翼が破裂したりするのだそうだ。でも垂直尾翼って、そんなに簡単に破裂するもんなのか?

【ハットラック】
 客席頭上に設けられている、文字通り、帽子を入れるための棚。本来は蓋などはないただの棚だが、申し訳程度の蓋が付いている場合もあるからややこしい。1980年代まではナローボディ機の荷物入れと言えばこれが普通だった。現在でもYS-11はこれである。機体が揺れると中のものが飛び出してきて落ちてくるので、入れて良いのは帽子(三度笠、菅笠、花笠等を含み、ヘルメット、兜、陣笠等を除く)コート(オーバー、ジャンパー、ウィンドブレーカー、ブルゾン等を含む)襟巻き(マフラーを含む)などなど、落ちてきて人に当たっても怪我をする虞のないものに限られる。蓋付きで、バッグ類を入れられる強度を有するものはオーバーヘッド・ストウェッジと言う。なお、木村拓哉主演の航空ドラマは、グッドラック、だそうである。

【はっぴ】[半被]
 日本航空ファーストクラスのギブアウェイ。古くはビートルズが来日した際にメンバーが日航の半被を着ていた写真などは有名で、ご覧になった方も多いと思う。半被は『happy』に繋がると説明すると、外人客には大ウケするらしい…それほんまかいな?
 余談だが、
ビートルズが着用していた半被は左胸にポケット、袖口が豆絞りになっているなど、一般向けとは違いがあるとのことである。 ジョン・レノンが着用していたものが、東京のザ・ビートルズ・クラブに収蔵されており、各地でのビートルズ関連イベントの折りに貸し出され公開されている。

【はふ】[羽布]
 読んで字のごとく、飛行機の羽(翼)に用いる布、そのまんま。翼や胴体の骨組みの上に貼る布のことである。ライトフライヤー以前の羽ばたき飛行機の時代から始まり、飛行機が金属製になっても、方向舵や昇降舵、補助翼は金属製の骨組みに羽布張りだった時代が第二次大戦後まで暫く続いた。現在でもアエロバティックに用いられる複葉機や、グライダーの一部には主翼まるごと羽布ばりの機体がある。羽布には亜麻(あま)布が主に使われ、骨組みに縫い付けた後、ドープと呼ばれる酢酸繊維素系の透明塗料を十数回にわたって重ね塗りして、布目を塗りつぶし、張りを持たせて機体や翼を作っていた。
 亜麻布は小アジア原産の亜麻科の一年草、亜麻の茎の繊維から作られる。亜麻は長く丈夫な繊維と、種子から油(亜麻仁油)が採れ、乾燥や寒冷に比較的強く成長が早かったため、人類とのつきあいが始まったのは非常に古く、紀元前7000年頃ともいわれる。古代エジプトでミイラを包んでいた布も、イエス・キリストの遺骸を包んだとされる布も亜麻布である。(マリア様のヴェールも、きっとそうですわ、お姉さま…)宗教的な用途だけでなく、亜麻は長い間人々の生活に深く関わってきた。これはシーツやタオル、テーブルクロスなどの布製生活用品の総称を、亜麻の英名であるリネンと呼ぶことからもわかる。糸やロープ、果ては路線を意味するライン(Line)も、下着のランジェリー(Lingerie)も、リネン(亜麻)を意味するラテン語Linumが語源である。
  日本では明治以降北海道で主に生産され、生産量のピークは1945年、道内での作付面積は39,900haに及び、生産された亜麻布の多くは飛行機の羽布として用いられた。日本での亜麻生産は、敗戦によりまず羽布としての需要がなくなり、さらに生活用品向け需要も化学繊維や安価な輸入品などに取って代わられるようになり、1967年に生産を終了している。北海道各地にみられる『麻生(あそう)』の地名は、かつての亜麻の生産地だった名残である。
 なお、大昔にヴィレッジ・シンガースが歌い、最近になって島谷ひとみがカバーしていた
『亜麻色の髪の乙女』の亜麻色とは、この亜麻から取った繊維の本来の色。インターネットで使われる16進数の色指定で言えば#B09860が近い。この亜麻色の繊維を漂白して、白い糸になる。

【ハブくうこう】[ハブ空港]
 「♪三日遅れの便りを乗せて…」は、大島の波浮港。
(1)航空会社が路線ネットワークの中核に位置づけ、拠点とする空港。
(2)地域の航空路線の中核をなす空港。新聞の経済面などで「国際ハブ空港」や「アジアのハブ空港」という言い方をしている場合はこれに当たる。ハブ空港の定義に空港の規模はあまり関係ないが、地域の中核をなし、航空会社を誘致してネットワークの中核に位置づけてもらうためには乗客や物資、そして航空機の受け入れ能力が高い空港であることが望ましい。アジア各国はこれまでのアジアのハブ空港であった成田が事実上のパンク状態であることを好機として、こぞって巨大空港の建設に力を入れている。韓国のインチョン国際空港、香港のチェクラプコック国際空港などは今後アジアのハブとなりうる可能性があり、こうした流れの中、相対的に成田の価値はどんどん低下している。

【ハボクック】
 第二次大戦中に英国が計画した氷山空母。パルプ繊維を混ぜ込んだ氷で船体を構成し、グリーンランド南沖の北大西洋に配備してUボート狩りの基地や、米国から英国へ送り込まれる飛行機への補給基地にするつもりだった。空母と言うよりどっちかって言うとメガフロート式海上空港に近いのかもしれない。ちょっとした思いつきが国家レベルで暴走しかかっただけのことで、溶けちゃうだろとか、動力はどうするつもりだったのかとか、艦内の霜対策はどうするつもりかとかって細かいツッコミはなしだ。

【ハマカラモオカニ】
 客室乗務員のルートインフォメーションの訓練で、ハワイ諸島の島の名前を覚える語呂合わせ。ハワイ・マウイ・カウアイ・ラナイ・モロカイ・オアフ・カフェラウェ・ニイハウ各島の頭文字で『浜からもうカニ』だそうである。元ネタがあのテレビドラマ『スチュワーデス物語』なので、ほんとにこういう覚え方をしているかどうかは謎である。どの島がどれかまでは知ったことではないようだ。

【はやぶさ】[隼]
 「エンジンの音 轟々と 隼はゆく…」灰田勝彦の名曲『加藤隼戦闘隊』で知られる中島一式戦闘機の愛称。国民の皆様にに親しみを持っていただこうという…どうせ宣伝上手な同盟国ドイツの影響なのだろうが、陸軍航空本部の付けた愛称である。どうも陸軍の飛行機屋さんって、憎めないところがあるな。勝ち戦に乗じてどこか呑気なところが微笑ましい。隼に限らず、陸軍機の名称は海軍機の正式名称ように命名法に規定があるわけでもないし、正式名称でもない。ただ、『帝国陸軍期待の新鋭機現はる!』とその名を大々的に宣伝したおかげで、国民誰も皆知っていた。今でこそ誰でも知っている海軍の零式戦闘機などは最後まで軍機扱いで、当時は誰も知らなかった。その名を口にしようものなら敵の軍偵扱いである。
 さて、その隼だが、九七式戦闘機の後継として開発されたものの、「九七式にも負ける」と制式採用されなかった。はっきり言ってしまえば駄作機だったのだが、来るべき南方での戦いは航続距離の長い戦闘機が必要ということになって急遽登板。一気に国民的大スターへの道を駆け上る。ただねぇ、極端な軽量化で強度は足りない、武装は第一次大戦の頃と変わらない7.7mm機銃2丁のみ、と満足のゆくものではなかった。

【ばらき】[原木]
 千葉県市川市原木。『げんぼく』ではなく『ばらき』と読む。飛行機で原木輸送するわけではない。(屋久島ではヘリコプターで原木をつり下げて山から取り下ろすが…)千葉県市川市原木にある輸出入航空貨物の物流センターのこと。TACT(タクト)あるいは原木ターミナルと呼ばれている。→TACT

【ばらきターミナル】[原木ターミナル]
 貯木場ではない。千葉県市川市原木にある輸出入航空貨物の物流センターのこと。TACT(タクト)あるいは原木ターミナルと呼ばれている。→TACT

【はらぎみ】[腹気味]《F》
 飛行機の胴体下部が目立つ写真。出発進入経路に近い場所で写真を撮ると、どうしても腹気味になってしまう。撮ってる時は大迫力で楽しいが、腹気味の写真ばかりじゃつまらない。時々ポジションを変えよう。

【バルキリー】[Valkyrie]
 テレビアニメ『超時空要塞マクロス』に登場する、人型ロボットに変形できる地球統合軍の戦闘機、VF-1シリーズのこと。あの当時のテレビアニメに登場するメカの常で、複座の練習機型とか円盤形レーダーを背負った早期警戒型とか、巨大なブースターを背負ったタイプなどバリエーションもいろいろあって、おもちゃ屋さんにとってもおいしいメカだった。登場から20年近く経ってなおハセガワからプラモデルも出ている。
 正式の日本語表記は『ヴァルキリー』ではなく、あくまでも『バルキリー』である。『ヴァルキリー』は、アメリカの試作爆撃機XB-70のことを主に指すので混同しないように。
 余談だが、離陸時に高度400フィート以下での脚引き込み動作以外の機体変形は航空法違反なので、やってはいけない。

【バルク】[Bulk]
 ばら積み貨物。パレットもコンテナも使わず直接貨物室に放り込む貨物のこと。荷崩れしても影響のない軽量な品物が対象になる。コンテナ積みに比べて積み卸しに時間が掛かるし、荷主の評判もあまり宜しくない。出発直前にチェックインカウンターで預けた手荷物はほぼ間違いなくバルク送りとなるので搭乗手続きはお早めに。もともとは石炭など船倉や貨車に直接放り込まれる貨物のこと。こちらの意味だと飛行機には殆ど縁がない(ベルリン大空輸で袋入りの石炭を空輸したという例はあるが…)

【パルスジェット・エンジン】[pulsejet engine]
 コンプレッサーもタービンも持たない、1本の導管からなるジェットエンジン。ラムジェットとの違いは、エンジン前端近くに燃焼室内の圧力によって開閉する逆止弁があることで、通常のジェットエンジンのように連続した燃焼ではなく、間歇的な燃焼で推力を得る。第2次世界大戦中に、ドイツがV-1号ミサイルのエンジンとして使用したことで有名。ラム圧(前進している時にかかる風圧…と思ってくれ)で弁が開くと吸入空気がエンジン内部に入り、噴射燃料と混合して着火燃焼させる。燃焼で燃焼室内の圧力が高まると逆止弁が閉じるので、燃焼ガスは唯一の逃げ場となる排気ノズルから後方へ噴出され、推力を生ずる。燃焼が終了し、燃焼室内の圧力が低くなると、再びラム圧によって弁が開いて空気を吸入する。この動作を繰り返し、燃焼が間歇的に繰り返される。M0.4〜0.5程度の飛行速度を得るには、最も構造が簡単なエンジンだが、燃料消費量が多く騒音と振動も大きいので、人が乗る機体に使用された例は、レシプロ戦闘機の加速用補助エンジンとしてRD-13パルスジェットエンジン2基を試験的に搭載したラヴォーチキンLa-7PVRD(ソ連)など、数例があるにすぎない。La-7PVRDの場合は、わずか2〜3分、+60Km/h程度の加速をしたと言われるが、出番が終われば(出番がなくても)翼の下でお荷物になっていた。日本でも、海軍の特攻専用機『梅花』がパルスジェット推進で計画されていたが、これは幸い実現せずに終わっている。なお、V-1ミサイルにコクピットを付けたようなジェット戦闘機、ハインケルHe162サラマンダーは、ターボジェットエンジン搭載で、パルスジェットではない。
 パルスジェット・エンジンの音は、ニール・ジョーダン監督の映画『ことの終わり』の中で、ロンドンに飛来するV-1号の音として再現されている。DVDも発売されているので、興味のある方はどうぞ。

