【あかぼし】[赤星]《F》
旧ソ連軍機またはロシア軍機のこと。ただし帝政ロシア軍機は含まない。主翼と垂直尾翼に塗られた赤い星から。鉄のカーテンに覆われた(中に一機、日通の黄色いシートに覆われたヤツもいたな)怪しい機体に魅せられ、迂闊に手を出してしまうと資料がない、キットがない、で大変であった。ソ連が崩壊してロシアになって、少しはましになったが…。三倍速い赤い彗星のことではないし、ましてやジョニー・ライデン少佐機は白星である。(ガンダムから離れろ!)「完璧な資料なんか探してたら、赤星なんかいつまでたっても作れないよ!」「赤星のキットがストレートに組めるわけないだろ」「赤星の実機写真はないねぇ」という具合に使う。
【アストロ・ハッチ】
古い中・大型機のコクピット後方上部に設けられていた透明ドーム。航法士という人がこの透明ドームに六分儀(セクスタンス)という測定器具を突っ込んで(機種によっては六分儀が常設されていた)星の見える角度を測り、現在位置を割り出していた。旅客機だとDC-4あたりまで付いてたようだが、'60年代にはその殆どが撤去され残った穴は埋められていたようだ。軍用機だと海上自衛隊のP-2J対潜哨戒機が装備していたので、日本では'80年代までは普通に見られた。ロシアには今でもまだゴロゴロいるらしい。なお、六分儀の対物レンズ側が僅かに突き出してアストロ・ハッチが省略されている場合もある。
【アッパーデッキ】
747の2階席部分。1階席部分は『メインデッキ』という。アッパーデッキとは本来船の上部甲板のことを言う。上部甲板といっても船体部分における上部甲板なので、現代の船では相当下の方になる。というのは船体の上に上部構造物(ハウスと呼ぶ)が乗って、そこに乗員や乗客が乗るようになったのは汽船が登場してからの話で、帆船が活躍していた頃はそんなものはなく、船長も一等船客も貨物もみんな船体の中に押し込められていた。そのころのアッパーデッキなのである。その後ハウスが付くようになり、ハウスの1階、船体部分の屋上に当たる甲板をブリッジデッキ(たとえそこにもうブリッジはなくても)とかシェードデッキなどと呼び、アッパーデッキはその1階下になる。その後も汽船の大型化はさら進み、その上にボートデッキ、プロムナードデッキ、リドデッキ、ナビゲーションデッキ、コンパスデッキ…と、好き勝手に名前を付けてどんどん積み上げていったので、アッパーデッキという名前は、今では随分下の方に取り残されちゃっているのである。
【アテンションプリーズ】[Attention please]
(1)スチュワーデスが機内アナウンスをする際の決まり文句。ほぼ死語。
(2)TBS系列で放映されたテレビドラマ。『サインはV』の後を受け、1970年8月23日から1971年3月28日まで全32話放映、毎週日曜日、19:30からの30分番組。主演は紀比呂子。制作は「あの!」大映テレビ。職業系根性ドラマの原点であり、航空ドラマの始祖的存在にして伝説的番組。DVDで出してくれないかなぁ。これを見てスチュワーデスを志した方は非常に多かったが、現在もなお飛んでいる人は幼稚園の頃に見た人ぐらいで、もう数少なかろう。原作は細川知栄子(『王家の紋章』で今なお活躍中の細川智栄子である)週刊少女フレンドに連載されていたコミック作品である。
同名の主題歌はザ・バーズが歌っていた「ひに光 ひらける波を 今私は 見る…」で知られる曲で、レコードは曲のみとドラマ入り、かおりくみこによるカヴァーの3種類が存在したようで、コレクターの方は注意が必要。2番の歌詞「朝焼けの 花粉を浴びて 今私は 着く…」は、目がかゆくなってくしゃみが出そうだ…。
(3)1979年にアイドル歌手の能瀬慶子が歌った「土曜日の闇の中 光の帯をひいて…」という曲。カラオケで『アテンションプリーズ』と言えば、ほとんどの場合この曲のことだが、「♪わぁたぁしを うぅけぇとぉめぇてぇ〜〜〜〜〜〜〜〜」と、歌うラムシェバックとかフゴイド運動とかフラットスピン(…ああもうぐちゃぐちゃ)とまでいわれる能瀬の唱法をいかに再現するかがポイントと言えよう。作詞は喜多条忠、作曲はなんとあの浜田省吾である。
【アフターバーナー】[After Burner] 
