【サービサ】[servicer]
(1)給油ホース車。ホース、流量計、フィルタ、作業用リフトなど給油作業に必要な機材を装備している。レフューラからタンクとポンプを除いたものと考えてよい。エプロンエリアに張り巡らされた送油管から機体の燃料タンクに燃料を送るもの。燃料は送油管から圧送されるので、サービサにはポンプは搭載されていない。消防法上『航空機給油取扱所』の中の『給油ホース車』として扱われ、ガソリンスタンドと同等の扱いとなる。送油管は消防法上『航空機給油取扱所』の中の『固定給油設備』として扱われる。サービサは、固定給油設備とセットで使われるものなので、こうした設備を有する比較的大規模な空港で使われる。
(2)一般には、不良債権の回収業者のことを言う。
【サーフェス】[Surface]
『オープンジョー形態の旅行における地上運送区間』と定義されている。ごく簡単に言ってしまえば、往復の航空旅行で往路の着地と復路の発地が異なる場合など、航空機を利用した行程に連続しない区間が生じる場合にその間を結ぶ陸・海運利用の区間のこと。航空券とは別途手配・請求となる。
【サーマル】[thermal]
上昇気流。特に熱上昇気流のことを言う。太陽と、地面からの輻射で熱せられた空気は、軽くなるため上昇する。熱上昇気流は地面からの輻射を得やすい場所で特に発生し、日陰のない大きな広場や運動場、日なたの斜面などでよく発生して、模型飛行機を飛ばすには最適だが、あまりに巨大で強力なサーマルに捕まると機体が分解してしまうこともある。逆に、大きな池や森林のある公園、背の高い草が生い茂っているところや河川などでは下降気流が起こり、模型飛行機を飛ばすのにはあまり向かない。ちょっとしたサーマルでも、その中心を捉えるとラジコングライダーを点にしてしまうほど上昇させ、ちょっと腕に覚えのある人なら高度2000mぐらいまで上げてしまうそうである。こうなるともう肉眼では見えないし、本物の航空機に支障を及ぼす場合もあるから程々にね。
【サーマルジェットエンジン】[thermal
jet engine]
燃料を連続的に燃焼させるジェットエンジン。ジェットエンジンの殆どはサーマルジェットエンジンである。断続的に燃焼させるのは intermittent
duct jet。パルスジェットエンジンがこれにあたる。
【さいうん】[彩雲]
お線香ではない。旧帝国海軍の艦上偵察機。グアム偵察における「我に追いつくグラマンなし」の電文で知られる海軍最速の最大速度610km/hを誇った高速機だが「敵機がゴマ粒ほどに見えたら要注意」という但し書きがつく。つまり、加速に時間が掛かるから早めに逃げよ、ということ。「逃げるとは何事!」と思われるかもしれないが、偵察機は情報を『持ち帰る』のが任務。フルスピードを出した後はリベットが緩んであちこちガタガタになったそうだ。
艦上偵察機なのだが,登場した時には既に肝心の空母もなく、一旦は取り付けた着艦フックを外して納品されている。末期は応急改造で30mm機銃を斜銃として装備しB29迎撃にも使われたが、30mm機銃は反動が大きくその上機体強度もなかったため、斜銃を撃つと骨組みが歪んで外板に皺が入ったという。
【さいがいしゅつどう】[災害出動]
消防・警察などでは対処が難しいか、あるいは手が回らないような大規模な災害が発生した場合に、自衛隊に下される出動命令。都道府県知事からの要請に基づき防衛庁長官が発令する。航空機事故の場合に限り空港長にも要請を行う権限がある。災害出動は出動要請があって、はじめて防衛庁長官の出動命令を出すことができる。出動要請は陸・海・空の自衛隊それぞれに出す必要がある。この辺の手続きは大変難儀で、都道府県庁の役人が不勉強だと、時として担当の幹部自衛官が都道府県庁や知事公舎まで出向き、要請をもらってくるという誠に奇妙な事態も起こってしまう。要請する権限を有する者が特定の思想に凝り固まっていたり、ボンクラだったりすると、助かる命も助からない。出動準備を終えた部隊が、基地や駐屯地で出動命令が下るのをひたすら待ち続けるという事態は、過去に何度も起こっている。権限を有する者を選ぶのは、貴方の一票です。くれぐれもボンクラを選ばないように…。なお、例外として基地・駐屯地近隣で発生した災害に限り、その基地・駐屯地にある部隊は、都道府県知事の要請なしに災害出動を行うことができる。
【さいがいはっせいじにおけるそうきていさつじょうほうのかくほ】[災害発生時における早期偵察情報の確保]
役所の用語ってのは、どうしてこうも長ったらしいのか…。災害時に被災状況の掌握のために行う偵察活動。被災地上空を偵察機が飛ぶだけなので災害出動には当たらず、被災地自治体からの要請がない段階でも自衛隊の独断で行える。このために百里の501偵察飛行隊はアラート待機を行っている。偵察写真を見せられてはじめてことの重大さに気づき、災害出動を要請した知事さんもいたらしい。とほほである。出動命令が下る前に被災地の偵察をやっておかないと、救援に向かう部隊は、どこから被災地に入れるのか、どこから手を付けるべきかさっぱりわからなくなってしまう。
【さいごのゆうじんせんとうき】[最後の有人戦闘機]
ロッキードF104スターファイターの登場当時のキャッチフレーズ。これからはミサイルの時代!ミサイル同士のぶつかり合いこそ未来の戦争!と考えられていたから、『究極の有人戦闘機』をアピールする意味でこのようなフレーズが登場した。しかし、その後50年近く経った今なお有人戦闘機が花盛りなのはご存知のとおり。
さらに皮肉なことにこの『最後の有人戦闘機』の多くは最後は無人の標的機として生涯を終えている。先のことなんて誰にもわからない…。→栄光
【さいしゅうあんない】[最終案内]
(1)ドアクローズ直前に行われる最終の搭乗案内放送。自分の乗る便の最終案内を聞いているようでは遅いね。なお、最終案内の後、出発時刻を過ぎてなお搭乗していなかった場合、名指しで『お呼び出し』をされるのでご注意を。
(2)「…君をのせた 鳥がやがて翼はためかせて 赤や緑のランプを飛び越えてゆく…」さだまさしが、アルバム『風見鶏』(1977年)で発表した曲。
【さいだいちゃくりくじゅうりょう】[最大着陸重量]
航空機が着陸できる最大の重量。降着装置の強度や機体強度によって決まり、この重量を超えての着陸は降着装置などの破損を起こすおそれがある。最大離陸重量を超えることはない。離陸直後にトラブルが発生して引き返すような場合、燃料を空中で投棄して最大着陸重量を下回らないと安全な着陸はできない。燃料を投棄することは必ずしも危険な状態を表しているという訳ではないのでこのような場合、着陸後も慌てずに乗務員の指示に従うこと。過去に緊急脱出の必要がない軽微な故障での引き返しで「燃料を投棄」というアナウンスに乗客がパニックを起こし、機内が大混乱になった挙げ句に脱出シューターなどで多くの負傷者を出した事例もある。
【さいだいりりくじゅうりょう】[最大離陸重量]
航空機が離陸できる重量の限界。あくまでも機体の限界であって、実際には飛行場の滑走路の長さや気象条件などでさらに制限を受け、最大離陸重量で離陸するケースはまれである。総重量、最大全備重量という場合もある。最大ランプ重量は最大離陸重量に、ランプから滑走路までのタキシングで消費する燃料の重量を足したもの。空港の着陸料は最大離陸重量をもとに算出する
…って、何か詐欺にでも遭ったみたいだ。
余談だが、燃料をタンク一杯まで入れ、旅客も貨物も目一杯乗せた航空機は、最大離陸重量をオーバーしてしまう。このため、長距離国際線では旅客や貨物を減らし、需要の多い国内幹線などでは、逆に燃料を必要な分だけにとどめたりする。国内線機材と、長距離国際線機材で定員が異なるのは、長距離路線のほうがお客が少ないから、だけではなく、その分燃料を積んでいるからでもある。
【サイドワインダー】
アメリカ製の赤外線追尾型短距離空対空ミサイルAIM-9。1958年の金門島事件の際に台湾空軍によって初めて実戦使用された。日本を含む多くの西側諸国で採用され、現在に至るまで改良を繰り返し使用され続けている。部品の交換で新型へアップグレードが可能なモデルもあり、その辺のパソコンなんかよりよっぽど気が利いている。名称の由来はアメリカの砂漠に棲息するヨコバイガラガラヘビ。ガラガラヘビを含むクサリヘビ科の多くは、獲物の熱を探知するために、ピット器官という赤外線を感知する器官を持っている。
【さくらだん】[桜弾]
旧帝国陸軍の四式重爆撃機飛龍の一部に搭載されていた、直径2mの半円形の爆薬を鋼板で覆った特殊爆弾。鋼板による爆風反射で爆発のエネルギーは前方に集中する。コクピット後方に設置され、機首周辺に放射状に設けられた信管によって爆発する。投下するための爆弾ではなく、体当たり攻撃のための爆弾である。車輪を残して離陸するレシプロ特攻機剣とか、ベニア板のロケット特攻機桜花とか、特攻専用機にもいろいろあるが、いずれもこんなモノに乗って国のために死ななければならなかった人々に対する敬意もへったくれもない。一旦特攻という方針が決まると、たがが外れたようにとんでもない飛行機を作りまくったのである。
【ささやくジェット】
全日空が運航していたロッキードL1011トライスターのキャッチフレーズ。当時の他の機種に比べると相当静かなエンジン音だった。ただ、ささやくというには少々大袈裟だが…。全日空は次期主力機の選定にあたって、伊丹でDC-10とトライスターの騒音を比較する測定を行ったのだが、トライスター相手では勝負にならぬと見たダグラスは測定地点手前でDC-10を急上昇させてしまい、騒音測定結果の正確な比較はできなかった。おのれダグラスめ、尋常に勝負を致せ!逃げるとは卑怯なりぃぃ…!
【サバイバー】[survivor]
生存者、もしくは要救助者。わざわざ無人島(なのか?)まで行ってなんやかや口論ばかりしているあの番組ではない。つ〜か、わざわざ無人島に残りたがるサバイバーって…?
【さぶろう】[SUBLO]《S》
SUBject to LOadの略。予約が認められない航空券を所持しており、空席が生じれば搭乗できる乗客のこと。 スカイメイトなどがこれにあたる。
【ザマ・ホーク】《F》
キャンプ座間に駐留する米陸軍第78航空大隊(78AvnBn)所属のUH-60A『ブラックホーク』ヘリコプターのこと。座間のブラックホークで『ザマ・ホーク』
余談だが、78航空大隊が通常使用するコールサインは『Ninja』(忍者)だ。
【さらしくび】[さらし首]《F》
博物館などで、機首だけが展示されている機体。夜な夜なあたりを飛び回るらしい。(ウソ)
【サロンケバヤ】
マレー半島南部の女性が着用する民族衣装。アレンジしたものをシンガポール航空でキャビンアテンダントの制服に採用している。七分丈の袖に首周りの広く明いた上着、かなり深いスリットの入ったスカートが特徴だが、いずれも体型にぴったり合わせて作られるため、太ると一発でばれる。デザイナーはピエール・バルマン。模様はシンガポールの国花、蘭の花柄。地の色は昇格と共に青・緑・赤・グレーと変わってゆく。
【サワルナ】
→オスナ
【さんしゅ】[三種]
(1)第三種制服。自衛隊の盛夏服。冬制服が第一種、夏制服が第二種、第三種は盛夏用の略装にあたり、通常勤務中に着用する。薄手の生地で半袖、ノーネクタイである。海上自衛隊の第三種は白一色で汚れが目立ちやすく、半日で薄汚れてくるのに支給数はわずか1着。PX(隊内売店)で私物の三種を大量に買い込んでおかないとローテーションが確保できず、生乾きで着る羽目になってしまうのである。
(2)第三種軍装。旧帝国海軍の草色の制服。山本五十六連合艦隊司令長官はこの服がことのほかお嫌いだったようで、残っている写真は濃紺の第一種軍装か、白の第二種軍装姿ばかりである。
【サン・ダウナーズ】[Sun downners]
VF-111。沈む旭日旗をトレードマークとした米海軍の飛行隊。1942年10月10日にNASノースアイランドでF4Fワイルドキャット飛行隊VF-11として編成され、太平洋戦線に投入される。垂直尾翼やパッチにあしらった沈む旭日旗はこの時代からのもの。1946年にVF-11A、1948年にVF-111と改称。1959年1月19日、NASミラマーで解隊となり、戦歴にピリオドを打つ…と思ったらその翌日にVF-156がVF-111となって二代目サンダウナーズを襲名する、ってよくわからないことをやっている。朝鮮戦争やベトナム戦争にも投入され、1970年代終わりごろまでキティ・ホークに乗って臆面もなく日本にちょくちょく顔を出していたが、1995年3月30日、今度こそホントに解隊され、以後復活していない。やれやれ。50年にもわたってこんなトレードマークを使い続けていたところをみると、本音は日本が同盟国だなんて、思っちゃいないようだぞ。
【さんにいエンド】[32エンド]《F》
大阪(伊丹)空港の南側、Runway32L末端の小径。地元の航空ファンは『千里川』とか『千里川の土手』などと呼んでいる。日本で最も滑走路に近い場所として有名で、着陸進入灯と滑走路の間に一般人が入れる場所など他にないだろう。着陸進入機は手が届きそうな超低空で頭上を通過し、飛行機の写真を撮るなら魚眼から超望遠まで何でも使える。だから、関西の航空ファンには小学生の頃からコンパクトカメラで鍛え上げていたなどという猛者がゴロゴロいるのだ。
周辺住民の散歩道…もとい、生活道路なので立ち入り規制はされていないが、自動車は通行禁止。歩行者も「ジェット機からの噴射で危険なので立ち止まらないように」ということになっているが、誰も気にしていない。夕方になると犬の散歩に部活のランニングコースに子供連れの飛行機見物に例によってアベックにもちろん航空ファンも加わり、平日でも数十人余りが集まって大にぎわいになる。のだが、日没直前にすっと潮が引いたように人がいなくなる。夜はよっぽど治安が悪いのだろうか?