【ハングライダー】
ハング・グライダーの誤りである。半人前のグライダーではない。半ライスや半チャーハンじゃないんだから。

【パンダ】《F》 ボタン 解説画像を別ウィンドウで表示
 第2航空団203飛行隊(千歳基地)の部隊マーク。後ろには赤で203と書かれている。あれって、パンダじゃなくて熊なのだが…。目の隈がすっかり取れたパンダにしか見えないぞ。

【はんどうトルク】[反動トルク]
 ローターやプロペラの回転によって生じる反動(反作用)で、機体がローターやプロペラの回転方向とは反対に回転しようとする力。プロペラの場合は翼などに邪魔され、全体から見れば反動トルクは小さいものになるため、補助翼やトリムでうち消すことができるが、ヘリコプターの場合は主ローターの力が大きすぎるので翼などでは止めることができない。このため、テールブームの後端に横向きの補助ローターを設け、反動トルクと釣り合う推力を与えるテールローター(フェネストロンは、テールローターの一種)ガスタービンエンジンの排気を尾部側方から噴射して反動トルクと釣り合う推力を与えるノーター、主ローターを二つ設けて逆方向に回転させ、互いに反動トルクをうち消し合うタンデムローターや二重反転ローターなどの方法が取られる。反動トルクとの釣り合いを一時的に崩してやれば、その場で機体の向きをくるりと変えることもできる。
 主ローター一つだけで飛ぶ、どらえもんのタケコプターや、ロボコン、うさだヒカル(ラヴィアン・ローズってゆ〜のっ!)などは、体がくるくる回ってしまって、とてもじゃないけどまともには飛べないはずである。所詮はうさだにょ…。

【ハンドランチグライダー】
 広義では手投げの模型グライダー。駄菓子屋で売っていた発泡スチロール製のグライダーも、立派なハンドランチグライダーである。狭義では日本模型航空連盟が規定する屋外ハンドランチグライダ級や、国際航空連盟の規定する国際F1N級のグライダーを指す。競技規定によれば、いずれも寸法などに制限はないが、動力(カタパルトなど)や曳航索の使用、飛行中の姿勢などの制御(ラジコンやジャイロ、プログラム制御など)は禁じられている。競技は滞空時間によって競われ、屋外ハンドランチグライダ級では1ラウンド最高90秒で、5ラウンドの合計時間で順位を決める。国際F1N級では屋内で競技を行い、会場の天井高さによりさらに4つのカテゴリーに分け、9回の飛行のうち、上位3回の滞空時間の合計で順位を決める。

【パンナム】[PAN AM]
 パン・アメリカン航空の略。懐かしいねぇ、私らが子供の頃、航空会社といえば日本航空とパン・アメリカン航空だった。東京国際空港のエプロンにずらりと居並ぶは鶴丸のDC-8とそしてパンナムの地球マークを垂直尾翼に付けたボーイング707。パンナムは世界の空を制した航空会社、まさに広告コピーのとおり『世界の翼』だった。そういえば、パンナム東京支社長が大相撲の表彰式で表彰状を朗読するときの「ヒョウ・ショウ・ジョウ…」は流行語にもなったっけ。
 1991年、経営不振で地球上から姿を消した『世界の翼・パンナム』だが、幾度かの紆余曲折を経て1998年、ニューハンプシャー州ポ−ツマスに本社を置くローカル航空会社として復活。フロリダのディズニー・ワールドへ遊びに行く人々がお得意様だそうで、あの『クリッパー』のコールサインも健在だそうだ。

【パンプキン】
 ナントカ学会が発行する育児と教育のための雑誌とか言いながら、妙に特定の勢力に対して好戦的なあの雑誌ではない。米軍が最初に実戦使用した核兵器、の模擬弾。要するに広島に投下した原爆を模した通常爆弾。原爆投下訓練として、愛知県岡崎市など数カ所に投下されたようだが詳細は不明である。
-ひ-

【ヒード】
 →HEED

【ピーナッツスケール】
 主翼スパン13インチ以下のゴム動力スケール機。バルサ材と和紙で作られ、重量は20グラム以下のスケール機…編者には想像もつかない世界だ。骨組みのバルサは1mmそこそこまで削られているのだとか。

【ひえん】[飛燕]
 陸軍三式戦闘機の愛称。エンジンは燃料噴射などの新機軸を惜しみなく投入した最新鋭、DB(ダイムラー・ベンツ)601型液冷エンジンのライセンス生産ハ40を搭載して、出来上がった試作機の成績は極めて優秀。スマートで美しい機体は軽やかに大空を舞い、愛称の『飛燕』にふさわしいものだったという。量産機の評価も上々で、こいつはいいやと調子に乗って出力を1450hpにアップしたところで遂に問題続出。エンジンの生産が間に合わなくなり『首なし』状態の機体が工場を埋め尽くしたという有名な逸話がある。もっとも、液冷エンジンに関してはドイツも最初は苦労の連続で、かの有名なBf109の試作機もJumo210エンジンが間に合わずにロールスロイス・ケストレルV(5)を急遽搭載して軍の審査に持ち込んだというから「我がドイツの技術は世界一ィィ…!」もあまりあてにならない。アメリカだって、P-51ムスタングのエンジンはロールスロイス・マーリンのライセンス生産だったし…。1930年代から変な飛行機しこたま作って経験を積んでいたイギリスの一人勝ちだったわけだ。そのイギリスもジェット機の時代に入るとまた変な飛行機ばっかり作って…。諸行無常、短い栄光だったねぇ…。
 ヨソの国の事情と比べても空しいだけなので話を飛燕に戻そう。陸軍のハ40エンジンは海軍のアツタエンジンとほぼ同型、なぜなら同じDB601を手本としているから。陸海軍それぞれ別々にドイツと交渉し、それぞれ別々にライセンス製造権を購入し、それぞれ別々に量産し、それぞれ別々に同じトラブルを経験するムダの極み…この話を聞いたヒトラーはライセンス料が2倍になったと喜ぶより、あいつら正気かと首を傾げたのだとか。当時技術レベルでは欧米に5年以上の格差がつけられていた上に、熟練工を闇雲にどんどん戦地に送ってしまって量産に携わるのは旋盤を見るのもはじめての学徒動員の小中学生(授業中でも暴れ回る今時の小中学生よりはるかにましだが…)では最初から結果は知れている。ベアリングの真円度も素材の焼き入れの深度も欧米とは段違いで、彗星用のアツタエンジンの話になるが、名古屋市の都市ガスの半分を焼き入れに使いながら、焼きの深度はDB601の半分だったという話もある。歩留まりは余りにも低くエンジンの生産は滞ってしまい、機体工場は首なし戦闘機で埋め尽くされた。運良くエンジンにありつけた機体もいつまでエンジンが持つかという有様。さて、いくら何でも首なしの戦闘機では話にならない(話のタネにはなった)ので首なしの三式戦闘機に急遽空冷エンジンハ112を搭載したのが五式戦闘機。そのため三式戦闘機初期形のファーストバック風防タイプ、後期型の涙滴形風防タイプ、五式戦闘機のファーストバック風防タイプに涙滴形風防タイプという具合に機体のラインナップがごちゃごちゃになってしまっている。同型のアツタエンジンを積んでいた海軍の艦上攻撃機『彗星』も以下同文のていたらく。いくら優秀な機体でも量産できなければなんにもならないということで、怪談首なし戦闘機噺これにて一巻の終わり。おそまつ。

【ひきまわし】[引き回し]《F》
 トーイングカーに引かれて移動する飛行機。この後解体されて機首部分だけが博物館に展示されると『さらし首』と呼ばれるようになる。

【ひこうきぐも】[飛行機雲]
 エンジンの排気に含まれる水分が、上空の低温の外気によって冷却され、凝結してできる雲…身も蓋もない言われようだな…。
 「飛行機雲は、人間が作り出す雲だけれど、誰をも魅了する素晴らしい雲ですよね…。私もいつかあんな雲を作ってみたいです」
「…嫌じゃないの?人間が雲作って」
「雲は、雲ですから…」(ちっちゃな雪使い シュガー:蒼はるか)

【ひこうじょうたかしおけいほう】[飛行場高潮警報]
 飛行場が高潮に見舞われるおそれがある場合に出される警報。飛行機が水没してしまうと大損害だし、あんなものが波間にぷかぷか漂っていると大迷惑なので、飛べるうちに逃げ出さなければ…と言いたいところだが、警報が出ても天候大荒れで飛べなかったらどうするのだろう。日本では東京国際空港、関西国際空港、松山空港、大分空港、宮崎空港、長崎空港、那覇空港が対象とされている。関西空港なんか、高潮が来る前から既に海面下だが、警報発令の基準となる潮位は、海面より上にある那覇空港の2mに対し、2.2mと僅かながら意地を見せている。…見栄かもしれないが…。山口宇部空港は高潮で水没したことがあるが、飛行場高潮警報の対象からは外されている。なして?

【ピスタチオスケール】
 主翼スパン8インチ以下のゴム動力スケール機。バルサ材と和紙で作られ、重量は20グラム以下、モノによっては10グラム以下で作られる場合もあるとか…一円玉十枚分以下だぞ。もはや想像を絶する世界だ。骨組みのバルサは1mmそこそこまで削られているのだとか。

【ビッグブルー】[Big Blue]
(1)コンピュータメーカーで有名なIBMのこと。PC/AT互換規格を定めた会社でもあるし、MacintoshのCPUも作っている。当然、軍用・航空・宇宙関連向けコンピュータだって作っている。IBMとはInternational Business Machines corporationの略。ちなみにIBMをアルファベット順に一字ずつ前へずらすと、映画『2001年宇宙の旅』に登場するスーパーコンピュータ、HALになる。
(2)米空軍のBLU82爆弾。延長信管を含めた全長は5mを超え、重量は6.8tもある。燃料気化爆弾ではなく普通の火薬式爆弾だそうである。映画『アウトブレイク』に登場する特大ドラム缶みたいな爆弾が、多分それだと思う。MOAB(Massive Ordnance Air Burst、空中炸裂巨大爆弾)の登場まで米軍最大の爆弾であった。あまりに巨大なので爆弾倉には入らないし、ましてや翼の下にぶら下げるなんて無茶である。MC-130特殊戦輸送機の後部貨物ドアを開き、そこから爆弾を乗せたパレットごと落とす。命中精度などは気にしてはいけない。パラシュートで減速しながら地上に落ちると、1.2mの長さの延長信管が接地した瞬間に爆発する。地上にあるモノを吹き飛ばし、なぎ払う爆弾なので、この延長信管がないと地面に穴を開けてしまい、危害半径が大幅に減ってしまう。危害半径は4マイルに及び、背の低いヒナギクさえ根こそぎにするので、デイジーカッターの異名を持つ。米軍はヒナギクを刈るのに、ずいぶん大袈裟なものを使っているようである…って違う!強力な爆圧で半径30ftにわたって地雷原を啓開したり、森林の樹木をなぎ倒してヘリコプターが発着できるようにする際に用いているようである。もちろん爆弾なので、人殺しにも使える。「人を殺さない兵器なんて、ないんだよ」(最終兵器彼女)

【ピッチング】
 特殊工具で鍵を開ける行為ではない。縦揺れのこと。機体中央を左右に通る軸を中心として、横から見てシーソーのように揺れる動き。主翼近くではさほど揺れを感じないが、機首や最後尾付近では上下に大揺れになっていたりする。翼の上は酔いにくいってのはこれを根拠にしているのだが、飛行機の揺れはピッチングだけじゃないし、乗り物酔いは罹りやすい人は雰囲気だけでもなってしまうものだから、あまりあてにはしない方がいい。