ジェットエンジンのタービン後方に設けられ、排気に残っている酸素を利用して、燃料を噴射し再燃焼させて推力を増大させる装置。戦闘機などに装備されるほか、コンコルドにも装備されている。大量の燃料を消費し、二段構えで二酸化炭素を大量生産する、地球に優しくない装備。燃料消費が激しいから,たいていは連続使用時間に制限がある。アフターバーナを使用している場合、ノズル内部がオレンジ色に輝き、エンジンの後ろから炎の尾を引いているのですぐわかる。 イギリスではリヒート(reheat)と呼んでいる。ロールス・ロイスの商標だそうだ。
【イジェクション・シート】
射出座席。よくインジェクションシート、なんて言ってる人がいるけど、正しくはイジェクションシート。インジェクションシートだと、射出成形で作った座席って、それじゃプラモデルだ。→射出座席
【イストリヴィーテリ】[Истребитепъ]
ロシア語で戦闘機のことだが、どちらかというと『戦争をする飛行機』ぐらいの意味のようだ。「先がとんがった飛行機はみんな戦闘機!」「軍艦はみんな戦艦!」「大砲積んでキャタピラ履いてれば戦車!」みたいなもんだ。
【イストリヴィーテリ・ピリフヴァーチク】
[Истребитепъ пепехватчик]
ロシア(旧ソ連)の戦闘機で、防空軍に所属し、領内に侵入してくる(…と、想定される)敵爆撃機を迎撃する任務を負った戦闘機を言う。要撃戦闘機とか迎撃戦闘機のことである。かつて函館に亡命してきたMig25フォックスバットとか、サハリン沖で大韓航空機を撃墜したSu-15は、イストリヴィーテリ・ピリフヴァーチクにあたる。わざわざ広大なロシアの奥深く、クレムリン目指してのこのこ侵入する爆撃機ってのもICBM(大陸間弾道弾)やSLBM(潜水艦発射弾道弾)の登場で非現実的なものになったので、最近イストリヴィーテリ・ピリフヴァーチクとして作られた戦闘機は殆どない。
【いわくにあがり】[岩国上がり]《F》
岩国基地Runway20からの離陸直後、基地北側にある帝人の工場群を避けるために行う上昇旋回。飛んでいる飛行機の背中が撮れるので軍用機ファンの人気が高い。空気中に適当なお湿りがあると、ベイパーがきれいな弧を描いてなかなか絵になる。ヘリやハリアーには関係ない話で、P3CやKC-130は旋回が緩やかでイマイチ絵にならず、FA-18ホーネットばっかりなのが難点。海と川に囲まれた基地なので撮影場所が限られ、ホーネットを画面一杯に写すなら400mm以上のレンズが必須。 岩国基地は沖合展開工事が進んでいるので、撮りに行くなら今のうちである。 なお、足場があまりよくない撮影場所もあるらしく、年に数人、カメラを抱えたまま海にディッチング(着水)してしまったりしているらしい。
【エアフォース・ワン】[Air Force 1]
(1)アメリカ合衆国大統領が塔乗する空軍機のコールサイン。有名な白と水色の専用特別機だけでなく、大統領搭乗中の空軍機ならば『エアフォース・ワン』である。1996年1月にクリントン大統領がボスニアへ行った時に搭乗したC-17も、コールサインはもちろん『エアフォース・ワン』だった。大統領搭乗中のみ使用され、フェリーフライトなどで大統領が搭乗していない場合のコールサインはSAM(サム:Special Air Missionの略)+登録記号を使用する。アイゼンハワー大統領の頃までは大統領搭乗中でも登録記号をコールサインにしていた。
大統領搭乗中のみのコ−ルサインということで、これにまつわるエピソードはいろいろある。ニクソン大統領はエアフォース・ワンで郷里カリフォルニアへ帰る途中に辞任が確定し、専用機の機長が飛行中に無線で「現時点を以て本機のコールサインを『エアフォース・ワン』から『SAM27000』に変更する」と宣言したという有名な話があるが、真偽のほどは定かでない。1963年11月にダラスで暗殺されたケネディ大統領の後を受けたジョンソン副大統領(当時)は、ダラスからワシントンDCに戻るNo26000機内で大統領就任宣誓を行っているが、これは飛行中ではなくダラス駐機中に行われたらしい。飛行中にコールサインが変わるというのはいかにも一般ウケしそうな話なのだが、その多くはどうも作り話くさい。大統領が空中綱渡りで別の飛行機から乗り移ってきたというのなら話は別だが…。それはそうと、ヒラリー・クリントンがボスニアへ行った時にC-17に搭乗しているが、大統領夫人が搭乗する場合って、エアフォース・いくつになるんだ?
