-か-

【ガード・チャンネル】[Guard channel]
 UHF帯国際緊急周波数。全世界共通で243.0MHzが割り当てられている。

【カーボンファイバー】
 CFRPの補強繊維。→CFRP

【がいしゅうどうろ】[外周道路]
 飛行場のフェンス外側に沿った道路。フェンス内側の道路は『場周道路』という。

【がいへん】[外変]
 国内線用機材を国際線で使用する際に行う、搭載品の変更や各種の手続き。機内設備をそのまま使う場合でもビデオ・オーディオプログラムや機内誌などの変更、膨張式救命筏の搭載、税関への申請などやることがいろいろあって『大変』である。

【がいらいき】[外来機]
(1)その基地に所属する部隊以外の航空機。航空祭や大規模な演習などの際にはあちこちから外来機がやってきて列線の雰囲気ががらりと変わり、滑走路端あたりのフェンスの外がいやに盛り上がる。インターネットの匿名掲示板に実況スレッドが立つほどだ。千歳の政府専用機や浜松のE767、新田原のアグレッサーなどは所属基地から動くことはほとんどないが、三沢のE2Cや百里のRF4Eなどは結構マメにあちこち顔を出してくれる。ブルーインパルスも松島基地以外では外来機だ。全国の航空祭巡りをする熱心なファンは、この外来機の到着と展示飛行訓練を見るために前日から、中には数日前から現地入りしているのである。
(2)広義では、その飛行場を常置場所として登録していない航空機。つまり、いつもはよその飛行場にいる航空機。航空機というものは自動車の車庫証明と同じで、常置場所を定めて登録しなければならない。飛行場ならどの飛行場でも置いておいていいってものではない。

【カウルフラップ】
 空冷レシプロエンジンを覆っているカウリングの後方に設けられている、空気の抜け穴の調節蓋。始動時など、エンジンが冷えている時はカウルフラップを閉じてカウリング内に空気を滞留させ、エンジンが暖まってきたら、開いて風通しを良くして冷却効率を上げる。旧満州などの寒冷地では、カウルフラップぐらいではどうにもならず、エンジン部分を覆う小屋を作り、中で焚き火をして、飛行機は小屋に首を突っ込ませてエンジンが冷えるのを防いだとか。東部戦線のドイツ戦車あたりになるとさらに豪快で、ディーゼルエンジンの下で焚き火をしてオイルを暖めておいたという話もある。いずれも潤滑油が粗悪だった戦時中の非常手段なので、真似をしてはいけない。

【かがくあわしょうかざい】[化学泡消火剤]
 無機酸または硫酸アルミニウム水溶液に、重炭酸ナトリウム水溶液を混合して炭酸ガスを発生させ、その圧力で混合液を噴射。燃焼面を覆い、窒息効果と冷却効果によって消火するもの。

【かくうき】[架空機]
 アニメや特撮に登場する架空の航空機。実在の航空機を模したものや、ちゃんと飛行機らしい形をしているものから、テグスでぶら下げるしか飛ばしようのない、ミノフスキークラフトなる代物まで玉石混淆。銃弾を食らって機体に穴が空いても、機内の空気はそよとも動かない上にパイロットは酸素マスクすらしていない不思議な航空機のオンパレードである。与圧してたのか?してなかったのか?どっちだ?
設定上の機体寸法よりも格段に機内が広いってのも、概ね共通して言えるな。

【かくやすこうくうけん】[格安航空券]
 本来宿泊などとセットで販売するパッケージツアー用の『IT運賃』適用航空券を、航空会社の黙認で航空券だけのばら売りをしているものをいう。航空会社は公式には存在を認めていない。売れ残り対策でばら売りしているものなので購入時期や旅行代理店の仕入れ量などによって価格が変動する。このため、同日の同じフライトで使用条件も同じ『格安航空券』ならば本来同一運賃であるべき筈なのだが、購入時期や販売店などによって運賃が異なる。閉店時間前の生鮮食品半額セールみたいな航空券である。
 なお、特別回遊運賃(PEXあるいはゾーンPEX)は混同されやすいが格安航空券ではないので注意。

【かくりきち】[隔離基地]《S》
航空自衛隊百里基地。自衛隊の基地はどこも交通の便がいいとはお世辞にも言えないが、ここ百里基地の交通の便の悪さは、ヘタなレーダーサイトなんかもう目じゃないってぐらいひどい。基地祭の時の渋滞ももはや名物と化し、2004年9月26日に行われた百里基地祭では、最寄りの(…っても15kmも離れている)常磐線石岡駅を6時に出発した観客輸送のシャトルバスが、なんと15時過ぎても基地に到着できなかったとの伝説も残っている。

【カごう】[カ号]
 旧帝国陸軍の観測用回転翼機。といってもヘリコプターではなくオートジャイロのこと。観測のカ、回転翼のカ、さらにはメーカーの『萱場製作所』(現在はショックアブソーバのカヤバ)のカという説もある。

【かこうひん】[火工品]
 信号弾、照明弾、発煙筒など、火薬類を使っている装備品。射出座席も火工品である。但しミサイルやロケット弾、砲弾、銃弾、手榴弾、小銃てき弾、魚雷、爆雷、機雷、地雷など、火薬類を使っていても一般的に武器としてイメージされているものは火工品とは呼ばない。が、なぜか火薬類を使っていないマリンマーカが火工品に分類されていたりするのである。

【カサブランカきゅう】[カサブランカ級]
 第二次大戦中の米海軍の護衛空母。カタパルトを使って艦載機を射出できるようになったので、空母としては非常に小さい。船団護衛に当てるため、ネームシップである一番艦カサブランカを皮切りにアメリカ中の造船所を総動員して一年間で50隻が建造されたというから、ほぼ週に一隻のペースで建造されたことになる。週刊誌みたいな空母である(創刊号は豪華バインダー付きだったのか?)やっぱり戦争は数で勝負だね。

【かさや】[傘屋]《S》
 空挺隊員。陸上自衛隊の普通科隊員が使うスラング。迂闊に「おい、傘屋!」なんて言ったら、血を見ることになるぞ…。余談だが、聞くところによれば習志野の第一空挺団と、練馬の第一普通科連隊の対抗意識は凄まじいものがあるとか。自衛隊観閲式で空挺が迷彩服を着用すれば、翌年は一連隊も迷彩服で参加し、空挺が白いスカーフを着用すれば一連隊も赤いスカーフで対抗する。競技会でも「傘屋には絶対負けるな!」「練馬大根(応援団が大根踊りをするから)には絶対負けるな!」と檄が飛び交うのだそうだ。

【ガスタービンエンジン】 ボタン 解説画像を別ウィンドウで表示
 燃焼ガスの膨張エネルギーでタービンを回し、動力を得るエンジン。ジェットエンジンのうち、タービンとコンプレッサを有するものはガスタービンエンジンに分類される。タービンとコンプレッサのないラムジェットエンジンやパルスジェットエンジンは、ジェットエンジンではあるけれどガスタービンエンジンではない。ガスタービンエンジンには大きく分けて軸流ガスタービンと遠心ガスタービンに分けられ、排気を推力源とするジェットエンジンは、無数の回転羽根を何段も同軸に並べた軸流ガスタービンが用いられる。軸流ガスタービンは大出力に向くため、大型ヘリコプターの動力、大型ターボプロップ機、中〜大型船舶、ビル自家発電用などにも用いられる。遠心ガスタービンは、吸い込んだ空気を遠心方向に送る回転羽根で空気を押し込み、圧縮するもので、比較的コンパクトで小出力に向くので小型〜中型ヘリコプターの動力、小型〜中型ターボプロップ機、小型船舶、大型機の補助動力装置(APU)などに主に用いられる。
 自家発電用のガスタービンエンジンの多くは航空用ジェットエンジンをベースにしたもので、燃料には天然ガスや重油を使用するため細部は異なるものの、GE CF-6とかP&W JT9といった航空ファンにはおなじみの機種が使われている。たいていはビルの地下にあって目にすることはないが、島根県の松江赤十字病院は表通りから見えるところに設置してある。消音と防火のためカバーで覆われ、発電機と巨大なサイレンサーが付いているが、本体自体は意外にコンパクトだ。

【カスタマー・コード】
 発注した航空会社ごとに、航空機メーカーによって割り当てられている記号。例えばボーイングのものは、日本航空は46、全日空が81、日本トランスオーシャン航空(南西航空)がQ3で、日本政府は7Cである。古くからボーイングとの取引のある航空会社は数字二ケタ、比較的最近になって取引を開始した航空会社はアルファベット一文字と数字一文字の組み合わせか、アルファベット二文字が割り当てられており、例えば南西航空のB747-400ならばB747-4Q3(んなのあるか!)という具合に、型式番号の末尾二ケタに付記される。他の航空会社に売却されても変わることはなく、形式末尾二ケタのカスタマー・コードを見れば、たとえ何度転売されようとボーイングに発注した航空会社がわかる。もちろん、ボーイングに発注したおニューだったのか、中古を買ってきたのかも一目でわかる。社名が変わってもコードは変わらない。合併した場合は古い方を引き継ぐようである。日本エアシステムのカスタマー・コード89は、前身である東亜国内航空のさらに前、日本国内航空時代にB727を発注した時のカスタマー・コードをそのまま引き継いでいる。旅客機は注文生産品で、発注した航空会社によって仕様が異なるので、識別などのためにこうした記号が必要になる。

【かせん】[火箭]
(1)唐代に作られた黒色火薬を利用した火矢のこと。よってロケットの起源とするのは誤りである。
(2)
旧帝国海軍では信号用ロケット弾のことを言う。

【かそうせんき】[仮想戦記]
 もしも自衛隊が戦国時代にタイムスリップしたらとか、陸上自衛隊の特殊部隊サイレント・なんたらがアジア各地の紛争に極秘介入したらとか、ミッドウェイ海戦で帝国海軍が大勝利したらとか、大日本帝国がドイツ第三帝国に宣戦布告してとかって類の小説。つい最近まで豊田有恒の『タイムスリップ大戦争』とか半村良の『戦国自衛隊』ぐらいしかなかったんだが、今では日本で刊行されているSF小説の大半がこれだ。戦記シミュレーション小説とか言う場合もあるが、まあ似たようなモノだ。ジェットエンジンに換装した震電がB29を袋叩きにするとか、富嶽がベルリンに爆弾の雨を降らせるとか、戦艦大和が空母になる(…それって、あの信濃じゃん)なんてのはもうお約束である。今や新書版ノベルのほとんどが仮想戦記モノ。日本人はよっぽどストレスが溜まっているらしい。他にやることないのかな?とか言いながら佐藤大輔の新刊を待つ編者であった。

【かそうせんき】[火葬戦記]《F》
 いわゆる仮想戦記ものと呼ばれるジャンルに属する小説の氾濫ぶりを揶揄した言葉。インターネットの匿名掲示板で用いられる。

【かたぎる】
(1)埼玉県幸手市周辺の方言で、鋤・鍬で畑地の土を片側ずつ掘り起こすこと。 
(2)奈良県十津川周辺、岡山県下津井周辺、長崎県などで使われる方言で、意地を張ること。
(3)和歌山県御坊市周辺の方言で、荷物などを担ぐこと。
(4)飛行中に逆噴射をかけ、滑走路以外の場所に着陸させること。「機長!何するんですか!」

【かたはい】[片肺]
 →片発

【かたはつ】[片発]
 双発機の一方のエンジンが故障するなどして止まってしまい、もう片方のエンジンだけによる飛行を余儀なくされた状態を指す。以前は片肺と呼んでいたのだが、結核で片方の肺を切除せざるを得なかった人に対する差別に当たるとの考えから、このように言い換えている。

【かつおぶし】《S》
(1)旧帝国海軍の二式飛行艇が艇体に装備した離水時の水しぶきを抑えるための突起。積載物が多く艇体の沈みが大きい状態で離水すると激しい水しぶきでプロペラを破損してしまうおそれがあることがわかり、波抑え装置として装着された。その外観が鰹節に似ているからだそうだが、鰹節にしてはえらく使い込まれてやせ細っている。後の実験で穴をあけた矩形板を立てた方が波抑えの効果が高いことがわかったが、かつおぶしでも充分な効果が得られていたので採用は見送られた。この穴あき矩形板から発展したのが海上自衛隊の飛行艇PS-1、US-1に採用された波消し溝である。
(2)フラップのガイドレールカバー。大型機の主翼下面にいくつか付いている流線型の突起物のこと。こちらの方が鰹節らしく見える。

【かっくうせんしゃ】[滑空戦車]
 正式には『特三号滑空戦車』戦車自体の正式名称はソラ車という。正式な名前があるだけでも驚きだが、大日本帝国陸軍が大和魂の粋を結集した空飛ぶ戦車だ!。笑いたければ笑えばいいさ!!
 2.9t級の軽戦車に翼を付けて、母機に牽引されて空を飛び、目的地上空で曳航索を切り離し着陸、翼を切り離して戦車として行動するという代物。翼と機体関係は前田航研、戦車は三菱重工が担当し、1943年(昭和18年)に開発が着手されたが、結局アイデアだけで終わっている。発想だけはユニークで先進的なのだが、仮に実用化されたとしても2.9t級の軽戦車に何ができるのか疑問が残る。
 余談だが、同じ頃、同盟国のドイツはメッサーシュミットMe321ギガントという、積載重量40t近いグライダーを実用化していたし、Me321にエンジンを装備したMe323という戦略輸送機もあった。これなら大概の戦車を空輸できた。ただ、如何せん数がねぇ…。それから約20年後に、米軍は『ジェリダン』というパラシュート投下可能なアルミ製軽戦車を作っているが、やっぱり戦車としてはお粗末で話にならなかったらしい。戦車を空挺降下させるなら、普通の戦車をパラシュート投下して、着地寸前に補助ロケットの逆噴射をかける、ソ連軍(当時)お得意の方法がベターでしょうなぁ。最初は仰々しいモノをわざわざ作っていたが、だんだんシンプルで当たり前の方法に落ち着いてゆく…ってのはよくある話だ。

【かっそうろしじひょうしき】[滑走路指示標識]
 滑走路進入端の路面に書かれている数字、滑走路の進入方向からの磁方位を10°毎に01〜36の二桁の数字で表している。『伊丹の32(サンニイ)』とか『ラーメンつるつる(Runway22)』とかいう数字のこと。これがわからないと航空無線を聞いても飛行機が滑走路のどちら側から離着陸するかわからなくなる。例えば滑走路進入方向から見て磁方位324°の方向へ伸びている滑走路は磁方位の1の位を四捨五入して320°とみなし『32』と表示される。磁方位が0°(真北)へ伸びている場合の滑走路指示標識は00ではなく『36』としている。磁方位92°の場合は『9』となるが、一桁になってしまう場合は頭に『0』を付け『09』としている。反対側の滑走路進入端は01〜18の場合は18を足し、19〜36の場合は18を引いた数となる。平行滑走路の場合、進入方向から見て右になる滑走路には『R』を付け『32R』となり、左になる滑走路には『L』を付け『32L』とする。つまり32Lの反対側は14Rとなる。平行滑走路2本の場合は左から『L・R』と並ぶ。3本の場合中央の滑走路には『C』を付け、左から『L・C・R』4本では『L・R・L・R』5本では『L・C・R・L・R』または『L・R・L・C・R』とし、6本の場合は『L・C・R・L・C・R』と並ぶ。指示標識はICAOの『標準』により書体が定められており、寸法は縦9m以上とされている。

【かつネコ】[活ネコ]
 航空貨物で猫を輸送する際に、荷札などに書き込まれる品目名。『生きている猫』なので活ネコ。そうすると『生きている犬』は活イヌ、『生きているイグアナ』は活イグアナ、『生きているヨコバイガラガラヘビ』は活サイドワインダー、『生きている座頭市』は勝新太郎…。という具合になるのだろう。
 おもに貨物室の空調設定などの関係で表示されるもので、与圧は貨物室でもかかっているので問題はないのだが、気温設定は生き物を乗せていない場合、低めにされてしまう。特に沖縄発の便は、お土産に生鮮食品(アイスクリームにパイナップル)が多くフライトも長いので、貨物室の気温設定はかなり低めになっている。
 また、生鮮食品はドライアイス冷却をしている場合もあり、ドライアイスの炭酸ガスで貨物室がガス室になってしまうため、生き物とドライアイス冷却の生鮮食品を一緒の貨物室に搭載するわけにはいかないし、またそうでなくても食品の衛生上好ましくない場合も多い。
 動物の種類によっては、気温設定を低めにしておとなしくさせ、ゲージへの体当たりなどによる自傷事故を防ぐこともあるが、通常ペットや家畜として飼われるような動物で行われることはまずない。
 また、機内の空調ばかりでなく、天敵となる動物を一緒に輸送しないなどの配慮もしなければならない。そのため、搭載量に余裕があっても別の便に回すなどの措置も必要になる。『クレームを付けないお客様』だが、人間が想像する以上に些細なことでも体調が変化しやすい。発送の際に『生死は問わない』との念書を航空会社から要求されるが、生き物の輸送は、かように気を遣うものなのである。機内という環境は、輸送される動物もストレスを受けるが、輸送する担当者もストレスが溜まる、生死は問わないと念書を書いた飼い主はさらにストレスが…。
 こうした生き物は航空会社が用意した専用のカゴに収容されて輸送される。同等のものはペットショップでも販売されている。カゴには水を入れたボトルが装着でき、長距離の場合、機内ではこの水を飲んで凌ぐ。国際線の場合は、動物検疫などの関係で相当時間がかかるので、空港で食事にありつけるが、国内線の場合は、ネコ缶などの機内食はないので、到着空港ですぐに引き取ってあげないととても可哀想なことになる。国内線の場合は、到着後30分程度で引き渡しが開始となる。
 余談だが、国際線の貨物専用機で競走馬を輸送する場合は、スターティングゲートのような専用コンテナに収容され、調教師などが貨物ターミナルから同行して搭載作業にも立ち会い、機内でも世話にあたる。 飼育担当者が同乗して機内で世話にあたるのは、希少動物などでも行われる。