【ひのまるこうくう】[日の丸航空]《F》
 JALとJASを一緒にして日の丸航空だそうである。由来は新塗装の垂直尾翼に入っている日の丸マークから、らしい。鳥取のバス会社とは関係ない。

【ひゃくしきしれいぶていさつき】[百式司令部偵察機]
 旧帝国陸軍の偵察機。『神風号』で知られた九七式司令部偵察機の後継機として開発された。単発固定脚の九七司偵から、わずか3年で登場したとは思えない流麗な双発機であった。当時世界最高クラスの速力を誇り、追い風参考記録ながら700km/hをマークしている。その高速性能から『空の通り魔』とも呼ばれた。敵地奥深く侵入し敵情を偵察する『戦略偵察機』の嚆矢ともいうべき機体であり、海軍でも少数ながら陸上偵察機として採用されている。大戦末期には俊足を活かし、B29迎撃にも使用されたなかなかの働き者であった。
 何かと悪く言われがちな旧帝国陸軍だが、航空機の開発に限って言えば海軍よりもはるかに積極的で、かつ柔軟な思考を持っていたように思う…それをどう活かすかは別として…。→空の通り魔

【ピュアジェット】ボタン 解説画像を別ウィンドウで表示
 混じりっけなしの天然原料だけで作った。地球とからだに優しいジェットエンジン…なわけない。吸い込んだ空気をそっくり燃焼室に送り込んでしまうジェットエンジン。純然たるジェットエンジン、本来のジェットエンジンというわけ。現在の旅客機では吸い込んだ空気の一部を燃焼室に送り込み、大半はファンで加速するだけのターボファンジェットエンジンが主流で、殆ど使われていないが、戦闘機などに使われるターボジェットエンジンはピュアジェットの代表例。名前が似ていてややこしい。速度がマッハ0.8あたりまでならターボファンジェットの方が燃費はいいし静かだぞ。マッハ1.3を超えるとターボジェット、つまりピュアジェットの独壇場だ。

【ビューロ・ナンバー】[bureau number]ボタン 解説画像を別ウィンドウで表示
 米海軍と海兵隊が装備する航空機に付けられる、納入順の通し番号。ビューロとは、お役所の部局のことで、ここでは米海軍航空局のこと。機種がなんであろうがお構いなしの通し番号で、同じ機種が連番になっている場合は、纏めて数機納入されたから。ただそれだけ。BuNos、あるいはb/nと略される。現用機の場合、水平尾翼の直下あたりに小さく書かれている6ケタの数字がそれである。垂直尾翼に4ケタ、あるいは5ケタの数字を入れた機体を見かける場合もあるが、それは大昔の機体ではなく、単に一万以上や、十万以上の位を省略しているだけ。天下の米海軍が、そんなに物持ちいいわけがない。よく探してみるとやはり水平尾翼下あたりに小さく6ケタのビューロ・ナンバーが書いてある場合が多い。
変わったところでは航空自衛隊のE-2Cホークアイにも、ビューロ・ナンバーが付いている。米海軍機として使用されている機体を輸出する場合、一旦米海軍に納入して、輸出禁止となっている装備やソフトウエアが含まれていないかどうかなどを確認した上で輸出しているから。高く売りつけておきながらこういうことをするのである。踏んだり蹴ったりだよなぁ…。
 ビューロ・ナンバーのリストを掲載したウェブサイトによれば、歴史上ビューロ・ナンバーという名称が登場するのは1917年からで、A51のライト・モデルKシープレーンから始まって、途中1930年、9200あたりで頭のAが略され、9999のグッドイヤーG-1まで続く。これをファースト・シリーズ・オブ・ビューロ・ナンバー(first series of Bureau Numbers)と呼ぶ。A51から始まっているってことは、それ以前に、納入順序はもう忘れちゃってわからないけれど50機持っているから、その続きで…と考えていいだろう。この頃のアメリカ機ってのはあまりに地味で、形式を言われてもさっぱり形が浮かんでこない…飛行船や気球まで含まれているのが、時代を感じるね。この後、1935年から新たに0001ヴォートO3U-6から数え始め、7303のロッキードR50まで続くセカンド・シリーズ・オブ・ビューロ・ナンバー(second series of Bureau Numbers)が続く。この頃のアメリカ機もやっぱり地味でイマイチピンとこない…。現行のビューロ・ナンバーは1940年、00001のカーチスSB2C-1ヘルダイバー艦上爆撃機から数え直すサード・シリーズ・オブ・ビューロ・ナンバー(third series of Bureau Numbers )もしくはファイナル・シリーズ・オブ・ビューロ・ナンバー(final series of Bureau Numbers )と呼ばれるもの。ここらでようやく航空大国のエンジンがかかったという感じがする…アメリカの航空産業を叩き起こしちゃったのは日本だったんだね。第2次大戦で爆発的に数が増え、1945年に6ケタとなるもそのまま数え続け、現在166,500番台にまで達しようとしている。1945年後半から数年間は多くの欠番があるのだが、これは第二次大戦の終結で発注済みの機体をキャンセルしたため。

【ひょうじゅん】[標準]
 航空界において『標準』とはICAO(国際民間航空機関)が国際航空交通の安全と能率化のために総会において採択した『規定』であり、ICAO加盟各国に統一的な運用を求め、加盟各国の航空法規の上位に位置するものである。
 なお、コンピュータ業界でよく言われる『国際標準』とは、特定の企業が好き勝手にいじくり回している得体の知れない代物なので、こんなものとICAOの国際標準とを一緒にしてはいけない。

【ひょうじゅんたいき】[標準大気]
 ICAOが定める、航空機の性能を表示する上で前提となる大気の状態。標準大気の条件とは、空気が乾燥した完全ガスであること。(水蒸気によって飽和していないこと)海面上における温度が15℃(59°F)であること。海面上における気圧が水銀柱760mm(29.92in、1013.2hPa)であること。海面上からの温度が-56.5℃に下がるまでの温度勾配は-0.0065℃/m(-0.003566°F/ft)で、それ以上の高度では変化しないことなどの条件がある。この状態を再現して航空機を飛ばして性能を測るのは不可能であるし、自然界でこの条件を満たすこともあり得ない。標準大気での性能とは、試験飛行が行われた大気の条件を標準大気の条件に置き換えて得る計算上のものである。

【ひるましょうがいひょうしき】[昼間障害標識]
 空港周辺でよく見かける紅白塗りのこと。航空法では『赤と白または黄赤と白』で塗ると定められている。昼間航行する航空機に、航行の障害となる建築物などの存在を認識させるためのもので、地上あるいは水面から60m以上の高さの煙突や鉄塔など、昼間でも視認しにくくなることがある建造物や、飛行場周辺では高さ60m以下であっても、石油・ガスタンクなど、航空機の衝突が重大な影響を及ぼす施設に施される。さらに滑走路脇に至っては高さ3m程の小屋でも紅白のチェッカー塗りにされている。ビル工事現場のタワークレーンの紅白塗りも昼間障害標識で、高さ60m以下のビル工事でも作業中はアームがそれ以上に上げられることがあるため、昼間障害標識は必要になる。また、山の上に建てられるマイクロウェーブ鉄塔は、高さ60m以下であっても昼間障害標識が施される場合がある。
 紅白塗りで目障りなのが難点だが、目障りであることが役目なので文句を言ってはいけない。飛行場から離れた場所であれば、昼夜を問わず白色閃光を発する『高光度航空障害灯』の設置で、紅白塗りに代えることもできる。
 建築物ばかりでなく、着陸進入経路付近の山にも昼間障害標識が施されることもある。今はなき香港・啓徳空港Runway13への着陸進入ルートには『チェッカーボード・ヒル』と呼ばれる山があり、斜面はコンクリートで固めた上から、赤と白のペンキで昼間障害標識が施されていた。

【ヒロヒト・ハイウェイ】[Hirohito highway]
 ヒロヒトとは、畏れ多くも(ここで姿勢を正す)昭和天皇のことであります。サイパン、テニアンなどから東京(実際には富士山)に至るB29の飛行コースを、米軍はこう呼んでいた。ちなみに、ヒロヒト・ハイウェイを飛ぶB29は『トーキョー・エクスプレス』である。

【ビンゴ】[bingo]
(1)燃料切れ寸前っ!これ以上戦闘(または訓練)を続けると基地へ帰り着けなくなってしまう状況。
(2)《S》「と、トイレ行きたいんですけど!」
-ふ-

【ファルクラム】
 Mig29のNATOコードネーム。ロシアでの愛称はラーストチカというのだそうである。Mig29はお買い得激安超特価で大人気の最新鋭戦闘機。F-15イーグルと対等に渡り合える(…かもしれない)最新鋭戦闘機が、なんとモスクワ地区店頭お渡し価格2000万円から、だそうだ。オプションを全部付けても3000万円。ケタが二つばかり違うぞ。空飛ぶ『激安の殿堂 ○ンキホーテ』だな。頑張って貯金すれば君にも買えるぞ(売ってくれないだろうが…)他に2000万円で買える航空機といえば、ドイツが生んだアエロバティック機の傑作、エクストラ200がほぼ同額。ヘリパイロットスクールでおなじみのレシプロヘリ、ロビンソンR22がもうちょい高いぐらいだ。アエロバティックの国際大会で賞を総なめにしているエクストラ300だと1,000万円ほど足りない。ちなみにF-15イーグルの名古屋地区店頭お渡し価格が110億円(税別)だそうだから、Mig29なら何機買えるだろう…550機か、現在自衛隊が所有しているイーグルの2倍以上だ。そんなに要らないぞ。
 というわけで、経済援助をしてもらっているような国でも最新鋭戦闘機をしこたま並べて悦に入っていられるというわけだ。困ったもんだねぇ…。

【ファントムぶらい】[ファントム無頼]
 1978年4月から1984年2月まで『月刊少年サンデー』に連載されていたコミック。原作:史村翔、作画:新谷かおる。『百里新撰組』『百里国際救助隊』の異名を持つファントムライダー『神田』『栗原』と乗機『680』の活躍を描いた作品。連載当時、百里基地のフェンスに女性読者がびっしり張り付いて黄色い歓声が上がっていたという、今の百里からは想像もつかない逸話もある。台湾でも『Air Bastard』のタイトルで翻訳出版されている。単行本は小学館より全12巻(絶版也、請再版我熱烈希望!)→Air Bastard

【フィンガーチップ】[Finger tip]ボタン 解説画像を別ウィンドウで表示
 4機編隊で基本となる隊形。レフトフィンガーとライトフィンガーの2種類がある。左手の甲が見えるようにかざして、親指を隠し、残りの人差し指から小指までの爪の位置に機体が並ぶ感じになるのがレフトフィンガー。右手で同じように、人差し指から小指までの爪の位置に機体が並ぶ感じになるのがライトフィンガー。フィンガーチップを起点にするとアブレスト(横隊)トレイル(縦隊)ダイヤモンド(菱形隊形)エシュロン(斜めに一直線となる隊形)などに移行しやすい。ごくまれに6機のフィンガーチップ、って訳のわからないものもある。

【フー・ファイター】[who fighter]
 1940年代後半に目撃例が急増した謎の飛行物体。光の玉が高々度を高速で飛び去ったとか、レーダーに反応のない円盤状のものが飛行機では絶対にできないような飛び方をしていたとか、いろいろな報告が残っている。今で言うならUFOってことだろう。でも多分それは極秘に開発されていた最新鋭ジェット機だったり、雲に映ったサーチライトとかじゃないのかなぁ…?最近ではこうした未確認飛行物体に関する目撃例ってのは殆どなかったりする。なぜかって言うと、そういう報告をすると、飛行機から降ろされて精神医の診断を受けさせられるからなのだが…。