ここは小さいお子さんは泣き出してしまう大迫力なので、ターミナル屋上や、反対側の14エンドあたりから少しずつ慣らしたほうがいいかもしれない。→32エンド
【シートピッチ】
座席中心間隔。シートピッチが大きい(広い)という場合は、座席の前後間隔が広い、ということ。大概の旅客機の座席は、シートレールという前後方向に敷かれた部材を介して床に固定されていて、座席を固定しているボルトを緩めてシートレール上をスライドさせ、シートピッチを調整できるようになっている。同じ機種で同じ座席を使っていても、シートピッチが狭くて定員数の多い、安かろう狭かろうのすし詰め航空会社があれば、逆にシートピッチを広くしてゆとりを持たせた、ちょっと運賃のお高い航空会社もあるし、同じ航空会社でも、投入する路線や季節によって、貨物搭載量や燃料搭載量との兼ね合いでシートピッチを変えて定員を増減させていたりする。
【シートベルト】
航空機に乗ったら必ず締めるもの。航空会社は「お座席のベルト」と言う。なぜベルトを締めるのか。この問いに自らも操縦桿を握ったかの天才漫才師横山やすし師匠は、正味の話としてこう語ったものである。
「腹ァくくる、ちゅうことや!」
…実は、腹をくくってしまうと内蔵を圧迫して危険なので、腰のあたりで締めるってツッコミは、やすし師匠には内緒だぞ。
【ジーニー】[Genie]
なんと!核ロケット弾。米空軍の正式な形式名はMB-1、のちにAIR-2A。使用されている弾頭はW-25という1.5キロトンの原爆なのだが、ロケット弾なので無誘導。1957年から配備され、ノースロップF-89スコーピオンやコンベアF-106デルタダートに装備されていた。核爆発で目標を編隊丸ごと撃破…いや、消滅させるという、なんとも恐るべき兵器。弾頭の威力圏は半径1,000ftと言われる。誘導弾として出すつもりだったが、わずか5km先に原爆撃ち込むだけなら誘導なんて要らないだろということで無誘導にしたらしい。いいかげんなもんである。まあ1950年代の米ソの兵器と言えば核地雷、核砲弾、核魚雷、核爆雷に核機雷って、手榴弾と銃弾以外(当たり前だ)思いついたものはすべて核兵器にしちゃいましたって具合で、とにかく核のオンパレードである。悪の枢軸ってのは誰のことだ?
それはさておき、何しろモノが核弾頭だけに、自分が核爆発に巻き込まれる恐れがあるため至近距離では絶対に使えないのだが、射程距離は5km程しかなく、発射後は即反転して必死に逃げなければならない。で、必死に逃げながら、爆破スイッチをぽちっとなと押し、無線指令で爆発させる。当たり前だが周りに味方が誰もおらず、しかも高々度でないと地上や洋上にいる味方も被害甚大…となる。
マイティマウスではきりがないってんで思い余って作ったらしいが、闇雲というか、大雑把というか…。こんなものを3150発も作ったというからアメリカ様には恐れ入る。改良型のAIR-2Bスーパージーニーなる計画も、途中で頓挫したがあったらしい。どこをどう改良してスーパーにするつもりだったのかは知らないが…。
【シーフィット】[CFIT]
→CFIT
【ジェイムズくん】[ジェイムズ君]《F》
マイルを貯めてる人。もう必死になって貯めてる人。語源は青池靖子作の漫画『エロイカより愛を込めて』に登場する小銭集めに命を燃やす守銭奴、ジェイムズ君である。本人はマイラーを自称するが、マイルを貯めるためにあらゆる手段を駆使するため、その行為がとても奇異に映り、周りからは修行僧とか呼ばれていたりする。普通はまあそこまでなのだが、中には尋常でない手段をとるのもいて、修行僧からジェイムズ君に強制的に昇格させられる。でもまあ、ジェイムズ君と呼ばれているうちは笑いの要素があるからまだましで、まだまだ上には上がいるから…。→修行僧
【ジェットストリーム】[jet stream]
(1)中緯度(40度前後)の対流圏上部から成層圏下部を流れる非常に強い西風。偏西風ともいう。この気流に乗れば所要時間や燃料消費量を大幅に削減できるが、気流が蛇行しているような場合、大きな揺れを伴い危険なため、利用するかどうかはケースバイケース。戦時中、日本本土を爆撃に来たB29は、関東地方上空でこの気流に吹き飛ばされる格好となり、高々度精密爆撃は至難の業。「…はるか雲海の上を、音もなく流れ去る気流は…」ってほど大人しくはないのだ。逆に日本は、爆弾を付けた風船をこの偏西風に乗せれば、太平洋を越えて米本土を爆撃することができると考え、ホントに実行した。いわゆる風船爆弾である。目立った戦果はなかったが、日本の方が偏西風の実態を詳細に把握していたという一例である。→偏西風
(2)『ミスター・ロンリー』のテーマ曲と、城達也のナレーションがカッコ良かった日本航空提供、Tokyo FMの音楽番組。1973年にFM東京が開局した際に、最初に放送した番組である。現在は伊武雅刀がDJを担当している。となればここは是非、ザ・スネークマン・ショーの「愛のチャンピオン号」をかけて頂きたいモノである。
(3)BAe J31と、エンジン出力を向上させたJS31の愛称。19人乗りの双発ターボプロップ旅客機。コミューター航空や乗員訓練用に多く用いられており、日本ではJS31をJ-Airが使用している。開発は1978年末に始まり、1982年に型式証明を取得している。座席配置は2+1列の19席。胴体下面に機外手荷物ポッドを取り付けることができるのだが、これが非常に格好悪い。機体のデザイン台無しである。航続距離は手荷物ポッドなしのJS31で19名搭乗時最大1,100km。1993年に生産終了し、生産機数は380機。このクラスの旅客機としてはかなり売れたと言っていい数である。
(3)1984年頃にサントリーが発売していた『新柑橘系飲料・ジェットストリーム』を忘れてはいけない。チェッカーズが歌っていた「ジェットストリーム、君に向かって〜」というCMソングもあった。日本航空とFM東京のクレームで市場から消えたといわれるが定かではない。
【ジェットねんりょう】[ジェット燃料]
ジェットエンジン(航空タービンエンジン)に使用される燃料。大別して狭沸点範囲の灯油型と広沸点範囲のガソリン型、灯油型とガソリン型の混合がある。灯油型は安全性が高いが、沸点範囲が狭いため対原油得率(原油から得られる割合)が低い。ガソリン型は沸点範囲が広いため対原油得率は高いが、安全性で劣る。えっ、得率が高いのに何故ガソリンは高いのかって?それはガソリンが高いんじゃなくてガソリンの課税額が高いから。ガソリン価格の大半を占めているのは税金だぞ…。それはさておき、ジェット燃料は機種により使用する燃料は異なり、現在では一部の特殊な用途を除き、国際規格で5種類に区分されている。
1. JP-1=米軍が最初に採用したジェット燃料で、MIL F 5616に規定される。-61℃と極めて低い析出点を要求される灯油型ジェット燃料。沸騰範囲が狭いため、対原油得率が低いという生産上の欠点がある。
2. JP-4=主に軍用機が使用しているガソリンとJET-A1を混合した燃料。JET-Bとも呼ばれる。JIS規格では『航空タービン燃料油3号』と称する。MIL
T 5624 Kに規定される。析出点は-61℃で、寒冷地でのフライトではJET-A1との混合で使用される場合もあった。
3. JP-5=空母艦載機が使用する高引火点(61℃以上)のジェット燃料。
4.JET-A=主に米国内で使用されている民間ジェット機用の燃料。 析出点は-40℃とやや高い。
5. JET-A1=民間旅客機や小型ジェット機が使用する燃料。JIS規格では『航空タービン燃料油1号』と称する。→ JET-A1
【しえんせんとうき】[支援戦闘機]
日本以外の国では『戦闘攻撃機』と呼ぶのだが、専守防衛を国是とする日本で『攻撃的』な名称は如何なものかという御批判を受けてかようなお名前を賜っている。戦車をかつて『特車』と呼び、歩兵は『普通科』砲兵は『特科』駆逐艦を『護衛艦』強襲揚陸艦を『輸送艦』と呼ぶのと一緒。勇ましいのはいけません。ダメなものはダメなんです!
で、いったいどこを『支援』するかといえば、敵の地上部隊や艦船を攻撃して、味方の地上部隊や艦船を『支援』する戦闘機だから。
【しおっけがたりない】[潮っ気が足りない]
旧帝国海軍で、艦船乗組員が陸上勤務者や兵学校を出たばかりの新米士官を揶揄した言葉。対抗意識の現れと思えば微笑ましい。艦載機乗りから見れば陸攻乗りは「潮っ気が足りない」というわけ。実際のところ、大きくて鈍重で的になりやすい陸攻のほうが大変だったようだが…。新兵は潮っ気どころか「娑婆っ気が抜けてねぇ!」と『軍人精神注入棒』で尻を叩かれる。「殴られもせずに一人前になったやつが、どこにいるか!」ってところだ。「♪新兵さんはかわいそうだね〜」おっと、このラッパのメロディは陸軍だ。
【しがごう】[志賀号]
日本航空のダグラスDC-8-62、JA8032に付けられていた愛称。1968年11月22日にサンフランシスコ湾に着水しているが幸い死傷者もなく、引き上げの後洗って乾かしてアイロン掛けて(着水のショックで一部外板が歪んだ)1983年まで使われた。海水浴から生還した数少ない陸上機である。
【じげんしんかん】[時限信管]
対空砲弾に使われる、発射後、一定時間(秒)を経過したら爆発する信管。砲弾を装填する前に、接近する敵機の未来位置に合わせて爆発するようにタイマーをセットしておくと、発射とほぼ同時にタイマーが起動する。爆発によって弾片を撒き散らして付近にいる敵機を撃墜するのだが、目標から遠く離れたところで爆発してしまうこともしばしばで、敵機を撃墜するには射手の腕もさることながら、タイマーの設定も重要となる。真珠湾攻撃の際に、米軍は大慌てで日本軍機を迎撃したが、時限信管のタイマーをセットせずに発射させてしまった。この状態では目標に命中しなければ砲弾は爆発せず、何の役にも立たなかったばかりか、外れた大多数の対空砲弾はホノルル市街に雨霰と降り注いで大被害をもたらしてしまったとか。この苦い経験が、後に近接信管『VTフューズ』の開発に繋がっていった…かどうかは定かでない。
【しさくき】[試作機]
読んで字のごとく、試しに作ってみた機体。まあだいたい3〜5機ぐらい作って、設計した通りの性能を持っているかどうか、計算通りの強度を持っているかなどを確認する。その結果をもとに設計を手直して量産に移る。だから試作機は量産機より性能が劣る場合の方が多い。もちろん武装はない。あるのは搭載予定の場所に押し込まれた錘である。だからエースパイロットが乗り込んで、敵のやられメカをバッタバッタとなぎ倒す試作機なんてのはあり得ない。
「試作機は実戦では使えません!アニメ屋さんにはそれがわからんのです!」
【じつざいガム】[実在ガム]
燃料油中に含まれるガム質の一つ。ガム質はエンジン故障の原因となりガム量は少ない方が望ましい。燃料油中に含まれる実在ガムの量は実在ガム試験によって求められる。航空ガソリンの場合は155℃に加熱し、空気を噴射して蒸発させた後の残留物をn-ヘプタンで洗浄した後に得られるn-ヘプタン不溶物をいう。ジェット燃料の場合は232℃に加熱し、水蒸気噴射して得られる残留物をn-ヘプタンで洗浄した後に得られるn-ヘプタン不溶物をいう。いずれも試料100mlあたりのmg数で表す。n-ヘプタンで溶けないため『不溶性ガム』とも言い、n-ヘプタンで溶ける『可溶性ガム』と分けている。
【ジッパーコード】
無線のプレストークボタン(通話時に押すマイクのボタン)をカチカチと2回押すと、相手には「ザッザッ」というジッパーを上げ下げしたようなノイズが聞こえる。これだけで「了解」を意味する。空戦中にいちいち声に出して「りょうか〜い、あっ、隕石だぁ。ぶつかるぅ。ど〜ぞ〜」(ザ・スネークマンショー、愛のチャンピオン号)なんてことは言ってられない。プレストークボタンの2度押しでおっけいであるが、部隊内通信で使用するもので、国土交通大臣様のご名代であらせられる管制官様との交信に使うなど無礼千万である。そんなことをしたら着陸のお許しを頂けないぞ。
【シップチェンジ】[Ship change]
『しっぷちぇんじ』と打って変換したら『湿布チェンジ』だと…。ナイスだATOK。それはさておき、シップチェンジとは故障などの理由で、使用する飛行機を変更すること。予備機材を置いている空港なら話が早いが、地方や外国の空港で、修理が長時間にわたるような故障や部品がない場合などはシップチェンジ機材の到着待ちということになり、出発が大幅に遅れ大変なことになる。広義のシップチェンジとは単に『飛行機の変更』だが、狭義のシップチェンジは『同一機種との変更』のこと。他の機種への変更は『タイプチェンジ』と呼び分けている。
【しでん】[紫電]
→紫電改
【しでんかい】[紫電改]
ちばてつやの漫画『紫電改のタカ』や育毛剤の名前でも知られる名機、紫電改だが、正しくは『紫電21型』以降をいう。オリジナルの紫電11型とは明らかに別物としかいいようのない形なのだが、これは元を正せば川西の水上戦闘機『強風』から話は始まる。
下駄履きの水上機は性能上大きなハンデを背負っており損害が大きかった。このため、川西は活躍の場を失いつつあった水上戦闘機を陸上機化して活路を見いだそうとした。ここまではいい。紫電11型はこうして水上戦闘機強風から生まれたのだが、強風の中翼配置はそのままに脚を追加しただけだったのが間違いの元。脚が長くなり過ぎ格納時の収まりがつかず、格納時は脚を縮めるようにしたために複雑な機構の脚は故障続発。あわてて低翼配置に変更したのが21型、つまり紫電改という、話せば長いというか、すったもんだの大騒ぎが裏にある。近道と思ったのは、実は遠回り…よくある話だ。おかげで原型の紫電は1000機以上生産されたのに、紫電改の生産機数は300機程度。兵器としては余りにも少ない機数にとどまり、松山の343航空隊が展開できた程度で終戦を迎えた。
どう見ても紫電と紫電改は明らかに別物なので、同じ紫電と呼ぶにはいろいろと弊害があったため、紫電改なのだろう。紫電改自体はいい飛行機だったんだけどねぇ…。→紫電
【じてんしゃ】[自転車]