【ガトリングほう】[ガトリング砲]ボタン 解説画像を別ウィンドウで表示
 1860年代にアメリカのR.J Gatlingが発明した手回し式多銃身機関銃。束ねられた数本の銃身が装填・撃発・排夾のポジションを回転移動し連続射撃をする最も初歩的な機関銃。戊辰戦争で、越後長岡藩が使用して官軍を苦しめたが、結局長岡藩は官軍の数に圧倒され、戦後は食べるものもない程の窮状に追い込まれる。そこから小泉首相の演説で話題となった『米百俵』の話へと繋がってゆくのだが、それはまた別の物語。
 その後、排夾・装填に火薬のガス圧を利用する単銃身機関銃が登場し、こちらのほうが軽量小型で便利だったのでガトリング砲は一時期姿を消すが、ジェット機の登場で高速で移動する敵機を撃破するために大量の弾丸をばらまく必要が生じ、およそ100年の時を経て再び登場と相成ったのが今日多くのジェット戦闘機に装備される20mmガトリング砲。商品名バルカン砲である。さすがに100年も経つと手回しなどということはなく電動で毎分6000発という大量の弾丸を発射することができる。その中に5発に一発の割合で曳光弾という炎の尾を引く弾丸が入っているのだが、これが間断の隙なく飛んで行き、一本の炎の線になるくらいである。何とかの鉄砲数撃ちゃ当たると言うが、積んでいる弾丸は多くても600発ぐらいしかない。ヘタクソだと当たる前に弾丸がなくなるのは言うまでもないな…。
 20mmガトリング砲は戦闘機に搭載される他、対空砲CIWS『バルカン・ファランクス』として艦船にも搭載されている。また、米軍の対地攻撃機フェアチャイルドA-10サンダーボルトII(2)は、戦車やトーチカを相手にするためにさらに大口径の30mmガトリング砲が搭載されている。この30mmガトリング砲、毎分4200発とこれまた景気のいい代物だが、撃つと反動で機体が下を向くからエンジンを全開にしないといけないとか、撃った後は機体各部のネジがゆるんでガタガタになるとか…強力な兵器にもそれなりに悩みはあるらしい。

【かばしら】[蚊柱]《S》
 事件現場上空をぐるぐる飛び回っている報道ヘリの大群。おおむね上下二段に分かれて飛び、低空をぐるぐる回って飛ぶのは新聞社属、高いところでゆっくり回って飛んでいるか、ホバリングしているのはテレビ局属に分類される。テレビカメラはあまり高速で振り回すと見ている人が目を回してしまうので、高倍率のズームレンズで距離を置いて、なるべく画面を揺らさないように撮る。なにより最前列に居座って長々とカメラを回されたら大迷惑である。新聞社のヘリはホバリングせずにささっと撮って他社ヘリに場所を譲り、次のチャンスを狙って列の後ろにつく、という古くからの業界ならではの掟がある。だから報道特番で、ヘリからの中継画面を時折横切るヘリは新聞社のヘリである。
 報道ヘリは早ければ発生から30分後には現場に出現し、その数分後には見事な蚊柱が構成されるようになる。現場の整理に駆り出された機動隊より早いのだから恐れ入る。地上にいるこっちから見ると、国民の知る権利だか、人の不幸を高みの見物なんだか知らないが、鬱陶しいったらありゃしない。

【カプロニ・カンピニ】ボタン 解説画像を別ウィンドウで表示
 お待たせしました。航空史上に残る大ネタ。ムッソリーニ率いるイタリアが国家の威信をかけた一発ギャグ。プロジェクト×(ペケ)の筆頭格。駄っ作機の代名詞。笑いを取ったという点では航空史上最高の傑作機(も〜、言いたい放題…)カプロニ・カンピニ遂に登場!えっ、どんな飛行機かって?鯉のぼりが羽根付けて空飛んでると思いねぇ。胴体の中でレシプロエンジンによってプロペラを回し、アフターバーナで加速する、…しようとしていた反則ジェット機。ただそのアフターバーナも殆ど効果なく、試験飛行が行われたタリエドからギドニアまでの270kmでの区間平均速度は210Km/h、最高速度は同時期の普通のレシプロ戦闘機の半分程度の速度だぞ。この速度には世界が愕然としたとかしないとか…。アフターバーナがなかったらどうなっていたのだろう?飛ばなかったかもしれないな。常識的には『アフターバーナ付きダクテットファンレシプロ機』とでもするべきだろう。1940年8月28日に世界初のジェット機として初飛行に成功した…はずだったのだが、その一年前にドイツが本物のジェット機He178を極秘裏に飛ばしていたことが第二次大戦後に判明し、世界初のレコードも失ってしまった。これほどトホホな飛行機も珍しい。米英と三つ巴になってシュナイダートロフィーを争っていた偉大なるイタリアーノはどこへ行ってしまったんだ!ドイツ人のじいさんが日本人を見つけるなり「今度はイタ公抜きでやろうぜ!」と言うのがよくわかる。で、何をやるんだ?

【かみばくだん】[紙爆弾]
(1)敵のスキャンダルを暴露したり、敵陣営の結束を弱める目的で偽情報を流したりするために使用される文書の総称。出所がわからないようにばらまき、デマであってもちょっとは真実を織り交ぜるのが基本。最近ではインターネットの匿名掲示板なんてものもあって、紙に書いてあるモノばかりとは限らない。実際の戦争でも爆撃機や輸送機が、夜な夜な敵地に宣伝ビラをばらまくということはよく行われている。これがホントの紙爆弾である。
(2)札束のことをこう呼ぶ場合もある。当然、敵に投下する爆弾ではなく、味方になりそうなヤツとか、一応味方ということになってる側に、寝返りや味方陣営の結束強化などを目論んで投下する爆弾である。実際の戦争だと、偽札をばらまいて(やめろ!飛行機からばらまいたら怪しまれるじゃないか!)敵国の経済を混乱させるということも行われる。そちも悪よのう。ふっふっふっ…。

【かようせいガム】[可溶性ガム]
 燃料油中に含まれるガム質の一つ。ガム質はエンジン故障の原因となりガム量は少ない方が望ましい。燃料油中に含まれる可溶性ガムの量は実在ガム試験の過程から求められる。航空ガソリンの場合は155℃に加熱し、空気を噴射して蒸発させた後の残留物から、n-ヘプタンで洗浄した後に残ったn-ヘプタン不溶物(実在ガム)の量を引いた値を言う。ジェット燃料の場合は232℃に加熱し、水蒸気を噴射して蒸発させた後の残留物から、n-ヘプタンで洗浄した後に残ったn-ヘプタン不溶物の量を引いた値を言う。いずれも試料100mlあたりのmg数で表す。

【カラスフライト】《S》
(1)修学旅行団体を乗せているフライト。語源は学生服の黒とも、あるいはギャアギャア五月蠅い大群から、ともいわれる。
(2)乗務員に管理職が多いフライト。ヒラの乗務員にとってはあれこれギャアギャアと口五月蠅いのが群れをなしているからか?

【かるめあな】[軽目穴]
 砂糖を熱して膨らませたものに穴を開け…違う!骨組みなどの一部に開けた軽量化のための丸穴。なければ重くなってしょうがないが、闇雲に開けると強度や剛性が落ちるので宜しくない。無理なダイエットが危険なのは人間も飛行機も同じだったりする。プラモデルでは全く省略されているかちょっとへこんでいる程度なので、目に付く部分だけでもちゃんと開け直してやると、それだけでかっこよさ2割増(当社従来比)である。なお、丸穴にするのは、角穴などの場合は隅の部分に応力が集中し破壊が始まってしまうので、隅の部分をなくしてこの応力を分散させるため。与圧を行っている飛行機の窓の四隅に丸みがあるのも同じ理由である。

【かんさいき】[艦載機]
 空母での運用を前提として設計された航空機。どんな航空機でも空母から発着できるわけではない。カタパルトに接続するためのバーやフック、着艦した機体を停止させるための拘束具、揺れる空母艦上で機体を固定できるようにフックやリングを設け、着艦の衝撃に耐えられるよう脚周りの強化などが必要とされる。もちろん、狭い艦内に収容できるよう、主翼などの折りたたみ機構も要求されるから、普通の飛行機をちょっと改造したぐらいでは艦載機として使うことはできない。
 だからB52爆撃機を空母に乗せることは、多分できるでしょう。乗せるだけなら。でもそこから飛べるか、とか着艦できるかとなると、これは不可能なんです。人の話をちゃんと聞いてますか?社民党の福島議員。あ、もしかしてB25と間違えたとか…そのネタを知っているとしたら相当なマニアですねぇ。

【かんせいとう】[管制塔]
 航空管制を行うために飛行場に設置される塔。飛行場内で最も高い建造物となる場合が多い。但し、飛行場に必ずあるとは限らない。航空管制業務が行われない場外着陸場などには管制塔がない場合もある。
 先日「そういえば、福岡空港の管制塔って見たことないよな…」と思って探してみたら、空港ビルの一郭にへばりついたような管制塔があった。操車場の信号所みたいで、管制塔というよりあれは管制室だな。

【カンパニーラジオ】[company radio]
 航空会社の業務用航空無線。国内線の場合は超短波無線(VHF)を使用するが、国際線の場合は世界中どこを飛んでいても本社やオペレーションセンターと交信する必要があるため短波無線(HF)を使用し、各地に中継所を設置したり専門の通信会社を経由したりする。
 ラジオはラジオでも「遠い地平線が消えて…」とか言っている航空会社提供のFM番組ではない。

【かんぴん】[官品]
 官給品。国が職員に支給または貸与する、資機材、個人装具、制服などのこと。施設や備品、家賃格安の官舎も含まれる。自衛隊では武器・弾薬、燃料、食糧なども含まれる。…と・に・か・く!国家予算で購入したモノはすべて『官品』である。これが転じて、国家予算から給料が支払われる国家公務員も、彼ら自身が半ば自虐的に『官品』と呼んでいたりする。それ故『官品に手を付ける』とは、制服や部品をネットオークションに横流しするのではなく、同僚との結婚もしくは恋愛関係を指す。半ば非難に近い羨望の眼差しを向けられるのは言うまでもない。 なお、公務員同士の間に生まれた子供も『官品』と呼ぶ。
-き-

【きかんほう】[機関砲]
 銃と砲の境目は、口径20mm以上かどうか、ってことに、現在では一応なっている。口径20mm未満ならばそれは銃、20mm以上ならばそれは砲である。この定義には国や軍や時代などによって多少の違いがあり、旧帝国海軍では口径20mm以下を銃としていたようである。だから、零戦が積んでたのは20mm機銃で、ファントムやイーグルが積んでいるのは20mmガトリング砲(バルカン砲)である。
 機関砲ってのはだから口径20mm以上の機関銃のことで…あれ?20mm以上は銃じゃないんだから…え〜と、こういうときはどう言ったらいいんだ?ややこしいなぁ…。

【きじゅうそうしゃ】[機銃掃射]
 機載機関銃による対地攻撃…と普通の辞書なら書くところだが、地上を逃げ回る人や車両を撃つお遊びで、戦術的な意味はほとんどない。対空砲の餌食になるのが関の山である。戦時中、面白がって追いかけ回しているうちに日本機に撃ち落とされたアホなムスタングは数知れず。日本本土で撃墜された米軍戦闘機のほとんどは『お遊び』に夢中になった結果だという。戦闘中に遊んでるような阿呆は自業自得である。
 戦時中に登戸(川崎市)の山中で機銃掃射された経験者の話では、最も怖いのはB29で、後ろから追いかけて撃ってくる、物陰に隠れても旋回機銃が撃ってくる、上空を通過しても今度は後部機銃が撃ってくる…戦略爆撃機が戦略的に何の意味もない小学生相手に何やっとるか…。

【きちこうつう】[基地交通]
 青森県三沢市のタクシー会社。正しくは三沢基地交通有限会社。小型車11台の、三沢で最も小さなタクシー会社だが、侮ってはいけない。三沢基地内に乗り入れることができるタクシーはここだけである。乗客に三沢基地への立ち入り資格があれば、飛行場地区を除いて乗り入れが可能。もちろん電話で基地内に配車してもらうこともできる。それどころか基地内で客待ちをしている。基地の外では普通のタクシーなので、誰でも乗れる。

【キッス ランディング】
(1)ふゆの仁子の航空Boys Love小説。(命が惜しければ、間違ってもや○いなどと呼んではいけない!)ビブロスから1998年11月20日に発行されている。『空を翔る男たちの甘く切ない恋を描く、パイロット・ラブ決定版!』だそうである。同シリーズに『ミッドナイト ラブ フライング』『管制塔のラプンツェル』『ヘヴンズアプローチ』がある。但し、編者は読んだことがないので、これ以上のコメントは避ける!

(2)ショックのないスムーズな着陸。うまい人になるとタイヤが接地しても煙ひとつ出さない。理想的な着陸なのだが、カメラを構えて着陸した瞬間の白煙を狙っていても拍子抜けしてしまう。

【きどうしゃ】[起動車]
 ディーゼルカー、ってそれは気動車である。エンジンを起動させるときに使う圧縮空気を供給するクルマ。航空自衛隊ではF-4用に2tトラックにコンプレッサを積んだものがあるし、大型旅客機用だとガスタービンエンジンを積んだ起動車なんてのもある。もっとも、最近の飛行機は補助動力装置などを使って自力でエンジン起動ができるものが多いから、だんだん出番は少なくなってきている。ちなみにT-4のエンジン起動時に接続されている作業車は、T-4にエンジン起動のための電源を供給する電源車で、起動車ではない。

【ギブアウェイ】[give away]
 搭乗記念品。ビニール風船の飛行機とか、絵はがきなど、景気のいい時代にはプラモデルもあった。小さい頃、家族で乗ったフォッカーF27フレンドシップの機内で、弟は大いにぐずってボーイング727の風船飛行機を手に入れ、大人しく下界を眺めていた私には何もくれなかった。黙っていては何ももらえない、それがギブアウェイ。
 余談だが、三つ子の魂百までとはよく言ったもので、弟は相変わらず飛行機嫌いである。

【ぎまんし】[欺瞞紙]
 敵の電探を欺瞞する銀紙…要するにチャフ。日本軍の呼称。→チャフ

【ぎゃくガルよく】[逆ガル翼]
 正面から見た断面がW型になる翼。滑空するカモメの翼の形と逆なので『逆ガル翼』である。W字の中央に胴体が付く形になる。翼の最も下がったところに脚を付けると、脚柱を短くでき、胴体下のクリアランスも大きくとれるので整備性や弾薬装備時の作業性が向上する上、大直径プロペラが装備できる、とうれしいこといっぱい。なんつってもスタイルが優雅である。レシプロ攻撃機に多かった。旧帝国海軍最後の艦上攻撃機、愛知B7A2流星改、米軍コードネームGraceが逆ガル翼機の代表格である。もうかっこいいかっこいい!…コルセア?何それ?どこの飛行機??