【フェネストロン】
 フランス語で『飾り窓』アエロスパシアル・ユーロコプター社の商標で、ダクテットファン式のテールローターのこと。

【フェリー】
 →ferry flight

【フォロー・ミー・カー】[Follow me car]ボタン 解説画像を別ウィンドウで表示
 無線機の故障などで、管制官と直接連絡の取れない航空機を駐機場所へ先導する車両。軍用飛行場などではその飛行場に不慣れな飛行機の誘導などにも頻繁に使われるため、特に外来機が多くなる航空祭や大規模な演習などでは見かける機会も多いかと思う。『Follow Me』と書かれた看板または旗を掲げた車両なのでこの名がある。なんの捻りもないそのまんまやんかぁ…。正式にFollow me carと呼ばれているようで、ICAOの議定書や航空法なども当たったが、他の呼び名はないようだ。この役目をジープが行っている場合『フォロー・ミー・ジープ(Follow me jeep)』と呼ばれることもある。

【ふがく】[富嶽]
 旧帝国海軍と中島飛行機(現在の富士重工)が計画していた超大型戦略爆撃機。中島飛行機が戦前に陸軍に提案した爆弾20tを搭載可能な六発爆撃機、Z飛行機計画がそのルーツ。航続距離20,000kmを目指し、太平洋を渡って米本土を爆撃してそのまま大西洋を渡ってドイツに降り、補給を受けた後帰りしなにまた米本土を爆撃するつもりだった。日本語ではこういうのは計画と言わず、妄想と言うんだが当時の関係者はご存知だったのだろうか。アメリカと戦争を始めてから作るんじゃなくて、作ってから戦争を始めるべきだったね。そうしたら文句なしに大勝利。いや、作れればの話だけど…。

【プガチョフ・コブラ】
 →プガチョフズ・コブラ

【プガチョフズ・コブラ】
 ロシアのスホーイSu27、37などの、いわゆるフランカーシリーズのみが行えるとされる極めて特殊な飛行姿勢。200kt程度の速度から機首を一気に引き起こし、迎え角は120〜140°で高度は上げずに水平方向に維持してゆく機動…つまり、翼の揚力ではなく、エンジンの推力だけで宙に浮いている状態になる。機体が立ち上がっている時間は4〜5秒程度だが、普通の飛行機でこんなことやったらその前に失速するぞ。安定性が余り宜しくなくフライバイワイヤで無理矢理制御している機体と、垂直に立ち上がってもエンジンストールせず動き続ける強力なエンジンがあってのことだろう。当然翼が巨大なエアブレーキとなるので機体は急減速し、よちよち歩きのような状態になる。この姿がコブラが鎌首もたげた状態に似ているので、頭にこの機動を成功させたスホーイのテストパイロット、ビクター(ヴィクトル?)・プガチョフ氏の名を冠し『プガチョフズ・コブラ』と呼ばれる。なお、Su-27はこの後にも横向きのコブラとも言うべき『フック』に成功している。
 コミックなどではこのプガチョフズ・コブラで敵機をオーバーシュートさせたりしているが、200kt程度の速度で空戦を行っているならいざ知らず、あまり役には立ちそうにない気もするぞ。まあ、所詮は絵空事ということか…。
 ロシア機を「電子機器が真空管」と嗤っていた西側各国は、Su27のプガチョフズ・コブラに度肝を抜かれ恐慌状態に陥ったが、よくよく考えてみれば「要らないじゃん、別に…」ということになったらしい。とはいえ、西側各国が束になっても実現できなかったことをロシアがやってのけたことは、西側各国にとっても大きな教訓になったことだろう。なめたらあかん、という意味で…。

【ふくえ・アカラコリドー】[福江・アカラコリドー]
 福江から東シナ海を横切り中国本土へ至るA593航空路で、途中韓国の仁川FIRの空域を通過する部分、お肉からラーメンにかけての区間のことをいう。済州島の南沖あたりである。A593を航行する航空機の管制は東京FIRと上海FIRが直接調整を行い、間に挟まる仁川FIRはノータッチなのである。「素通りするだけでウリのところに来ない飛行機なんか、知らないニダ!」とか「あいつが加わると話がややこしくなるアルよ…」ってことはない。たぶん、それはない…んじゃないか、と思う。実際には話を一番ややこしくしているのは中国で、高度はメートルで指定される。普通はフィートなのだが…。ちなみにお肉とかラーメンってのはA593上にある地点の名前。A593は福江NDBを出てまずPOTET(ポテト)を通り、ONIKU(お肉)で仁川FIRに入り、NIRAT(ニラたま)を経てLAMEN(ラーメン)で上海FIRに入り、AKARAを経てNANHUI NDBに至る。ここでも韓国料理の出る幕はないが、謝罪はともかく賠償はご容赦頂きたいものである。

【ふくれつプロペラ】[複列プロペラ]
 →二重反転プロペラ

【ふじいろ】[藤色]
 アリューシャン方面に投入された旧帝国海軍の二式水上戦闘機に施されていたと言われる塗色。白っぽい紫色であったと言われる。霧の中での迷彩効果を狙ったものとも、空気遠近法を逆手に取った迷彩とも言われるが、殆どの書籍でなかったことにされている謎の迷彩である。三十年程前にイタリアの研究者が著書で紹介したのが最初と言われ、日本語訳書も発売されていたらしいが、現在は絶版である。インターネットのウェブページでもまとまった情報は殆ど見かけない。一時期、タミヤの二式水戦のインストに掲載されていたという話も聞く。時折話のタネに登ったりするあたり、まるで都市伝説のようである。

【ブックス・フジ】
 羽田空港ターミナルビル地下の書店。京急羽田空港駅そばの小さな店で、ぱっと見は普通の本屋だが、中身はほとんど航空書籍。ここの店長、店内に飾ってある飛行機の写真を営業中にいじり回し、額の裏に溜まった綿埃をドサドサと大勢のお客の頭に降らせ、店中埃まみれにしておきながら「すみません」のひと言もなく、自分のこだわりを押し通し、作業を最後まで成し遂げた実に偉大なる人物である。まさにヲタの鑑である。褒めてとらすぞよ。そういうことは営業時間外にやるか、普段からちゃんと掃除をしておけ!悪いことをしたら謝るのが人としての基本、はたき掛けは本屋の基本だぞ。

【ふはつだん】[不発弾]
 文字通り爆発しなかった爆弾や砲弾。終戦直後の沖縄では落ちていた不発弾から中身の炸薬を抜いて、鍋とか釜とか作ったのだそうだ。これを爆弾鍋という。当たると死んじゃう河豚鍋じゃないぞ。東京でも米軍の焼夷弾はくず鉄として高く売れたのだそうだ。もっと高く売れたのが電車の架線とパンタグラフのすり板で、おかげで部品が盗まれて電車が客車になってしまった。二束三文は飛行機用のジュラルミンで、あれは弁当箱にもならなかったらしいぞ。梅干しで溶けちゃうらしい。当時、不発焼夷弾をバラしてくず鉄として売っていた少年(当時)の話によると、信管の中に入っている薬品は、なめてみるととても甘かったのだそうだ。
 そういえば最近は富士の演習場に潜り込んで不発弾を掘り起こし、コレクションしているアホもいるらしい。死ぬなら一人で死んでくれよ、頼むから。穴を掘っていてガスボンベみたいなものとか、円錐形の金属製のものとかが出てきたら、風車を回したり先端の突起を叩いたりせず、ましてや信管の中の薬品の味を確かめてみようなどと思わず、とりあえず警察に通報しよう。都道府県庁を通じて自衛隊の不発弾処理班を呼んで何とかしてくれる。

【フフフ】《F》
 全日空のボーイング777-200のこと。導入当初、遠目では767と見分けのつきにくい777は、新機材の紹介もかねて、垂直尾翼の『ANA』ロゴの代わりに『777』と書いてあったのだが、いつのまにやら『フフフ』などと呼ばれるようになってしまった。そのせいかどうかは知らないが、最近になって垂直尾翼の『フフフ』…じゃない!『777』は『ANA』に塗り替えられてしまった。
最近になって判明したのだがこの『フフフ』は、777導入当時全日空商事が出していた風船ヒコーキが起源らしい。機首に顔が描いてあってにこにこ笑っていて、垂直尾翼にはどう見ても『777』ではなく『フフフ』と書いてあった。

【フムナ】
 『踏むな』である。踏んだら壊れてしまうような場所、主翼の後縁などに書かれている。ステンシルで塗装してあるので画数の少ないカタカナ書きである。同様に『ノルナ』というのもある。この場合、足を滑らせて転落するおそれのある場所を含むとも言われるが定かでない。いずれも現在では英語表記の『NO STEP』がこれに代わっている。

【ふようせいガム】[不溶性ガム]
 →実在ガム

【ブライトリング】[BREITLING]
 1915年に世界初のクロノグラフ腕時計を作った時計メーカー。『クロノマット』『ナビタイマー』などのパイロット向け腕時計で知られる。航空ファンの腕時計はこれでなければいけないらしいが…。あの複雑多機能な回転計算盤を使いこなせる人なんか見たことないぞ。
 ブライトリングの腕時計には『エマージェンシー』という、救難信号発信装置を装備した時計もある。右下のキャップを外してアンテナを取り出すと121.5MHzで48時間、救難信号を発する。誤作動させると発生した救難捜索費用を所有者が負担しなければならないという恐ろしい時計だ。普通の人には要らんな。もっとも日本では電波法に触れるとかで、正規輸入品は販売されていないが…。
 ちなみに編者は平均価格約金四拾萬円也のブライトリングが高くて買えず、宇宙船の定番オメガ・スピードマスターを使用している。こちらも立派な『飛び職』の時計だ。 で、パイロットはどんな時計をしているかというと「これが一番っすよ」と言って袖をめくって見せてくれたのが、カシオのGショックだったりするのである。「クロノグラフって、見づらくありません?」と言われると、確かになるほどである。個人が装備するものってのは、案外人それぞれであったりする。

【フライ・バイ・ワイヤ】[Fly by wire]
 操縦桿やラダーペダルから、直接ロッドや油圧装置などを動かして各舵を操作するのではなく、操縦桿やラダーペダルは単なるスイッチとなって、一旦コンピュータを介した上で油圧装置やモーターを駆動させ、各舵の操作を行うもの。Wireとはロッドを動かすワイヤーロープのことではなく、電線のことだ。戦闘機などでは以前から採用されていたが、民間機でも距離が長くなるほど難しくなるロッドや油圧装置の調整が容易になり、予備系統を全く離れた場所に設けることもできるので採用されるケースが増えている。その代わり、制御用ケーブルへの電磁波による影響を考慮して、機内での使用を規制される電器製品も増えたが…。軍用機向けフライ・バイ・ワイヤでは各舵をコンピュータによる制御で常時動かし続けることにより、機体の姿勢や安定まで制御可能なものもあり、垂直安定板も水平安定板もないなどという、変な形の飛行機が最近増えてきたし、高度を維持しながら機首を上げたり下げたりするなどという変な飛び方が可能な飛行機も出てきた。→FBW

【フライロビクス】
 ルフトハンザ・ドイツ航空が1980年代後半から提唱している『機内エアロビクス』エアロビクスといってもまさか「ミテクダサァイ・one・two・one・two…Okey!good!…」(ふ、古い…)ではないと思うが…。300人が一斉に機内で飛び跳ねたらさぞや壮観…いや、如何に747といえども無事では済むまい…おそらく『プチモビクス』に近いものであろう。