広大な飛行場の必需品。自衛隊では航空団長専用車とか、基地司令専用車なんてのもあったりする。ちゃんと専用の駐輪場所があり、白ペンキで枠が書かれ、ご丁寧に団長専用車とか司令専用車と書いてある。そこに停められている自転車は、ごっつい実用車だが、毎日当直が磨いているらしくピカピカである。
【シニョリティ】[seniority]
勤続年数。「アテンションプリーズを見てこの世界に入った人は、相当シニョリティが高い」などというふうに使う。キャビンアテンダントは、キャビンのデューティー(配置)からスタンバイの呼び出し優先順位、タクシーの席次、果ては着用できるサービス用エプロンの色までシニョリティによって決定される。だから『スチュワーデス第○○期』とか『××年採用』なんて数字がどこまでもついて回る。かくして、ギャレイ担当はシニョリティの低い人、アッパークラス担当はシニョリティの高い人、赤いエプロンはシニョリティの低い人、白いエプロンはシニョリティの高い人、なんてことになる。年齢の若い順(勤続年数の短い順)のことを『逆シニョリティ順』と言い、スタンバイの呼び出しから雑用に至るまで逆シニョリティ順でこき使われる。なにしろ女ばかりの世界、「若い」とか「歳」とかは禁句であり、シニョリティという、説明されなきゃわからないような言葉を使うしかない。
【しばり】[縛り]《F》
マイレージサービスのマイルを無駄なく効率よく貯めるため、特定の航空会社しか利用しないこと。日本の航空会社のマイレージサービスには有効期限があるため、こういうことになってしまう。有効期限が無期限になっている米国系航空会社のマイレージサービスと比べると、何ともケチくさい日本のマイレージサービスは何とかならんのか?使うこっちまでみみっちくなってくる。
【しゃしゅつざせき】[射出座席]
緊急脱出の際に、いちはやく機体から遠く離れられるように射出される座席。帰ってきたウルトラマンに、ワンダバダな曲と共によく出てくるね。第二次大戦中のドイツ空軍がゴムひもの張力を使って、座席をびょ〜ん!と飛ばそうとしたのが最初。はいそこ、ホントの話なので笑わないように。なお、アメリカがそれに対抗して、コイルバネを使ってぼよよ〜ん!と飛ばそうとしたって記録はない。ゴムひもやコイルバネではアメリカのテレビマンガみたいなので、圧搾空気だとか火薬の爆発力だとか、床板が抜けてポトンと下に落とす(それって、射出座席か?)とか、いろいろ試行錯誤した末、現在では固体ロケットを使用して、速度ゼロ、高度ゼロでも充分に高度を稼ぎ、安全にパラシュートを開くことができる(F-104は、キャノピーを吹き飛ばす都合で60km/h以上)ものがほとんどである。最近のロシア機に使用されている射出座席になるともっと優秀で、超低空で背面飛行に近いような状態で脱出しても、射出座席から突き出した安定翼で姿勢を修正しながら、パラシュートが充分に開く高度までロケットで上昇した上でパラシュートを開く優れものである。世界中のエアショーで、墜落するロシア機の射出座席がその性能を遺憾なく発揮しているので、ご存知の方も多いだろう。全くあの国は、飛行機の売り込みをしに来てるんだか、射出座席の実演をしに来てるんだか…。
【じゃのめ】[蛇の目]《F》
→ラウンデル
【じゃのる】《F》
→JAノL
【ジャパンエア】[Japan air]
日本航空のコールサイン。最近は日本エアシステムのボーイング777もジャパンエアのコールサインを使っているから、ややこしいことややこしいこと…。
【ジャンプイン】《S》
出発間際に駆け込んで来る乗客。全日空で使われている。搭乗口は段差があったりして駆け込みは危ないから、空港へはもう少し時間に余裕を持って来ましょうね。
【ジャンプ・シート】[jump seat]
乗務員用の折り畳み座席。搭乗口や非常口の直前にあって、後ろ向きで、ハーネスと呼ばれるショルダー式のシートベルトが付いていて、通行や緊急脱出の支障にならぬよう腰掛け部分は跳ね上がるようになっている。同様のものはコクピット後部のドア付近にも付いている。座り心地はというと、これほどひどい座席は地球上で他にはあるまいという代物。学校の椅子なんか目じゃないぞ。軍用輸送機で使われるパイプフレームに帆布張りの折り畳み座席の方がまだましである。編者はジャンプシートに座っての着陸を体験させてもらったことがあるが、後ろ向きの着陸というのは、あまり気分のいいものではないな…。
【ジャンボ】
(1)スワヒリ語の挨拶の言葉。
(2)ロンドンの動物園にいたアフリカ象の名前。 スワヒリ語の挨拶の言葉が名前の由来。
(3)ボーイング747型旅客機の愛称。ロンドンの動物園にいたアフリカ象の名前が愛称の由来といわれる。初飛行先のロンドンでこの名が付けられたと思われる。世界中でボーイング社だけがこの愛称を認めていない。系列のユナイテッドでさえ『ジャンボ』と呼んでいるのだが…。
【ジャンボジェット】[jumbo jet]
日本では一般に、ボーイング747型機のことを言うのだが、アメリカのテレビ番組を見ていると、彼の地ではトライスターだろうがDC-10だろうがボーイング777だろうが『jumbo
jet』である。最大離陸重量が40万lb以上の航空機はjumbo jet aircraftとして分類されているので、間違いではないのだが…。
【ジャンボのなかでほしをみる】[ジャンボの中で星を見る]
客室乗務員のルートインフォメーションの訓練で、星座の名前を覚える語呂合わせ。「ジは定規座,ヤは山羊座,ボは望遠鏡座,ノはのみ座,ナは夏の大三角,カは蟹座,デはてんびん座,ホは鳳凰座,シは獅子座,オは乙女座,ミは南の冠座,ルは昴のル」で「ジャンボの中で星を見る」だそうである。元ネタがあのテレビドラマ『スチュワーデス物語』なので、ほんとにこういう覚え方をしているかどうかは謎である。
飛行機のあの小さい窓から星座を気にする人って、あまり見たことないのだが、彗星や流星群、挙げ句は初日の出を見るチャーターフライトがあるくらいだから、あるいは…。
【しゅうごうはいきかん】[集合排気管]
レシプロエンジンで、シリンダから出た排気管を束ね、脈動効果によって掃気効率の向上を狙ったもの。英語で言えばエキゾーストマニホールドである。排ガスの流れによって、他のシリンダからの排ガスもお互い効率よく吸い出させてしまおうというもの。
排ガスによる脈動効果を狙うなら、各シリンダから排気管集合部までの長さが等しい『等長マニホールド』が理想で、最もわかりやすい例が4サイクル直列4気筒オートバイの排気管、いわゆる『タコ足』『集合管』と呼ばれるものが挙げられる。ステンレス管に砂詰めてバーナーで熱して曲げているヨシムラの集合管は、いい音出すんだなこれが…。航空機エンジンでもこうしたいのはやまやまなのだが、星形エンジンなどになると気筒数はやたらと多いし、過給器を付けたりすると吸気管まで一緒に這い回る結果となり、複雑になって整備性も宜しくない。しかもエンジンがやたらと重くなるということで、単にリング状にしたステンレス製排気管に集めて纏めているだけのものがほとんどで、多くの場合、等長マニホールドというところまでは行っていないのが現実。
余談だが、航空機用レシプロエンジンは、軽飛行機とヘリコプターを別にすれば、マフラーのない、いわゆる『直管』である。夜になると排気管から赤紫色の炎を吹き出して格好いいが、とにかくやかましい。今夜も直管バリバリだぜ夜露死苦!
【じゅうこうくうき】[重航空機][heavier
than air aircraft]
「その飛行中の揚力を主として地表面に対する空力的反力から得るすべての航空機をいう」と、耐空性審査要領には示されている。わけわからんな。要するに、揚力を翼やローターによって得ている航空機のことで、飛行機、滑空機、ヘリコプター、オートジャイロなどのこと。HTAとも言う。機体の重量などは一切関係ない。軽飛行機も重航空機である。
【ジュージャン】
ジュースを奢る人をジャンケンで決めるゲーム。もちろん負けた人が奢らされる。自衛隊ならどこでもやっている。海上保安庁でも行われている。ヤクルトおばさんが来るとヤクルトジャンケンになるが、ヤクジャンと略すことはない。
【しゅうせんれんらくき】[終戦連絡機]
終戦後の応急措置として、緊急公務を持つ軍人や官吏の交通、公用通信物輸送のために用いられた航空機。戦災によって海上輸送が壊滅状態にあったため、軍の復員や戦後処理の迅速な遂行を確保するため、航空局に終戦連絡部を組織し、9月14日から東京・札幌、東京・新潟・富山、東京・名古屋・大阪・福岡などに、民間機に緑十字を付けて連絡用とすることが連合軍総司令部から承認される(9月12日付SCAPIN
23)その後、進駐軍側の航空体制が整ってきた10月7日に終戦連絡輸送は廃止される。つまり、わずか3週間ほどの運航だった。これ以降、日本は名実共に翼を失い、11月18日「民間航空廃止ニ関スル連合軍最高司令官指令覚書(AG360 SCAPIN301)」が発せられる。
終戦連絡機認可の条件は民間機だったが、現実には民間機など殆ど残っていなかったため、武装を外した一式陸上攻撃機なども白塗装、日の丸に換えて緑十字を塗装して用いていた。プラモデルの解説などでは機体は白一色とあるが、実際には白塗装は刷毛で急遽塗りたくったもので、下地は濃緑色が透けて見え、あちこちむらだらけ。日の丸のあった位置に同じ大きさの緑十字を入れて、尾部から吹き流しを引きずって飛んでいた。また、これとは別に、南方戦線などで終戦に伴う武装解除・投降命令を各部隊に伝達する、文字通りの終戦連絡機が8月下旬頃にあった。こちらの機種は全くのあり合わせで、命令文書が運べれば充分なため、武装を外した戦闘機なども用いられている。のちに国内の終戦連絡機と同様、白塗装・緑十字となり、この塗装の零式戦闘機というのもあったとか。
緑十字は黒に近い濃緑色だったという話もあるが、これは機体の白塗装によって幻惑されたため暗く、濃く見えたと思われる。おそらく当時どこの基地にもあったD1濃緑黒色、つまり日本軍機の標準的な濃緑色を用いたと考えるのが自然だろう。余談だがこの濃緑黒色、軍の解体と共に大量に放出されバス、トラック、路面電車、鉄道車両、鉄橋、民家のトタン屋根とありとあらゆるモノに塗りたくられた。地方のバスに暗い緑色が多用されているのはこの当時の名残である。
【しゅうそくばくだん】[集束爆弾]
→クラスター爆弾
【じゅうにしかんせん】[十二試艦戦]
零式戦闘機の試作当時の名称。→零式艦上戦闘機
【しゅぎょう】[修行]《F》
マイレージサービスのマイルを貯めること。だから山ごもりをしても滝に打たれても『修行』にはならない。マイルが貯まらないような場合は『修行が足りない』と言う。マイルを獲得するために飛行機に乗ることを『修行の旅に出る』と言う。長距離国際線やアッパークラスで一気にマイルを稼ぐことを『荒行』と言い、対して提携している飲食店などで少しずつマイルを貯めることを『托鉢』と言う。マイルを貯めて獲得した特典は『修行の成果』である。修行に耐え、金色のカードを手にした人を行者と言うかどうかは知らない。
【しゅぎょうそう】[修行僧]《F》
マイレージサービスのマイルを稼ぐために飛行機に乗る人。マイルを稼ぐのが目的なので、必ずしも航空ファンとは限らない。てゆ〜か、航空ファンってのは乗りたい機種を優先して選ぶ傾向があるので、案外マイルは貯まっていなかったりするのである。
【じゅしんりょう】[受信料]
機内で放映されるNHKのニュースは、当たり前だがNHKに受信料を支払って放映している。受信料の額は機内にあるモニタやプロジェクターの『台数』で支払うのではなく、1機あたり何台の受像器があろうと『1機あたり』で支払っているそうだ。この辺はご家庭の受信料と同じ。受信料が1機あたりおいくらなのかは聞きそびれたが…。余談だが、ホテル・旅館の場合は『客室数』だそうである。空港ターミナルの待合室にあるテレビの場合はどうなるのだろう…?
【しゅっぱつじこく】[出発時刻]
時刻表に書かれている『出発時刻』は、乗客の搭乗が終了し、ドアを閉める予定時刻。だから案内板には午前9時の出発表示がびっしりと並ぶ。管制卓にもスリップが並ぶ。誘導路にも飛行機がびっしりと並ぶ。滑走路の手前でも並ぶ。さすがに滑走路にまでは並ばない…。だから出遅れると大変。9時半発でも大して変わらないことになってしまう。故に、15分以内の出発遅れは飛行機の場合『定刻』として扱われる。
出発時刻を過ぎて駆け込んできた客が「なんだよ、急いで来てやったのに、まだ離陸しないのかよ…」などと抜かしているが、お前のせいで離陸後回しにされたんだよ!…こういうのを世間では連帯責任と言う。
【シュツルモビク】
ソ連の襲撃機のこと。第二次大戦中に多くのドイツ戦車を撃破したイリューシンIl-2が代表的なもので、低空から機関砲や爆撃によって敵戦車を撃破するもの。故に、イリューシンIl-2だけがシュツルモビクというわけではない。地上からの対空砲火に耐えうるよう(もちろん、ある程度、である)バスタブ型の装甲内にエンジン、コクピット、燃料タンクが収められ、空中戦車と喩えられた(…自称した)今日の対地攻撃機の原型、アメリカのジェット攻撃機、フェアチャイルドA-10の御先祖様と言っていい。ものまねばかりと言われるソ連機にも、オリジナリティというものはあった。それを完全に潰してしまったのが、その後も延々と続いたスターリン支配だったのだけれどね。新技術を導入しても、失敗したらばサボタージュ(本来の意味は妨害工作)の嫌疑で即逮捕シベリア収容所送り。冒険的、革新的、野心的な試みが否定されれば、あとは停滞か、ものまねしかないじゃん…。シュツルモビクは、その後、Il-10、Il-16、Il-20、ジェットエンジンのIl-40と駄っ作機への道を一直線に転がり落ちていった。家元ソ連でシュツルモビクの系譜が復活するのは、スホーイSu-25フロッグフットからで、これとてフェアチャイルドA-10のものまねと揶揄される始末。本家はこっちだと言っても、もはや全然説得力なし…。
シュトルモビク、シュトルムモルビク、シュツルムモルビク、シュトルモヴィークなどの呼称もあるが、ロシア語の発音がどう聞こえるか、カタカナでどう表記するかの問題で、いずれも同じもの。それはいいが、最も正確に表しているのは、どれなんだ?