【ぎゃくすいりょくそうち】[逆推力装置]
 一般に『逆噴射装置』と呼ばれるもの。まあ確かに、こちらの方が意味としては正しいとは思うし、プロペラ機がプロペラのピッチを逆転させて逆噴射、ではおかしい。とはいえ、何か取って付けたような印象があるな…。→スラスト・リバーサ

【ぎゃくふんしゃ】[逆噴射]
 正式には逆噴射を『逆推力』逆噴射装置を『逆推力装置』と呼称している。着陸後にジェットエンジン内部または噴射口直後を整流板などで閉塞し、推力方向を逆転させる減速方法。
 とある事故をきっかけとして、広く一般にネガティブなイメージが広まってしまったため、通は『リバース』と言い、逆噴射装置を『スラストリバーサ』または『リバーサ』と呼ぶ。1982年には「機長!何するんですか!」と共に流行語となり、1984年には「ゴーマンかまして、よかですか」の小林よしのり原作、小林克也、植木等、工藤夕貴らの出演で『逆噴射家族』なるドタバタギャグ映画まで作られている。飛行機とは全く関係のない映画だったが…。

【ぎゃくふんしゃそうち】[逆噴射装置][thrust reverser]
 →スラスト・リバーサ

【ぎゃくラン】[逆ラン]《F》
 大阪(伊丹)空港の、Runway14使用時。普段のRunway32使用時とは逆になるのでこう呼ばれる。台風通過直後など年に数回程度しかない。

【きゃたつ】[脚立]
 梯子を山型に組んだ踏み台。この上に乗っかって、前にいる人の頭越しや、フェンス越しに写真を撮るために使う。フェンスの近くに立てると、警官がすっ飛んできて職質される…当たり前である。周りから見れば邪魔くさいことこの上ない。脚立を使うなら、家にあった大型の脚立で間に合わせるのではなく、コンパクトな二〜三段脚立を専用に用意するべきである。小さな脚立は椅子代わりにも、肘を置いて手ぶれを抑えるのにも使える。飛行機は頭の上を飛んでるものだから、その程度の脚立で充分。大荷物で機動力を失うのは愚の骨頂である。余談だが、小松基地航空祭の名物が、観客エリア最前列に林立する脚立である。他の基地ではこれほどの光景は見たことがないので、これはもう百万石の恥と言ってしまっても良いだろう。

【キャットこうくう】[CAT航空]
 1950〜60年代、台湾のナショナルフラッグキャリアであった民航空運公司のこと。1960年代、日本交通公社(現在のJTB)発行の時刻表における表記。→CAT(1)

【キャブ】[CAB]《F》
 あ、それは、『キャブ』ではなく、『シー・エー・ビー』と読みますよ。→CAB

【キャリー・オン】[Carry on]
 Carry on baggage。機内持ち込み手荷物。座席の下に収まる程度の大きさで、お一人様一個まで。但し、帽子、コート、傘、カメラ、杖は数に含めない。最近よくあるキャスター付きバッグには機内持ち込み制限の寸法内に収まるものが多いけれど、航空会社によってこの寸法が多少異なるから注意が必要…と言っても、最近の航空会社は一部の非常識な乗客とのトラブルを避けるために、かなり制限を超過した荷物でも持ち込ませてしまっているようで、手荷物検査場や機内が大荷物で大混乱になることもしばしばである。機内にスーツケースを持ち込んだバカと、持ち込ませたアホな航空会社には驚いたぞ。カメラバッグは機内持ち込み制限の寸法を超えていても、モノがモノだけに航空会社が預かりたがらないから、機内持ち込みになる場合が多いな。機内持ち込み手荷物の寸法制限なんて、今やあってなきが如しである。困ったもんだ…って困っているのは乗務員と良識ある一部の乗客だけなんだから、ホントに困ったもんだ。

【ギャレイ】
 簡易調理室。調理済みの機内食を温めてお出しするだけなので、いわゆるキッチンとはかなり趣が異なる。ガスコンロも食器洗い機もIH調理器もまな板もなく、機内食を温めるのは電子レンジではなくオーブンである。電子レンジ(英語でマイクロウェーブ・オーブン)は航空電子機器に影響を及ぼす虞があるので、機内で使われるようになったのは航空機搭載用の機種が開発されて以降、つい最近になってからである。ギャレイは貨物機のコクピットのすぐ後ろにもあったりするのだが、こちらはホントにお印程度で、おしぼりウォーマーをオーブン代わりに使うのだそうだ。貨物機にはキャビンアテンダントなんか乗っていないから、キャプテンといえどもセルフサービスで、しかもおしぼりウォーマーだから弁当を温めるのに30分近くかけてようやく、いただきます。である。侘びしいよなぁ…。ギャレイといえばロシア空軍のSu-34攻撃機にも付いていて、弁当を入れておく冷蔵庫とオーブンがあるそうだ。トイレも付いてるそうだから、後はトラベルポッドに寝袋とテントと釣り竿でも押し込んでおけばキャンプに最適のなかなか楽しそうな攻撃機だな…。いくらなんでもサモワールが湯気吹いていてその横にジャムが一瓶、ってことはないと思うのだが、資料の少ないロシア機のことだから、あるいは…。

【ギャレリーナ】《S》
 ギャレイ(調理室)担当のキャビンアテンダント。比較的経験の浅い乗務員が任されるようである。ギャレイの高い棚から、つま先立ちで物を取ろうとする姿が語源とも、どこに何があるかわからずギャレイの中でくるくる回っているからともいわれる。

【ギャング・オブ・エイト】[Gang of Eight]
 ボーイング777の共同開発(working together)に参画した、ユナイテッド、アメリカン、デルタ、英国航空、日本航空、全日空、クァンタス、キャセイ・パシフィックの8社の航空会社のこと。

【キャンディーライト】《S》
 夜間、タキシングする航空機を誘導する際に使用するライト。アイスキャンディーに似ているのでこう呼ばれているようだ。右手に赤、左手に青のライトを持つ。なお、工事現場の警備員や事故現場の警察官が持っている赤いライトはニンジンと呼ばれる。ついでにアイドルのコンサートで観客が振っている小さなライトはサイリュームと言い、アメリカのCyanamid社が開発した化学発光体。米空軍などでもマーカーライトとして使われているので、航空機とは全く関係ない、というわけではない。名前は似ているけどサイリウムはオオバコの種である。

【きゅうめいどうい】[救命胴衣]
 不時着水の際に着用し、漂流時に使用する器材。船舶用の場合は浮力材に発泡スチロールなどが使われるが、航空機の場合は内蔵ボンベからガスを注入して浮力を得る『膨張式ライフベスト』が主に使われる。座席の下にあるはずなので、着席したらまず確認しよう。乗客を乗せる前に確認している筈だが、離島路線などでは隣の乗客が「釣りの時にちょうどいいや」と、あなたが搭乗する前に『失敬』している場合もある。→ライフジャケット・ライフベスト

【きょうだいごろし】[兄弟殺し]《S》
 ミサイルが、味方の発射した他のミサイルの爆発に巻き込まれて撃破されてしまうこと。あるいは、赤外線誘導ミサイルが、味方の発射した他のミサイルを追いかけ回してしまうこと。間抜けである。

【きょうどうげきつい】[協同撃墜]
 
数機がかりで撃墜すること。良く言えば『部隊の全力を挙げて』悪く言えば『寄ってたかって袋叩き』で撃墜すること。戦争は数だ!物量だ!文句あるか!

【きょくちせんとうき】[局地戦闘機]
 旧帝国海軍が防空任務に使用した、いわゆる『要撃戦闘機』のこと。本来海軍戦闘機は攻撃機隊の護衛が任務なので長大な航続距離を要求するものだったが、局地戦闘機は海軍基地や根拠地の防衛用戦闘機なので、航続距離よりも上昇性能や速度性能に重点を置き、名称も『局地』戦闘機として分けている。
 本土防空は陸軍機の担当だったので、局地戦闘機は横須賀、舞鶴、呉、佐世保周辺などの海軍根拠地防空を主任務としていた。陸海軍ともこの期に及んでもまだ縄張り優先だったことに、呆れるより先に驚かされる。本土防空をテーマにしたコミックに海軍機がほとんど登場しないのは、この縄張りによる制約が大きくて話が作りづらいのだろう。

【キング・オブ・ハンガー】《S》
 ハンガー(格納庫)のヌシ。飛行可能な機体ならばハンガーでヌシになっていることはない。よ〜するに故障続きでハンガーに居着いてしまっている機体のこと。ダメじゃん…。

【きんせつしんかん】[近接信管]
 目標への接近を検知して作動する信管。VT信管、あるいはVTフューズとも呼ばれる。砲弾から電波を発信して、目標に当たって反射した電波を捉え、点火回路を作動させて砲弾内の炸薬を爆発させ、弾片を撒き散らして周囲にいる目標を撃破するもの。原型は第2次大戦末期に米軍が実戦使用したもので、電子回路は真空管式。砲弾発射時の衝撃から真空管を保護するため、回路ごとエポキシ樹脂で固められていた。米軍は、近接信管の構造が日本軍に知られるのを恐れ、当初、近接信管砲弾の使用を洋上に限定したが、後に「どうせジャップには作れまい」ってんで陸上での使用制限を解除している。全くその通りだ。何も言い返せない…。

【ぎんはがし】[銀はがし]《F》
 模型で、塗膜が剥がれて外板の銀色が露出してしまった状態を再現すること。大戦中の日本機を再現するには必須とも言われる。大戦中の日本機は塗料の質が余り宜しくなく、すぐに剥がれてあちこちジュラルミンの地色が顔を出していた。ひどいのになると風防フレーム丸ごととかパネル丸ごと無塗装になってしまったものもあり、当時の日本の基礎的な工業水準が如何に低かったかを物語っている。補給も滞ってタッチアップ用の塗料どころじゃなかったんだろうな。とはいえ暗緑色に銀色はとても目立つため、実機同様にやってしまうとみすぼらしいだけなので、程々にしておこう。搭乗時に踏まれるところやベルトのバックルが当たるところ、開閉・着脱する場所のまわりや工具が触れるところなどにごく軽く銀を乗せる程度で十分だと思う。敵味方識別帯(主翼前縁のオレンジの帯)や日の丸は割とこまめにタッチアップをしていたのか、比較的塗膜が強かったようで、ここで銀色が顔を出していた機体はまず見られない。普通に塗装した上から銀色のエナメル塗料などで、あたかも塗料が剥がれたように塗装する方法が主流。よって正確には銀乗せとでも言うべきだろう。クリアデカールに銀を塗ったものを、水に濡らして台紙から剥がしたあと、粉々に砕きながら貼り付けてゆくという方法もある。

【ぎんバス】[銀バス]
 車体が銀色のバス…って、飛行機に関係ないじゃんというなかれ。終戦直後、軍や航空機メーカーがストックしていた航空機用の銀のペンキが大量に放出され、各地のバス会社にまわってきたのが、いまでもあちこちで見られる『銀バス』の発祥といわれる。(東急とその系列のバスは、ステンレス製電車に合わせて銀色に塗っている)ダークグリーンの塗色も、軍が放出した航空機用塗料がきっかけというところは多く、一部では鉄道車両にも見られた。こうして意外なところで意外なものに繋がっているから、世の中っておもしろい。
-く-

【クァンタス】[QANTAS]
 →QANTAS

【くうかんしきしっちょう】[空間識失調]
 パイロットは『バーティゴ』と呼ぶ。医学上はSpatial Disorientation(スペシャル・ディスオリエンテーション)と呼んでいる。空間識とは上下左右や、傾斜などへの感覚。案外いい加減な感覚で、傾いた場所に長時間いたりするとその傾きが認識できなくなったりする。これが空間識失調。激しい動きをすれば容易に短時間で空間識失調に陥る。例えば、ジェットコースターを降りた直後に、地面の感触がおかしいと感じるのは、耳の奥にあって平衡感覚を司る器官、三半規管の内部にある液体が加速度によって動き回ってしまうことで、三半規管が感知している『水平』が狂ってしまい、実際の地面の『水平』の間に微妙なズレが生じてしまうからで、空間識失調の身近な実例といえる。景色が見える昼間ならば空間識失調に陥っていることに気づきやすく容易に回復できるのだが、夜間などでは空間識失調に陥っていることに気づきにくく、回復にも時間がかかり、甚だしい場合、星明かりと船舶の灯火を見間違えることさえある。パイロットがこのような状況に陥るのは極めて危険であることは言うまでもなく、基礎訓練の段階から『自分の感覚より計器で確認』をたたき込まれる。
 余談だが、水平飛行中の旅客機が機種を上げているように感じるのは、本当に機首が上がっているから。ほとんどの旅客機では水平飛行中でも機首が2〜3度上向くのが普通で、パイロットが空間識失調に陥っている訳ではないのでご心配なく。

【くうこうあくせす】[空港アクセス]
 空港への交通手段。古くは航空会社が地元バス会社と契約して空港と市内営業所の間に送迎バスを走らせていた時期もあったが、大型ジェット機の登場と共に消えていった。札幌などでは路線バスになってもしばらくは『日航支店経由空港ゆき』と『全日空支店経由空港ゆき』の二通りがあって、それぞれの発着便に合わせてダイヤを組んでいた。現在でも『○○航空△△支店前』というバス停の多くはこの時代の送迎バスの名残。市内営業所が送迎バスの待合室を兼ねていた。シティエアターミナルの原型みたいなものである。
 昔話はさておき、鉄道など大量輸送手段を導入できる空港は数少なく、千歳、東京、大阪、福岡などに限られ、多くの場合バス輸送などに依存せざるを得ない。満席の747-400Dから降りた乗客を輸送するにはどう考えても10台以上の大型バスが必要となり、瞬間的には鉄道が必要な規模だが一日平均で均すと鉄道では到底割に合わない場合が多い。それでも鉄道が導入できるケースは空港近くに既存の路線がある場合に限られ、空港駅の設置費用の一部を地元自治体に求め、列車の発着地を既存の市内駅から空港駅に延長して運行経費を浮かせるなどしている。767クラスが一日数便程度の規模の空港だと、バスでさえ発着便に合わせて運行するようになる。
 さて、バスの話のついでだが、空港行きのバスに乗り遅れた場合でも、すぐ近くの別のバス停から別のバス会社が空港ゆきバスを走らせている場合が、西鹿児島駅前発鹿児島空港行きなどいくつかある。30分待たねばならない場合に、徒歩5分のバス停から15分後に発車するバスを見逃す手はない。乗り遅れないように余裕を持つのが第一だが、予め次善の策として乗り場やダイヤをチェックしておくことをお勧めする。

【くうこうせいびとくべつかいけい】[空港整備特別会計]
 新空港建設や既存空港の整備・改良にかかる費用を、既存の空港から得られる着陸料や、航空燃料への課税などによって得られた財源によって賄う手法。悪名高い高速道路の『プール制』とまったく同じ考えで、新しい空港を作り続ける限り着陸料や航空燃料税が下がることはない。新設される空港が利用価値のある空港なら良いのだが、需要が低かったり、近隣に大規模空港がある場合などは収益が上がらず、会計全体を圧迫するのも高速道路の図式とまったく同じ。一般会計からの支出は空港整備特別会計全体の16%程度に抑えられるが、燃料税、着陸料とも高額なものとなり、それらは航空運賃や、航空機で輸送される商品の価格に反映され、誰も使わない空港建設費用が最終的に消費者の負担となる。日本の着陸料と航空燃料税は世界でも比類ない高額で、外国航空会社の中には日本路線を維持できず撤退のやむなきに至るケースも多く、こうした航空会社は近隣の韓国、香港などに続々と新設されている巨大空港へと路線をシフトしている。外国の航空会社が逃げるだけならまだしも、同様に、あるいはそれ以上に日本の航空会社の国際競争力を奪っているということでもあり、決してヨソの国の話では終わらない。空港整備特別会計による高額な着陸料と燃料税は、徐々にではあるがアジア地域における日本の空港の存在価値を落としているのが実情であり、こうした動きは国内産業にも影を落とそうとしている。空港整備特別会計は、航空機が一部特権階級の利用する『贅沢品』だった頃の名残であり、基幹交通として成長した今日、もはや存在する理由は全くない。

【くうこうようかがくしょうぼうしゃ】[空港用化学消防車]ボタン 解説画像を別ウィンドウで表示
 飛行場の化学消防車。そのまんま。離着陸に失敗するなどした事故機から乗員を救出するために、脱出路を確保し、後続してやってくる応援の消防車が事故機に接近するルートを啓開するための消防車。自衛隊では破壊機救難消防車と呼んでいる。最大のものではオーストリア製の総重量40t…ってJRの機関車並だぞ!最高速度140km/h、搭載している消火剤と水は12.5tで8輪駆動、0-100km/h加速25秒、放水用と走行用に2台のエンジンを積んでいるパンサーってやつがいる。場合によっては数キロ先の現場へ、事故機が掘り返した不整地を乗り越え、フェンスを蹴倒していち早く駆けつけ、内蔵しているタンクの消火液を放水して、ぶちまけられた燃料で火の海になっている事故機から乗員の脱出路を確保するためにこれだけの性能が必要とされている。飛行場の規模によって常備すべき消防車の性能と台数は、ICAOの第14議定書に定められている。2005年を期限にその規定が改正され、消防力の強化が要求されているので空港管理者(日本では多くの場合、自治体である)は乏しい予算で一台4億円もする消防車の調達と、運用・維持に当たる人員の確保に頭を抱えている。そういう問題もあるから空港を維持するってのは大変な仕事なんだが、空港作るぞって騒いでいる静岡県や神戸市はホントにわかってるのかな?もちろん、いくら強化したといってもその程度の台数(多くても3〜4台)で航空機火災を鎮圧できるわけがないので、周辺の消防署から消防車がおっとり刀で駆けつけてくるまでのつなぎである。管轄内に飛行場がある消防署にも同様の性能を持つ消防車を常備していたりする。もちろん何事にも抜け道ってのがあって、軽飛行機しか降りられないような小さな飛行場では消防車を常備しなくてもいいことになっているし、広い世界には航空機発着時だけ、ジャンボジェット相手に島でたった一台の消防車、しかも普通のポンプ車が村の消防署からやってきて待機しているって恐るべき実例もある。

【くうせいとくかい】[空整特会]
 →空港整備特別会計

【くうたいくうれんらくつうしんようしゅうはすう】[空対空連絡通信用周波数]
 文字通り航空機同士の交信に用いる周波数。VFRで飛行している航空機、特にマスコミの取材機が取材現場上空で使う場合が多い。122.6MHzが割り当てられている。