【フライングバナナ】
 タンデムローターのヘリコプター、パイアセッキ(のちのバートル)H-21に付けられた渾名。輸出型にV-44というのもある。米空軍の愛称は『ワークホース』米陸軍では『ショウニー』と呼ばれていた。逆への字に折れ曲がったその機体の形たるや、まさしくバナナ。浜松の空自広報館にH-21が、所沢の航空発祥記念館と北海道北見市の美幌航空公園に、陸自でヘリボーン作戦の研究用に使用されていたV-44が保存されているので、是非ご覧になって納得していただきたい。空自のH-21はローターが木製、陸自のV-44は金属製ロ−ターの違いがあるが、これは1964年9月10日、空自のH-21が福岡県糟屋郡粕屋町上空を飛行中に木製ローターが破損して墜落したことがきっかけで、米軍のお下がりだった空自のH-21は全機退役、新品を購入し機齢の若かった陸自のV-44は木製ローターを金属製に取り替えている。

【フライングボーイズ】
 2002年10月1日にフジテレビ・関西テレビ系列で放映されたドラマ。つぶれかけた航空会社が起死回生の一手として、男性客室乗務員だけのフライトで女性客を掴もうと画策するコメディ。そんなアホなことをする航空会社が実際あったら嫌だ…と思っていたら、その翌年、実際にそれをやった航空会社が出現して笑った笑った。編者はそういう変な航空会社には乗りたくないぞ。どことは言わないが…。出演は遠藤章造(ココリコ)、山本圭壱(極楽とんぼ)山口智充(DonDokoDon)平畠啓史(DonDokoDon)といった吉本のお笑い芸人の面々…なのだそうです。すいません。編者はこの人達誰が誰だかさっぱりわかりませんでした。なんか遠藤って人はかなり熱烈な航空ファンらしいのですが…。憶えていたのは上原多香子が先輩格のキャビンアテンダントに扮していたことぐらいです。はい。

【ブラックバード】
(1)Appleのノートパソコン、PowerBook500シリーズの開発コードネーム。トラックパッドを搭載した世界最初のノートパソコンである。これほどデザインに凝ったノートパソコンは、後にも先にも見たことがない。薄かろう軽かろうあとはどうでもよかろうの某社どすぶいパソコンも、真似しちゃまずいが、ちったあ見習って欲しいものである。オプションのPCMCIAモジュール(PCカードアダプタ)は珍品中の珍品で、中古品でも一時期メーカー希望小売価格の数倍のプレミアがついていたことがあった。
(2)アメリカの戦略偵察機、SR-71のこと。世界最速のジェット機である。(…おい!それだけかい!)

【ブラックボックス】《S》
(1)コクピットボイスレコーダーと、フライトデータレコーダーの総称。箱自体はオレンジ色で決して黒くはないのだが、以前はアメリカに送らないと解析できない(させてもらえない)代物だったので、今だにかような名称を賜っている。回収された時は焼け焦げて真っ黒だからという説もある。
(2)パテントの保護や、機密の保持などの理由から、内部の構造やプログラムなどが明らかにされていない電子機器のこと。中身を見ようとするとメモリに保持されていたプログラムが消去されたりする。ライセンス生産の戦闘機とか、米軍とデータをやりとりできる通信機器などはブラックボックスの塊である。…ったって米軍仕様のものより数ランク低い代物なのにね…。
(3)集積回路のこと。黒いエポキシ樹脂で固められているから。
(4)以上(1)〜(3)を含め、とにかくよ〜するに、なんだか訳のわからないものや得体の知れないものすべて。再生ソフトを勝手にインストールする音楽CDとか、ユーザー情報を勝手にメーカーへ送信するパソコンソフトなどはブラックボックスの極みである。高い金ばかり取って使いものにならないソフトに限って、こういう機能にばかり血道を上げているから…。

【ブラッド・チット】[blood chit]
 ブラピ様ではない。戦場において搭乗員の身分を明かし、生命の安全を確保するため救援を要請する旨を布に現地語で書き、フライトジャケットに縫いつけるなどしたもの。中華民国国旗(人民共和国の方じゃないぞ)である青天白日満地紅旗と『來華助戦洋人(美国)軍民一體救護 航空委員会第○號』のメッセージが書かれたフライング・タイガースやCBIのものが有名。來華助戦洋人(美国)軍民一體救護とは、中国を支援して戦っている外国人(アメリカ人)である。軍民挙げて救護に当たられたし。という意味。これに証印と番号を入れて支給していた。星条旗が青天白日満地紅旗と並べて描いてあるものもあるが、これはアメリカが正式に日本に宣戦布告した後のもの。それまでは宣戦布告もへったくれもなく、米軍の正規兵を義勇兵の名目で、援助物資と称する装備もろとも中国へ送り込んでいたのだから、卑怯なだまし討ちってのはどっちの国のことだろうね…。当初はフライトジャケットの背中に縫いつけていたが、目立ちすぎるので、のちにジャケットの内張に縫いつけるようになった。日本人がジャケットの背中にこれを付けていると、とっても変である。大戦後のものでは国連旗が加わり数カ国語で書かれたものや、朝鮮戦争では星条旗に日本語と中国語とハングルのメッセージというのもある。この頃になるとジャケットのポケットに入れて常時携行せよという指示が出されるようになる。ジャケットの背中に付いているのはそのコピーと考えてよい。パイロットからの注文で日本の刺繍職人さんが作っていたようで、当然証印や番号は入っていない。日本人が作ったから日本語だけは妙に上手に書かれていて「私は米国人で遭難しています。どうにか助けて、本国に帰れるよう取り計らってください。米国政府は厚く御礼をいたします」というメッセージが涙を誘う。今どき山手線の車内でこれを付けてる日本人を見かけると、笑いをこらえるのが大変だが…合衆国大使館へは次の新橋で降りるんだよ…。縫いつけではなく革ジャケットの背中にプリントされたものもあるし、コットンのジャケットでは革にプリントしたものを縫いつけたものなどもある。

【フラップ】
 速度に応じて主翼断面形状や翼面積を変化させ、低速でも効率よく揚力を発生させるための装置。低速でも効率よく揚力を発生させることのできる主翼断面形状は『へ』の字形をしており、初期の羽布張り飛行機などに見られた。鳥の翼もこの形である。但しこの形は飛行機が高速になるにつれて抵抗が大きくなり、強度も不足しがちである。このため主翼断面形状は『水滴形』へと徐々に移行してきたが、今度は低速では充分な揚力を得られず失速速度が高くなって離着陸の距離が伸びてしまう。上空を巡航する際は『水滴形』でも離着陸時は『へ』の字形に近づけることができれば高速巡航時の性能と離着陸時の低速性能を両立できる。そこで考案されたのがフラップで、主翼後縁の一部を垂れ下がらせて『へ』の字に近づけたのが『単純フラップ』同様に主翼前縁を垂れ下がらせる『前縁フラップ』主翼後縁からフラップを引き出して翼面積を拡大し、さらに後縁を垂れ下がらせる『ファウラーフラップ』主翼とファウラーフラップの間に隙間を作り、この隙間でフラップ後方に空気を流し込んで気流の剥離を防ぐ『スロッテッド(すきま)フラップ』低速時には不要となる高速エルロンにフラップの役割を持たせた『フラッペロン』などがある。実際の飛行機はこれらを適宜組み合わせて使用し、離陸時・着陸時あるいは速度などに応じてフラップの角度を調整することが可能である。離陸時はこれから加速してゆくためフラップの角度や引き出し量は少な目にし、着陸時は速度を落としながらフラップの角度と引き出し量を徐々に増して、着陸直前にはフラップの角度や引き出し量を最大にするフルダウンという状態にする。

【フラッペロン】
 鹿児島名物白熊、ちべた〜くておいちぃ…ではない。フラップとエルロンの合成語。エルロンにフラップの機能を持たせている。和製英語かと思ったらボーイング777の取設にもちゃんと載っていた。
 この響き、あまりにも間抜けだが、ひらがなで書くと『ふらっぺろん』…さらに間抜けだ。何とかすべき航空用語のトップであることは間違いない。

【ブリーフィング】[Briefing]
(1)民間航空機の場合は、注意事項をクルーに伝達したり、仕事の段取りなどの打ち合わせを行うこと。日本の航空会社の場合、コクピットクルーとキャビンクルーは一旦別々にブリーフィングを行い、その後、クルー全員によるブリーフィングを行う。クルー全員によるブリーフィングでは、キャビンアテンダントに飛行ルートの説明をし、キャビンアテンダントは何にもない洋上の旋回点ひとつひとつまでメモを取り、キャプテンはキャビンアテンダントの服装チェックまでしなければならないそうだ。日本の航空会社って、いったい…。他にチェックしなきゃならないものは山ほどあるだろうに…。外国の航空会社では、コクピットクルーとキャビンクルーが別々にブリーフィングを行うまでは同じだが、クルー全員が顔を合わせても挨拶程度なのだそうだ。
(2)軍用機の場合は、作戦の概要、敵の配備、気象状況などについて、出撃前に指揮官が行う説明のこと。
(3)一般には『説明会』という意味で使われる。横文字の言葉とか、航空関係の用語ってのは、すぐ真似したがる人が出てくるからねぇ…。「新プロジェクトについては早急にタスク・フォースを編成し、メンバーはCEOにご報告致します。この後タスク・フォース全員をショウ・アップさせブリーフィングを行い…」ってこの会社は一体何をやっているんだ?

【プリシピテーション・スタティック・ノイズ】[precipitation static noise]
 機体からのコロナ放電で生じる無線の混信。p-static noiseとも言う。飛行中には雨・雪や空気中の塵などとの衝突や摩擦によって静電気が発生し、これが機体に蓄積して、周囲より電位が高くなると翼端部からコロナ放電を起こすようになり、放電によって生じるノイズは、航空機の搭載する無線装置の受信機能を阻害するようになる。ノイズによる影響を最少にとどめるために、翼端後縁に設けられたアンテナ状の部品を『スタティック・ディスチャージャ』(放電装置)と言う。

【フリッカー・バーティゴ】[Flicker Vertigo]
 毎秒8〜20回程度の点滅を見つめ続けると、吐き気、眩暈、場合によっては意識喪失などに陥ることがある。以前、テレビでアニメを観ていた子供達が、画面の点滅が原因で身体の不調を訴えた事件があったけれど、あれと同じもの。回転するプロペラ越しに太陽を見つめ続けると、同じことが起こる可能性があると言われる。

【プリフライトチェック】[Pre-flight check]
 飛行前点検。「航空券よし!マイレージカードよし!…」は、お出かけ前点検。 『ネン・オ・シャ・チェ・ブ・ク・トー・バ・シメ』はバイクの運行前点検。

【ブルーインパルス・ジュニア】[ブルーインパルスJr]
 1993年に登場した航空自衛隊松島基地所属のバイクアクロバットチーム。50ccスクーターにT-4ブルーインパルスをデフォルメした張りぼてを装着しているのだが、張りぼてとは言っても結構細かいところまで凝っていて、各種アンテナやマーキング類もきっちり再現し、車体に書かれた番号は本家ブルーインパルス使用機の登録記号と同一である。松島基地の整備士の方々が勤務の合間の短い空き時間を利用して機体(?)を製作し、アクロの訓練に励んでいる。当初は予算も付かず隊員の方々のボランティア・手弁当・廃物利用で支えられ、近年ようやく予算が付いて待望の新品スクーター、ホンダDuoに更新された。一糸乱れぬ演技もブルーインパルス譲りだが、輸送の関係でブルーインパルスと一緒に全国ツアー…とはいかないのが残念。松島基地祭ならばお目にかかれるし、周辺のお祭りで見られるかもしれない。マスコミでの露出度は本家を凌ぐとも言われる。諸外国の空軍には見られないユニークな存在。『まじめなユーモア』に好感が持てる。編者はこういうの大好きである。

【ブルーのこないこうくうさい】[ブルーの来ない航空祭]
 ブルーインパルスが参加する予定のない航空祭のこと。関東地方の米軍基地などは、ブルーが来なくても大変な人出になるけれど、海自の航空基地や沖縄の基地などは、お客さんより飛行機のほうが多いくらいである(…いくらなんでも、んなこたぁないだろ)お客さんが少ないので地上展示機をじっくり撮ったり、パイロットや整備士に話を聞くにはうってつけである。まったりとした雰囲気が実に通好み。行き帰りの渋滞もないし、体験搭乗に当たる確率はグンと高くなるし、小さいお子さんをお連れの場合も迷子の心配は殆どなくお薦めである。
飛行機愛でつつ昼間っから酒盛りなんてのも、オツだね。
 「娘。のいないハロプロのようなもの」と曰った御仁もいたが…い〜のである!あややがいれば!