【シュナイダー・トロフィー】[Schneider
trophy]
1913年から1931年まで、12回(うち不成立1回)に渡って行われた水上機レース。フランスで兵器メーカーを経営していた大富豪、ジャック・シュナイダーが水上機の性能向上を図るために提唱し、フランスの航空クラブにトロフィーを託して世界に参加を呼びかけた。ったくフランス人は世界一決定戦みたいなのが大好きである。このトロフィーのデザイン、パンケーキにクリ−ム乗せて、その上でエンゼルが逆さになってクリームに首突っ込んでもがいているようで、アール・ヌーヴォってのはよくわからん。レースは水上機または飛行艇による国別対抗速度競技。何故水上機かというと、当時最速の乗り物といえば水上機だった。高揚力装置もまだなかった当時、最高速度のために滑走距離を犠牲にできる飛行機といえば水上機しかなかった。つまりは地球最速の乗り物の中から、さらにその頂点を決定するレースだった。飛行機のワールドカップだな。周回コースでの平均速度を競うもので、飛行距離は150nm以上とされていた。優勝国には次回の開催地の選定と開催日時などの決定権が与えられ、連続5回のうち3回優勝した国を永久トロフィーホルダーとし、レースを終了すると定めた。1913年の第1回はモーリス・プレヴォーの駆るドベルデュサン機が優勝し、トロフィーはフランスに託された。モーリス・プレヴォーと言えばのちに人類ではじめて200km/hを超えた人でもある。フランス人の自慢のタネだ。いまだに…。1914年の第2回は英国が優勝。この後第一次世界大戦のため中断し、大戦の終わった1920年の第3回は天候不良やらなんやかやで途中中止となっている。続く第4回、第5回はイタリアが連続優勝して永久獲得にリーチを掛けたが、第6回は英国がイタリアからトロフィーをかっさらい、第7回は米軍選抜チームで乗り込んできたアメリカが優勝。トロフィーの争奪はこの第7回あたりを境に物好きが勝手にやってた飛行機競争から、各国の威信を掛けた壮絶な戦いに変わっていった。アメリカ人がアマチュアスポーツに絡むとロクなことにならないってのはこの頃からだ。第8回は米国のボルチモアで開催され、優勝はカーチスR3C-2。パイロットはジェームス・ドゥリトル陸軍中尉。のちにこの人、1942年4月に太平洋上の空母ホーネットなどからからなる艦隊から発艦した16機のB-25爆撃機で、初の日本本土空襲を行っている。この人、根っからの冒険家である。1926年の第9回は独裁者ムッソリーニの檄が効いたのかイタリアが優勝。翌1927年の第10回、英国は空母イーグルで開催地ベネチアに殴り込み、独裁者の野望を粉砕した。さてお気づきのとおり日本なんか全く蚊帳の外だ。自前で飛行機を作ってはいたが、設計がお雇い外国人任せの時代じゃしようがない。ドイツも第一次大戦の敗戦国だから飛行機レースどころじゃないし、つまんないな。つまんないのでさっさと済まそう。
第11回は2年後1929年に英国のワイト島カウズで開催され、英国がスーパーマリンS6で2勝目を挙げた。第12回は1931年9月同じくイギリスのカウズで開催されたが、アメリカは世界恐慌の煽りで断念。英国は資産家などからの援助を得てエンジンを2350psにパワーアップしたS6Bを開発。一方イタリアは国からの援助をとりつけ、二重反転プロペラを1500psのエンジン2基で駆動するマッキMC72でトロフィー奪還を狙ったが完成に至らずレースに間には合わなかった。凝り過ぎだっての。そのため第12回の出場機は英国の2機だけ。どちらかが規定周回こなせば英国の永久獲得決定。ね、つまんないでしょ。レースの結果は平均時速547.3km/h、最高時速655km/hであった。えっ、こんなことしてなんか意味があったのかって?あったんだな。
1913年第1回の優勝機ドベルデュサンの最高速度が160km/h、その後たった20年で飛行機の速度は約600km/h以上にまで向上したのだから。英国にシュナイダートロフィーをもたらしたS6の末裔が、英国人をして世界でもっとも美しい戦闘機として絶賛してやまぬ英国救国のエース(て、ゆ〜か、抑えの守護神?)スピットファイアである。
一方、あと一歩のところでシュナイダートロフィーの永久保持に失敗したイタリアは、1934年10月にマッキMC72でレシプロ水上機による速度世界記録709km/hを樹立し、ちょっとは溜飲を下げている。
この記録は今もって破られていない、つーか、シュナイダー・トロフィー・レースと共に水上機の時代が終わったことを意味しているんだけどね。なぜかこのあとになってトチ狂ったように水上機を作りまくった国がアジアの東に出現したのだが、それはまた別のお話…。
【ジュラでん】[ジュラ電]
第二次大戦終戦直後に登場したジュラルミン製車体の電車。航空機メーカーに大量にストックされていた航空機用ジュラルミン材が市場に放出され、様々な用途に用いられた、そうしたもののひとつ。通勤型電車の原型といわれる国鉄ロクサン形(63系)電車の一部がジュラ電だった。無塗装銀で窓下に赤のラインを入れていた。赤のラインは多分、飛行機に日の丸を塗るための赤ペンキ、つまりこれも放出された軍需物資だったのだろう。数年を経ぬうちに車体が電触でボロボロになってしまい、鋼製車体に置き換えられている。
【ジョイント・オペレーション】
共同運行。路線需要や発着枠などの都合で、両国の航空会社合わせて週3便となってしまうような路線での不公平の是正(週何便あろうと公平にはならないものだが)のために編み出された方法。他社便の座席50%前後を買い取って販売するのは『コードシェア』と同じだが、客室乗務員を運行会社に派遣してその便に乗務させる点がコードシェアとは異なる。
【しょうかどうべんとう】[松花堂弁当]
和食の機内食といえばこれ!これに茶そばが付けばもう完璧!日本発着便なら欧米の航空会社でも出している隠れたグローバルスタンダード。ただ、どう見ても『ちょいと上品な雰囲気の幕の内弁当』
【じょうきゅうエコノミークラス】[上級エコノミークラス]
正規エコノミー運賃を支払った客のための、ちょっと椅子のいいエコノミークラス。プレミアムエコノミーとか、エコノミーエクストラとか、各社好き勝手な名前を付けている。正規エコノミー運賃と各種割引運賃の差が大きくなりすぎたために設けたというのが航空会社の言い分。かつて、同じ言い分を並べて正規エコノミー運賃客用の席を作りながら、いつのまにかビジネスクラスとかいう別運賃の上級クラスに化かしてしまったよねぇ?格差を解消するのなら、あの非現実的な価格の正規エコノミー運賃を値下げすべきじゃないかねぇ…。
【じょうしゅどうろ】[場周道路]
飛行場のフェンス内側に沿った道路。フェンス外側の道路は『外周道路』という。
【しようふのうねんりょう】[使用不能燃料]
読んで字のごとく『使うことのできない燃料』である。が、不良品の燃料ではない。タンクの形状や配管の取り回しにより、ガス欠状態でも消費できずに機内燃料タンクなどに残ってしまう燃料。航空機の自重は燃料の重量を含まないが、使用不能燃料の分は自重に含まれる。新品の航空機や燃料タンクの分解整備を行った航空機ではタンクが全く空っぽなので、使用不能燃料の分だけ余計に給油しないと、燃料が不足してしまう。(そういう航空機をいきなり飛ばすことはないはずだが…)
バイクの場合、ガス欠で止まっても車体を揺さぶってやれば、タンクに残っている僅かな燃料でかなり走れる。ガス欠のスーパーカブを止まるたびに大きく左右に揺さぶりながら、10kmも走ってスタンドにたどり着いた人もいるから、覚えておいて損はない。リッターバイクでは、それもあまりやりたくないが…。
【ショップぼう】[ショップ帽]
自衛隊の作業帽。装備品として支給されるものではなく、デザインは各部隊ごとに決め、基地司令の認可を得て発注し、隊員が私物として購入する。遠目にもどこに所属している隊員かがわかるよう、職種ごとに色分けしている場合が多い。ショップとは、専門分野とか部署のこと。なお、ショップ帽とは別に、装備品として隊員に支給される作業帽もある。陸上自衛隊、海上自衛隊の場合はこの支給品の作業帽が主に使われ、航空自衛隊では逆にショップ帽が主となり、支給品の作業帽は個人のロッカーにしまい込まれる。航空自衛隊では、支給品の作業帽はいまいち使い勝手が良くないのだそうだ。
【しょびん】[初便]
見てのとおりそのまんま『最初の便』である。新型機導入による初便、新規路線開設による初便、空港開港による初便などの他、最近は航空会社設立による初便などもある。一種のお祭りなので、地元政財界関係者、報道関係、航空ファンなどで満杯になり、初便チケットをゲットするのは至難の業。世の中には初便に乗ることを趣味にする人も大勢いるが、彼らは一体どうやって初便チケットを手に入れるのだろうか?
【しょびんカバー】[初便カバー]
新路線就航などを記念して、初便で運ばれて到着地の郵便局で消印をもらい、送り返されてくる郵便物。関係者などに配布される。封筒には就航日入りの消印、中には記念絵はがきなどが入っている。世の中には初便カバーのコレクターが大勢いるが、どうやって入手するのだろうか?
【シルキーランディング】
「ふんわりしなやか、シルクのような肌触り」の着陸。キッスランディングより上らしい。
【しれいぶていさつき】[司令部偵察機]
旧帝国陸軍が世界に先駆けて登場させた『戦略偵察機』。敵地奥深くへ高速で高々度侵入し、敵情を偵察するために作られた。元はといえば当時中国にはろくな地図がなく、地図製作用の航空写真の必要に迫られたかららしい。こういう機種を生み出す斬新なアイデアがありながら、そのくせ偵察の成果を作戦に生かした様子がほとんど見られないのは何故だろう…。
【しろいかっそうろ】[白い滑走路]
TBS系列で1974年4月5日から9月27日まで、毎週金曜日9時台に放映されたテレビドラマ。主演の田宮次郎は日本航空の機長を演じていた。脚本はジェームス三木、小山内美江子。最近になってDVDも発売されている。日本航空の全面協力で製作されており、訓練の教官役などで脇を固めているキャストの一部は本物のパイロット。ドキュメンタリーとしても価値が高く、DC-8のビデオ映像や当時の操縦訓練の模様を記録した映像は他にまとまったものが殆どなく、大変貴重でそれだけでも充分におすすめ。チェックリストのコールや管制との交信などはヘタなコクピットビデオより聞きやすい。成田開港前で世界中の翼が集まっていた羽田のシーンも大変貴重だ。ストーリーを一通り眺めた後はこうした濃いシーンをたっぷりと堪能していただきたい。三十代以上のエアライナーファンならもう涙モノである。松坂慶子もまだ若いぞ。
余談だが、この番組の後に10月から登場したのが、山口百恵主演の『赤い迷路』で、以後、白いシリーズ・赤いシリーズが交互に続く。
【シングル・オープンジョー】
→オープンジョー
【しんでん】[震電]
九州飛行機製の、先尾翼式で推進式という変わった形の海軍試作局地戦闘機。1945年6月に初飛行、というから量産も実戦で使われたこともないのに、なぜか『傑作機』の称号を頂いている摩訶不思議な飛行機。現存する機体がスミソニアン博物館のがらくた倉庫に仕舞ってあるとか。形が斬新なのでファンの人気は非常に高く、後年のジェット戦闘機でもここまで斬新なデザインはちょっとない。それ故か多くの戦記シミュレーション小説でB29をバタバタと叩き落とす大活躍を見せている(…っても小説の話だからねぇ…)
まあ、形が斬新で、しかも飛ばなかったわけじゃなくてちゃんと飛んだけど性能がどれほどかは確認できなかった。故に伝説の戦闘機となり得た、ある意味幸運な飛行機ではある。アメリカあたりには似たような形で全然ダメだった飛行機もあるからね。
【しんはちはちかんたい】[新八八艦隊]
→八八艦隊(2)
【しんぶじょうみゃくけっせんしょう】[深部静脈血栓症]
いわゆる『エコノミークラス症候群』の正式名称。航空業界のご都合や被害者の主張などそれぞれの立場で『旅行血栓症』とか『ロングフライト血栓症』とも呼ばれているが、医学的には深部静脈血栓症と呼ばれている。長時間の着席など同じ姿勢を長時間続けることなどによって、大腿深部などの静脈に血栓ができてしまうこと。この血栓が何かの拍子で移動して心臓や肺などの臓器を走る血管を詰まらせ、機能を阻害してしまう恐れがある。長距離国際線のエコノミークラス旅客に症例報告が多かったというだけでエコノミークラス症候群という名が付けられ、一時期話題にもなったが、いささか乱暴なネーミングである。必ずしも航空機内特有の環境が原因というわけでもないし、エコノミークラス旅客に多かったといっても、そもそも旅客機の乗客の大多数はエコノミークラスなのだから座席の等級云々もあてにならない。長時間座ったままの同じ姿勢であれば起こりうると考えた方がよく、特に下肢静脈瘤・下肢の手術直後・けが・悪性腫瘍・深部静脈血栓症(既往)・凝固能異常・肥満・経口避妊薬の使用・妊娠中・出産後などに該当する人は注意を要する。航空機内での具体的な対策は、まず靴を脱ぎ、座席に座ったままで『足の指を曲げ伸ばす』『足の指を開いたり閉じたりする』『つま先立ち』『かかとを床に着け、つま先を上げる』を数回ずつ行い『膝を両腕で抱え、足首を回す』『ふくらはぎを軽くもむ』以上を1〜2時間おきに、合間に深呼吸を交えながら10分ぐらいかけてゆっくり行うとよい。さらに、こまめに水分を補給して『血液サラサラ』の状態を保つことも重要。一時間毎にコップ半分程度の水分補給は必須である。水分とは言っても濃いお茶、コーヒー、アルコール類は浸透圧が高く好ましくないので控えめに。体を締め付けるような服装も好ましくないので、ゆったりした服装を心がけ、シートベルトはベルト着用サインが消えていれば弛ませ気味に調整する。
【すいじょうきぼかん】[水上機母艦]
水蒸気、ボッカ〜ン!…ではない。水上機専用の航空母艦である。敵艦隊の動向を探る水上偵察機や飛行艇の洋上移動基地となり、補給や修理などを行う。大型飛行艇を甲板上に引き上げて修理するために、大型のデリッククレーンを備え、格納庫などのスペースも十分だったことから、旧帝国海軍では補給物資輸送など多目的に使われたものもある。足もそこそこ速くてなかなか便利だったらしい。(…それって、何か悲しいぞ)DDH(ヘリコプター搭載駆逐艦)の遠いご先祖様である。
【すいそくこうほう】[推測航法]
飛行方向と風向・風速、経過時間、機速などから現在位置を算出し、進路を決定する航法。とは言っても飛行中の機内から風向・風速が測れる訳がないので一旦仮に地上での観測データを利用し、実際に飛んでみてどの程度風に流されるかで風向・風速を判断し航法を行う材料とする。正確さに欠ける点は否めない。実際の飛行ではVFR(有視界飛行)の補助として用いたり、VOR、DME、ADFといった無線航法援助標識を併用する。