【くうちゅうしゅうごうもくひょうき】[空中集合目標機]
 第2次大戦中、ドイツを爆撃する連合軍の爆撃隊を纏める目標物としてイギリス上空に飛ばした飛行機。損耗して実戦では使えなくなった爆撃機を修理して、遠くからでもよく目立つように赤や黄色、水玉模様にストライプといった塗装を施して、信号灯まで追加した派手な飛行機を集合空域で旋回飛行させておき、飛行場を飛び立った爆撃隊の集合場所としていた。爆撃隊の編成が完了すれば集合目標機は任務完了なので、あとは爆撃隊を見送って基地に帰るのが日常。気楽な稼業ときたもんだ。これがなかった頃は、ヨソの爆撃隊に紛れ込んでしまう爆撃機や、集合場所を見つけられなかった迷子爆撃機が続発し、とてもじゃないがお話にならなかったようだ。なお、日本を爆撃するB29の爆撃隊は航続距離に余裕がないこともあり、集合目標機は使われなかった。隊列組んでる暇はない、離陸したらそのまま東京へGo!である。

【くうちゅうほこうき】[空中歩行器]
 旧帝国陸軍がかの有名な風船爆弾の爆弾の代わりに人をぶら下げ、敵の後方に音もなく降下させようと画策した代物。満州北部で対ソ戦に備えて部隊編成までは行われていた。風船爆弾の風船だけでは人を浮かせるのには浮力が足りないので、一回り小さい風船を手にして上昇し、降下地点で手にしていた風船を離せば着陸できると考えた。音もなくレーダーも反応しない究極のステルス兵器だが、最大の欠点は風まかせだということ。いかにも神風頼みの軍隊らしい発想である。で、風船でぷかぷか飛んできた兵隊さんがやたら頑丈なソ連戦車とどうやって戦うつもりだったのか、これまた今ひとつ謎である。

【くうちゅうゆそういん】[空中輸送員]
 日本国政府専用機の客室乗務員。日本航空で訓練を受けた航空自衛隊員が勤める。それにしても日本語の航空関連用語の中で最も変なことばだ、何とかならんものかね…。

【くうていグライダー】[空挺グライダー]
 第二次大戦中に使用された輸送用のグライダー。輸送機に曳かれて飛び、ワイヤーを切り離して敵の背後や側面に強行着陸し、部隊を展開させる目的で使用され『強襲グライダー』とも呼ばれる。パラシュート降下のように、兵隊や装備をあちこちにばらまいてしまう心配はないし、車両や火砲などの大物を輸送できるが、降下場所は飛行場並みに広い平地が必要なのが欠点。グライダーとは言っても、サーマルを捕まえて上昇し、どこまでも飛んで行けるように作られたグライダーではない。着陸させるためだけのグライダーなので、牽引機から切り離されると高度はどんどん落ちて行く。輸送機が重いグライダーを引きずって敵の頭上を飛ぶので、圧倒的な航空優勢も不可欠である。現在では『ヘリボーン』という、ヘリコプターを使用して部隊を投入する方法がこれに代わっている。

【くうぼゲーム】[空母ゲーム]
 正式には、『エポック社の空母ゲーム』という商品名。1965年頃に780円で販売されていた。スタンドから伸びたアームの先に飛行機のおもちゃが付いていて、これをモーターでぐるぐる回しコントローラで上下動させ、飛行甲板を模した板の上に『着艦』させるというもの。飛行機にはアレスティングフックがあり、飛行甲板には制動索のみならず艦橋も装備されていた。制動索は一本しかなく、しかも着艦進入は弧を描きながら行うため、難易度は想像以上に高そうである。今日隆盛の栄華を極めるフライトシミュレータゲームの嚆矢とも言える。

【くさりやすい】
 南西航空(現在の日本トランスオーシャン航空)で、生鮮食品の貨物に貼り付けられたステッカー。色はブルーで魚の絵が描いてあり、ひらがなで『くさりやすい』…う〜ん、わかりやすい。

【グッデイ】[good day]
 お別れのご挨拶の中でもごく軽いもの。「またね」「よい一日を」ぐらいの感じである。無線交信の用語として定められているわけではなく、通話に入れなくても構わない。ま、挨拶は大事だよな。オーストラリアの人は「グッダイ」と発音する。なお、日没以降は「Good night」も用いられる。
「ジャパンエア・ナイナ・ズィーロウ・トゥリー・コンタクト・ディパーチャー」
(日本航空903便はディパーチャー担当の管制官と交信せよ)
「コンタクト・ディパーチャー・ジャパンエア・ナイナ・ズィーロウ・トゥリー・グッデイ」
(日本航空903便はディパーチャー担当の管制官と交信します。さようなら)
「グッデイ」
(はいはいさよなら。あと4機出さなきゃなんないんだから、いらんこと言わすな)

【グッド・ラック!!】[Good Luck!!]
 2003年1月19日から3月23日まで、全10話、毎週日曜日21:00〜21:54(第1話と最終回のみ15分拡大し22:09まで)にTBS系列で放映していた木村拓哉主演の航空ドラマ。全日空の全面協力で撮影されている。TBSの航空ドラマはアテンションプリーズ以来日本航空の独壇場で、全日空の協力というのは非常に珍しい。エキストラの多くは休日出勤で駆り出された全日空の本職である。乗務員が役者で乗客が全日空社員というのもあったらしい。撮影当日に木村拓哉が来るかどうかで出演希望者が大幅変動し、木村拓哉が出ない時のエキストラ確保には苦労したという話もある。内容はと言うと、羽田空港が成田空港を演じていたり、B767がB747を演じていたり、緊急脱出訓練では膨張式シューターの下にセイフティネットやクッションなどの安全策が施されていなかったり、ラバトリーの漏電一つでキャビン全コンパートメントの全電源がダウンしてしまう(しかも配線が焼けるまでブレーカーが落ちない!)とか、ぶっちゃけいろいろと不思議な点はあるが、そんなこと気にしていたら、二時間ドラマの十津川警部シリーズなんか、もう見てられないぞ。昨今ではなかなか見ることのできない場所にカメラが入ったことだけでも、まずは素直に喜ぶとしよう。こんな御時世に、手間ばかりかかってマニアから難癖に近い文句ばかり付けられる航空ものに、あえて手を付けた心意気にも拍手である。城南島で太陽に向かって手を伸ばすシーンは涙ものだったぞ。最終話のRUI、じゃなかった柴崎コウもカッコよかったしな。コクピットのセットが少々ショボかったのは残念ではあるが、わざわざ作った心意気は買おう。キムタクみたいなパイロットはいるわきゃないが、竹中直人みたいなキャプテンと安住純一郎みたいなコパイは、実際いそうであるし、内山理名みたいなCAなら、あの会社にはB767Fの最大貨物搭載量ぐらいはいる。ユンソナ演じる隣室の謎の女性が、実はチャイナエアラインのキャビンアテンダントだったというオチも程良い塩梅であった。まあそれはさておき、結局、しんちゃんってのは、誰だったんだ?(…どうでもええが、褒めとんのか貶しとんのか?)
 主題歌は山下達郎のRIDE ON TIME。1980年の曲である。おいおい懐っかしいなぁ…。今の人は知らないかもしれないが、ヤマタツと言えば夏の歌。少なくともクリスマスに新幹線のCMで歌っている人(…これも懐かしいが)などではなかった。沖縄ツアーに生ビール。夏のCMと言えば山下達郎だった。

【グッドラックこうか】[グッドラック効果]
 TBS系テレビドラマ『グッドラック』によりもたらされた様々な現象。全日空の株価が一時的に上がるとか、全日空の整備士募集に女性が大挙して殺到するとか、航空用語を解説しているwebのアクセス数が日曜の夜にやたらと増えるとか(まいどあり)クリスマスでもないのに山下達郎のCDが売れるとか、一部で「ぶっちゃけ」を連発する人が出てくるとか、管制官との交信を終える時に「Good day」ではなく「Good Luck!」と言うパイロットが出現したらしいなど、まあいろいろである。当然、揚力の足しにはならない。

【くにまるくん】
 『空の日』のマスコット。地球に顔が描いてあり、羽を生やして飛んでいる(文章で説明するとわけがわからん…)名前の由来は空の日が9月20日であることに因んでいる。く(9)に(2)まる(0)で、くにまるくんである。なお、はなまるくんは、TBS系列の情報番組はなまるマーケットのマスコットである。カモンはなまるボックス!

【くのいち】《F》
 航空自衛隊百里基地の誘導路の一部で、くの字型に折れ曲がっている部分。百里基地は一部用地買収が完了しておらず、この未買収用地を避けて誘導路がくの字に折れ曲がってしまった。誘導路にシケインがあるのは、世界でも百里基地が唯一…と思ったら、新東京国際空港の暫定滑走路に平行する誘導路にもシケインが登場してしまった。な〜んてこったい!理由は百里基地と同じ。但し、こちらが『くのいち』と呼ばれているかどうかは定かでない。

【グラウンド・ループ】[ground roop]ボタン 解説画像を別ウィンドウで表示
 尾輪式の飛行機が地上走行中、横風を受けたり車輪が異物を踏んだりしたことをきっかけに大きく尾部を振ってしまう現象。尾輪式の飛行機は主脚の後ろに重心があり、ちょっとしたきっかけで大きくお尻を振ってしまう。だから荷物を運ぶ手押し車は前方の車輪が首を振るようになっている。尾輪の真上に垂直尾翼があって、ちょうど梃子の作用点になってしまうことも原因の一つ。前輪式(三輪車式とも言う…現在の飛行機は殆どこれ)の飛行機では、重心は前脚と主脚の間にあるためグラウンド・ループは起こりにくい。

【クラシック】[classic]
(1)…というと、何やらえらく古めかしいものに聞こえるが、ボーイング747のうち、-300以前の機種を総じてこう呼ぶ。外見からはちょっとピンとこないが、-400とのコクピットパネルの違いを見せられると、なるほどと納得がゆく。

(2)旧ソ連(ロシア)の国際線用旅客機、イリューシンIl-62のNATOコードネーム。NATO(北大西洋条約機構)が勝手に付けた識別用の渾名である。NATOコードネームは、用途ごとに頭文字が決まっている他はいいかげんで適当な名前を付ける傾向があるので、生まれた時から既にクラシック呼ばわりである。現在ではIl-62の排気ガスの成分や騒音が西側諸国の環境基準に適合しなくなってしまっているため、西側各国の空港から乗り入れを拒否されている、文字通りのクラシック機になっている。

【クラスターばくだん】[クラスター爆弾]
 集束爆弾。小さな爆弾を束にした爆弾のこと。投下すると落下する途中で小爆弾を束ねているストッパーやカバーが外れ、小爆弾を広範囲にばらまく。トラックの車列とか、飛行場の列線に並んでいる航空機とか、人間様を大量殺戮する場合などに使われる。小さい爆弾なので橋梁や掩体などの堅牢な建造物にはあまり効果がない。小爆弾の中には時限式で忘れた頃に爆発するものとか、触れると爆発する対人地雷の親戚みたいなものもあるので、戦場のお土産にって拾っちゃダメだぞ日本人記者。

【クラスJ】[Class J]
 日本航空版レインボーシート。但し、座席のリクライニングは国鉄末期の特急電車も装備していた腰掛け部分が前にせり出す、あの懐かしの『簡易リクライニング』だし、個人用ビデオモニタもないし、だいぶランクが落ちるぞ。編者の大嫌いな日航は、やっぱり期待を裏切らなかった。→レインボーシート

【グランドスタッフ】
 地上職。空港でチェックイン業務や案内業務、手荷物の取扱などを行う職員。昔は乗客の案内などに当たる女性を特にグランドホステスと呼んでいたが、現在では男女ひっくるめ、グランドスタッフと称している。看護婦を看護師と呼ぶようになったのと同じである。ま、どうでもいいが、女性看護師とかいう変な日本語は何とかならないものかな?それなら看護婦でも別にいいじゃん!

【グランドホステス】
 空港でチェックイン業務や案内業務などを行う女性の職員。略してGH。昨今では男女ひっくるめてグランドスタッフと呼ばれており、グランドホステスという言葉は既に死語となっている。

【クリアランス】[clearance]
 管制許可、あるいは管制承認。無線で「cleard to 〜」と言っているのがこれにあたる。飛行機の離着陸は言うに及ばず、高度の上げ下げ、速度、針路…と、ありとあらゆる動きにクリアランスが必要となり、飛行場内では飛行機がエンジンを掛ける時から作業用の車両を動かす時までクリアランスが必要になる。飛行場には、運用時間中に配置されている管制官の人数が公示されているので、仕事中に管制官がトイレに立つ時にもクリアランスが必要となる。

【クリッパー】[clipper]
 パン・アメリカン航空のコールサイン。そして、パンナム機の愛称名の頭にも『クリッパー』が必ずついていた。『クリッパー』のコールサインを聞かなくなって久しいが、いつの日かまた太平洋を越えて『クリッパー』のコールサインを聞かせて欲しいものだ。
 ちなみにクリッパーとは大型高速帆船のこと。酒の名前として有名な『カティサーク』号も、インドや中国からお茶を運んだ『ティー・クリッパー』(tea clipper)という種類の船。

【グルービング】[Grooving]
 滑走路の水はけをよくするために、滑走路を横切る形で掘られた無数の溝。滑走路の規格によって異なるが、溝の巾・深さはいずれもおおむね6mmほどで、3cm位の間隔で掘られている。

【ぐるぐる】《F》
 レインボーセブンの名を持つ日本エアシステムのB777-200のこと。機体に緩く巻いた帯が回っているのでこの名がある。もうじきなくなるぞ。

【クルビット】
 一定の高度を保ちながら宙返りをする大技。Su-27フランカーのみが可能と言われる。そんな変な飛び方がどんな飛行機でもできるなんて思いたくもないが…。プガチョフズ・コブラで知られるスホーイのテストパイロット、ヴィクトール・プガチョフが成功させた。これができるからって空戦で優位に立てるとか、そういうことはないと思いたいが…。

【クロス】
 プラスドライバーのこと。んじゃ、マイナスドライバーは何て言うんだ?

【ぐんみんきょうようくうこう】[軍民共用空港]ボタン 解説画像を別ウィンドウで表示
 軍用機の基地と民間機の空港を掛け持ちしている飛行場。正確には共用飛行場と言う。日本は飛行場一つ作るのも大騒ぎなので、時として居候を受け入れなければならない場合も出てくる。どちらが居候になるかは、空港の管理者が誰であるかによる。千歳や三沢は民間機が居候。那覇は軍用機が居候である。いろいろな飛行機がいるから見ている分には非常に楽しいが、性能の全く違う飛行機が出入りしているので管制上の悩みも絶えないらしい。意外に知られていないが、福岡空港も軍民共用である。福岡空港に所在する春日基地飛行場地区というエリアがあり、西部航空方面隊支援飛行隊および航空救難団春日ヘリコプター空輸隊がここを本拠としている。 以前、デモ隊のプラカードに「福岡空港の軍民共用化反対」と書かれていたのを見たことがあるが、福岡は最初から共用なんですよ。
-け-

【けいきひこうくんれんちゅうのチャリ】[計器飛行訓練中のチャリ]《F》
 ハンドルに大阪名物傘ホルダーを介して雨傘や日傘を装着し、この状態でケータイを操作しながら走行する自転車のこと。一見するとライトフライヤー以前の羽ばたき飛行機のようでもある。計器飛行訓練は訓練生の前にシェードを降ろし、前が見えない状態で行うのだが、それを大阪では自転車でやっているのである。もちろん飛行機の計器飛行訓練はとなりで教官がちゃんと前を見ているぞ。隣に教官のいない自転車の場合は前なんか殆ど見えていないので、スツーカのサイレンならぬブレーキ音とベルの音で歩行者を威嚇し蹴散らしながら突進してゆく。ついでに言うと、大阪の自転車は車道は絶対に走らない。どんなに狭い歩道でも躊躇なく歩行者に向かって突進するか、歩行者の未来位置を的確に予測してチキンランを挑んでくる、この勇猛果敢さは賞賛に値する。マリンコー(海兵隊員)もびっくりだ。夜間は灯火管制を布き、後ろから忍び寄って一気呵成に突撃してくる。シールズ(米海軍特殊部隊)も真っ青だ。長年にわたりひったくり件数日本一を誇る大阪府の面目躍如である。
 で、こういうこと書くと、関西の商人文化がどうとか、いらちが何だとかいちびりがどうとか言って丸め込もうとするんだ。大阪人は…。せやろ?

【けいこうくうき】[軽航空機][Lighter than air aircraft]
 時折、Light than air aircraftと訳している航空書を見かけるが、正しくは比較級Lighterである。うっかり引っかかってしまったぞ…ちょっと考えればわかりそうなものなんだけどね。それはさておき、軽航空機とは「飛行中の揚力を主として空気よりも軽い機体を容れた容器の浮力から得るすべての航空機をいう」と、耐空性審査要領には示されている。要するに、ヘリウム、水素、熱した空気などから浮力を得る気球や飛行船のこと。LTAとも言う。軽航空機の定義に機体の重量は一切関係ない。故に軽飛行機は重航空機に属し、軽航空機ではない。
 余談だが、飛行船は空気よりも比重の軽いガスによって得る浮力と、船体の涙滴型の形状が前進することによって生み出される揚力を併用して空を飛び、気球はガスや熱した空気のもつ浮力だけで空中に浮くという、大きな違いがある。飛行船はガスの浮力だけで飛んでいるのではない。ガスによる浮力は、飛行船の比重が空気の比重より若干重くなるよう調整されている。人や荷物を飛行船から降ろす時は、その分重りを積んでやるのである。ガスの浮力だけで空中に浮かんでしまうと、降下する際にはガスを放出しなければならないし、ガスを放出したら今度は再上昇ができなくなってしまう。ガス気球の欠点がまさにこれである。飛行船の推進機構は空中で自由自在に動き回るためだけでなく、揚力を作り出す源として、飛行船には不可欠なものである。

【けいたいでんわ】[携帯電話]
 機内では電源を切りましょう。ドイツでは、機内での携帯電話使用は違法行為として処罰されます。ボタンがむき出しの機種は、電池を外しましょう。電源が入っているだけでも航空機の機器に影響を及ぼす恐れがあります。自分のためです。と、言った後でこういうことをいうのも何だけれども、ポーダブル家電製品に新しいものが出るたびに、機内使用禁止品目もどんどん増えてゆく。携帯電話ひとつ、MDプレーヤひとつで『影響を及ぼされる』ような航空機が、対策と言えばせいぜい『機内使用禁止』ぐらいで、数百人もの人を乗せて、何万人もの人々の頭上を平然と飛ぶことのほうがよほど問題なのではないだろうか?