(2)アメリカ合衆国大統領専用空軍機の通称。正式名称ではない。1990年から現用で使用されているVC-25Aという、ボーイング747をベースに製造された2機(登録記号28000と予備機の29000)と、かつては1959年から使用されていたVC-137Cという、ボーイング707をベースに製造された2機(登録記号26000、27000)があった。白と水色の大統領専用機のカラーリングデザインは、工業デザイナーのレイモンド・ローウィ(口紅から機関車までのキャッチフレーズで知られる。TWAのロゴデザインもこの人だ)の提示した案を、ケネディがオーバルハウスの床に並べて選んだといわれている。
大統領専用ヘリコプターというのもあるが、こちらは海兵隊所属機なので、大統領搭乗時には『マリーン・ワン』というコールサインを使用する。
【エアポケット】
マスコミの造語。ほかの星はどうか知らないが、少なくとも地球の大気圏にそんなものは存在しない。『航空の○○』とか自称している某新聞社でもこの程度なのである。正確かつ誰にでもわかりやすい表現を求めるならば『乱気流』『気流の乱れ』で充分である。
【エリコプテール】[Helicoptere]
1863年に、フランスのホントン・ダメクールが作った模型ヘリコプター。蒸気機関を利用して二重反転ローターを回すもの。Helicoptereはギリシャ語で螺旋を意味するHelixと、翼を意味するPteronから作られた合成語で、ヘリコプターの語源である。 偉大なるおフランス語は世界一美しい言語(自称)であり、これを実現するため多くの場合Hを発音しない。ヘリコプテールではなくエリコプテール、ヘラーのホチキス戦車ではなくエレールのオチキス戦車、ホテルではなくオテル、ヒロシマではなくイロシマである。アンシェヌマンにリエゾンと言って、単語の語尾の音を次の単語の語頭の音につなげるというルールが適用される場合もある。5キロはサンク・キロではなくサンキロ、航空郵便のpar avionはパー・アヴィオンではなく、一つに繋げてパラヴィオンと発音してスィルブプレ…。
【えんかん】[煙缶]
タバコの吸い殻を集める密閉可能な赤いペール缶。航空祭で喫煙所に置いてある、あの水を入れた赤い缶容器のこと。自衛隊ではこれがある場所が喫煙所になる。それ以外の場所は禁煙だぞ。
【おおだてのしろくうこう】[大館能代空港]
秋田県北部、大館市と能代市の中間に位置する空港。中間に位置しているのでどちらからも遠い。どうでもいいが「秘湯巡りの拠点」ってキャッチフレーズは大笑いだぞ。確かに、オンリー・ワンではあるけれどね…。
【おきなわキャンペーン】[沖縄キャンペーン]