余談だが、機体にかかる加速度とその方向・経過時間からコンピュータで現在位置を割り出し、進路を決定する『INS』は推測航法の進化したものと言えるだろう。その正確さは推測航法の比ではないが…。
【すいへいたいこうエンジン】[水平対向エンジン]
レシプロエンジンのシリンダ配置方法のひとつで、前から見ると、クランク軸を中心としてシリンダが両側に向き合って配置されている
エンジン。ピストンの動きから『ボクサーエンジン』とも呼ばれる。 同じ排気量で気筒数も同じ直列エンジンと比べると、全長が半分程度に収まるし、V型エンジンよりも高さが抑えられるので、コクピット前方に配置する場合、前方視界の確保には最も有利。その代わり幅が大きくなるし、気筒数が増えると後方のシリンダの冷却に問題が生じる。
軽飛行機によく使われていて、身近なものだとリアエンジンのポルシェや昔のBMWのオートバイ(あまり身近じゃない…)軽以外のスバルでも使われている。
【すいりくりょうようき】[水陸両用機]
飛行艇や水上機で、着陸脚を有していて滑走路への着陸も可能なもの。海上自衛隊の救難飛行艇US-1など世界的にも数は非常に少ない。ほぼ同型の対潜哨戒飛行艇PS-1は水上発着専用。PS-1に装備されていた車輪はスロープで海に出入りしたり陸上移動するために使うもので、着陸の衝撃には耐えられない。
【すいりょくしきたんはいきかん】[推力式単排気管]
星形エンジンの排気を集合排気管によらず、各気筒ごとに独立した排気管によって行い、排気を推力の足しに利用するもの。実に涙ぐましい。零式戦闘機五二型はこの推力式単排気管の採用で30km/h以上速度向上し、560km/h近くにまで達したのだとか。でも相手は2000hp級のターボ付きエンジンで600km/h以上を出していたから、焼け石に水であった。ってのはここだけの話だぞ。
【スーパーシート】
航空版グリーン車。ちょいと広い座席で、食事時のフライトで軽食が出るとか、機内でビール無料とか、到着空港でお預かり手荷物優先引き渡しとかってサービスがある。日本の国内線にしかなく、2004年5月末で日本航空のスーパーシートが終了し、全日空とスカイマークに残るのみである。運賃にスーパーシート料金を追加するので、運賃そのものがランク分けされているファーストクラスやビジネスクラスとはちょっと違う。スーパーシートの設定されている便で、空席があればスーパーシート料金を追加するだけで、どんなに高い割引率の運賃でも利用できるので、スカイメイトでスーパーシートなんて芸当も可能。だからスーパーシートに空席があると、チェックインの際に是非どうぞと勧められる。今や航空会社も必死である。それどころか空港内どこだろうとお構いなしに、是非どうぞって放送が流れる。如何なものか…。なお、全日空は2004年12月1日より従来の運賃に上乗せするスーパーシート料金を廃してスーパーシート運賃とし、普通席とは別建ての運賃となって事実上ファーストクラスとなるため、従来のような『スカイメイトでスーパーシート』なんて芸当はできなくなる。昔は主要な空港にはスーパーシート専用ラウンジってのがあって、出発前からソファにふんぞり返って酒でも飲みながらゆったりできた。だからスーパーシートに乗るときは、便出発の2時間前に空港到着即チェックイン、ラウンジ直行ってのは常識だった。日本航空のラウンジだと「何かお飲みになりますか」ってな調子のべったりのお接待があって、それはそれなりによかったのだが、編者はどっちかって言うと、全日空や日本エアシステムのラウンジの「勝手に冷蔵庫開けて御自由にど〜ぞ!」って雰囲気の方が、気楽でよかったな。
【スーパージャンボ】[Super Jumbo]
全日空のボーイング747SRに付けられていた愛称。人類史上初の500人乗り旅客機を記念し、これまでの日本航空の460人乗り747-SRを超える『スーパーなジャンボ』として命名された。もっとも、同じ機体で40人も多く乗れるようになったのは、シートピッチを狭くし、トイレやギャレイを削減して乗客を『押し込んだ』からに他ならない。競合する日本航空は定員をさらに増やし550席とした。全日空機には国内線ファーストクラス(現在のスーパーシート)の準備として大型の座席がアッパーデッキに装備されていたが、日航機にはそれがなくすべて標準的なエコノミークラス座席で構成されていたために、こんな空飛ぶ山手線みたいな芸当が可能となった。日本航空がアッパーデッキを延長した『SR-SUD』を導入した時は空飛ぶ千代田線状態の何と584席にもなった。ここまで来たらぜひ600席の空飛ぶ埼京線にも挑戦してもらいたかったものである…そんなの頼まれてもタダでも乗らないぞ。現在では両社ともスーパーシートを導入したこともあって-400Dでも569席と、乗客を無視した座席数競争は一段落している。編者は時刻表の『座席数500』の数字を見た時、一気に旅客機に乗る気が失せた。今でも東京・大阪間では専ら広い座席の新幹線を利用している。新幹線は普通車でもシートピッチだけはスーパーシート並みだ。
【スカイタイム】[SKY TIME]
キウイフルーツ果汁3%入りのエード(果汁100%のもの以外、ジュースと呼んではいけない)つまり清涼飲料水。製造はアサヒ飲料。販売はJALUX(昔の日航商事だ)キウイフルーツのほかに入っているのは果糖ブドウ糖液糖、ローヤルゼリーなどなど。日航機の機内で飲めるし、国際線だとこれでカクテルを作ったりもするらしい。最近はゆず風味のスカイタイムゆず、なるものも登場してキウイ味から切り替えが進んでいるらしいが、余り評判はよくないようだ。アサヒ飲料の名誉のために申し添えるとゆず味のメーカーは別の会社らしい。ゆずといったら鍋の付けだれだろう…。スカイタイムはJALCITYの客室冷蔵庫にも常備されている…ホテル日航那覇グランドキャッスルにはなかったので、ホテル日航には多分置いていないのだろう。サクララウンジにも多数実戦配備されているらしい。空港のJALUX売店で売っているし、家の冷蔵庫に常備したければJALUXで通販も承っているとか。編者も試しに飲んではみたのだが、まあ、うまいと絶賛する程ではないし、かといって、かつてJR東海が販売し、一部で話題を独占していたLiniタヒホビベータのような、壮絶な不味さもない。可もなく不可もなく、ってところが、強いて言えば弱点である。まあ、甘ったるいか舌が痺れるほど苦いかしかない缶コーヒーや、香料山ほどぶち込みまくったアールグレイもどきのヘタな缶入り紅茶に比べれば、はるかにずっとましである。200ml缶入り150円と、1リットル紙パック入り300円がある。でも200mlで150円ってのは、ちょっと高くないかね?
【スカイバスケット】
ドイツ軍飛行船が、第一次世界大戦末期にイギリスを爆撃する際に装備した見張り要員を乗せる籠。当のドイツ軍自身は何と呼んでいたのか不明。飛行船本体は雲の上に隠れ、バスケットを雲の下までワイヤーでつり下げて地上の様子や敵迎撃機の動向を飛行船に電話連絡させるもの。翼とエンジンのない単座戦闘機のような形の籠だったと文献にはあるが、垂直安定板はあったのではないかと思われる。ドイツ飛行船は浮揚ガスに水素を使わざるを得なかったため船内は禁煙とされ、喫煙できるバスケットに搭乗志願者が殺到したという。何とものんびりとした話だ。
【スカイメイト】
満12歳以上22歳未満の人が利用できる、割引率最大50%の国内線割引運賃。北海道国際航空やスカイマークエアラインでは若干規定が異なる。当日空席がある場合に利用でき、スーパーシートの場合はスーパーシート料金を追加すれば利用できる。航空券の購入および搭乗手続きの際には『スカイメイト会員証』を提示する。スカイメイト会員証は日本航空・日本エアシステム・全日空と、その系列航空会社で共通。スカイメイト入会手続きは航空会社の支店または空港カウンターで行うことができる。入会に必要なものは、生年月日を証明する公的書類(学生証など)と写真1枚(3cm×3cm)入会金1,000円。会員証は発行日から最大5年間有効か、または22歳未満まで有効である。スカイメイト運賃で発券される航空券は『航空券引換証』であり、予約を入れることはできない。引換証が発券できるのは、空席が10%を超えると見込まれる場合か、出発直前にキャンセルが出た場合に限られる。キャンセル待ちでは普通運賃キャンセル待ちの後にスカイメイトキャンセル待ちを割り当てるので、繁忙期や幹線のラッシュ時、便数の少ない亜幹線などでのスカイメイト利用は至難の業となる。また、キャンセル待ちに搭乗券を引き渡し始めた後に予約客が到着したような場合、この遅れてきた予約客を乗せるためスカイメイト運賃の旅客が最優先で搭乗を取り消されることもあり、極端な場合、飛行機から降ろされるようなこともある。本来、搭乗券を引き渡した段階で運送契約が成立しているのが建前で、こうした行為は航空会社の信頼(しかも、未来の顧客からの、である)を損なうだけなのだが、航空業界は金持ち相手の商売、貧乏な若人はお情けで空席を埋めさせてあげようということなのだろう。遅れてくる予約客にも確信犯が少なからずいて、インターネットの日記ページなどで「スカイメイトを引きずり降ろした」と自慢げに語る輩も少なくない。あ〜やだやだ。スカイメイトを愛用している若人諸君は、こんな情けない大人にはならないでもらいたいものだ。
【スクランブル】[Scramble]
緊急発進。地上待機中の要撃機が、緊急発進指令の受領から可能な限り短時間で離陸すること。ある新聞に「自衛隊の戦闘機が離陸に割り込んできて、私たちの飛行機の離陸が後回しにされた」という投書が掲載されていたが、管制官の指示に基づいていれば割り込みでも何でもないし、離陸機の順番で要撃戦闘機の緊急発進は最優先。これは世界の常識。問題なのは防空識別圏に接近する行為を繰り返すどこぞの国であり、これへの対処を問題だというのは本末転倒である。こういう非常識な投書を平然と載せる新聞は良識を疑われるぞ。
【スター・ギャザー】[Star gazer]
民間機が地上要撃管制を呼び出す場合に用いるコールサイン。原則として、最寄りレーダーサイトを各レーダーサイト固有のコールサインで呼び出しても応答がない場合に用いる。周波数は124.90MHzまたは133.90MHzで西側諸国共通(要撃管制用の周波数、CAG波はこれとは別で、非公開とされている)ちなみに地上要撃管制というのは、国籍不明機や敵機をレーダーで探し出し、対処に当たる要撃戦闘機を国籍不明機や敵機に誘導する仕事。民間機がどんな用件でレーダーサイトを呼び出すのかはよくわからないが、124.90MHzまたは133.90MHzで「Star
gazer」と言えば、きっとどこかのレーダーサイトが応答してくれる、はずだ…。
【スタッガー】[stagger]
複葉機の主翼を前後にずらして配置し、お互いの干渉を避ける手法。翼の上面には負圧、下面には正の圧力が発生している。複葉機には上下の主翼があり、この配置が近いとお互いの干渉で主翼の効率が落ちる。上下の主翼を翼弦長の1.5倍以上離して配置すれば干渉は避けられると言われているが、今度は剛性が落ちてしまう。そこで上下の主翼を前後にずらして配置することで、干渉を避けるのである。なお、スタッガーに限らず、飛行機は前方にある翼が先に失速するように設計する。これはすべての飛行機の大原則である。だって、後ろの翼が先に失速したら、機首がどんどん上を向いてしまって、失速状態から回復できなくなってしまうじゃないか!
【スタティック・ディスチャージャ】[static
dischager]
放電装置。翼端後縁に取り付けられているアンテナ状のもののこと。飛行中には雨・雪や空気中の塵などとの衝突や摩擦によって静電気が発生し、これが機体に蓄積して、周囲より電位が高くなると、翼端部からコロナ放電を起こすようになり、放電によって生じるノイズは、航空機の搭載する無線装置の受信機能を阻害する。このノイズを『プリシピテーション・スタティック・ノイズ』(precipitation
static noise=p-static noise)という。放電装置は高い直流抵抗を持っていて、高周波の電界については、先端の導体を除いて存在しないのも同様となり、先端に設けられたピンはコロナ開始電圧が低くなるため、コロナ放電は常にこのピンから行われるようになる。放電を行うピンは、電界の結合が最少となるよう、コロナ放電による電界と、アンテナの電界とが直角に近い形で交わるように配置されていて無線装置が受信してしまうノイズの影響を最少(電界が同方向だと、ノイズの影響は最大になる)にとどめる働きをする。
【スタンバイ】[stand by]
待機のことをいう。予備機(stand by aircraft)待機乗員(stand by crew)空席待ち旅客(stand by passenger)などと多く用いられる。予備機と待機乗員で空席待ちの乗客が運べる…というわけにはいかない。
【スチュワーデスでか】[スチュワーデス刑事]
1997年1月10日以来、フジテレビ系列で年一回新春に放映される2時間ドラマ。主演は財前直見・水野真紀・木村佳乃。毎年毎年正月早々ステイ先で起こった物騒な殺人事件に、JALのキャビンアテンダントが挑むという話。『キャビンアテンダント刑事』では余りにも語呂が悪過ぎるので今なおこのタイトルなのだろう。警察官でもないのに『刑事』なのが、この番組最大のミステリーといえる。
余談だが、財前直見は1984年の東亜国内航空(現在の日本エアシステム)奄美諸島キャンペーンがメジャーデビューである。
【スチュワーデスのこいびと】[スチュワーデスの恋人]
1994年4月12日〜 6月28日の12回にわたって、毎週火曜日、21:00〜21:54にTBS系列で放映されたドラマ。4月26日放映の第3話のみ、名古屋空港での中華航空機事故のため放映を中断し、5月2日に放映を行っている。制作は「毎度おなじみの!」大映テレビ。脚本は石原武龍。出演は宅麻伸、戸田菜穂、内藤剛志、宮崎ますみ、森尾由美、喜多嶋舞、井上晴美といったところ。ドラマで使用された制服は、オリジナルのものよりスカート丈が短い。ってゆーか、よくそういうとこに気づく人がいるよな…。
TBS、大映テレビ、日本航空という、航空ドラマにおけるゴールデントライアングルの実力が遺憾なく発揮され、さらに、主演(?)の戸田菜穂の大仰な演技が加わり、視聴者は背中のむずがゆさにのたうち回ったものである。…ってゆーか、この背中のむずがゆさは、日本の航空ドラマに欠かすことのできない重要な要素だと言えるだろう。あまりにもくさい台詞回しに、背中をかきながら笑い転げて、畳の上でのたうち回るのが、正しい日本の航空ドラマの楽しみ方である…って、いいのか、それで?