【けいトラ】[軽トラ]
 排気量660cc以下のトラック。飛行場は広大なので、ちょっとした荷物運びに便利である。とは言っても身長2mはありそうな米兵(名古屋のリサイクルショップ、コメ兵ではない)が運転していると、不思議な光景ではある。よく乗れたな…。

【けいねんき】[経年機][aging aircraft]
 航空機メーカーが安全性を保証する期間の目安として定めた『運用寿命』を超えた航空機。英語ではエイジング・エアクラフト(aging aircraft)と呼ばれる。機種によって異なるが、おおむね就航から20年以上を経過した航空機を指すと考えてよい。ボーイング747の場合では、就航から20年以上、飛行回数2万回以上、飛行時間6万時間以上のいずれか一つでも該当する機体を指す。
 機体は常に与圧や荷重による負荷にさらされ、周囲の環境によって素材自体も変質してくる。点検・整備を確実に行えば経年機でも問題はないというが、新品の航空機よりも頻繁に、しかも広範囲にわたる慎重な検査を行う必要があり、古いものを長く大切に使うのも、時と場合によりけりである。
 1981年の台湾・遠東航空機事故、1988年のアロハ航空機事故(飛行中に機体の上半分が吹き飛んだ、余りにも有名な事故)などは、経年機に起きた腐食や金属疲労に端を発する機体破壊が原因とされている。

【けいりゅうききゅう】[係留気球]
 地上にワイヤーで繋がれた気球。第一次大戦中には敵陣を偵察したり、ロンドン上空に揚げてツェッペリン飛行船による爆撃を妨害したりと活躍したが、飛行機の性能が向上するに連れてひも付きの空飛ぶガス袋はお役ご免となり、その後は主にアドバルーンとして用いられた。そのアドバルーンも最近見ないねぇ…。最近の係留気球の使い道では、アメリカ財務省がアメリカ・メキシコ国境付近にレーダー付きの係留気球を上げている。小型機を使った中南米からの麻薬密輸を監視するためのものだそうだ。

【ケータリング】
 機内食を調理して、機内に積み込むまでの業務を指す。というと何やら仕出し弁当屋さんみたいだが、最近は仕出し弁当屋さんも『ケータリング業』というカテゴリにくくられているから、まあいいか…。地方空港発の便では地元のホテル、レストラン、駅弁屋さんなどが航空会社と契約している場合もあって、仙台空港は仙台駅の駅弁屋さん、伯陽軒、新潟空港は新潟市中心街のホテル、万代シルバーホテル、福岡空港では『ロイヤルホスト』の母体でもあるレストラン、ロイヤル、鹿児島空港ではデパートの山形屋といった例もある。成田や関西のような多くの国際線を抱える巨大空港では、さすがに自社系列や整備委託先航空会社系列などの機内食ケータリング専門業者と契約を結んでいる。
 ○○航空の機内食はうまいとか××航空は…とかいうが、実は作ってる業者はどの航空会社もみな同じとか、往復で業者が違うなんてこともよくある話。機内食の味ははケータリング会社の腕もさることながら、航空会社がケータリング会社に、一食あたりどれだけの金を払っているかでも大きく左右されてしまう。

【ゲートガード】
 保存機。特に基地正門付近に飾ってあるものを言う。ゲートガーディアンとも言う。能登半島の先端の、山奥のレーダー基地に、ゲートガードとしてF104が飾ってあって、驚いた驚いた。どうやってここまで持ってきたんだ。(そこまで行く道を知らないと、わからないネタである)

【げきようき】[劇用機]
 映画やドラマに使われる航空機。カメラプレーンではなく出演している航空機である。零戦がT-6テキサン改造なんてのは非常に良心的で、シュペルピューマそのまんまのハインドとか、どう見てもT-38タロンにしか見えないミグ(…としか言ってない)とか、音速を超えることになっているベル222とか、突拍子もない設定や機体で観客に驚きを与えてくれる。いやぁ、映画って、本当にいいもんですね。

【げたばき】[下駄履き]
 水上機のこと。機体下に『フロート』(浮舟)を装着している飛行機なので運動性能はすこぶる悪い。旧帝国海軍は、占領した島々にいちいち飛行場を造る手間を省く、あるいは飛行場ができるまでのつなぎにという理由でこの下駄履きの飛行機を大量に装備しており、その中には『水上戦闘機』という下駄履きの戦闘機もあった。ヨソの国では1940年代にもなると、殆ど絶滅したレッドブック級の機種である。運動性能の悪い下駄履きの戦闘機というのは日本軍の抱えていた矛盾をそのまま形にしたとしか言いようのない代物で、パイロットを無駄に消耗するだけだったのは言うまでもない。ジャングルを啓開して飛行場を急造するだけの機械力が揃わなかったためだが、要するに正面装備偏重だったということ。必要だったのは水上戦闘機ではなくジャングルを啓開するブルドーザだった。現に、米軍はそうした。上陸直後のまだ彼方で銃声が聞こえる中、機械化された工兵部隊を大量に投入してジャングルを啓開し、まさに『一夜にして』飛行場を出現させたのである。但し、その米軍も戦後になって、日本が持っていた水上戦闘機を「いいなぁ…」と思ったかどうかは知らないが、ジェット水上戦闘機『シーダート』なるものを作っている。さすがに下駄履きにはせず、飛行艇にハイドロスキー付きと進歩はしているが、他人の失敗は教訓にならないという見本に変わりはないな…。
 旧帝国海軍の水上機は、大戦末期には爆弾を括り付けて特攻にも使用されている。主フロートが一つの機体はバランスを取るために爆弾を2発取り付けられた。鹿児島県指宿市にはかつて海軍の水上機基地があり、ここから沖縄へ、フロートと爆弾を抱えて飛ぶのがやっとの有様の特攻機が飛び立っていったのである。下駄履きの特攻機が出撃した指宿基地の跡地は現在、指宿国民休暇村となっている。

【けっさくき】[傑作機]
 読んで字のごとく、傑出した作りの機体とか、傑出した人物が作った機体とか、傑出した作り方の機体とか、傑出した数が作られた機体とか、傑出した数が作る途中で放棄されてムダになった機体とか、傑出した作業工程数を要した機体とか、傑出した作業日数を要した機体とか、傑出した作動箇所の数を誇る機体とか、傑出した数の作り話に登場する機体とか、「こいつは傑作だ」と大笑いしたくなる機体とか…とにかくまあ、人の好みの数だけ、いろいろあるようである。貴方にとっての傑作機は、どれにあたるかな?

【ケロヨン】《F》
 かつての第7航空団第301飛行隊(百里基地)の、F-4EJの垂直尾翼に描かれていたカエルの部隊マーク。1985年3月に新田原基地(宮崎県)に移駐し、第5航空団第301飛行隊となっている。部隊マークは、筑波山のガマガエルをマンガ風に図案化。カエルには、無事帰るの意味が込められている。スカーフの星の数は、航空団の変更に伴い7つから5つになっている。

【げんあつしょう】[減圧症]
 急激な減圧によって、体内の窒素ガスなどの生理的不活性ガスが飽和状態となり、血液などの体液が泡立ってしまうことによって生じる症状。潜水病とも呼ばれる。コーラの栓を抜いたときに、瓶の中の気圧が下がって泡が出るのと同じ現象が血液などの体液中で起こり、主に節々の痛み、手足のしびれ、かゆみ、皮下出血、鼻血、胸の痛みや呼吸器障害、頭痛などの症状がある。ダイビング後などで、これらの症状のいずれかひとつでも心当たりがあれば減圧症を疑って病院での診療を受けるべきである。薬などでは治せない。重い場合や、悪化した場合は動脈ガス閉塞症とも呼ばれ、血流が気泡によって阻害され、中枢神経障害、骨髄の壊死などを引き起こし、命にも関わる。通常ならば非与圧下で18,000ftあたりまで一気に上昇とか、水深30m以下から一気に浮上(個人差あり)などの無茶をしなければほぼ問題はないとされているが、スキューバダイビングやトンネル工事現場のシールド内に入った直後の飛行では、高度8,000ft程度でも影響が出ると言われており、これは与圧された旅客機でも起きることを意味する。このためスキューバダイビングを行なった後は、24時間以上激しい運動や飲酒などは控え、安静に過ごしてから飛行することが推奨(レジャーダイバーの場合、自己管理の問題なので、推奨、である)されている。72時間後に発症した例もあり、ダイビング後のフライトは注意が必要である。ツアー最終日も潜るなど論外である。罹ってしまった疑いがあれば、即刻!病院へ行き、医師に何mまで潜ったか、何分かけて浮上したか、何時間後に飛行機に乗ったかなどを詳細に告げる。診療に行った病院に、専門医がいなかったり、治療設備がない場合も多いが、その場合は減圧症治療(再加圧治療)が可能な病院を紹介してもらう。他の病気の疑いがあっても減圧症への対処を最優先する必要がある。ドラフトチャンバーという加圧室に入り、酸素吸入を受けながら数時間安静にする再加圧治療という方法を、何日かに分けて数回繰り返すことになる。→デコンプレッション・シックネス

【けんのうき】[献納機]
 
第一次世界大戦当時、日本には飛行機が陸海軍合わせても20機足らずしかなかった。欧米に比べ余りに立ち後れた現状を憂えた山下徳太郎氏が(山下汽船社長、山下汽船は現在の山下新日本汽船)政府に航空機の研究開発資金として100万円を寄付、陸海軍が50万円ずつ分け合い兵器(航空機、ではなく兵器、であることに注意)の研究開発資金とした。
 その後、昭和6年に勃発した満州事変以降、国民から陸軍への献金が急激に増え、事変勃発後に集まった献金3万円に山下氏の献金の残額15万円を加え、派遣部隊から要望があった多用途機としてユンカースK37と、患者輸送機としてドルニエ・メルクールを購入し、これに『あいこく号』と命名したのが献納機の最初とされる。よっぽど嬉しかったんだろうねぇ、代々木練兵場(現在の代々木公園とその周辺)で大々的な命名式を開催して国民に「どうだ!」とばかり公開した。こうした宣伝が功を奏し、終戦までの14年間に、陸軍機『愛国号』海軍機『報国号』を合わせた献納機の総数は5,000機を超え、献納者も一人で十機も献納した株式店(現在の証券会社だ)経営、小布施新三郎氏をはじめとして、全国の小学生がお小遣いを集めて献納した機体もあった。
-こ-

【コアンダこうか】[コアンダ効果]ボタン 解説画像を別ウィンドウで表示
 噴流には、物体の面に沿って流れる性質がある。水道の蛇口から水を出し、そこに横にしたコップを近づけると、水流がコップの曲面に当たったところから、コップの曲面に沿って水の流れが曲がってゆくのがわかる。すべての物体には粘性というものがあり、水や空気も例外ではない。水がコップに当たると、コップに接する部分では粘性によってそこで止まろうとし、コップから離れたところの水流は、離れるに従って徐々にその影響を受けにくくなるため、結果として水流はコップの曲面に沿って曲がってゆく。速度が大きく乱れた流れ(乱流)であるほど、その傾向は顕著になる。このコアンダ効果の性質を利用したのがUSB(Upper-Surface Blowing)方式などの動力高揚力装置。主翼の上面にジェットエンジンの噴射を流し、大きく下に垂れ下がらせたフラップの上面へと噴流を張り付かせ、主翼周りの循環を促進させる超循環を起こして揚力を増大させ、下向き推力の反作用と併せて、低速でも充分な揚力を生み出せるようにする。

【こうえん】[後縁][trailing edge]
 翼型の最後部となる端。

【こうくうがくせい】[航空学生]
 高校・短大・高専卒の男女を対象として、航空自衛隊・海上自衛隊のパイロット等を養成する制度。航空自衛隊の操縦士を養成する航空自衛隊航空学生と、海上自衛隊の操縦士・戦術航空士を養成する海上自衛隊航空学生がある。2年間の航空学生課程と、4年間の飛行幹部候補生課程からなる。この間に、航空機の操縦技術のみならず、幹部自衛官として相応しい徳操や一般常識、任務に堪えうる体力を身につけなければならない。応募資格は入隊時18歳以上21歳未満の日本国籍を有する者で、高校卒業、高専3年修了(見込みを含む)または高校卒業と同等以上の学力を有すると認められる者。出願は例年8月、第1次試験(学科と、筆記式による適性試験)は例年9月下旬に実施され、第2次試験(口述試験、適性検査、航空身体検査)は例年10月中旬に行われる。海上自衛隊航空学生は第2次試験まで、航空自衛隊航空学生の場合、このあと第3次試験(実機に搭乗しての適性試験と、医学適性検査)が例年11月上旬から12月上旬にかけて行われ、合格すれば晴れて航空学生として自衛隊に『採用』される。学生の身分は特別職国家公務員。飛行機の操縦を教わりながら給料ももらえるので、試験は極めて狭き門、試験もさることながら入隊してからの訓練も非常に厳しい。試験は海空とも同日に行われるため、同時受験はできない。詳しくは、お近くの自衛隊地方連絡部までどうぞ。

【こうくうガスタービンゆ】[航空ガスタービン油]
 ジェットエンジン(ガスタービンエンジン)に使用される潤滑油。初期の頃は鉱物油を使用していたが、現在では高温熱安定性、耐荷重性に優れたジエステル、ポリフェルニエーテル、ポリオールエステルなどの合成油が使用されている。そういえば、現在ではクルマのエンジンオイルも、バナナで釘が打てる温度でもサラサラな合成オイルが主流だな…。

【こうくうガソリン】[航空ガソリン]
 
アヴィエーションガソリン、アブガスとも呼ばれる。航空機に使用されるガソリンは機種、エンジンの圧縮比などにより使い分けられ、80オクタンから145オクタンまで5種類がある。航空ガソリンは自動車用ガソリンと異なり、アンチノック性を高めるため四エチル鉛を多量に添加しているので、車に入れてはいけない。さすがに最近は環境に配慮して四エチル鉛の添加量を減らしたガソリンも登場し、これはLL(Low Lead)と呼ばれている。→アブガス

【こうくうき】[航空機]
 
航空法第2条には『この法律において「航空機」とは、人が乗って航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機及び飛行船その他航空の用に供することができる機器をいう』とある。『その他航空の用に供することができる機器』というのがよくわからんな。大気圏を航行可能な宇宙船のことだろうか?ベル・ロケットベルトなどもこれにあたりそうだが…。

【こうくうきち】[航空基地]
 海上自衛隊の航空機の基地。航空が付かない海上自衛隊の基地は、その多くが艦船の基地である。航空自衛隊の場合は航空機がいようがいまいが単に基地、あるいは分屯基地と呼んでいる。陸上自衛隊では規模により駐屯地、または分屯地と呼ぶ。陸海空の自衛隊と、民間航空が同居している那覇の場合、陸上自衛隊那覇駐屯地で、海上自衛隊那覇航空基地で、航空自衛隊那覇基地と、店子の表札が三つ掛かるが、ここの大家さんが国土交通大臣なので一括した呼び名は那覇空港である。あぁややこしい…。余談だが、旧帝国海軍では航空機に関するものを主に航空○○と呼び、旧帝国陸軍では航空機に関するものを主に飛行○○と呼んでいたが、この伝統は、今でも陸海の自衛隊に残っていたりするのである。

【こうくうきゆそうかん】[航空機輸送艦]
 旧帝国海軍の艦で、文字通り航空機を輸送する艦。基地航空隊から前戦へ、航空機や各種機材、人員などを輸送するもの。外見はごく普通の貨物船である。飛行機は島伝いに飛んで行くこともできたが、整備人員や機材、補充用の飛行機などはこうした船によって運ばれた。わざわざそんな船を用意しなくたって、空母があるだろうって?貴重な空母を貨物船代わりに使うなんて、とんでもない!…と言いたいところだが、大戦末期になると、空母に着艦できる搭乗員も殆どいなくなり、空母はあっても何の役にも立たなくなって、僅かに生き残っていた空母は航空機輸送艦の代わりを勤めたのだとか。