沖縄・奄美方面パッケージツアーの広告キャンペーン。例年2月にプレスリリースが出され、3月から広告が出稿される。ピークは4月で、ゴールデンウィークを過ぎると北海道キャンペーンにバトンタッチする。最近では水着姿の広告がセクハラに当たるとか言う、自称市民団体からの訳のわからない御批判とか、海外リゾート地へのツアーが安価になったこともあって地味になってしまったが、1980年代の沖縄キャンペーンと言ったら、そらもうド派手にやっていたものである。スキーツアーのポパイやスヌーピーが引っ込み、水着モデルのポスターと等身大立て看板が、もうやりすぎってぐらい旅行代理店の店頭を埋め尽くして、CM曲がチャートに入ってくると本格的な春の到来。それは街の風物詩であった。最強だったのが全日空スカイホリデー。CM曲は『高気圧ガール』と『踊ろよフィッシュ』の山下達郎。南良孝もそうだったっけ?薬師丸ひろ子の映画のイメージがあるけど…。CMモデルには2時間ドラマの検事さんでおなじみ鷲尾いさ子なんて人もいたっけ。これに対抗して日航ジェットプラン(JAL STORYを経て、現在のジャルステージ)が送り込んでいたのが『シンデレラ・サマー』と『ふたりの愛ランド(チャゲとのデュエット)』の石川優子である。一発屋の代表格トム☆キャット(しかもCM曲が当たらなかった)とか、CMモデルにはワイドショーでおなじみ吉川十和子なんてのもいたな。TDAナイスウィング(のちにJASナイスウィング)の場合は、東亜国内航空が沖縄路線を持っていなかったので、奄美・ヨロン(カタカナなのがポイント)キャンペーンだった。キャンペーン自体は3社の中で最も地味だったが、モデルの日焼け度は最も高かった気がする。写真の露出(モデルが着ているモノの、布の面積ではないぞ!)もアンダー気味にして、肌の黒さを強調していたな。少々時代が最近になるが、財前直見がモデルとしてここからデビューし、華やかなりし沖縄・奄美キャンペーンの掉尾を飾っている。それが今ではJALのお局スチュワーデス刑事だから世の中わからない。ああそういえば、藤原紀香とかCC Girlっても、確かJALの沖縄キャンペーンに出ていたような気がする。それにつけても、南の島に誘うのに、おっさんのモデルはないだろう。とほほと思う今日この頃である。
【おみあいシート】[お見合いシート]《S》
ジャンプシートと向かい合わせになる、ドアのそばの座席。足下広くてキャビンアテンダントとお向かいになれるので人気があるが、前の座席下に置けるはずの荷物は前に座席がないため置き場がなく、機内で預かってもらうことになりこの点は少々難儀だ。また非常時にはこの席に座っている乗客に緊急脱出の支援を要請するため、外国の航空会社では言葉の通じない乗客の着席は拒否されるし、航空会社によっては社員や、自国の警察官・軍人などに限って着席を認めている場合もある。 なお、日本航空のDC-10、MD-11の右側一番前のドア(R1ドア)にはキャビンアテンダントの配置がないので、お見合いにはならないぞ…って万一の場合誰がドア操作をするんですか?もしかして、訓練受けてない私がやるんですかぁ?