【スチュワーデスものがたり】[スチュワーデス物語]
TBS系列で放映された、ドジでのろまなスチュワーデス訓練生の汗と涙の物語。1983年10月18日から1984年3月27日まで、毎週火曜日、全23話放映。「ドジでのろまなカメ」の名台詞は流行語にもなったが、これを見てスチュワーデスを志した人が多かったかどうかは定かでない。主演は堀ちえみ。原作は深田祐介(新潮社刊)の短編だが、この原作からどこをどうやったらあの恐ろしい脚本が書けるのか…。
【スッコイ】
ロシアの航空機メーカー、Sukhoi(スホーイ)の誤読。広大なロシアではこのように発音する地域が、もしかしたらあるのかもしれないけれど、それでも「スッコイ」では誰にもわからないと思うぞ。
【スッチー】
主に日本人中年男性が使用する、女性客室乗務員を指す呼称。二人称の場合は「オネーチャン!」もしくは「ネーチャン!」である。「ねえちゃん、ねえちゃんって…十三の女ちゃうで!」(十三の女 藤田まこと)
【ステンシル】[stencil]
機体の注意書きなどを書き込む際に用いる、薄い金属板などで作られたマスキングの型。ステンシルを機体にあてがい、塗料を付けたタンポや吹きつけ塗装で注意書きを書き込んだ後、ステンシルを外して出来上がり。『D』『O』などは文字の一部がとぎれているのですぐわかる。本物はデカールじゃないぞ。
【ストア】
中古売却やオーダー流れなどの機体を、売却先が見つかるまでの間一時保管しておくこと。一時の筈が数年にわたることもあるが…。アメリカ中西部あたりの空港で野ざらしになっている飛行機は、あれでも一応は保管されているもので不法投棄された粗大ゴミではない。中にはどう見ても粗大ゴミとしか言いようのないストア機もいるが、まれにオーダー流れの『新古品!メーカー保証つき、すぐ乗れます』などもあったりするので、「飛行機でも買うたろか」という方はシャベルとキャッシュを手に掘り出し物(本当に砂に埋まっていたりする)を見つけに行こう。ラスベガスで一儲けしてストア機を買い漁るのも悪くない。砂漠の乾燥した気候が飛行機の保存に適しているのだそうだが、可動部やゴム製部品がダメになりそうな気もするなぁ…。
【ストップオーバー】[stop over]
途中降機。正規運賃適用航空券の場合、出発地から目的地、あるいは復路の発地から帰着地までの途中で降機して、24時間以上滞在することを言う。航空券の種類や航空会社、地域などによりストップオーバーの条件は異なり、PEX運賃では基本的に追加料金が必要となるが、折り返し地点はストップオーバーとはみなさない。また、目的地域または目的国内での航空以外の移動は、その末端を合わせて一回のストップオーバーとみなすことになっている。他にも成田・オーランド間航空券で途中ロサンゼルスに滞在する場合はストップオーバーには数えないケースや、格安航空券(IT運賃)の場合は一定回数まで無料となるケースもあるなどかなり複雑なので、航空券購入前に確認のこと。旅行代理店に、希望する旅程に最も適した航空券を紹介してもらうのが無難。
ここで言う『途中降機』とは、途中地点で降機して空港の外へ出てしまい、観光などをした後、途中降機した地点(都市)から再び目的地に向かう場合であり、空港外に出ない単なる『乗り継ぎ』は『トランジット』と言うので混同しないように。『ストップオーバー』と『トランジット』の違いは、鉄道で言う『途中下車』と『乗り換え』の違いと考えるとわかりやすい。
なお、乗り継ぎ便が予定より大幅に遅れて、航空会社が用意したホテルで待機して、24時間以上の滞在を余儀なくされたようなケースは、言うまでもなく『トランジット』である。
【ストラトスフォー】
2003年2月より独立UHF5局(千葉テレビ、テレビ埼玉、テレビ神奈川、サンテレビ、三重テレビ)およびキッズステーション(CS・CATV)で深夜に放映されていたテレビアニメ。全12話。放映時期や放映日時は各局ごとに異なっていた。沖縄の下地島を舞台に、萌え〜な美少女がメテオスイーパーと称するマニアックな英国製戦闘爆撃機BAC TSR2を駆って、地球に落ちてくる彗星の落とし物を迎撃に向かうというお話。その後DVD全5巻が発売され累計販売数は5万枚。さらにOAVで続編がリリースされ、飛行機アニメの中でもヒット作(飛行機アニメって、ゼロテスターとエリア88と紅の豚と、このストラトスフォーぐらいしかとっさに思い浮かばない小さなジャンルだが…)となった。最近では『世界の駄っ作機』で知られる某航空評論家が声優として参加し話題になる。どうでもいいが、パイロットのあのオートバイもどきの搭乗姿勢(実機はごく普通の射出座席)とか、でっかいTSR2が細いロケットブースターでランチャーから飛び出してゆくとこなんか、あれでよかったんですか岡部センセ…。
主役メカのBACのTSR2は、ついこの間まで紙一重を通り越したような奴じゃなきゃ知らなかった超マイナー機だったのだが、おかげで最近ではインターネットの検索サイトでTSR2を検索すると、引っかかるのは地元英国はさておき、日本語のサイトがやたらと出てくる。そしてたいていはストラトスフォーとセットで語られている。コスフォードの航空博物館に行って実機を見てきたとか、物語の舞台になった下地島に行ってきたとか、同人誌作りましたコミケで売りますとか、皆さん熱いというか、加減を知らないというか…。
【ストリクトナリタリアン】《S》
成田空港に勤務する日航の社員で、成田ニュータウン在住者のこと。空港と団地を往復するばかりの毎日を送るストイックなナリタリアン。
【ストリップ】[strip]
「踊り子さんにはお手をお触れになりませんようお願い致します。それでは○子さん、張り切ってどうぞ!」ではない。一般に英語でstripといえば『細長い小片』のことを言う。細長い小片で、踊り子さんの『見せてはいけない部分』を隠したのが、所謂ストリップ・ショーの語源とも言われるが…。
(1)飛行計画書(フライトプラン)から、管制上必要となる事項を抜粋して、管制官に渡される運航票のこと。航空会社の運航管理コンピュータと、航空局のCADIN(Common
Aeronautical Data Interchange Network=航空交通情報システム)をオンラインで結び、CADINを介して送られてくる飛行計画書のデータは、出発空港、到着空港、東京航空交通管制部(東京ACC、埼玉県所沢市)のFDP(Flight
Data Processing system=飛行計画情報処理システム)からストリップとして出力される。管制官はこのストリップをもとに管制業務を行う。巾20.5cm、縦2.5cm、横長の小さな紙切れだが、飛行計画書に代わる立派な公文書である。用紙より一回り大きな専用のホルダーに差して使用する。なぜ飛行計画書そのものを使わないのかって?でっかい用紙で何十枚も渡されて、いらんことまでごちゃごちゃ書いてある飛行計画書が、管制室のあっちこっちでひらひらしてたら仕事にならないじゃないか!
なお『ヴァージンのストリップ』といえばヴァージン・アトランティック航空機の運航票のこと。変な想像をしないように。
(2)滑走路の他には何もないような、極めて小規模な飛行場。滑走路を『細長い小片』になぞらえている。ストリップ小屋のある飛行場ではないので、期待しないように。
【ストレッチ】
既存機種の胴体の一部を延長して大型化し、積載量を増やすこと。新機種を開発するよりはるかにコストが安く上がる。元々はダグラスのお家芸。ダグラスDC-8がどんどん胴体を伸ばして大型化してゆく一方で、ライバルだったボーイング707は構造的に胴体を延長できず、売り込みに苦しんだのは有名な話。
のびちゃった人を運ぶのはストレッチャー。
【ストレンジャー】[Stranger]
辞書によれば、よそ者、見知らぬ人、他人、流れ者などなど。航空用語ではレーダー上で存在を確認できるが、機種が確認できていない航空機。但し国籍不明機やエリア51名物の未確認飛行物体などでないことだけは確かなものを言う。VFR(有視界飛行)で飛行する軽飛行機やヘリコプターなどはストレンジャーとして扱われたりする。
【スピーディー】
→トーバーレス牽引車
【スピードバード】[speed bird]
英国航空のこと、無線のコールサインで使われる。インペリアル航空を名乗っていた頃からだそうだから恐れ入る。航空無線をワッチしていて「speed
bird 005…」と聞こえたら、それは英国航空5便のこと。
ちなみに、旧塗装の垂直尾翼に描いてあった『とんがった鳥の絵』もスピードバード。
【スピードバード・ロンドン】[speed
bird London]
IAL(International Aeradio Limited)社の呼び出しコールサイン。IAL社は国際線カンパニーラジオの中継サービスを行っている通信会社。専用周波数からこのコールサインでIALのオペレータを呼び出し、通信を繋いでもらう。
【スプーク】[Spook]
F-4ファントムII(2)のマスコットキャラクター。銀河鉄道999の車掌にドロロンえんま君(最近の子供たちは知らないぞ!)のコスチュームを着せたようなデザイン。航空ファンの間では、ファントムおじさんとか、ファントムの魔法使いとか、ファントムボーイなどと呼ばれている黒装束のキャラである。戦闘機のマスコットキャラクターってのは非常に珍しい。関西の私鉄駅にも似たような緑色のがいるが、アレはスルッとちゃん、とか言うのだそうである。牡羊座8歳でAB型、口癖は「ねえ、お出かけしようよ」だそうだ…それはどうでもいいぞ。なお、スクープ君ってのはNHK週刊子供ニュースの豚のキャラクターである。
【スペア・エア】[Spare Air]
洋上を飛行するヘリコプターの乗員が携行する非常用水中呼吸器。HEEDと呼ばれる。製造元である米国Submersible社の商標。→HEED
【スポイラー】
主翼上面に立ち上がり、主翼上面に流れる気流を乱して揚力を減らし、抗力を増すもの。揚力をスポイルするものなのでスポイラーである。主に高度を下げ、速度を抑える際に用いる。車輪の接地圧を上げ、車輪ブレーキの効果を増すという役割もある。旅客機など大型機には主翼付け根寄りにある大型のグランドスポイラーと、翼端寄りにある比較的小さなフライトスポイラーがある。グランドスポイラーは大型で効果が非常に強いため、飛行中は使用できないようにロックされ、フライトスポイラーのみを使い、主脚の接地によってグランドスポイラーのロックが外れて立ち上がるようになっているものが殆どである。飛行中にグランドスポイラーを使用できる機種でも、立ち上がる角度が制限され、主脚の接地によってロックを外し、制限を解除していたりする。スポイラーは左右両翼とも同じタイミングで同じ角度に立ち上がるものだが、左右別々に動かし、左右の揚力バランスを崩してやれればエルロンと同様に機能させることができる。このようにエルロンの役目を持たせたスポイラーをスポイロンと呼び、三菱重工の機体に見られる。主翼全幅にわたってフラップを装備できるので、短距離離着陸性能を狙った機体には有効とされている。
【スポイロン】
スポイラーとエルロンで、スポイロンである。スポイラーは左右両翼とも同じタイミングで同じ角度に立ち上がり、主翼上面に流れる気流を乱して揚力を減らし、抗力を増して高度と速度を抑えるものだが、これを左右別々に動かし、左右の揚力バランスを崩してやれればエルロンと同様に機能させることができる。操縦桿を左右に倒せばスポイラーが左右別々に動くのである。三菱重工はこの機構がお気に入りでMU-2、T-2、F-1などに採用している。主翼全幅にわたってフラップを装備できるので、短距離離着陸性能を狙った機体には有効とされている。
【スポッター】《F》
飛行機の記録を趣味としている人々。インターネットなどでレアな機体の飛来情報を掴み、空港で『スポッター写真』と呼ばれる厳格な規格に基づいた記録写真を撮影する。中にはノートに日時と飛来機のレジを記録するだけという人もいて、本来のスポッターは毎日空港で記録を付けているノート記録方式のスポッターだという説もある。英国が発祥といわれ、かの地には鉄道趣味でも列車編成を記録する『トレインスポッター』と呼ばれる人々が数多くいる。このトレインスポッターが航空機スポッターの起源のようだが…。
【スポッターしゃしん】[スポッター写真]《F》
飛行機の記録写真である。スポッター間でインターネットなどを介して国際的な取引も(…そんな、大げさな)される。記録写真と言うからには、既に撮影済みの機体であっても、塗装変更は言うに及ばず、イベント協賛ステッカーなどのバリエーションも押さえなければならない。地道な努力と根性を要する。『スポッティング写真』という人もいるが、それでは『修整した写真』になってしまうのでよろしくない。あくまでも記録なのでスポッター写真には規格とも言うべきルールがあり、昆虫の標本のような統一性が要求され、特に英国人と日本人のスポッターは非常に厳格である。
1.真横から撮影し、原則としてポートサイドを撮影する。左右異なる塗装の場合は両側面共撮影する。できれば、機体がいる地面と同じ高さに立ち、アイレベルで撮影する。
2.登録記号(レジ)航空会社ロゴが読みとれること。ピントをここに合わせるのは言うまでもなし。機体のすべてが被写界深度内にあるのが好ましい。
3.地上駐機中で、手前に邪魔なものが一切なく、背景もシンプルなものが好ましい。○○空港ならではといった風景は排除する。ジュラルミン肌の写り込みもシンプルであることが望ましい。飛行中、滑走中のものは論外。
4.順光で、的確なフィルタ補正を行っていること。露出が適正なのは言うまでもなし。白飛びとシャドウ部の潰れは厳禁。晴天で順光ならば、10時から15時までは補正フィルタを使わなくても良いと言いたいところだが、フィルム乳剤に合わせた補正は必須。夜間撮影と、特殊効果フィルタの使用は論外。
5.フラップ、スポイラーは収納され、その他動翼類は定位置にあること。ドアは閉じられていること。スラストリバーサーを使用していないこと。プロペラ機の場合、プロペラの羽がスピナーに隠れないこと。収納されているからといっても、脚が収納されている胴体着陸は『報道写真』の範疇なので論外。当然、機体には一切の破損箇所がないこと。汚れや塗膜の剥がれもないのが望ましい。
6.ISO50前後の35mm判デイライトポジフィルムを使用し、レンズの焦点距離は50mmが望ましい。その上で、フィルム一コマの全長の9割以上を機体が占めること。
7.フジフィルムのベルビアは発色が鮮やかすぎて不可。デジカメは何百万画素であろうと論外。ネガでは全くお話にならない。コダクロームのISO64前後が望ましい。
と、まあ、拘りがディープすぎて、我々凡人にはほとんど『つきあいきれない』世界である。鉄道写真でもスポッター写真と同様の『形式写真』というものがあって、細かいルールが定められているが、流石にフィルムメーカーの指定までは聞いたことがないぞ。まあ、勝手にやってくれ…。
【スモーク・ジャンパー】
全米各地の山火事現場にパラシュート降下して、防火帯の啓開などを行う消防隊員。およそ400名が活躍している。過去600回以上山火事現場に出動し、樹木のない僅かな空間を狙って降下して、斧とシャベルで山火事の延焼をくい止めている。一旦出動すると、補給はすべてパラシュートによる物量投下。鎮火まで数十時間にわたり眠る暇も殆どない激務である。逃げ場もなく救出や支援もままならない山深い奥地が現場ということもあり、過去に23名の犠牲者を出している。そのうちの14名は1994年コロラド州の山火事現場に降下直後のことだった。それで出動手当は時給にして僅か9ドル40セントである。まあそれを言ったら、自衛隊の不発弾処理なんて、出動一回あたりの危険手当はわずか100円程度だそうだ。
【スラスト・リバーサ】[thrust reverser]
一般に『逆噴射』と呼ばれる動作を行う装置。着陸直後にジェットエンジンの噴射方向を整流板などで閉塞し逆転させ、噴射の反作用で機体の減速を行う機構。エンジン内部に整流板を立て、エンジンカウリングの一部を開いて噴射を行うものと、エンジン噴射口直後に整流板を置いて、推力方向を変えるものがある。主に輸送機に見られ、戦闘機などに装備されるのはまれだが、スウェーデンのサーブ39グリペンは、ドラグシュートに代えて、再出撃時の時間短縮、省力化を目的として装備している。ドラグシュートは、畳み直して収納しなければならないから、結構手間がかかってしまうのだ。
古い機種では、いつでもどこでも作動させられるものが多かったが、現在ではごく一部の軍用機などを除いて、飛行中は使用できないように安全装置によってプロテクトされている。安全装置は、主脚が接地することによって解除される。軍用機が飛行中でも使用できるようになっているのは、急減速と降下によって敵の攻撃をかわすため。一度は攻撃をかわしても、速度と高度を失った飛行機は袋叩きにされるのがオチなのだが…。
着陸直後のジェット機がひときわ大きなエンジン音を立てるのは、スラスト・リバーサを作動させ、エンジンの出力を上げてフルパワーに近い噴射を行って減速しているため。フルパワーに近い噴射であっても、逆方向に流すためロスが生じ、実際に効力を発揮しているのは30〜50%程度である。とはいえ、実際の運航では、スラスト・リバーサを使用しなくとも、スポイラーと車輪ブレーキだけで安全に停止できるよう、充分な長さのある滑走路を使用することが求められ、スラスト・リバーサはあくまでも補助的な減速手段として用いられるので、30〜50%程度の推力でも十分であると言える。なお、これは余談だが、アメリカでは中型旅客機がトーイングカーによるプッシュバックではなく、逆噴射をかけてバックすることもよくある。→逆推力装置・
逆噴射装置
【スリップ】[slip]
乗務行路途中の滞在。LAX 24-hours slipという場合は、ロサンゼルスに24時間滞在したのち、次の乗務に入るという意味。アメリカの航空会社ではレイ・オーバー(lay
over)と呼んでいる。
【スルー・ステーション・フライト】[Through
Station Flight]
コクピットクルーがコクピットに入った段階で、既にAPUが作動し、コクピット内の各種電源も入っている状態。国内線などで短時間で再び出発となる場合、前に乗務していたコクピットクルーが電源を切らずに次のクルーに引き継ぐことがある。仕事が減って楽、ではなく、正常に動作しているかどうか、スイッチがちゃんと入っているかどうかは確認しなければならないから、手間数はあまり変わらないそうだ。縁起を担いでシステムの電源を入れ直す人も、中にはいる。これに対し、全電源が落ちている状態をコールド・アンド・ダーク・コクピット(Cold
and Dark Cockpit)と言う。
【セアカコケグモ】《F》
主に成田空港に大量に棲息し、背中が赤く、部品を周囲に落としたりタイヤをバーストさせて滑走路を塞いだりする迷惑な航空会社、ノースウェストのこと。パイロットに軍出身者が多いとかで、着陸は軍隊流のドン着。着地のときの白煙も豪勢である。アメリカのパイロットの間でも悪名高いらしく、編者は「先行していた背中の赤いやつがまたドジってタイヤをバーストさせましたので、当機は暫く上空で待機致します(意訳)」というアナウンスをユナイテッドの機内で聞いたことがある。機内が日本人客ばかりだったから、成田の悪口は控えたようだが…。2003年から新塗装が導入される予定だが、これが日本航空システムの系列そっくりな塗装である。いつからJALグループの一員になったんだ?