【こうくうきんし】[航空禁止]
 第2次大戦後の1945年から1952年にかけて、GHQが日本に対して行った、日本人による航空機の研究、製造、運航を禁止する措置の総称。その骨子は大きく分けて
1.航空機の製造、研究の禁止。
 中央航空研究所、東京帝国大学航空研究所などにあった研究施設等の接収、解体。航空機メーカーの設備の解体など。メーカーが保有していた航空機材料、生産設備はGHQ管理下に置かれた。
2.航空関連諸法規の廃止。
3.財閥解体。
 航空機を製造していた三菱、中島、川崎、川西、愛知、立川を事業分野、あるいは事業所毎に分割。独占禁止法の制定などを行い、企業体力を低下させ、多額の資金を要する航空機開発ができないようにした。
4.日本人による航空機運航の禁止。
 などがある。日本人の手に残されたものは航空通信施設・標識類の維持管理ぐらいのもので、それとてGHQの徹底した管理下に置かれていた。ここまで徹底した措置が執られたのは、第1次大戦後、ドイツが民間航空を隠れ蓑に軍用機の研究開発、製造や搭乗員育成などを行い、ドイツ再軍備の抜け穴になったことが挙げられる。日本にとって不幸だったのは、1952年に航空機の製造を解禁されるまでの7年間に、航空工学が大幅に進歩し、置き去りにされたことだった。現代の航空技術の基礎となるジェットエンジンも与圧キャビンもこのわずか7年の間に実用化されたものだった。なお、当時の話で「模型飛行機まで禁止されていた」と言われているが、これはGHQの指令には含まれておらず、日本側による自主規制とみられる。もっとも、食うや食わずの時代、おもちゃの飛行機で遊べるような御時世ではなかったが…。

【こうくうげんきしゅ】[航空元気酒]
 旧帝国陸軍の糧秣廠が、航空機搭乗員の疲労回復を目的に作った薬用酒。甘く味付けされた酒に、和漢の生薬十数種を配合し、肉体疲労時の栄養補給、滋養強壮、疲労回復、血行促進に、着陸後腰に手を当て(…なくてもいいが)ゴクッと一本。ファイト一発!24時間戦う搭乗員の力強い味方であった。

【こうくうこうえん】[航空公園]
 正しくは『埼玉県営所沢航空記念公園』という。最寄り駅は西武新宿線航空公園駅。駅前にはエアーニッポンから寄贈されたYS-11が鎮座していて嬉しくなってしまう。ふかふかの芝生に寝転がって、YS-11の翼の陰で昼寝なんざぁ、最高の贅沢だね。保存状態は極めて良好で、年に数回、機内の見学会も行われている。欲を言えば屋根を掛けてやって欲しいが…。公園の一郭には所沢航空発祥記念館があり、館内には懐かしの自衛隊機などが並んでいる。格納庫と称しているバックヤードにもお宝が眠っているとかで、年に数回、見学会を行っている。
 ここは明治44年(1911年)日本初の飛行場(滑走路・格納庫・気象観測所を備えたものとして)が設置された場所で、昭和20年まで陸軍飛行場だったが、敗戦により米軍に接収され、返還後、公園として整備された。公園の周辺には所沢市の市庁舎、文教施設、国土交通省の東京航空交通管制部なども置かれている。元々飛行場だっただけに広大で、地元ではお花見の名所としても知られる。天気のいい休日は家族連れで大にぎわい。記念館のスーベニアショップからロールアウトしたゴム動力機があちこちで飛び回るが、公園内はラジコンとUコンは御法度ですぞ…。

【こうくうさい】[航空祭]
 エアショーとか、日本の場合、その殆どが自衛隊基地で開かれるものであるため基地祭という場合もある。多くの場合は基地の開設記念日(開庁記念日と言う)に近い日曜日に行われる。大概の基地は自衛隊創設と同時に基地が設置されているので開庁記念日が重なり、航空祭が開催される時期も集中する。基地内の一部を開放し、航空機などの装備品を並べて一日航空博物館状態にして、上空では基地所属機による展示飛行や、ブルーインパルスなどの外来機を招いての展示飛行などが行われる。航空ファンにとっては航空機や装備品を間近に見られ、パイロットや整備士を質問攻めにして(…程々にな)知識を深めることのできる貴重なイベントであり、多くのファンが泊まりがけで遠征してでも足を運ぶ。もちろん、航空ファンばかりでなくご家族連れで楽しめる企画もあり、地元カメラ店の協賛でモデル撮影会(そうやってフィルム消費させて、買わせようって魂胆だな)とか、弾薬ドーリー改造花電車とか、ミニバイク改造張りぼて戦闘機(那覇基地が本場で、一挙3機が走り回る)本物の飛行機・ヘリコプターによる体験フライトや体験タキシング(抽選または先着順整理券配布)などなど、好天に恵まれた休日のお出かけにはうってつけである。入場は無料。多くの場合9時から15時までの開催である。基地内は喫煙所を除き火気厳禁なのでお煙草は喫煙所で。ピクニック気分でバーベキューってのも禁止である(実在した)駐車場は先着順または事前申し込みでいずれの場合も数少なく、基地周辺の道路事情もあまり宜しくない場合が多いので、臨時に運行されるシャトルバスの利用をお勧めする。築城や岩国では駐車場空き待ち行列の車中でブルーインパルス見物という悲惨な例もあったりする。
 米軍基地のオープンハウスの場合は飛行展示がなかったりするが、開催時間が21時までの場合もあり、展示機のバルブ撮影も楽しめる。三沢、岩国などの自衛隊との共用飛行場での航空祭は自衛隊との合同開催で、おおむね他の自衛隊基地祭に準じた開催手順となる。なお、海外の有名なエアショーの多くは、航空機や装備品の売買を目的とした展示会なので、一般の観衆には見物場所などに大幅な制限が加えられることもあるし、家族連れ向けのイベントもあまりないし、その上入場料を取られたりする。

【こうくうさどうゆ】[航空作動油]
 油圧系統に使用される作動油。広い温度範囲で使用されるため、低温流動性、高温安定性、不燃性などが要求される。ナフテン基油を用いた鉱物系の他、高温条件下ではオレフィンオリゴマーや珪酸エステルなどの合成油が用いられる。

【こうくうしゅざい】[航空取材]
 航空機を使用したマスコミによる取材活動。そのまんま。モンゴルフィエの熱気球からのスケッチを新聞に掲載したのが最初、というから航空機の歴史そのまんま航空取材の歴史といえる。上空からの眺めがまだ珍しかった頃は、特に事件取材でなくても新聞ダネになった。人間が空を飛ぶこと自体事件だったからそれも当然か。現在でも「スペースシャトルから生中継!」とかやってるのと一緒やね。
 動力機が実用化されるようになると、事件現場に急行して上空から写真撮影という、現在の航空取材の形が定着する。但し、まだファクシミリもデータ通信ネットワークもなかった頃なので、原稿(つまりフィルム)は取材機が自分で、製作・印刷設備のある本社へ持ち帰らなければならなかった。朝日新聞社が、1937年にイギリスで行われたジョージ6世の戴冠式に合わせて導入した『神風号』などは、原稿輸送ために97式司令部偵察機という軍用の、しかも当時世界でも最新鋭の偵察機を使用している。現在で言うならSR-71を一新聞社が所有しているようなすごい話だ。見方を変えれば、当時の朝日新聞社がいかに軍部の覚えめでたい新聞社であったかという証でもある。
 余談だが、1960年代あたりまで、原稿輸送に伝書鳩も併用されていたことを記しておこう。各社とも本社屋上に鳩小屋を建てて、記者はカメラと鳥籠抱えて現場に向かっていた。
 戦後、ヘリコプターが登場すると、真っ先に投入されたのは言うまでもない。但し、相変わらず原稿を抱えて必死で持ち帰っていたことに変わりはない。変わったことといえば、固定翼機に比べて小回りが利くようになったので、本社屋上で通信筒に入れた原稿を投下して任務終了、ということも可能になった。東京の大手町・竹橋近辺の新聞社は、原稿の投下場所を日本武道館駐車場に定めていて、投下された原稿は待ち構えていたプレスライダーによって本社に運ばれていた。飛行場から新聞社本社まで陸路輸送していた時間が短縮された程度の進歩でしかないが、一刻一秒を争うこの世界では大きな進歩だったといえる。
 ヘリコプターは上空で自由に動けるので、テレビ放送でも使用されているのはご存知のとおりで、マラソン中継などでは選手の走る速度で飛行しての撮影の他、地上の中継車から送られた電波を局に中継する『通信衛星』代わりにも使われる。
 話を新聞に戻し、取材機が原稿を持ち帰らなければならなかったのは、デジタル一眼レフカメラが登場し、機上から無線ネットワークが利用できるようになったつい最近まで続いていた。現在でも、デジタル一眼レフでは解像度が不足するグラフ記事などの大判写真はフィルムに依存している場合も多く、この場合は昔ながらに原稿を抱えて、現像・送信設備のある航空基地へ帰らないと記事にならないことになる。
 航空機に搭載する無線機器には様々な制約があるが、実は無線イーサネットだけは規制の想定外だった(規制が追いつかなかった)ため、市販品そのまんまの100Mbps無線イーサネット機器を取材ヘリに搭載して、本社や支局など最寄りの受信設備上空を低空低速でフライパスすれば、あとはビル間無線イーサネットのアンテナから社内ネットワーク経由で本社内の画像サーバへ転送されるという、規制の網をくぐった裏技ともいうべき比較的お手軽なシステムも導入されている。
 話が長くなったが、この項の最後に航空取材の抱える問題点も指摘しておく。事件や災害の現場にはマスコミ各社が一斉に取材機を繰り出し、狭い現場上空で多数の取材機がひしめくことがあり、時として危険な状況も見受けられる。また、取材機の爆音が被災者の捜索を妨げたという事例や、被災地上空で航空統制を行っている自衛隊機の指示を無視するなど、憲法上の権利を自分たちだけに都合よく解釈し、無法としか言いようのない事態も残念ながら起こっている。規制という形で当局が介入し国民の知る権利を脅かされる前に、代表取材などマスコミ各社の自覚ある行動が求められる。

【こうくうしょうがいとう】[航空障害灯]ボタン 解説画像を別ウィンドウで表示
 夜間、あるいは計器飛行中の航空機に、障害となる建築物などを視認させるため、航空法により設置と管理が義務づけられている灯火。地表あるいは水面から60m以上の高さの建築物に設置される。高層ビルの屋上で点滅しているあの赤ランプが航空障害灯である。60m以上の高さとは通常の場合で、飛行場周辺、特に着陸進入経路(航空法では進入表面という言葉が使われる)直下などではこれよりも低い建築物にも設置が義務づけられる。伊丹(大阪)空港Runway14エンド付近にある公園では、高さ5m程しかない東屋の屋根にまでついている。
 高層ビルの屋上で点滅する赤色灯は『中光度赤色航空障害灯』という。その下に設置されていて点滅をしていない赤色灯は『低光度航空障害灯』という。
 また、鉄塔や煙突など昼間でも視認しにくくなることがある建造物や、飛行場周辺の石油・ガスタンクなど航空機の衝突が重大な影響を及ぼす施設には、航空障害灯と共に、紅白塗りの『昼間障害標識』が施される。煙突や鉄塔などで昼夜を問わず白色閃光を発しているのは『高光度航空障害灯』で、昼間障害標識と同じ役割を果たしている。

【こうくうせいしつう】[航空性歯痛][aerodontalgia]
 虫歯などによる歯の空洞内の空気が、外気の圧力と不均一となることによって起こる歯の痛み。少し時間が経てば気圧が均衡して解消する場合もあるが、治まらない場合は鎮痛剤でも服用して、飛んでいる間は我慢するしかない。

【こうくうせいちゅうじえん】[航空性中耳炎][aerotitis]
 急激な気圧の変化で、鼓膜の内外に気圧の不均衡が生じることで起こる急性中耳炎の一種。機体の上昇時に何となく耳の奥に不快感がある、という程度なら飲み物を飲む、飴をなめるなどで解消できるが、風邪や鼻炎などで鼻が詰まっている場合などはめまいや耳鳴り、難聴など重大な症状を引き起こす場合があるので要注意。また、急激に強く鼻をかむと、鼓膜を破損する場合もある。慢性鼻炎の方は、事前にかかりつけの医師に相談すること。機内で、どうしても耳の痛みが解消しない場合は応急処置の方法などを乗務員と相談し、降機後耳鼻科医の診療を受けること。

【こうくうせとものいち】[航空瀬戸物市]《F》
 空の日などに開かれる航空ジャンク市の別名。航空ジャンク市といえば機内食用食器の即売である。飛行機の使用済み部品を売るコーナーはがらがらなのに、機内食用食器のコーナーは黒山の人だかりで身動きがとれなかったりする。

【こうくうせんかん】[航空戦艦]
 空飛ぶ戦艦…ではない。戦艦に水上機母艦の役割を掛け持ちさせた、旧帝国海軍の珍兵器。当初の予定では搭載するのは水上機ではなく、空母艦載機だったそうである。着艦はどうするつもりだったのかって?着艦なんか全く考えてないぞ。陸上基地に降りてもらうか、さもなきゃポイ捨てだ。それじゃいくらなんでもってんで水上機を搭載することにしたらしい。煙突より前が戦艦で、後ろは水上機母艦。木に竹を接いだとは、まさにこのこと。できればこっそり秘密のままにしておきたかった秘密兵器である。『伊勢』『日向』の2隻があった。戦艦時代は格好いいフネだったんだけどねぇ…。 同じようなものに、巡洋艦に水上機母艦を継いだ航空巡洋艦というのもあった。

【こうくうタービンねんりょうゆ】[航空タービン燃料油]
 ジェット燃料のこと。JIS規格における呼称。米国のJP規格に合わせ『航空タービン燃料油1号』(JET-A1に当たる)など数種類がある。→ジェット燃料

【こうくうつう】[航空通]
 飛行機に詳しい人に与えられる資格、その名は航空通…ではない。航空無線通信技士の略。この資格を持っている人はだいたい飛行機に詳しい人だから、間違いでもないけどね。無線の資格は変な略し方をしていることがままあり、特殊無線通信技士は略して特技である。「特技は何ですか?」「はい、特技を持ってます」

【こうくうび】[航空日]
 →空の日

【こうくうひょうろんか】[航空評論家]
 航空関連のお仕事で、もっとも間口が広く敷居も低いお仕事。免許も実務経験も学歴も問われず、試験もないから名刺に航空評論家と書けば誰でもなれる。ソムリエになるより簡単なのだが、世間様に航空評論家と認めてもらえるのは、日本の場合は飛行機事故の際に在京キー局からお呼びがかかる人々のみであり、それ以外の人々は航空関連のライターと称するのが普通である。つまり世間様に航空評論家と認めてもらえる人は、日本では6人しかいないことになる。芥川賞・直木賞獲るより大変だ。なったらなったで、夜中でも原稿締切間際でもお構いなしにテレビ局に呼び出され、事故機の墜落位置を特定している段階から事故原因を聞かれたり、あの難解な航空用語を簡潔に(編者は苦手である)しかもわかりやすく説明しなければならないし、頓珍漢なキャスターの質問に、笑うわけにもいかず苦虫かみつぶすしかない大変な商売ではある。面白いことを言われて、笑うこともツッコミ入れることもできないなんて、編者には到底できないことである。その点に自信のある方はチャレンジしてみては如何だろうか。
 なお、航空評論家の活躍の舞台は、航空機事故に限らない。世界のどこかで緊張が高まれば、なぜか軍事評論家の称号をもらえたり、鉄道事故でも原発事故でもキャッシュカード偽造事件でもおかまいなしにお呼びがかかるし、ごくまれに深夜番組の総合司会を任された航空評論家や、ソシアルダンスの腕前を買われてバラエティ番組に出た航空評論家とか、アニメに声優としてご出演した航空評論家もいる。航空評論家にとって必要なスキル、それは芸の幅である。航空評論家を志される方は、とりあえずテーブルクロス引きあたりから練習してみてはいかがだろうか。

【こうくうひろうかいふくしゅ】[航空疲労回復酒]
 旧帝国陸軍の糧秣廠が、航空機搭乗員の疲労回復を目的に作った薬用酒。果実酒に強壮剤を配合し、肉体疲労時の栄養補給、滋養強壮、疲労回復、血行促進に、着陸後腰に手を当て(…なくてもいいが)ゴクッと一本。ストレートでよし、サイダーで割ってもよし。ファイト一発!24時間戦う搭乗員の力強い味方であった。

【こうくうファンはWindows】[航空ファンはWindows]
 一部のWindowsユーザーの航空ファンが口にする、全く根拠のないデマ。正しくは『フライトシミュレータをやるならWindows』である。 フライトシミュレータに限って言えばWindowsの独壇場だが、世の中すべての航空ファンがフライトシミュレータをやっているわけではない。フライトシミュレータをやらない奴は航空ファンじゃない、と言うなら、勝手に言ってやがれである。ちなみに、編者が注目する航空関係のウェブページは、殆どがMacintoshで作ったと制作者が宣言しているものである。ウェブページを作っている人にはMacintoshのユーザーが多い、これは本当である。
 今時、殆どのMacintoshのユーザーはWindowsを併用している、否、せざるを得ない御時世である。両方使ってみて、それでもMacintoshの方がいいと言っているのだから、間違いない。

【こうくうぶどうしゅ】[航空葡萄酒]
 旧帝国陸軍の糧秣廠が、航空機搭乗員の疲労回復を目的に作った薬用酒。甘口の葡萄酒に、和漢の生薬十数種を配合し、肉体疲労時の栄養補給、滋養強壮、疲労回復、血行促進に、着陸後腰に手を当て(…なくてもいいが)ゴクッと一本。ファイト一発!24時間戦う搭乗員の力強い味方であった。