【フレア】
 赤外線追尾ミサイルを回避するために放出するおとりの熱源。端から見ているとロケット弾でも撃っているように見えるが、下とか後ろなどに向かってイマイチ情けない飛び方をするのがフレアである。マグネシウムとテトラフルオロエチレンの混合物を燃焼させるものと、燃料に火を付けて放出するものがある。燃料を燃焼させるタイプは、エンジンから出る赤外線の波長パターンに近づけて放出し、赤外線波長パターンが判別可能な最新型のミサイルに対応したものもある。芸が細かいな。照明弾ではないので、そこの特派員、間違わないようにね。 軍用機では標準装備品だが、ごくまれに民間機でも装備している場合があるようだ。イスラエルでは旅客機にも装備されていて、2002年11月には、アルキア航空機がテロリストによる赤外線誘導ミサイル攻撃を回避したという話もある。もっともこれは、テロリストがミサイルをロックオンせずにぶっ放してしまったから助かった、という説もあるようだ。イスラエルという国は向かうところ敵だらけで、手当たり次第何でも軍事機密とされていて、マスコミ報道だけではよくわからないのが実情である。

【ブレーキクーリングしゃ】[ブレーキクーリング車]
 
ブレーキにクーリングファンがないDC-9・DC-10のブレーキを冷却するための送風ファンとダクトを乗せた手押し車。夏期、折り返し便の出発までにブレーキ部分の温度が120℃以下に下がる見込みがない場合に使用する。ダクトを車輪のホイールに当て、ガソリンエンジンで駆動する送風ファンによってブレーキからの熱気を吸い出すもの。短距離を飛び回りブレーキの冷える暇のない日本独特の装備品だがDC-9、DC-10以外の国内線用機は車輪にクーリングファンが備わっているので必要ないし、737に至っては飛行中も車輪をむき出しにして冷却している。日本航空と日本アジア航空のDC-10は比較的長距離の路線で使用されるので必要なく、そういうわけで専ら日本エアシステムが使っている。

【ブレークマン】
 トーイング(牽引)される航空機に乗って、コクピットでブレーキ操作を行う人。ブレィクメン、って発音すると通っぽい、ってそれホントか?電車と違ってトーイングトラクタと航空機の間はブレーキが連動していないので、牽引されている航空機にはブレーキ操作を行う人が乗っていなければならない。もっとも、草創期の鉄道だって直通制動なんてものはなかったから、客車や貨車数両おきに緩急車という車両を挟み、そこにブレークマンが乗って機関車の汽笛の合図で手回しハンドルぐるぐる回してブレーキ操作をしていたわけで、まあ似たようなモノだったんだけどね…。なお「♪あ・あ・あ秋葉原です…」は、モーターマン、電車の運転士のこと。機関車の運転士はドライバーと言う。昔は機関士の方が格上だっのだよ。

【ブレードストウェッジ】ボタン 解説画像を別ウィンドウで表示
 艦載ヘリコプターが艦上で使用するローターのあおり止め。棒の先に特大の洗濯挟みを横に付けたような形をしている。
後方に折り畳まれたローターブレードを特大洗濯挟みで挟み、棒の部分は機体に固定され、ローターブレードを固定し、船体の動揺でローターブレードが機体に当たらないよう保持する。使わない時は格納庫壁際(海上自衛隊の場合は右舷側が多いようだ)に収められている。なお、SH-60J対潜ヘリコプタ用のブレードストウェッジには木工具の「はたがね」のような形のものもある。

【ブレンデッド・ウイング・ボディ】[Blended Wing Body]
 主翼と胴体の干渉による空気抵抗を減らすため、胴体と主翼を緩やかな曲面で結ぶ手法。F-16とか、その妹分のF-2とか、SR-71などに見られる。主翼の断面積の分だけ胴体の断面積を絞って、主翼と胴体の干渉による空気抵抗を減らすエリア・ルールと異なり、胴体中央部を広くとれるので搭載量を増やせる上、主翼取り付け部の構造を軽くできる利点がある。胴体と主翼の境目を曖昧にしてうまくだましているみたいで、エリア・ルールよりは理解できそうな感じがするな…。

【プロップ・ジェット】[prop jet]
 ターボプロップのこと。ロールス・ロイスの商標らしい。

【プロビア】[PROVIA]
 富士フイルムのポジフィルム。ベルビアに比べて発色が自然で、シャッタースピードが一段稼げるのが利点。粒子荒れも殆ど目立たず、プロビア100Fの粒子はISO64クラスにも匹敵する。鉄道写真の世界では定番である。航空ファンといえば長くエクタクロームの時代が続いていたが、最近では青空の発色の良さからプロビアに乗り換える人も多いようである。

【プロポ】
 ラジコンの送信機。無線操縦装置のこと。グリコ劇場『鉄人28号』の「♪敵に渡すな大事なリモコン…」もプロポだ。ch数(チャンネル数=制御項目数)などにより種類があり、受信機やサーボモーターなどとセットで売られている場合が多い。エンジン式の比較的大きな機体で最低限の動作を行うためには飛行機で3ch、ヘリコプターで4ch必要。超小型の電動飛行機であれば2chでも飛行可能。ラジコンは他の人と周波数が合ってしまうと制御不能になるのでアンテナの先端に周波数毎に色を決められた旗を付けてそれで判断できるようにしておき、後から来た人は旗の色で判断して別の周波数を使う。競技会などでは他の選手との混信を避けるために主催者から使用周波数を割り当てられるが「他の人の旗見て自分で判断してくれ」という主催者も中にはいる。ラジコンは自己責任が原則だが、それは主催者として余りに無責任じゃないか?

【フロンタヴォイ・イストリヴィーテリ】[Фронтовой Истребитепъ]
 前線戦闘機。ロシア(旧ソ連)の戦闘機で、空軍・海軍に配備された戦闘機のことを言う。空対空戦闘のほかに空対地攻撃、空対艦攻撃、偵察などにも用いることができるように作られた戦闘機という定義もある。ブガチョフズ・コブラでおなじみのSu-27フランカーはフロンタヴォイ・イストリヴィーテリにあたる。
-へ-

【ベア・トラップ】[bear trap]ボタン 解説画像を別ウィンドウで表示
 急速拘束装置。船体の動揺が激しく甲板も狭い駆逐艦(日本では護衛艦のことである)やフリゲート艦の飛行甲板に装備され、着艦したヘリコプターをすかさずふんづかまえて固定する装置。着艦したヘリコプターの下に収まる大きさで、四角い枠のような形をしている。ヘリコプターがこの枠内に、機体下部から突き出ているプローブという棒を差し込むように着艦すると、艦上からの操作でベア・トラップの両側面から内側へ向かって拘束ビーム(ここで言うビームとは、殺人光線ではなく、梁のことである)が飛び出し、プローブを挟んで機体を固定する。プローブの先端には円盤状のパーツが付いているので抜けてしまうことはないし、拘束ビームにはいくつもの突起があってプローブとかみ合うようになっているので、前後にずれることもない。但し、一本のプローブを固定しているだけなので、プローブを軸に機体が回転してしまうのを抑えるのは、あまりお上手ではないようだ。着艦後速やかに作業員がワイヤーなどで機体を固定している。ベア・トラップの甲板下には走行部が収まっていて、飛行甲板から格納庫にかけて敷設された軌道内を自走することができ、ふんづかまえたヘリを格納庫へ引きずり込むことができる。恐るべき『熊の罠』である…。
 ベア・トラップからはホールダウン・ケーブルというワイヤーロープを繰り出すことができ、これをプローブから繰り出されるメッセンジャー・ケーブルと接続してケーブルを巻き取れば、甲板上数mで艦と速度を合わせて飛んでいるヘリコプターを、文字通り引きずり降ろすこともできる。ケーブルを接続したら、ヘリはスロットルとピッチレバーを操作して上昇させ、ケーブルにテンションを掛け、片や艦のほうは上昇しようとするヘリを引きずり降ろそうと、負けじとケーブルを巻き取る。直径10mmにも満たない細いケーブルに掛かっているテンションは相当なものである。着艦したらば、プローブに拘束ビームを噛ませて固定する。この方法をテザード・ランディング(Tethered Landing)という。護衛艦乗組員の表現を借りると「一気に引っ張ってドスンと落とす」のだそうである。実際には甲板上1mぐらいまでゆっくり引き寄せ、船の揺れや機体の姿勢を見計らい、一気に引き寄せているようである。乱暴なようだが、このやり方が最も安全性が高く、甲板の狭いDD(ヘリコプターを1機搭載、もしくはヘリコプターを搭載しない駆逐艦。ここでは当然、ヘリコプターを1機搭載可能な駆逐艦のこと)では原則としてテザード・ランディングで着艦する。ホールダウン・ケーブルを使用せず、直接ベア・トラップ上に着艦し、機体を拘束ビームで固定する方法はアン・テザード・ランディングと言い、比較的甲板の広いDDH(複数のヘリコプターを搭載可能な駆逐艦)などで、荒天時を避けて行われるが、荒天時はやはりテザード・ランディングを行う。なお、ベア・トラップを使用しない着艦はフリー・デッキ・ランディングと言い、動揺が小さく甲板の広い、空母などの大型艦で行われる。砕氷艦『しらせ』や、プローブを持たない陸自ヘリの着艦を想定している『おおすみ』級輸送艦への着艦は、フリー・デッキ・ランディングである。

【へいがたりくぐんとくしゅせん】[丙型陸軍特殊船]
 なんと、旧帝国陸軍の空母。船内には上陸用舟艇も搭載し、上陸作戦に使うつもりで10隻が計画され、秋津丸など2隻が本当に建造されてしまった。米軍の『タラワ』級強襲揚陸艦のご先祖様と思えば、その先見の明は称賛に値するのだが、旧帝国陸軍が海軍と縄張り争いをした挙げ句にでっちあげた空母モドキと言えば、もはやとほほと言うほかなし…。まあ、モノは何でも言いようである。作った後で、陸軍には着艦ができる操縦士がいないことに気づいたと言う、ウソのような話もある。結局なんだったんだこのフネは…。60年以上経過した最近になって、海上自衛隊の輸送艦『おおすみ』級という子孫も誕生している。一見空母風だが空母としては全く使い物にならない所なんかそっくりである。

【ベイパー】[Vapor]ボタン 解説画像を別ウィンドウで表示
 一般的な意味としては霧とか霞のことをいうが、航空関連の用語でベイパーとは、主翼のまわりなどで気圧が急激に下がって大気中の水蒸気が飽和状態になり、霧状になって現れる現象。上昇に転じる時などに翼の上に生じる霧や、旋回時に翼端から糸状に引いている白い渦(翼端渦が目に見える!)のことである。湿気の多い時は空気が飽和状態になりやすく、ベイパーができやすい。前夜に雨が降り、朝から晴天という場合は、地上にいる機体を撮っても陽炎に埋もれてしまって散々である。こういうときこそベイパーを狙って写真を撮ろう。青空に白く尾を引くベイパーがいいアクセントになり、スピード感も強調される。
 余談だが、ベイパーウェアとは、開発が長引いて発売時期の見当がつかないソフトウェアのこと。