【せいぎょされたついらく】[制御された墜落]
空母への着艦のこと。もちろんヘリコプターやVTOL(垂直離着陸)機などではなく、本来なら長い滑走距離を要する固定翼艦載機の着艦のこと。まだ時速220〜230kmで飛んでいる機体の着艦フックを、飛行甲板上のワイヤーに引っかけ無理矢理減速させることで、艦載機は事実上の『失速墜落』をさせられることからこう呼ばれる。着艦の瞬間、パイロットには1.5t、甲板にたたきつけられるF-14トムキャット戦闘機の主脚には80tもの力がかかるのだそうだ。
艦載機パイロット達が織りなす、キッスランディングとはまたひと味違う『危険で、激しく、ハードな』ストーリィ。同人誌のネタにいかが?
【せいふせんようき】[政府専用機]
垂直尾翼に日の丸、胴体に赤と金のストライプが巻いてあり、アッパーデッキ前半に窓がなく、『日本国 Japan』と書いてあるだけの、特に何の変哲もないボーイング747-400。ボーイング社の正式の形式名は『Boeing747-47C』末尾の『7C』はボーイング社による日本国政府のカスタマーコードで、合衆国大統領特別機VC-25のように747のドンガラを利用しただけの別形式ではなく、冗談抜きで吊しの747にちょいと手を加えただけ。空中給油能力もない。航空自衛隊特別航空輸送隊に所属し、千歳基地のヌシである。バブル真っ盛りの1987年に対米貿易黒字の埋め合わせに発注され、1991年に総理府所属で2機導入、翌年、自衛隊機となった。
天皇・皇后両陛下と三権の長(わからない人は中学の公民教科書を見よ、扶桑社版でよければ本屋で売っているぞ)の外国公式訪問に主に使われ、国内移動には使われていない。外国での争乱時に邦人を救出するとか国連協力活動とか言ってるが、それならC130を1ダース追加と、空中給油機を半ダース導入した方がいいだろう。
ともあれ、折角買ったんだから妙な理由を付けずに寿命が来るまで大いに使い倒せばいいのに、イマイチ活用されていないようでもったいない。台所の天袋に仕舞われた引き出物の鍋みたいな扱いである…引き出物の鍋なら貰い物だが、政府専用機は税金と国債で買ったモノだぞ。借金財政の国が産油国の王様の真似なんかしなくてもいいんだよ。
【せいふせんようきにのるには】[政府専用機に乗るには]
現時点で政府専用機に搭乗できる人は。
1.天皇皇后両陛下、内閣総理大臣、衆参両院議長、最高裁判所長官、あるいはそれらの代理人の外国公式訪問。
2.1.に同行する記者団あるいは議員。
3.紛争当事国から脱出する邦人ならびに国連協力活動に参加する人員。
4.忘れちゃ飛べない政府専用機の乗務員。
以上のうちで最も確実に乗れそうなのは、1.に該当する人、特に内閣総理大臣であろう。2.については敷居は低いが乗れるかどうかは時の運。3.の場合、政府専用機ではなくてC-130あたりが来そうだ。4.については現在就職前の人なら頑張って航空自衛隊に入れば何とかなるかもしれないが、やはり時の運に左右されるであろう。
さあ、君も政権を手にして政府専用機に乗ろう。但し、失敗した場合は当局は一切関知しない。諸君らの健闘を祈る。
【セーフティ・インストラクション】
座席前のポケットに常備されている非常設備の説明書。救命胴衣の付け方とか、酸素マスクの使い方とかイラスト入りで書いてあるけど、誰も読んでやしない。だからといって『お持ち帰り』は厳禁。
【セーフティ・デモ】
飛行機が出発する前に行われる非常設備の説明。救命胴衣の付け方とか、酸素マスクの使い方とか、乗務員が実演したりビデオ上映したりしているけど、誰も見てやしない。航空会社のCMに起用したタレントにキャビンアテンダントのコスプレさせて(…JALは藤原紀香、JASが山口智子、ANAは…慎吾ママ?)ビデオ上映した方がいいんじゃない?…と思ったら、ヴァージン・アトランティックでは英国の人気男性俳優を起用したりしているそうだ。どこの国でも事情は同じらしい。
【セーフティ・ピン】
機体各部を固定したり、武装の安全装置として差し込まれているピン。目印に赤や蛍光ピンクのリボンがぶら下がっていて、REMOVE BEFORE
FLIGHT(飛行前に外せ)とかREMOVE BEFORE FRIGHT(驚く前に外せ…飛行前に、とは一字違いってのがうまいね。座布団一枚っ!)と白抜きで書かれている。このリボンをぶら下げたままで、飛んではいけない。
【せかいはつのくうぼ】[世界初の空母]
何をもって世界初とするか、で結論が分かれる。最初から空母として建造され最初に登場したのは旧帝国海軍の鳳翔。厳密に解釈すれば、鳳翔こそ世界初の空母と言える。物事を厳密に解釈するのがお好きな英国人にとって最大の癪のタネだそうだ。1922年12月22日に竣工したが、どうやって飛行機を着艦させたらいいのかわからず、三菱が懸賞金を出して、着艦してくれるパイロットを募ったとか。順序が逆である。最初から空母として設計され、最初に着工したのは英国海軍のハーミーズ。6年がかりでモタモタしているうちに鳳翔が先に完成してしまった。何やってたんだ、一体。飛行機の発艦にはじめて成功したフネは英国の巡洋戦艦オーストラリア。砲塔の上に板張りの滑走台を作り、アメリカ人曲乗りパイロットに頼んで飛んでもらった。反則である。飛行機を甲板上に着艦させることに成功したフネということならこれまた英国のフューリアス。巡洋戦艦からの改造空母だが、中途半端な改造で艦橋がど真ん中に居座った恐るべき空母。一度目は着艦に成功したが二度目はパイロットもろとも海ゆかばしてしまい、着艦事故第一号とダブルタイトルである。艦橋の前方にある飛行甲板に艦橋を追い越してから横滑りさせて着艦し、フューリアスの乗組員が後ろから追いかけて素手でふん捕まえて止めてもらうやり方なのだから、一度目だってよく成功したもんだ。この事故が原因でフューリアスは世界初の着艦禁止の空母になってしまった。空母と呼んでいいのか、それ…。というわけで、どれも皆条件付き世界初なのである。なお、水上機も含める、ってことになると、旧帝国海軍の若宮が最初である。当時は水上機母艦略して水母(すいぼ)と呼んでいたが、クラゲも水母と書くので空母に改めたという経緯がある。若宮は第一次大戦でドイツ領の青島要塞の攻撃に参加しており、実戦を経験した最初の航空機搭載艦でもある。もっとも、若宮は日露戦争中に拿捕された英国の貨物船レシントンの改造だから、世界初の航空機搭載艦の原型を作ったのは英国だ、とも言えるわな…。
【せきしゅつてん】[析出点]
燃料が冷却された際に、結晶が現れる尺度のこと。実際には、少量の燃料をビーカーに採り、ビーカーの周囲をドライアイスで冷却しながら燃料を攪拌してゆくと、燃料は流動性を失い粘性を増して、結晶を生じる。結晶が現れたところでドライアイスを取り除きながら燃料の温度を測定し、結晶が消えた温度が析出点となる。ジェット旅客機に使われる燃料、JET
A-1の析出点は-47℃以下。成層圏の気温はおよそ-50℃、極地上空では-70℃にもなるため、燃料が流動性を失い、エンジンへの供給が滞るのでは、とお思いだろうが、実際には大気との摩擦熱で外気温より30℃ほど暖められた状態になっているし、燃料供給系統にはヒーターも備わっているので心配は御無用。万一の場合はコクピットに警報が発せられる。その場合は高度を下げるか、速度を上げるという対応を取る。成層圏下層では、100m降下すれば外気温はおよそ0.6℃上昇する。他にも、予め析出点-61℃のJET
B(JP-4)をJET A-1に混合しておくという方法もあるが、現在日本では行われていない。先に述べた析出点の測定方法は、JET A-1とJET
Bを混合使用する際には必ず行われている。ちなみに、大気との摩擦によって暖められた温度のことを『ラム温度』という。
【せきらんうん】[積乱雲]
『入道雲』『雷雲』などの別名を持つ夏の風物詩。その高さは時として成層圏近くまで達し、頂部が平らになったものは『かなとこ雲』とも呼ばれる。…と、遠くから眺める分には長閑なものだが、雷電と強い降雨、突風などを起こす非常に危険な存在。うっかり積乱雲の中に航空機が入ってしまうと、内部は雹と放電とめちゃくちゃな気流でミキサーのような状態になっていて、大型機でも遭難間違いなし。このため航空機は積乱雲を避けて飛ぶのだが、時には短時間に次々と発生して、急速に移動しながらさらに発達し、積乱雲が一列縦隊で続々と太鼓鳴らして行進してくることが往々にしてあり、困ってしまう。そんなものが航空路を横断すると、飛行機の逃げ場がなくなって大騒動になる。地上に大被害をもたらす集中豪雨の正体も、多くの場合この積乱雲の行列。短時間に続々と、同じ場所に積乱雲が押し寄せるため、極めて狭い範囲に大量の降雨が集中し、土砂災害などをもたらす。積乱雲の国際略号はCbで表され、Cumulonimbusの略。
【せきわれ】[席割れ]《S》
一緒に旅行するグループの座席が隣り合わせの横並びではなく、縦の並びになったり、通路を挟んだ状態になったり、あるいは全く離れた場所になったりすること。新婚旅行でこれは悲惨。グループ客では大声や機内徘徊の原因にもなり周囲も大迷惑。個人旅行のご予約はお早めに。団体旅行では事前説明会で席割りを決める場合が多いので必ず出席しよう。もっとも、飛行機の座席は向かい合わせにできないし、どんな大型機でも6人以上(しかも、5列シートはB777のエコノミークラス中央席にしかない)のグループは席割れになってしまうが…。
【セスナ】[Cessna]
(1)カンサス州ウイチタに本拠を置く小型飛行機のメーカー。セスナ・エアクラフト社。
(2)単発軽飛行機の代名詞。電子オルガンを『エレクトーン』と呼び、ヘッドホンステレオを『ウォークマン』と呼ぶのと一緒。一般の人はパイパーだろうがピラタスだろうが単発プロペラ機はセスナ機だと思っている。故に双発のセスナ社製飛行機はセスナ機ではないというわけのわからない事態が生じてしまい、双発ジェットのセスナ・サイテーションに至ってはセスナ機の風上にも置けない存在と言うことになる。ここだけの話、某新聞社で「セスナ・サイテーションに乗って待ってて下さい」と某操縦士に言われた某カメラマン、目の前に駐機していたサイテーションには目もくれず「セスナ機はどこだ!」と羽田空港中を探し回ってしまい、徘徊カメラマン捜しで大騒動になったという話もある。
こういうトラブルが起こるってのは、飛行機通の人にはわかるまい…。
【ゼロしきかんじょうせんとうき】[零式艦上戦闘機]
貴様ッ!米英の言葉を使うとは何事かぁっ!『ゼロ』は敵性語であ〜る!→零式(れいしき)艦上戦闘機
【ゼロしきせんとうき】[零式戦闘機]
貴様ッ!米英の言葉を使うとは何事かぁっ!『ゼロ』は敵性語であ〜る!→零式(れいしき)艦上戦闘機
【ゼロせん】[ゼロ戦]
貴様ッ!米英の言葉を使うとは何事かぁっ!『ゼロ』は敵性語であ〜る!(ああ、しつこい…)→零式(れいしき)艦上戦闘機
【ゼロファイター】
貴様ッ!米英の言葉を使うとは何事かぁっ!『ゼロ』は敵性語であ〜る!しかも『ファイター』だと!『戦闘機』と言わんか!(いいかげんにしろ…)→零式(れいしき)艦上戦闘機
【ぜんえん】[前縁][leading edge]
翼型の最前部となる端。
【ぜんえんはんけい】[前縁半径][leading
edge radius]
前縁の丸みに一致する円の半径。翼の下面から、前縁を回り込んで翼の上面へ至る流れを円滑にして、前縁上部での流れの剥離を防ぐ目的がある。前縁半径を大きくすると、失速迎え角が増加し、最大揚力係数が増加する一方で、抵抗も増加する。このため、高速機では前縁半径の小さい翼型を採用している。
【せんおんそくだんめんせきほうそく】[遷音速断面積法則]
→エリア・ルール
【せんきょう】[戦競]
正しくは、航空自衛隊戦技競技会という。戦闘機による空中格闘や射撃、支援戦闘機による航空阻止などが有名だが、輸送機による物量投下とか、レーダーサイトにおける捜索、誘導。対空部隊の射撃などの競技もある。航空雑誌は、戦競というと戦闘機ばかりだけれど、もっといろいろな部隊の競技に目を向けて頂きたいものである。
【せんきょうとそう】[戦競塗装]
戦技競技会参加機に施される戦闘機の特別塗装。競技会の種目が射撃大会だと派手になり、各隊思い思いに色とりどりのペイントで、シャークマウスに伝説の女神にドラゴンにイーグルに…と、実に楽しい。競技種目が対戦闘機戦闘となると、グレー濃淡塗装で目立ちにくくしているから、フェンスの外からだと何が描いてあるのかさっぱりわからないが、アップで見る機会に恵まれると、これはこれでなかなか凄みがある。こうした特別塗装は、部隊の意気込みを対戦相手に見せつけ、部隊の士気を高めるという重要な役割を担っている。戦国武将の鎧甲や旗指物のようなものと言えば、ご理解いただけるだろうか。実用的なものでは、いろいろな迷彩パターンを試す場合もあるし、かつては敵味方の識別に、部隊毎に割り当てられた色で太い帯を入れていたこともある。戦競終了後、速やかに塗装を落としてしまうので、塗装には水性塗料や、最近ではパソコンでデザインしたステッカーなども利用されている。