【こうくうほう】[航空法]
 『第一条 この法律は、国際民間航空条約の規定並びに同条約付属書として採択された標準、方式および手続に準拠して、航空機の航行の安全及び航空機の航行に起因する障害の防止を図るための方法を定め、並びに航空機を運航して営む事業の適正かつ合理的な運営を確保してその利用者の利便の増進を図ることにより、航空の発達を図り、もって公共の福祉を増進することを目的とする』…のだそうである。 余談だが、世界最初の航空法規は、モンゴルフィエの熱気球が人類初の有人飛行に成功した翌年、1774年にフランス政府が「気球を飛ばす場合は、警察に届け出をし許可を得よ」と定めたのが最初と言われる。航空法規と言うよりは、大道芸の規制のような気がするのだが…。1819年には、これまたフランス政府が、気球には緊急脱出用のパラシュートを装備せよと定めている。なんか、航空法規らしくなってきたぞ。ともあれ、飛行機が登場する100年以上も前から、既に空を飛ぶことに規制の網は掛けられ始めていた。そんなわけで、鳥のように自由気ままに飛ぶなんてことは、最初からできなかったんだと思って諦めてくれ。

【こうくうれん】[高空連]
 高等学校空手連盟のこと。『こうかられん』ではないらしい。航空機とは何の関係もない。

【こうしょきょうふしょう】[高所恐怖症]
 高いところから下を見下ろした時に感じる恐怖感。この恐怖感に、多少敏感な人もいる。人間はもともと地上で生活する動物なので、高所から下を見下ろした時に恐怖感を感じるのは当たり前である。通常は高さ12mぐらいで恐怖感がピークに達すると言われ、あとはどんなに高度が上がろうと、恐怖感が増すことはなく、かえってだんだん鈍麻してゆくのだそうである。実際、高さ12mから飛び降りた場合の生存率は50%程度というデータもある。本能的に、危険な高さを知ることができるんだから、人間ってのはよくできている。パラシュート部隊の降下訓練や、ヘリボーンでのリペリング降下訓練では、この高さからの恐怖の克服から手始めに行うのだそうである。
 空港でよくある笑い話に、
航空会社の社員「お客様、お二階のお席が空いておりますが」
老婦人「あたしゃ高いところが苦手でねぇ…」
というのがあるが、地上にいるジャンボジェットの2階席の高さというのが、実は恐怖感がピークに達する高さなのである。航空会社にはシューターによる脱出訓練を行う設備があるが、メインデッキからシューターで滑り降りる際は平気だった人が、アッパーデッキからだと途端に尻込みするというケースも多い。

【ごうせいふうりょく】[合成風力]
 空母が艦載機を発艦させる時は、空母は風上に向かって全速力で突っ走るのである。向かい風の風力と、空母が突っ走ることで受ける風力を足したものが合成風力。こうして僅かな滑走距離でも艦載機が揚力を生み出せるようにする。飛行機ってのは、風まかせの乗り物なのである。特にカタパルトのなかった旧帝国海軍の空母は、一に速力、二に速力、三四がなくて五に速力である。正規空母は30ノットを超えるものが殆どだったが、商船からの改造空母はてんでダメだったようで、殆どは20ノット超えるかどうかだった。旧帝国海軍の空母に蒸気式カタパルトを付けられなかった理由というのが、カタパルトに蒸気を回してしまうと、蒸気圧が下がって速力が落ちてしまうからだったのだそうな。要するにボイラーの缶圧が低かったのだね。ドイツからもらった(日米開戦時に神戸にいて、ドイツに帰れなくなった)客船シャルンホルストのボイラーの缶圧が高く、日本の技術では扱いきれないと事故を恐れた海軍は、空母神鷹への改造時に日本製のボイラーに載せ替えてしまったぐらいだから。

【こうせきせいは】[航跡静波]
 艦船で輪を描くように転舵させると、航跡の輪の中に比較的波の穏やかな水面を作ることができる。外洋は波が荒すぎるため、こうしないと水上機は着水できない。戦闘中はそんなことできるわけはないので、水上機は見殺しとなるのが常であった。米軍はこの点を問題として、偵察・哨戒活動などには水上機を使用せず、大型飛行艇や空母艦載機によって行っていた。旧帝国海軍は、そんなのお構いなしに敵を追撃して、水上機の搭乗員を見殺しにしていた。こういうところにも、特攻が生み出される下地が見られる。戦況の不利を打開するためというのは言い訳に過ぎない。兵士の命を使い捨てるのは日本軍の体質だったのだ。

【こうそくりだつようゆうどうろ】[高速離脱用誘導路]
 なにかとてもものすごいものみたいだが、何のことはない、滑走路から斜めに伸びる誘導路のこと。着陸した飛行機が高速で誘導路へ進入できるようにし、滑走路を占有する時間を短縮するためのもの。高速とは言っても、せいぜい90km/h程度なのだが、時速数キロ程度で直角に曲がる離脱誘導路に比べれば断然速い。その代わり、高速離脱用誘導路には機体が十分に減速できるだけの長さが必要となる。
 ICAO(国際民間航空機関)の勧告によれば、滑走路と高速離脱用誘導路の交差角度は25°〜45°。分岐曲線半径は少なくとも275m以上とすべきであるとされている。

【こうたいいきじゅしんき】[広帯域受信機]
 530kHz〜1320MHzの無線交信・ラジオ放送を受信できるレシーバー(受信機)。さらに広く100kHz〜2200MHzが受信可能なものもある。ちょっと目にはハンディトランシーバーみたいな外観のものが主流。秋葉原あたりでも扱っている店は多くないし、しかもスタンダードとかユピテルとかアルインコとかAORとか、一般の人には聞いたことのないメーカーばかりである。ごくまれにSONYやKENWOODなんてのもあるが、SONYは20年近く昔の機種、KENWOODの場合はアマチュア無線機をユーザーが改造した受信機である。航空無線の受信機はごく一部の航空無線受信専用機を除き、広帯域受信機として売られていて、航空無線の他AM・FMラジオ放送やテレビ放送音声、鉄道無線、消防無線なども受信可能。さらにはコードレスホンや盗聴器、ワイヤレスマイクの受信(盗聴ではない)ができるものもある。昔はさらにアナログ警察無線やアナログ携帯・自動車電話も受信できた。世の中にはこういうものがあるので、コードレスホンで内緒話なんかしたらご近所中にバレバレだぞ。傍受される可能性があるもので内緒話をするヤツが悪い、ってことになっている。電波法では受信した内容を他の人に漏らしてはいけないことになってるけどね。国によっては広帯域受信機の所持自体が違法というところ(主に共産圏、旧共産圏及び独裁国家…どれも同じようなものか)もあるので海外旅行の際には要注意。

【こうたいよくによるロールあんていこうか】[後退翼によるロール安定効果]ボタン 解説画像を別ウィンドウで表示
 後退翼にはロール安定をもたらす効果がある。何らかの理由で機体が傾くと、機体は斜めに傾いた揚力と真下に向かう重力の合力によって、傾いた方向に横滑りを始める。横滑りによって後退翼に当たる気流は、左右それぞれ全く異なる角度で主翼に当たることになる。下がった方の主翼には深い角度で気流が当たり、上がっている方の主翼には浅い角度で気流が当たる。この気流を、25%翼弦線(翼端の前縁から後縁に向かって1/4にある点と、翼根の前縁から後縁に向かって1/4にある点を結んで得られる線、以下は単に翼弦線ということにする)と平行な成分と、翼弦線に対して垂直になる成分とで分けてみると、下がった方の主翼では翼弦線に垂直となる成分が強く、翼弦線と平行する成分は弱くなる。上がっている方の主翼では逆に、翼弦線と垂直になる成分が弱く、翼弦線と平行する成分が強くなる。翼弦線に垂直な成分は揚力の発生に大きな影響を与えるが、翼弦線と平行する成分は摩擦抵抗を無視すれば、ほとんど揚力を生み出さない。こうして下がっている方の主翼では大きな揚力が生じ、上がっている方の主翼で生じている揚力はそれより小さなものになり、機体は傾きから回復する。
 ロール安定を得る手法としては他に主翼に上半角(前から見て主翼が翼端に向かって跳ね上がるような取り付け方)を付けるという方法もあるが、最近の後退翼機は後退角が大きく、それだけでも高いロール安定効果を持っているため、上半角は控えめにして旋回性能を確保するようにしている。安定性と旋回性能は表裏の関係にあり、うまくバランスを取らないと安定性はいいけど全然曲がらないとか、逆にくるくるよく曲がるけど不安定なんて機体ができてしまう。旋回性能を要求するのか、安定性を要求するのかは機体の役割も考慮して、うまくバランスを取るようにしている。

【こうバイパスひ】[高バイパス比]
 ターボファンジェットエンジンが吸い込む空気のうち、燃焼室を通らずにファンが加速させた空気の量を、燃焼室を通った空気の量を1として表す比率で、その数値が高いもの。燃焼室を通った空気の5倍の空気が、ファンによって加速され燃焼室を通らずに噴射されるエンジンならば、バイパス比は5となる。このバイパス比が5以上のものを高バイパス比と呼ぶ場合が多い。この数値が高いと燃費がよくて有害な排出物の少ないエンジンということになるが、バイパス比が大きくなると、どうしてもエンジンも大型化する傾向にあるので、バイパス比の高いエンジンというのは大型機用が多い。なお、バイパス比がいくつ以上であれば高バイパス比と呼ばれるかについてはとても曖昧で、明確な基準はない。1以上で高バイパス比とする場合もあれば、5以上を高バイパス比としている場合もある。旅客機向けなどの大型エンジンを扱っている資料では5以上を高バイパス比とする場合が多いが、エンジン開発史などの資料では1以上でも高バイパス比としている場合があるので注意が必要である。

【こうぶそう】[甲武装]
 自衛隊のドレスコードの一つ。制服(スーツタイプの服。当然白ワイシャツにネクタイを締める)上下に弾帯、ライナー(樹脂製のヘルメット。鉄帽の下にセットするので内帽とも言う)を装着し、半長靴を履く。半長靴のない海上自衛隊は短靴に脚絆を用いる。式典用の服装である。防衛庁本庁舎のある市ヶ谷の警備(自衛隊用語で、警衛と言う)にあたる隊員は、いつもこの恰好である。

【こうりん】[降臨]《F》
 
目当ての航空機が着陸進入してくることを言う。何時間も前から場所取りして待っているから、来たときの盛り上がりようときたら「エアフォース・ワン降臨!」とか「シグナス降臨!」とか、もう大騒ぎである。太陽をバックに降りてくる場合は特に「光臨」とも言うが、拝んでる場合ではない。絵を押さえろ!

【コーシャ・フード】[Kosher food]
 ユダヤ教徒の中でも、特に戒律が厳格な宗派に属する人のための機内食。ユダヤ教徒が調理し、ユダヤ教牧師が祈りを捧げて封印してある。食器の使い回しも禁じられているため、フォーク類などの『おてもと』も封印された箱の中に入っている『お弁当』である。コーシャ・フード専門の機内食業者によって航空会社に供給される。

【コーション・データ】[caution data]
 ご使用上の注意。機体にあれこれ書き込まれている指示書きのこと。曰く「乗るな」「踏むな」「触るな」「押すな」「DON'T TOUCH」「NO STEP」「飛行前に外せ」「安全装置を確認せよ」「資格のない者は触るな」などなど機体の至る所びっしりと、耳なし法一の経文みたいな状態である。とはいえ、耳なし法一は経文を書いていなかった耳を持って行かれたが、マニアは『触るな』と書いてあるところをわざわざ触る。落ち武者の幽霊以下である。

【コードシェア】
 一つの便に、二つの航空会社の便名を付けて運航すること。二国間の航空協定により、路線の便数割り当てがが奇数になってしまう場合などに、双方の航空会社になるべく公平となるよう採られる方法の一つ。使用する機材や乗務員は実際に運航する航空会社の所属であり、搭乗受付カウンターや手荷物引き渡し場所も運行会社用の場所になる。無線交信で使われるコールサインも運行会社のフライトナンバーが使われる。飛行機の塗装は実際に運航する航空会社のものそのままというケースが多いが、中には両社のロゴを併記したものや、胴体左右にそれぞれの航空会社の塗装を施し、マジンガーZの『あしゅら男爵』のようになったものもある。コードシェア『してもらう』航空会社は座席の50%前後を運行会社から買い取り、販売を行うのみで、コードシェア便に限って言えば、航空会社の看板を出してはいるが『販売代理店』と言っていい。相手方が本拠とする国での営業・販売ネットワークや知名度などを活かせるというメリットもある。ただし、コードシェア『してもらう』航空会社の乗客にしてみれば『発着するターミナル、あるいは空港が異なる場合がある』『機内サービスが異なる』『マイレージサービスのマイル加算割合が異なる場合がある、あるいはマイル対象にならない場合もある』『一部の割引運賃では利用できない場合がある』など、路線や便数が増える以外のメリットはない(PEX運賃で往復異なる航空会社に乗れるというマニアックなメリットはあるが…)このため時刻表には必ず断り書きが入るが、いちいち時刻表など確認せずに申し込むパッケージツアーなどではトラブルのタネになることも…。

【ゴールキーパー】[GoalKeeper]
 オランダ海軍の対艦ミサイル迎撃用艦載近接防御火器。艦載機、艦隊防空ミサイル、近接防空ミサイルからなる防空網をかいくぐって接近する敵ミサイルを自動照準の機関砲で迎撃する。文字通り『最後の守り』となる。旧ソ連海軍の全長10mを超える大型対艦ミサイル(西側のハープーンは4mほど)には、西側諸国で広く用いられている『バルカン・ファランクス』の20mm機関砲では対抗できないと危惧され、より大口径の30mm機関砲を搭載している。

【コールド・アンド・ダーク・コクピット】[Cold and Dark Cockpit]
 コクピット内の機器、システム関係の一切の電源が落ちている状態。国内線などで短時間での折り返しでもない限り、普通はこの状態から飛行機を動かす準備をする。ボーイング747の場合、オーバーヘッドコンソールにあるバッテリースイッチを入れ、スタンバイ・パワー・セレクターをAUTOにして、油圧関係のスイッチをチェックし、オルタネート関連のスイッチをチェックしたのち、APUセレクターをSTARTにするとAPU(補助動力装置)が作動し、飛行機が動かせるようになる(まだ飛ばせない)クルマよりちょっと手間数は多い(ちょっとなんてもんじゃないぞ)コクピットの各機器の電源が入り、APUが始動している状態から乗務に入る場合はスルー・ステーション・フライト(Through Station Flight)と言う。多くのフライトシミュレータの場合、スルー・ステーション・フライトどころか、いきなりエンジンがかかっている状態から始まるから興ざめである。真のメカファンにとってシステム起動からエンジン始動までのシークェンスを楽しめない、いわゆる火入れの儀式のできぬフライトシムなど、定番であれ何であれ、ゴミ同然である。

【コクーン】[Cocoon]
 繭のことであるが、飛行機が自分で糸を吐いて作るのではない。ポリエチレンなどの樹脂を吹き付けて機体を覆い、風雨などから保護しておくこと。つい先頃まで東京・有明の船の科学館に展示されていた旧帝国海軍の二式飛行艇は、戦後アメリカに接収されていた一時期コクーンに包まれて保管されていたことがある。コクピット正面窓が茶色く汚れているのが、剥がれずに残ったコクーンの名残だそうである。

【コクピット】[cockpit]
 飛行機の操縦室。車の運転席程度でもかっこつけてこう呼ぶこともあるが、元々は『闘鶏場』(a pit for cockfight)あるいは『闘鶏の籠』を意味しているとか。キャノピーのない機体で、操縦士が首だけ出してきょろきょろしている姿が、籠の編み目から首だけ出している闘鶏の姿に似ているからだとか、あの狭い中でスイッチ操作して管制官と交信してチェックリスト読み上げてレバー操作して計器読み上げてる姿が闘鶏みたいだからとか、諸説ある。故に、エアコンの効いた車内で音楽かけて助手席の女のコを口説いてるなんてのは、コクピットなどであるはずがない。ただの『運転席』である。だいたい、地図も読めないおねいちゃんが座っていてナビ席もないもんだ。なお、余談だが『運転台』とは、椅子も風防もなく雨ざらしの、ごく初期の路面電車や蒸気機関車の運転操作場所のことである。