【かこうひん】[火工品]
信号弾、照明弾、発煙筒など、火薬類を使っている装備品。射出座席も火工品である。但しミサイルやロケット弾、砲弾、銃弾、手榴弾、小銃てき弾、魚雷、爆雷、機雷、地雷など、火薬類を使っていても一般的に武器としてイメージされているものは火工品とは呼ばない。が、なぜか火薬類を使っていないマリンマーカが火工品に分類されていたりするのである。
【カサブランカきゅう】[カサブランカ級]
第二次大戦中の米海軍の護衛空母。カタパルトを使って艦載機を射出できるようになったので、空母としては非常に小さい。船団護衛に当てるため、ネームシップである一番艦カサブランカを皮切りにアメリカ中の造船所を総動員して一年間で50隻が建造されたというから、ほぼ週に一隻のペースで建造されたことになる。週刊誌みたいな空母である(創刊号は豪華バインダー付きだったのか?)やっぱり戦争は数で勝負だね。
【かせん】[火箭]
(1)唐代に作られた黒色火薬を利用した火矢のこと。よってロケットの起源とするのは誤りである。
(2)旧帝国海軍では信号用ロケット弾のことを言う。
【かそうせんき】[仮想戦記]
もしも自衛隊が戦国時代にタイムスリップしたらとか、陸上自衛隊の特殊部隊サイレント・なんたらがアジア各地の紛争に極秘介入したらとか、ミッドウェイ海戦で帝国海軍が大勝利したらとか、大日本帝国がドイツ第三帝国に宣戦布告してとかって類の小説。つい最近まで豊田有恒の『タイムスリップ大戦争』とか半村良の『戦国自衛隊』ぐらいしかなかったんだが、今では日本で刊行されているSF小説の大半がこれだ。戦記シミュレーション小説とか言う場合もあるが、まあ似たようなモノだ。ジェットエンジンに換装した震電がB29を袋叩きにするとか、富嶽がベルリンに爆弾の雨を降らせるとか、戦艦大和が空母になる(…それって、あの信濃じゃん)なんてのはもうお約束である。今や新書版ノベルのほとんどが仮想戦記モノ。日本人はよっぽどストレスが溜まっているらしい。他にやることないのかな?とか言いながら佐藤大輔の新刊を待つ編者であった。
【かそうせんき】[火葬戦記]《F》
いわゆる仮想戦記ものと呼ばれるジャンルに属する小説の氾濫ぶりを揶揄した言葉。インターネットの匿名掲示板で用いられる。
【かみばくだん】[紙爆弾]
(1)敵のスキャンダルを暴露したり、敵陣営の結束を弱める目的で偽情報を流したりするために使用される文書の総称。出所がわからないようにばらまき、デマであってもちょっとは真実を織り交ぜるのが基本。最近ではインターネットの匿名掲示板なんてものもあって、紙に書いてあるモノばかりとは限らない。実際の戦争でも爆撃機や輸送機が、夜な夜な敵地に宣伝ビラをばらまくということはよく行われている。これがホントの紙爆弾である。
(2)札束のことをこう呼ぶ場合もある。当然、敵に投下する爆弾ではなく、味方になりそうなヤツとか、一応味方ということになってる側に、寝返りや味方陣営の結束強化などを目論んで投下する爆弾である。実際の戦争だと、偽札をばらまいて(やめろ!飛行機からばらまいたら怪しまれるじゃないか!)敵国の経済を混乱させるということも行われる。そちも悪よのう。ふっふっふっ…。
【きかんほう】[機関砲]
銃と砲の境目は、口径20mm以上かどうか、ってことに、現在では一応なっている。口径20mm未満ならばそれは銃、20mm以上ならばそれは砲である。この定義には国や軍や時代などによって多少の違いがあり、旧帝国海軍では口径20mm以下を銃としていたようである。だから、零戦が積んでたのは20mm機銃で、ファントムやイーグルが積んでいるのは20mmガトリング砲(バルカン砲)である。
機関砲ってのはだから口径20mm以上の機関銃のことで…あれ?20mm以上は銃じゃないんだから…え〜と、こういうときはどう言ったらいいんだ?ややこしいなぁ…。
【きどうしゃ】[起動車]
ディーゼルカー、ってそれは気動車である。エンジンを起動させるときに使う圧縮空気を供給するクルマ。航空自衛隊ではF-4用に2tトラックにコンプレッサを積んだものがあるし、大型旅客機用だとガスタービンエンジンを積んだ起動車なんてのもある。もっとも、最近の飛行機は補助動力装置などを使って自力でエンジン起動ができるものが多いから、だんだん出番は少なくなってきている。ちなみにT-4のエンジン起動時に接続されている作業車は、T-4にエンジン起動のための電源を供給する電源車で、起動車ではない。