【せんざいガム】[潜在ガム]
航空燃料油は貯蔵される期間が比較的長く、貯蔵されている間に生成されるガム物質はエンジン故障の原因となる。このため定期的に燃料を検査し、含まれているガム物質の量を把握しておく必要がある。航空燃料油をJIS
K 2276で規定されている酸化安定度試験方法で酸化させた後、沈殿物を除いて、ろ液を実在ガム試験で求める。潜在ガムは不溶性ガム、可溶性ガムの合計量を言い、試料100mlあたりのmg数で表す。
【せんざいざんさぶつ】[潜在残さ物]
航空燃料油をJIS K 2276で規定されている酸化安定度試験方法で酸化させ、酸化後の試料を規定方法で蒸発させた際の残留物をいう。全潜在残さ量は沈殿物、不溶性ガム、可溶性ガムの合計量を言い、試料100mlあたりのmg数で表す。
【せんしゅぼうえい】[専守防衛]
専ら守る防いで衛るって、二度も三度も同じような意味の言葉を並べた、真に麗しい日本語である。憲法解釈と現実の狭間の苦肉の策で、侵攻用の軍隊ではありませんってことを日本政府は言いたいらしい。今どき、侵攻用の軍隊です!って看板掲げた軍隊なんて、世界中探したってなかなか見あたらないのに…。この呪文のおかげで、航空自衛隊のF-4EJは、標準装備だった爆撃装備も空中給油装備も不要ってことになって、わざわざ付いてたものを外した上で配備された。今更もうそれはいいんだが、専守防衛の看板を掲げるからには、日本に攻め込もうと準備しているところ(軍事用語で、敵の策源地、と言う)を叩くってことも、日本に向かって発射されようとしているミサイルを撃破するってこともできない…つ〜か、しません、ってことである。専守防衛と言えば聞こえはいいけれど、本土決戦と同義語だということに気づいている人は、あんまりいないようである。
【ぜんせんこうくうとうせいかん】[前線航空統制官]
→FAC
【センチュリーシリーズ】
アメリカ空軍の戦闘機、ノースアメリカンF100スーパーセイバー以降の、Fの100番台の機種の総称…っても、いくら何でもステルス攻撃機のロッキードF117ナイトホークは一緒にするわけにいかないだろ…。どこまでがセンチュリーシリーズなのか、誰もきちんと定義していないようなのでその辺がはっきりしない。計画だけで飛ばなかったノースアメリカンF108レイピアと、ベル109は除外して、とりあえず飛ぶことは飛んだノースアメリカンF107辺りまでをセンチュリーシリーズとしている資料が多いようだ。1950年代の、いわゆる『ミッドセンチュリー』と呼ばれた時期に初飛行もしくは開発着手した機体と見ることもできる。
えっ?ジェネラルダイナミクスFB111アードバーグはどうしたって?あれは『FB』だからねぇ…。
【ぜんてんこうせんとうき】[全天候戦闘機]
昔の戦闘機は雨漏りがひどくてコクピットが水浸しになってしまい、雨の日は飛べなかった。エンジンも雨水吸い込むとすぐ止まるし…。というのはウソ。防水性を高めた戦闘機ではなく、視界の悪い夜間や悪天候でも索敵・追尾が可能なようにレーダーを装備し、敵味方識別や、搭載火器のレーダー照準あるいは誘導までも可能な戦闘機のこと。F86Dセイバードッグ以降、センチュリーシリーズ登場の頃までのレーダー搭載戦闘機を指して使われた用語。現在の戦闘機は全天候戦闘機であることが当たり前なので、わざわざいちいち断っていない。
【せんびよくしき】[先尾翼式]
水平尾翼が、主翼より前方にあるもの。当たり前だがトリムや昇降蛇の動きは通常の水平尾翼の場合とは逆になる。人類初の動力飛行機『ライトフライヤー』では機首に水平尾翼のようなものが付いているが、あれは全体が昇降蛇であって、安定板ではない。ライトフライヤーが先尾翼式というのは誤りである。
「機首にあっても尾翼とはこれ如何に」
「兵隊さんが動かしても昇降蛇というが如し」
【せんりがわ】[千里川]
大阪・伊丹空港の南側、32エンドと呼ばれている場所。千里川の川縁なのでこう呼ばれている。大阪の航空ファンは32エンドとは呼ばずに、こう呼ぶ人が多い。→32エンド
【せんりゃくばくげき】[戦略爆撃]
敵国の生産力を徹底的に破壊し、あるいは敵国国民の戦意を粉砕することを目的とした爆撃。故に爆撃目標は軍事施設に限らない。工場・港湾・鉄道は言うに及ばず、住宅地だろうが病院だろうが学校だろうがお構いなしである。無差別爆撃とかいう、妙に耳障りの良い言い回しを使ったりもするが、それは非武装の市民に対する、白旗もホールドアップもない一方的な殺戮であることを意味する。
どんな言い訳で、そこで何が行われたか、絶対に忘れてはならない。
【そうフロート】[双フロート]
大阪・梅田の某喫茶店のメニューではない。フロート(浮舟)を二つ並べて装着している水上機「♪波のぉ谷ぃ間にぃ命のぉ花ぁがぁ〜、二つぅ並んで咲いぃていぃるぅ…」
【ソーティ】[soty]
延べ出撃回数。1機が1回出撃すれば、1ソーティ。100機が100回出撃すると10,000ソーティ、となる。撃墜されるなどして無事帰還できなかった機体はソーティ数に含めない。なぜなら航空機というものは、飛行の成果があろうがなかろうが、帰還してこそその任務を果たすものとされているから。帰還後、損傷が激しく修理不能でスクラップになった場合でもソーティーに含まれる。一旦飛び立っても故障などで途中で引き返してきた機体はアボートと言い、撃墜されたりした機体などは未帰還として別にカウントされる。帰還を前提としない特攻機や、敵地に強行着陸して斬り込みを行った義烈空挺隊の輸送機は、ソーティではなく出撃機数としてカウントされる。
【そさいだん】[阻塞弾]
旧帝国陸軍が使用していた歩兵用対空火器。迫撃砲の一種に分類される。口径70mmの7cm阻塞弾と、口径82mmの8cm阻塞弾があった。発射器は発射筒の底に撃針が固定された滑空筒身と木製台座からなり、木製台座の下には突起があって、この突起を地面に突き刺して固定する。引き金などはなく発射筒に阻塞弾を放り込めば(上下を間違わないようにね)発射筒の底にある撃針が阻塞弾の雷管を叩き発射する。敵機の進路上に阻塞弾を打ち上げると、7cm阻塞弾ならば約600m上空で7個の子弾に分離してパラシュートで降下してゆく。敵機がパラシュートと子弾を結んだ長さ1.5m程の紐に引っかかると、子弾内部の摩擦式信管が作動して爆発するというしかけ。敵機に引っかからなかった場合は開傘後3秒で自爆した。まるでパラシュート打ち上げ花火だな。それでも初期の南方戦線で使用されてそこそこ戦果を挙げたらしい。8cm阻塞弾が作られたのは、7cm阻塞弾でうまくいって味を占めたからなのか、7cm阻塞弾では満足できなかったからなのかは謎である。真上に向かって打ち上げると、撃った本人も巻き添えを食いそうだ。
【そとあお】
飛行教導隊(宮崎県、新田原基地)に所属するF-15DJ、02-8063機のニックネーム。主翼前縁、垂直尾翼などが青で塗装されている、ちょっと変わった迷彩。機体の形状を欺瞞するのが目的らしい。
【そとみどり】
飛行教導隊(宮崎県、新田原基地)に所属するF-15DJ、02-8075機のニックネーム。主翼前縁、垂直尾翼などが緑色で塗装されている、ちょっと変わった迷彩。機体の形状を欺瞞するのが目的らしい。
【ソニック・クルーザー】[Sonic Cruiser]
→ボーイング・ソニック・クルーザー
【そばですかい】[SOBA de SKY]
→うどんですかい
【そらのしょくよくまじん】[空の食欲魔人]
川原泉が、花とゆめ昭和59年1号に読み切りで発表したコミック。続編に『カレーの王子様』(昭和59年、花とゆめ22号掲載)がある。主人公一橋みすずはイラストレータ。みすずの幼なじみ、吉川弘文はB747の副操縦士。旺盛な食欲の持ち主である。
航空ものではお約束の「車輪が出ない!(…けど叩いたら出た)」「(食い意地の張った)片霧機長が食中毒に!」といったさまざまな危機を乗り越え、弘文がパイロットとして成長してゆく物語…では残念ながら、ない。んなわきゃ、ない。なぜなら川原教授の作品だから。ついでに航空ファン的にはツッコミ所も満載なのだが、これは言うだけ野暮なのでやめておこう。マーブルチョコにおける芸術論とか、なつかしのカンロ飴の前ならえといったギャグを堪能するのが本作品の正しい楽しみ方である。単行本は花とゆめコミックス『空の食欲魔人』(新書版)に収録され、現在では白泉社文庫『空の食欲魔人』に収録されている。川原作品はこのあと『陸の食欲魔人 アップルジャック』『海の食欲魔人 不思議なマリナー』『青い瞳の食欲魔人 ミソスープは哲学する』『宇宙の食欲魔人 アンドロイドはミスティー・ブルーの夢を見るか?』と食欲魔人シリーズが続く。現在新刊で入手可能な文庫版『空の食欲魔人』では、この食欲魔人シリーズを一挙に楽しめるので、古本屋で無理して新書版を探すよりお勧めである。
【そらのとおりま】[空の通り魔]
ひらがなで書くと間抜け…。百式司令部偵察機のこと。ビルマ(現ミャンマー)上空に突如出現し、スピットファイアを振り切る俊足を見せたことからこう呼ばれたとか。誰が呼んだか知らないけれど…。→百式司令部偵察機
【そらのひ】[空の日]
9月20日。ただし、メインイベントは例年秋分の日前後に集中し、羽田空港や成田空港などで部品即売会やキャビンアテンダント撮影会、ハンガー見学会などが大々的に開催される(2001年は全滅だったが…)まれに敬老の日前後に行う年もあるので要注意。自衛隊や在日米軍のイベントは山ほどあるが、民間航空のイベントはほぼこの時期に集中するので民間航空ファンは大忙しになる。空の日の起源は昭和15年に制定された『航空日』が起源。この年の航空日は、事務次官会議において9月28日に決定したが、昭和16年は航空関係省庁間協議において9月20日と決定し、以後9月20日として昭和19年まで続いた。敗戦により航空日は一時中断されたが、昭和28年9月20日に復活、第1回航空日として再開された。平成4年には、民間航空再開40周年にあたることから、国民にとってより親しみやすいネーミングにしようということで、それまでの航空日から『空の日』に改称し、併せて9月20日から30日まで『空の旬間』が設けられ、現在に至っている。
航空日が定められた昭和15年は、明治43年12月19日、代々木練兵場(現在の代々木公園周辺)において、日野・徳川両陸軍大尉がアンリ・ファルマン機で我が国初の飛行に成功してから30年目に当たる年で、航空日はその偉業を称えるという理由から始まったのだが、航空日と定められた9月20日や9月28日には、特に歴史的な根拠はないようで、空の日が国民の休日になる見込みは、かなり薄そうである。
【そらべん】[空弁]
からべん、ではない。空港で売っている弁当のこと。言うまでもなく駅弁に対抗した名称である。地元の旬の特産品を詰め込んであって、お手軽に食べられると最近巷で話題である。密閉された機内で匂いがこもらないよう、匂いは控えめに作られる。そうでなくても日本の旅客機は醤油臭いって言われてるらしいからね(そう言ってるのが日本人ってとこが、なんか怪しいんだが…)最近話題の空弁って言っても、随分昔からあったもので、なぜ今更話題になるのかよくわからない。地方空港発の国際線が低調で、各地の機内食ケータリング業者が本腰を入れて空弁に参入しているからだろうと思うが。ともあれネタ切れマスコミが「今話題の空弁、一挙大紹介っ!」とかやってくれたおかげで、目当ての弁当が即売り切れってのが多くて、困ったもんである。
【ソラリーボード】
何枚ものアルミの薄板に、予め使用することが予想される幾つかの情報を書き込んでおき、このアルミの薄板をパタパタめくることで表示を切り替えるタイプの案内表示板。昔懐かしい歌番組『ザ・ベストテン』の順位表示板である…っても10代の人にはさっぱりわからないだろうな。'70年代〜'80年代にかけて、空港は言うに及ばず、鉄道の駅にバス停に、果ては目覚まし時計にまであちこちで見られたが、可動部が多くて故障しやすく、表示できる内容が限られ、しかもボードに書かれていないことは表示できないという致命的な欠点があり、LED式のピンボードに取って代わられつつあるが、羽田の到着便案内のソラリーボードは今なお健在である。空港にあった大型のものは、作動した時にズジャジャジャ…と大きな音がしたので、情報が更新された際に見逃すことがなかった。最近のLED式のピンボードはワープロ感覚で操作できる上に、いろいろな情報が流せるが(羽田のJAS出発カウンターのピンボードに至っては、伝言板代わりにもなる)気が付いたらいつの間にか表示が書き換えられていて慌てた、なんてことがあってよろしくない。ソラリーボードの音こそ空港の音である。空港の表示板はソラリーボードに限るぞ!やっぱり!
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