【ペイロード】
 『有償搭載品』のこと。民間機の場合は旅客、手荷物、郵便物、貨物などの総称で燃料は含まない。軍用機の場合は各種武装(固定武装を除く)が含まれる。宇宙ロケットでは搭載品全般を言い、燃料も含まれる。

【ペーパー・スコードロン】《S》
 解隊されるなどして実体はなくなったが、書類上は存在していることになっている飛行隊。よって機体はおろか装備も人員もなく、看板や隊旗は倉庫に押し込まれていたりする(あるかどうかも怪しい)新規に飛行隊を作るとなると予算審査で手間を食ったりするので、既にある(書類上は、だが)飛行隊に装備・人員を配置する、ということにしてしまい、予算審査を何とか乗り切ろうと涙ぐましい努力をするのである。こういうのを軍事用語で有事即応体制と言う。路線免許維持のための一日一本きりのバス路線みたいなもんだと思ってくれ。ま、軍隊も一種のお役所だから…。財務官僚はそんなこととっくにお見通しなんだけどね。蛇の道は蛇ってやつだ。なお、機体をことごとく撃破され、可動機を失った飛行隊を『事実上のペーパースコードロン』と呼んだりもする。この場合、飛行隊が復活できる可能性はかなり低い。なにしろお国がひっくり返るかどうかの瀬戸際だから。

【ベストガイ】[BEST GUY]
 1990年12月15日公開の東映映画。監督:村川透。脚本:高田純・村川透。ありていに言えば日本版『トップガン』である。航空自衛隊全面協力…なのだが、コクピットパネルが防衛機密にあたるとかで機上シーンには少々不満も。主演は織田裕二。TACネームの『GOKU』はズバリでありましょう。
 湾岸戦争の勃発で、自粛のため公開期間を短縮された不遇な作品。

【ヘリコプター】[Helicoptor]
 日本語では回転翼機。1863年に、フランスのホントン・ダメクールが作った模型ヘリコプター『エリコプテール(Helicoptere)』が語源で、ギリシャ語で螺旋を意味するHelixと、翼を意味するPteronから作られた合成語である。メインローターをエンジンの力でぐるぐる回して推力を与え、揚力を作り出し飛行する航空機、というだけなら竹とんぼでもできる。ちゃんと飛ぶためには『制御』というものが必要で、これができない航空機は航空機ではなく、それこそ竹とんぼや紙飛行機も同然と言っていい。難しいんだヘリコプターの操縦は、機体もろともぐるぐる回り出したり横にすっ飛んでみたり上昇する前に前進始めてもんどり打ってみたり。最初にヘリコプターに乗って操縦した人は偉いね、誰にも教わらずにあんなややこしいもの飛ばしたんだから。『なまこを最初に食べた人』と同じくらい偉いと思うぞ。 とにかく、そんな制御の難しさが仇となって、ダメクールのエリコプテールから70年、1923年にスペインのマルキス・ペスカラがようやく今日のヘリコプターに近いものを完成させる。但し、これも模型。実際に人が乗れるヘリコプターは1939年、ロシアからアメリカに亡命していたイゴール・イワノビッチ・シコルスキーが完成させている。なまこを最初に食べた人よりえらい人はシコルスキーだった。

【ヘリのフジミ】
 不死身のヘリではない。ヘリコプターのプラモデルはフジミが一番良い、と言っている。他のジャンルではあまりぱっとしないメーカーだが、ヘリだけはなぜか気合いが入りまくったいいものを出している。ハセガワやタミヤがヘリのラインナップを一通り出し終わった後、当時最高の技術を投入して追い抜き、一気に水をあけたようだ。細かいバージョンの違いや、航空祭限定のスペシャルマーキング機などバリエーションも豊富で嬉しくなってしまう。

【ヘリボーンくんれんとう】[ヘリボーン訓練塔]
(1)ホバリングするヘリコプターから、ロープを伝って降下するという想定での訓練を行うための塔。高さは7〜10m程。大概の陸上自衛隊駐屯地に設置されているが、降下訓練を受けたことのある隊員は、レンジャー課程履修者のみなのだとか。なぜかと言えば安全対策なのだそうだ。なんなんだそれは?
(2)着陸したヘリコプターから、完全武装の状態で速やかに降機する訓練を行う『台』数十cm程の台の上に、数人が入れる箱が置いてあり、この箱の中から飛び出して散開する訓練を行う。塔と呼べるほどの高さはない。自衛隊に2年いて、ヘリコプターに一度乗れればいい方だと言われると、こうした模擬訓練機材の重要さがわかりますねぇ…って、そういう問題じゃないだろ!

【ベルーガ】[Beluga]
 エアバスA300B4-600STの愛称…というか正確には渾名。エアバスの部品をヨーロッパ各地の工場からツールーズの工場へかき集めて回っている輸送機。アエロスペースライン377SGTスーパーグッピーの後継として、1994年に作られた。胴体や主翼といった特大サイズの部品を丸ごと機内に収容するため胴体は特大サイズで、A320の胴体なら丸ごと収まる。コクピットが貨物室より下に位置している…否、ぶら下がっているのでかなり変なスタイル。アニメのメカデザインでもここまで妙ちくりんな形はちょっとない。事実は何とかより奇なりの見本みたいな飛行機だ。先代のスーパーグッピーも変な飛行機だったが…。
 エアバスの部品のみならず、嵩の大きな荷物の輸送を引き受けることがあり、2000年にはルーブル美術館に収蔵されているドラクロアの絵を日本まで背負ってきている。ほとんど壁画に近い巨大な絵で、これを収める空調付き専用コンテナがこれまた巨大なものになってしまったので出番と相成った。何しろベルーガの貨物室は与圧がなくて、コンテナで与圧をかけなければならなかったという話だ。
 メーカーのエアバス社は『エアバス・スーパートランスポーター』と呼ぶよう関係方面に通知しているが、関係方面ではないほとんどの人はそんな長ったらしい呼び方はせず『ベルーガ』で済ましている。ボーイング747をジャンボと呼んでいるのと同じ。

【ヘルパ】
 1/500旅客機ダイキャストモデルで知られるドイツの模型メーカー。ヒコーキダイキャストモデルの先駆者であり、航空会社からの信頼も厚いためオフィシャルモデルとか機内限定販売モデルってのはたいていここの製品である。先駆者であるだけにモデル自体はかなり古くさく形も似ていないものだったが、最近になってニュージェネレーションと称する新モデルに切り替わりつつあり、従来のおもちゃ臭さを嫌っていたコレクターも注目しはじめている。歴史が長いからグランドハンドリング車両とかターミナルビル、滑走路のマットなどのオプションも豊富で、手軽にジオラマを作って遊べる。手に持って滑走路を転がして離陸させ「キーン…」とか「ブーン…」なんて振り回す図は人様には到底見せられない姿だが、飛行機趣味の原点はやっぱりこの「キーン…」や「ブーン…」である。飛行機の模型を手にしてこれをやらない奴は航空ファンじゃねぇ!
 1/500ダイキャストモデルの他にも1/400ダイキャストモデル、1/200精密デスクトップモデルなどもリリースしている。1/200精密デスクトップモデルは車輪は回るエンジンのファンは回る機体の注意書きはちゃんと読めるの大盤振る舞いで、そのお値段たるや買うこっちも大盤振る舞いである。

【ベルリンくうゆ】[ベルリン空輸]
 1948年6月24日から1949年5月12日まで、ソ連が米・英・仏の占領していたベルリン西側の12の区(いわゆる西ベルリン)を封鎖し、送電を停止した(ベルリン封鎖)ことに対抗するために、米軍などが行った西ベルリン住民への食糧・燃料など生活物資の空輸作戦。 ポツダム宣言によって第二次世界大戦後のドイツは米・英。仏・ソによって分割占領され、四カ国代表によって構成される連合国管理理事会のもとに統治されていたが、ソ連占領地域にあった首都ベルリンはさらに同じ四カ国による分割占領下に置かれ、四カ国の軍司令官による共同管理地区となっていた。 西側三カ国はドイツの管理方針を巡ってソ連と対立し、西側が三カ国の占領地の統合を目指した政策を打ち出したのに抗議して、1948年3月20日、ソ連は連合国管理理事会から脱退した。6月18日には西側三カ国が経済健全化の必須の前提となる通貨改革を三カ国占領地区で実施すると宣言し、ソ連はこれに対抗して東側地区での通貨改革を公示するとともに、西ベルリンの封鎖と送電停止に踏み切った。封鎖といえば聞こえはいいが、西ベルリン住民220万人を人質に取ったのである。西側三カ国は1945年7月に西ベルリンを占領して以来、西ベルリン住民に食糧などを供給する責任を負っていたが、封鎖が開始された時点で西ベルリンに備蓄されていた食糧と燃料は6週間分に過ぎなかった。
 6月28日、西ベルリンへの空輸作戦が米軍のC-47などを主力として開始された。輸送機に手出しをした場合は核の使用も辞さないとの意志を示すため、原爆を搭載したB29もヨーロッパに送り込まれていた。輸送量は当初一日5,500t。末期には通常西ベルリンに鉄道などで運び込まれていた一日平均8,000tを上回る空輸に成功している。ちなみにこの8,000tという量は、貨物列車なら10本ぐらい(機関車の性能と駅の待避線有効長により多少異なる)で運んでしまう量である。最高では1949年4月16日に達成した16,150t。この日一日で1,400機というから昼夜の別なく62秒に一機という、想像を絶するペースで輸送機がベルリン・テンペルホフ空港に着陸している。さらにその間に離陸機が入るわけだから、31秒に一機が発着するという、途方もないペースになる…管制官も大変だったろうな。なお、この日の内訳は生活必需品など一般の物資8,000t、原料等の物資1,000t、石炭5,300t、食料1,850tであったと記録に残っている。先行して着陸した機が滑走路から出るのも待たずに着陸した輸送機は、誘導路をタキシングしながら物資を放り出し、行列を作ったまま離陸してゆく。地上ではタキシングする輸送機の合間に駆け込んで荷物を拾い集める非常に危険な作業が行われ、飛ばす方も命がけ、荷物を拾い集めるのも命がけ。必死、ってのはこういうことを言う。現に輸送機乗員と地上職員に79人もの犠牲者が出ている。
-ほ-

【ポイント・オブ・ノーリターン】[Point of noreturn]
 →PNR

【ぼうえいたいしょうこく】[防衛対象国]
 日本以外の国で言う『仮想敵国』のこと。「平和憲法を有する我が国において、敵国とは如何なものか」という御批判を賜り、かような呼び名となっている。周辺諸国への配慮だそうだが、銃口向けてにらみを利かせてくるような国を相手に配慮はないだろう。ここが変だよ日本人。仮想敵国とは交戦状態には至らないまでも、自国周辺などで敵対的行動を行う国を主に指し、この動向に注目して部隊配備を強化したり、装備や戦法の研究を行ったりする。普通は「隣の○○国が仮想敵国です」とは公言しない。それはお互いわかっているから…。

【ほうかつりょこううんちん】[包括旅行運賃]
 →IT運賃

【ぼうくうしきべつけん】[防空識別圏]
 ADIZ(Air Difence Identification Zone)とも呼ばれる。国の防空上の理由から設定されている空域。領空内に外国航空機が入る場合、その国の許可が必要で、領空侵犯機は強制着陸または領空外への退去をさせる必要がある。領空内を飛行するすべての航空機はフライトプランの提出、位置通報などの飛行手順が要求される。
 防空識別圏は領空侵犯機への対処のため、領空より広い空域が設定されるのが普通なのだが、なぜか与那国島とその領空は台湾の防空識別圏に半分かかるため、与那国へのフライトは台北の管制当局を経て台湾空軍の防空当局に通報を行う必要があるそうだ。→ADIZ