【こたいロケット】[固体ロケット]
 固体燃料を燃焼させて、発生した燃焼ガスを一方向に向かって噴射させ、その反動を動力とする内燃機関の一種。固体燃料は燃料と、燃焼に必要な酸素を発生させる酸化剤が混合されて固形化されていて、外部からの酸素に依存せずに燃焼することができる。ロケットモーターと呼ばれるものは、この固体ロケットのこと。液体酸素や、毒性の高いヒドラジンなどの液体燃料よりは安全性が高いため、ロケットの中に燃料を入れっぱなしにできる。だから即時発射できる体制が必要なミサイルなど、軍事用にうってつけである。その代わり一度固体ロケットに火がついたら、出力制御どころか燃料が尽きるまでは燃えるに任せるしかない。
 固体ロケットは人類が最初に作った動力つき飛行物体といわれ、14世紀末のイタリアが発祥という説が有力である。それ以前にも黒色火薬の燃焼ガスを利用して推力を得る飛行物体は中国などで研究されていたようだが、それが成功したと言える確たる証拠はない。特に唐代にロケットがあったとする説は、火箭(かせん)という、黒色火薬を使った火矢の一種をロケットと誤認しているものと思われる。元の時代とする説には「震雷天」とか「てつはう」といった武器が登場するが、これらは火薬を詰めた鉄や陶器製の球を投石機などで投擲し、爆発によって飛び散る破片で周囲にいる人馬を殺傷する兵器で、今風に言えば瑠弾である。ロケットではない。さらに時代が下がり、火龍経という1400年代の書物に紹介されるロケットは、どう考えてもまともに飛ばないだろ、ってシロモノが満載である。先端に龍の頭が付いて口から火を吐き、制御の効かない固体ロケットが3クラスター(三本のロケットを束ねたもの)二段式で飛ぶ(現在の宇宙ロケット以上の技術だ)なんて、そんなものがまともに飛ぶとお思いか?と小一時間問い詰めたい。どう見ても妄想の産物である。中国史の先生方が大いに盛り上がっているところに誠に申し訳ないが、ちょっと航空機やロケットに興味を持った人なら、安定性やら何やらで問題がありそうな形状だってことは素人でもわかる。アラブ・イスラム圏で使用されていたとされる卵形ロケットも、同様の理由でまともには飛ばなかったはずだ。
 ヨーロッパでは元の侵攻をきっかけに火薬がもたらされ、まず爆薬として使用され、続いて銃砲が発明され、元のヨーロッパ侵攻から200年近くを経て、ようやくロケッタ(イタリア語で糸巻き器。ロケットの語源である)というものが文献に登場する。1379年のことである。城塞攻撃や突撃啓開兵器(…こけおどし、とも言う)として使われるようになり、200年かけて世界中に広まってゆく。
 日本人がはじめてロケットの洗礼を受けたのは1592年。朝鮮出兵で知られる文禄の役のときのこと。ただそのとき、日本人はロケットに殆ど興味を示さなかった。朝鮮側が使用していたのは明らかなのだが、日本側ではロケットに関する記述は多くない。おそらくロケットによる損害は軽微なもので、脅威とは見ていなかったのだろう。日本人がロケットを手にするのは1600年に豊後(大分県)臼杵に漂着したオランダ船リーフデ号(三浦按針ことウィリアム・アダムスが乗っていた船だ)が積んでいた350本が最初。手にしたのは徳川家康。ところが家康はロケットの中に詰まっていた火薬を抜き取らせ、鉄砲・大砲の装薬にしてしまった。よって、関ヶ原の空にロケット弾が飛んだっていう記録はない。狼煙用ロケットは飛んだらしいが。日本は黒色火薬の原料である硝石が採れないから、火薬は貴重品だった。日本で硝石のあるところと言ったら、何と古い便所の土から耳かき一杯分、だそうだ。貴重な火薬を大量に使うばかりで使い物になるかどうかよくわからない新兵器より、威力も用法も知り尽くして数が揃っていた鉄砲に回したのだった。
 徳川幕府が成立し天下太平の世になると、ロケットは龍勢と呼ばれ神様に奉納されるようになる。天の神様にお願い届け!ってわけだ。両国の大川(隅田川)川開きでも花火に混じって打ち上げられたが、火事の原因になるとかなったとかで、幕府は江戸市中での龍勢打ち上げを禁止している。龍勢の打ち上げは現在でも埼玉県吉田町、静岡県志太郡岡部町、静岡市清水草薙、滋賀県米原町で行われている。中でも埼玉県吉田町の椋神社で毎年10月第二日曜日に行われる龍勢祭りが有名だ。
 ここまでのロケットはコングレーブ式ロケットという分類に属し、ロケットの後ろに長い棒が伸びているのが特徴。アメリカのテレビマンガにでてくる、とんがり帽子を頭に付け、後ろに長い棒が伸びているオレンジ色のあのロケットこそ、まさにコングレーブ式ロケットである。ロケットから伸びている棒をパイプに差し込み、パイプの向きや角度で発射方向・発射角を決める。飛行中はロケット本体と棒のバランスによって飛行姿勢を安定させている。玩具店などで花火として売っているロケットと同じである。
 19世紀になるとニトロセルロースやニトログリセリンなどが開発され、火薬は大きく進歩した。推力が大きく長時間燃焼が可能になると、ロケットの射程が大きく伸び、代わって問題になったのが命中精度。安定性のあまり宜しくないコングレーブ式ロケットに代わって、1840年代に英国人ウイリアム・ヘールによって開発されたヘール式ロケットが登場する。翼をひねって付けたり燃焼ガスの噴射方向に角度を付けることでロール軸方向のスピン(進行方向を軸とする回転)を与え、飛行姿勢や方向を安定させるもので、これが現在のロケットの原型である。ただ、初速がはるかに速くスピン回転数の多い火砲に比べると命中精度はまだ遠く及ばなかった。よって大量のロケットをバカスカ撃ち込んで面を制圧するという、14世紀のロケッタと大して変わらない使い方しかできなかった。怪獣映画に出てきてトラックの荷台でバシュバシュ火を噴いてるあれだ。多連装ロケットランチャーって言うんだけどね。
 ロケットが現在の地位を確立するのは飛行中の誘導制御技術が確立されてからのことで、実験が始まるのが1940年代。誘導弾の開発を諦めて大型のロケット弾に手っ取り早く人を乗せたのが、かの特攻機桜花である。のちにその桜花の固体燃料生産設備を使って、日本は宇宙ロケット開発の第一歩を踏み出してゆくのだが、それはまた、別のお話…。軽量で安定した誘導制御機器がシリコントランジスタの開発によって可能となり(その前に出たゲルマニウムトランジスタは、ロケット内部の高温で壊れてしまった)火砲を凌駕したとまで言われるようになるのは1950年代に入ってのことである。誘導制御が可能なロケット弾を、ミサイルと呼んでいる。
 う〜ん、さすが600年の歴史を誇っているだけあって、話が長くなったぞ。

【コックピー】《S》
 コクピットクルーのこと。その昔流行した死語『パンピー』と同様、侮蔑的な意味を含むものと思われる。「コクピットのオヤジどもがさぁ…」ぐらいの意味であろう。

【コニー】
 「♪愛知のトラックコニー…」では、もちろんない。飛行機の話をしていてコニーと言えばロッキード・コンステレーションのことである。1939年にTWAから4発レシプロ旅客機の要求を受け開発着手。TWAのオーナーでスピード狂のヒコーキマニアとして知られる大富豪『ハワード・ヒューズ』が設計にあれこれ口を挟んだという話もある。初飛行は1943年。戦時中でいかにアメリカといえども旅客機どころではない時代だったが軍に大型輸送機として売り込み、開発費用の一部をちゃっかりと軍からせしめている…ロッキード、お主も悪よのぅ…。多くの人々が今なお「もっとも美しい飛行機」にその名を挙げる、大型レシプロ機の最後を飾るに相応しい名機である。
 さて、余談だが前述の愛知コニーのメーカー、愛知機械工業は1898年に設立された愛知時計電機製造株式会社が前身。1943年同社の航空機部門を独立させた『愛知航空機株式会社』は『零式水上偵察機』特殊攻撃機『晴嵐』艦上攻撃機『流星改』などの製造で知られている。愛知機械工業は1947年に三輪トラック『ヂャイアント』1959年に四輪軽トラック『コニー360』を製造し、現在では日産車のエンジンを製造している。

【このはおとし】[木の葉落とし]
 必殺技の代名詞。戦争マンガからスポ根アニメに至るまで重宝される。
(1)零戦が得意とした空中機動で、敵機に真後ろにつかれた状態から上昇して逃げると見せかけて実は失速状態になって一気に降下して一旦逃れ、敵機の後ろに食らいついて撃墜するというもの。目の前にいた零戦が消えるのだそうだ。低空ではあまりやりたくないし、追突されたら目も当てられない。しかも敵機は常に2機で組んでいたので、後ろに控えて高度と速度を保ったままのもう1機を相手にして速度と高度を失ってしまった零戦は勝ち目ないんじゃないかと思うのだが…。ましてや失速降下した後に非力な零戦が敵機の後ろに食らいついて撃墜するってのは、う〜ん、どうなんでしょう?いわゆる一つの必殺技、木の葉フォールですか?どうも木の葉落としの起源は1960年代ごろのマンガのようで、ナントカ魔球の類と同じものらしい。零戦搭乗員の手記でも木の葉落としを否定する記述が見られる。

(2)機体を横滑りさせて、ひらひらと、木の葉が落ちてゆくような飛び方。敵機が後ろから攻撃してきた際に回避手段として用いたようである。本来の木の葉落としは、こちらだったと思われる。
(3)おっと、ここでアタックNo.1の『秘球・木の葉落とし』を忘れてはいけない。鮎原こずえが得意とする変化球サーブである。なお、他にも『竜巻落とし』『風船アタック』などがあり、対抗手段には『三位一体の攻撃』『ボルチンスカヤの殺人スパイク』などがある。こうなるとまさに空中戦の様相である。ま、実際、バレーボールってのは空中戦である。背の高い選手を揃えれば圧倒的な制空権を手にできるし、背の低い選手ばかりのチームにしてみれば、それはまさに成層圏を悠々と飛ぶB29に挑むようなものだ。

【コ・パイロット】[Co-Pilot]
(1)副操縦士。機長の補佐役であり、機長の見習いでもある。概ね右側の席に座り、チェックリストの読み上げや無線交信などを担当する。機長の見習いなので、訓練として左席に座り操縦をすることもある。
(2)フォックスコーポレーションが発売しているラジコンヘリの操縦補助装置FMA Direct Co-Pilot。赤外線センサーで地面からの輻射熱を感知し、機体を水平に保ってくれる。ラジコンヘリは姿勢を維持するだけで一苦労なのである。ラジコンヘリをこれから始めようという方、どうしてもうまく飛ばせない方にはお勧めである。もう少し早く出てくれたら、編者はスクラップの山を作らずに済んだのだが…。

【ごばく】[誤爆]
(1)目標を誤り、味方を爆撃してしまうこと。最近は軍事施設以外のものを爆撃してしまっても、世界的規模で誤爆と叩かれる。一人でも民間人の犠牲を出そうものなら、そりゃもう大変である。逆に言うと、民間人さえ巻き込まなければ、もう何でもありって雰囲気もあるし、民間施設をあたかも軍施設のように装い、誤爆を誘おうとしたり、人間の楯と称して戦略目標に民間人を配置しておき、爆撃よけにするという手段もある。汚かろうがセコかろうが、そこは命のやりとりである。戦争ってのはそういうものなのである。
(2)《F》転じて、インターネットの匿名掲示板で、違うスレッドや掲示板に誤って書き込みをしてしまうミスを言う。普通はスレ違いとか板違いと言う。軍事関係や航空関係の掲示板で主に使われる。書き込んでしまった内容が攻撃的だった場合は、もう回線切ってケーブルで首吊って逝ってよし、である。

【ゴブリン】
 マクダネルXF-85ゴブリン。B-36の爆弾倉に収容されて、敵の迎撃機がやってきたら爆弾倉から発進して爆撃隊を護衛し、用が済んだら再び爆弾倉に収められる、だから航続距離は短くていい、という王様のアイデアも真っ青の戦闘機。爆弾倉に収めるために全長4.9m、全幅6.4mのオモチャみたいなジェット戦闘機。どこから見てもハセガワの『たまご飛行機』そのまんま。安定性なんかまるっきりない代物で、全高をクリアするため垂直尾翼・水平尾翼は合わせてなんと6枚、主翼端にもウイングレットみたいなものがあるが、実はそんな洒落たものではなく、付ける場所がなくなって無理矢理ここに付けた垂直安定板だというからトホホである。行き当たりばったりを遺憾なく発揮してどうにか飛ぶことは飛んだらしいが、飛行中のB-36に収容しようとしても、安定性の悪さ故B-36が出すアームになかなか連結できず、飛行中の再収容は非常に難しかったとか。航空史上に残る『お笑い戦闘機』の真打ちである。最近こういう面白い飛行機がないねぇ…。

【こまき】[小牧]
 日本における航空機産業の一大拠点。別名「日本のエバレット」…ってそういう言い方は恥ずかしいからやめなさい。「もしも!東京が直下型大地震で壊滅したとしたとしたら!そう!日本の中枢は名古屋に移り、瑞穂グランドが国立競技場に!小牧は国際空港に!そして!名古屋市役所が国会議事堂になるのだ!」って名古屋人は本気で思っているらしい。パリまで直行すると燃料が重くて離陸できないから成田に寄って燃料を追加しなきゃならない、あの小牧が国際空港…。おみゃ〜ら、そういうことゆ〜とるから名古屋がた〜けにされるんだで。

【こまたのきれあがった】[小股の切れ上がった]
 ボーイング737に対する形容。誰が言い出したか知らないが、今やボーイング737に対する形容でしかお目にかかれない言葉である。つまり、立派な航空用語だ(…強引である)本来の意味は「和服を着た女性が,すらりと粋な様子」(新選国語辞典:小学館)「女性の足がすらりと長く,いきな姿」(大辞泉:小学館)「きりりとして小粋な女性の形容」(大辞林:三省堂)だそうである。まあそう言われれば、737が『小股が切れ上がっている』のも何となくわからなくもない。その伝で言えばA320などは『ぷにで萌え〜』と言うべきであろう。さて『小股』とはどこなのか、これは諸説紛々ではっきりしない。足袋を履いたときの親指と、他の指との間のことであるとか、 膝から下の脚の部位を指すとか、いろいろである。

【ごまだん】[護摩壇]《F》
 出発ラウンジの喫煙コーナーのこと。喫煙コーナーで煙草を喫うことを『護摩壇で護摩を焚く』と言い、愛煙家が搭乗前に行う重要な儀式である。搭乗口と時計を交互ににらみながら、みなさん時間ギリギリ、フィルターギリギリまで深呼吸で喫っておられる。国際線ならともかく、1時間程度のフライトでそこまでせんでも…。

【コメット】
(1)Appleのノートパソコン、PowerBook2400/180の開発コードネーム。設計と製造は日本IBMである。これを手にすることなくIBMマンセーを叫ぶのは、如何なものかと思うが、iヶ谷君…。
 PowerBook2400の後継機種を出さないという理由で、カリスマ的人気を誇っていると言われるAppleのCEOが、一部では相当嫌われているのも事実である。編者もそういうひとりである。
(2)一番星から見える一番星の、ずっとずっと向こうからやってきた、魔法使いのお手伝いさん。
(3)イギリスの旅客機、デハビランド・コメットのこと。世界初のジェット旅客機である。(…おい!それだけかい!)

(4)デハビランドDH88コメット。この美しき真紅の双発木製レーサーを忘れてはいけない。1934年にロンドン・メルボルン間で行われたビクトリア州100周年記念エアレースの優勝機である。タイムは70時間54分18秒。

【コンコルドスキー】《F》
 旧ソ連の超音速旅客機、Tu144の渾名。渾名だぞ、正式名称じゃないぞTBS!
 事故続きでお蔵入りしていたものを、NASA(アメリカ航空宇宙局)がロシアから借りて一時期実験機として飛ばしていた。コンコルドそっくりなのでこの渾名があるが、超音速旅客機なんてものは、性能が同じぐらいのものなら形もそっくり同じになって当たり前。とはいえ、ソ連領内に不時着したB-29を、補修のパッチまで完璧に再現して量産されたツポレフTu-4とか、いろいろ前科のある国だから、言われちまうのも仕方あるまい。そういえば、マクロスプラスに登場したVF-19アドバンスドバルキリーを再現したと言われる、スホーイS-37ベルクートなんてのも出てきたな。バトロイドには変形しないようだが…。

【こんじょうフライト】[混乗フライト]《S》
 異なるベースに配属されている客室乗務員が、一緒に乗務すること。全日空で使われる用語で、日本航空では『ミングル』という言葉がこれにあたるようである。どこのベースに配属されても同じ訓練を受けているはずなのだが、配属先によって多少は仕事の手順などが異なったりする場合もあるらしく、お互い気を遣うらしい。『根性の要る過酷なフライト』ではない。

【コンチ】《F》
 コンチネンタル航空、またはコンチネンタル・ミクロネシア航空のこと。『コンチこれまた航空』と呼ぶ人もいる。「こんちこれまたどうも、よっ!旦那、相変わらず粋でらっしゃるねぇこの女泣かせ!憎いねぇ…」

【コンピュータ】
 
パイロットなら必ず持っている。ポケットに収まり、取り出して即使える、これぞ真のモバイルコンピュータ。電源不要でフリーズやウィルスにも無縁という夢のようなコンピュータ。対地速度、所用飛行時間、飛行距離、燃料消費量、風向風速、航跡、真進路、真大気速度など、航法に必要なあらゆる計算が可能。もちろん、ボーナスの皮算用に住宅ローンの残額、給料日まで一日何円で暮らすかまで算出できる。残念ながらCGやメールはできない。なにしろ航法『計算盤』だから…。電源を入れると「ジャーン」と音がして、画面にスマイルフェイスが現れるようなコンピュータではないし、再インストールに丸一日費やす『ういんどうず』とかいう奴でも、もちろんない。

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