【ほうでんそうち】[放電装置]
 →スタティック・ディスチャージャ

【ぼうひょうブーツ】[防氷ブーツ]
 翼への着氷を落とす(溶かす、とか、防ぐ、ではない)ために各翼前縁に付けられているゴム製部品。防氷ブーツ内に空気を送り込み、防氷ブーツを変形させることによって翼端部に付着した氷を剥がすもの。外観上は各翼前縁部が黒い帯状になっている点で判別できる。YS-11A-200などに装備されていた。

【ボーイングエアバス】[Boeing Airbus]
 ボーイング747SRにボーイング社自身が付けた愛称。そんなの誰も知らんぞ!→SR

【ボーイング・ソニック・クルーザー】[Boeing Sonic Cruiser]
 ボーイング社が2001年3月に発表して、2003年に白紙撤回してしまった巡航速度マッハ0.95〜0.98で、航続距離16,700kmを目指した250席級中型旅客機。5000kmの巡航飛行で、飛行時間を従来より約1時間短縮する予定で2007年〜2008年就航を目指していたのだけれどね。初期のボーイング社の発表では『ソニック・クルーザー』の名前はなく、マスコミによって付けられた愛称だが、ボーイング社は結構気に入っていたようだ。マスコミが付けた愛称を航空機メーカーが気に入るというのは珍しいことである。   

【ポートサイド】[port side]
 機首方向に向かって左側のこと。元々は船舶用語で左舷を意味する。中世以前のヨーロッパの船は右舷側に舵があったために、接岸は常に左舷側であったことからこう呼ばれる。古い旅客機では右翼側には窓しかない場合も多く、また、現在の旅客機でも右翼側は貨物の積み卸しなどに使用されるため普段の乗降は左翼側から行う。
 軍用機の場合はまちまちで、風防が上に跳ね上がるか後方にスライドする機種の場合は左翼側の乗降が多いようだが、基本的にはどちらからでも良く、統一するのは規律維持などの意味合いからのようで、軍用機だから『右翼』とは限らない。同じ機種でも国によって右になったり左になったり…。左翼側から乗降と明確に決まっているのは米海軍の戦闘機、攻撃機の一部などで、ボーディング・ラダーという折り畳み梯子を左翼側に装備している。F104戦闘機は風防が左に開くので乗降は右翼側から。日本国政府専用機(これも軍用機だ)の内蔵ステア(タラップ)は、貨物室に設置されていることもあって右翼側のみ。但しゲストの乗降は旅客機の伝統を引き継いで左翼側最前部の扉を使う。大型爆撃機に至っては真下からというのもある。大型ヘリコプターの場合は左側には非常口しかない機種も多い。伝統的なポートサイドにこだわるのは旅客機だけのようである。

【ポーラールート】
 かつての南回りに対して、アンカレジ経由とか北極回りとか呼ばれていた、極東・欧州間の飛行ルート。ソ連が領空通過を認めていなかったので、アラスカのアンカレジで燃料を補給して北極海上空を飛行していた。
 アンカレジを経由しなくなった現在でも、ロシア航空当局の管制能力からロシア上空を避け北極上空をノンストップ飛行する場合もあるし、成田の運用時間に合わせて時間調整のために北極上空へ大回りをするエールフランス夜行便のようなケースもある。スカンジナビア航空の場合は、ロシア上空を経由すると却って遠回りになってしまうので北極上空を経由する。 →アンカレジ経由・北極経由・北極回り

【ポーラールート・サバイバルキット】
 →ポーラールート・レスキューキット

【ポーラールート・レスキューキット】
 ポーラールート・サバイバルキットともいう。北極上空で遭難した場合に備えた救難装備。かつての北極回りの便は通常の救難装備の他、人数分の防寒具やら何やら、挙げ句はホッキョクグマ撃退用のライフル銃(まさかアザラシ捕って食えってわけではあるまい。これで露助と戦えとでもいうのか…?)まで積んでいた。ハイジャックなんて言葉もまだなかった平和な頃のお話。→ポーラールート・サバイバルキット

【ホールディング】[Holding]
 空中待機。航空機が空港の混雑などの理由で管制塔の指示に従って空中で待機すること。飛行機は空中では止まれないので、飛行場ごとに予め周回コースや高度が定められていてそこをぐるぐるぐるぐる…と回って待機する。飛行機はこういう場合に備えて燃料に余裕を持たなければならないが、モノには限度ってものもある。飛行船は案外長時間空中待機をすることが可能で、かの有名なドイツの飛行船『グラーフ・ツェッペリン』号は、あるときドイツから遠路はるばるブラジルにまもなく到着というところで、ブラジルに革命騒ぎが勃発。危険だから降りられないし、かといってまたドイツに引き返すのも癪だし、まあどうせラテンの革命騒ぎ、すぐに収まるさとこれまた妙にラテン的な見通しでブラジル沖の大西洋上空で延々120時間というから、なんと5日間にもおよぶ空中待機を敢行した。空前絶後の空中待機時間である。もともと数日間に及ぶフライトをこなす飛行船、燃料は充分だったがさすがに5日間ともなると食糧が不足してきた。たまたま下を通った船を呼び止めて食糧を分けてもらい(一等船客用の高級食材を要求したらしい)ながらゲルマンの意地を通したという。空中待機を決めた船長も大したものだが、それに付き合った乗客も大したもの。とはいえやっぱりモノには限度ってものがある。そういえば件のツェッペリン号はその後ブラジルに降りられたのだろうか…?

【ほしがたエンジン】[星形エンジン]ボタン 解説画像を別ウィンドウで表示
 レシプロエンジンのシリンダ配置方法のひとつで、前から見るとクランク軸を中心としてシリンダが放射状に配置されたエンジン。全長を短くすることができ、気筒数が増えてもバランスよく冷却できるが、前面投影面積は大きくなってしまうし、コクピット前方に配置されると前下方はほとんど見えない。クランクを挟んで向かい合わせになるシリンダー配置は、ピストンの行程の関係上不可能なので、気筒数は奇数となる。星形エンジンを次々と重ねて一纏めにしたのが『複列式』で、P&W R-4360-49ワスプ・メイジャーというエンジンに至っては、7気筒の星形エンジンを4列重ねて28気筒にもなっている。このエンジンを積んだダグラスC-124グローブマスターは4発機だったから、全部合わせて、え〜と、112気筒…!飛行機のレシプロエンジンといえば、概ねこの星形エンジンと言って良いほどポピュラーだったのだが、現在は星形エンジンを必要とする程の機体ではジェットエンジンとターボプロップエンジンに取って代わられている。
 かつては『ロータリーエンジン』とも呼ばれていたが、東洋工業(マツダ)が実用化したヴァンケル型ロータリーエンジンこそ本来のロータリーエンジンなので、意固地な一部の英国人を除いてこの呼び名は現在では使われていない。ごく初期に作られた星形エンジンで、シリンダーの冷却を均等に行うためにエンジン自体がクランク軸を中心に回転するようにしたものをロータリーエンジンと呼んでいる場合もある。

【ほしぐみ】[星組]《F》
スター・アライアンスのことを言う。エア・カナダ、ニュージーランド航空、全日空、アシアナ航空、オーストリア航空、ブリティッシュ・ミッドランド航空、LOTポーランド航空、ルフトハンザ・ドイツ航空、スカンジナビア航空、シンガポール航空、スパンエア、TAPポルトガル航空、タイ国際航空、ユナイテッド航空、US エアウェイズ、ヴァリグ・ブラジル航空が(…まだ他にあったかな?)加盟している。

【ほっきょくけいゆ】[北極経由]
 →ポーラールート

【ほっきょくまわり】[北極回り]
 →ポーラールート

【ボムキャット】《S》
 爆撃任務に当たるF-14トムキャット。または爆撃能力を付与されたF-14トムキャット。

【ボランティア】《S》
 オーバーブッキングで希望したフライトに乗れなくなった乗客と交代し、航空会社負担で翌日以降のフライトなどへの振り替えを承諾していただいた、まことにありがたいお客様のこと。お客様は神様ですというけれど、そんな神様みたいなお客様は滅多にいない。いや、それよりも「他の乗客を引きずり降ろしてでも俺の席を確保しろ」と航空会社に命じるような奴って…どんな奴かと思って某航空会社の関係者に訊いてみたら「弊社ではそのようなことは一切…」まあそう言うだろうね。

【ボルテックス・ジェネレータ】[vortex generator]
 機体や翼の表面を流れる空気が剥離すると、ばたつきが起こって機体を破壊されたり、舵に気流が当たらず操縦が効かなくなったり、失速して飛行姿勢が乱れたりする。そこで空気の剥離が起こりやすいところの手前に小さな突起をいくつも設けて気流を乱してやる(乱流にする)と、あら不思議。剥離を防ぐことができる。この小突起がボルテックス・ジェネレータ。突起物を貼り付けるだけのお手軽な手段なので「今更設計変更なんて、できないぞ!」という場合、設計者の救世主として多用される。もちろん、通常は只の邪魔者でしかないから、ボルテックス・ジェネレータにはなるべく頼らずに済めばそれに越したことはないのだが、なかなか…。

【ボルメット】[VOLMET]
 →第四種飛行場予報・VOLMET

【ボロヨン】《F》
 日航のクラシックジャンボのこと。ボロとはいってもかつてのコンチのB2に比べたら…。

【ほんこんアプローチ】[香港アプローチ]
 今はなき香港・啓徳空港Runway13への着陸進入ルートをいう。チャンチャウ島上空を起点に西(270度)にランタオ島に向かい、ランタオ島南端のポイント『ゴルフ』から右旋回を開始してチェクラプコック島(現在の香港国際空港)上空で東(88度)に進路を変え、ライオンロック付近の通称『チェッカーボード・ヒル』手前のミドルマーカーで右に47度旋回し、九龍に林立するアパート群の洗濯物を掠めるようにRunway13へ降りる、というもの。…説明するだけでも疲れる。最後の右旋回の直後に着陸となるので、バンクからの立て直しが遅れるとゴーアラウンド、もしここで仮に着陸を強行するならば公称値よりも短い過滑走帯からビクトリア湾へドボン!…とまで行かなくてもタイヤバーストぐらいは日常茶飯事である。
 うまく降ろすにはチェッカーボード・ヒルを真っ正面にとらえず、やや右寄りになるよう若干コースを左寄りに取り、最後の右旋回は早めに開始して旋回半径を大きくしてバンク角を小さく抑えるのだそうだが、そうは言っても、なかなか…。「旋回してる斜めの入り江にはジャンクの群れ ゆったり浮かぶ…」(Hong Kong Night Sight:松任谷由実)なんて呑気なものじゃない。→香港カーブ

【ほんこんカーブ】[香港カーブ]
 →香港アプローチ

【ボンバー】
 Bomberは正しくはボマーと読むはずだが、なぜか日本ではボンバーと読む。よって日本のアイドルグループであるT/C BomberはT/Cボマーではなく、T/Cボンバーと読むのが正しい。エリア・ル−ル体型(コーク・ボトル体型とも言う)のナイスバディなおねいちゃんの意味で、爆撃機を意味する場合はボマーと読むべきである。爆撃機乗員が着用していたジャケットはボンバージャケットではなく、ボマージャケットである。山下達郎が1979年に、シングル『レッツ・ダンス・ベイビー』のB面と、アルバム『GO AHEAD』に収録した『Bomber』という曲があるが、これにはわざわざボンバーと読み仮名を振っている。どうもこのあたりがボンバーの起源と考えてよさそうである。ああそうそう、その翌年には、永井豪原作の人形劇ドラマXボンバーってのもあったっけ。永井豪でボンバーと来れば…と期待しないように。劇中に登場する宇宙戦艦の名前だからね。

【ポンポンジェット】《F》
 →パルスジェット

サーチエンジンなどからお越しの方へ このページはmia's web内、航空雑用辞典本文ファイルです。