【ギャレイ】
簡易調理室。調理済みの機内食を温めてお出しするだけなので、いわゆるキッチンとはかなり趣が異なる。ガスコンロも食器洗い機もIH調理器もまな板もなく、機内食を温めるのは電子レンジではなくオーブンである。電子レンジ(英語でマイクロウェーブ・オーブン)は航空電子機器に影響を及ぼす虞があるので、機内で使われるようになったのは航空機搭載用の機種が開発されて以降、つい最近になってからである。ギャレイは貨物機のコクピットのすぐ後ろにもあったりするのだが、こちらはホントにお印程度で、おしぼりウォーマーをオーブン代わりに使うのだそうだ。貨物機にはキャビンアテンダントなんか乗っていないから、キャプテンといえどもセルフサービスで、しかもおしぼりウォーマーだから弁当を温めるのに30分近くかけてようやく、いただきます。である。侘びしいよなぁ…。ギャレイといえばロシア空軍のSu-34攻撃機にも付いていて、弁当を入れておく冷蔵庫とオーブンがあるそうだ。トイレも付いてるそうだから、後はトラベルポッドに寝袋とテントと釣り竿でも押し込んでおけばキャンプに最適のなかなか楽しそうな攻撃機だな…。いくらなんでもサモワールが湯気吹いていてその横にジャムが一瓶、ってことはないと思うのだが、資料の少ないロシア機のことだから、あるいは…。
【くうこうようかがくしょうぼうしゃ】[空港用化学消防車]
飛行場の化学消防車。そのまんま。離着陸に失敗するなどした事故機から乗員を救出するために、脱出路を確保し、後続してやってくる応援の消防車が事故機に接近するルートを啓開するための消防車。自衛隊では破壊機救難消防車と呼んでいる。最大のものではオーストリア製の総重量40t…ってJRの機関車並だぞ!最高速度140km/h、搭載している消火剤と水は12.5tで8輪駆動、0-100km/h加速25秒、放水用と走行用に2台のエンジンを積んでいるパンサーってやつがいる。場合によっては数キロ先の現場へ、事故機が掘り返した不整地を乗り越え、フェンスを蹴倒していち早く駆けつけ、内蔵しているタンクの消火液を放水して、ぶちまけられた燃料で火の海になっている事故機から乗員の脱出路を確保するためにこれだけの性能が必要とされている。飛行場の規模によって常備すべき消防車の性能と台数は、ICAOの第14議定書に定められている。2005年を期限にその規定が改正され、消防力の強化が要求されているので空港管理者(日本では多くの場合、自治体である)は乏しい予算で一台4億円もする消防車の調達と、運用・維持に当たる人員の確保に頭を抱えている。そういう問題もあるから空港を維持するってのは大変な仕事なんだが、空港作るぞって騒いでいる静岡県や神戸市はホントにわかってるのかな?もちろん、いくら強化したといってもその程度の台数(多くても3〜4台)で航空機火災を鎮圧できるわけがないので、周辺の消防署から消防車がおっとり刀で駆けつけてくるまでのつなぎである。管轄内に飛行場がある消防署にも同様の性能を持つ消防車を常備していたりする。もちろん何事にも抜け道ってのがあって、軽飛行機しか降りられないような小さな飛行場では消防車を常備しなくてもいいことになっているし、広い世界には航空機発着時だけ、ジャンボジェット相手に島でたった一台の消防車、しかも普通のポンプ車が村の消防署からやってきて待機しているって恐るべき実例もある。
【クラスターばくだん】[クラスター爆弾]
集束爆弾。小さな爆弾を束にした爆弾のこと。投下すると落下する途中で小爆弾を束ねているストッパーやカバーが外れ、小爆弾を広範囲にばらまく。トラックの車列とか、飛行場の列線に並んでいる航空機とか、人間様を大量殺戮する場合などに使われる。小さい爆弾なので橋梁や掩体などの堅牢な建造物にはあまり効果がない。小爆弾の中には時限式で忘れた頃に爆発するものとか、触れると爆発する対人地雷の親戚みたいなものもあるので、戦場のお土産にって拾っちゃダメだぞ日本人記者。
【クラスJ】[Class J]
日本航空版レインボーシート。但し、座席のリクライニングは国鉄末期の特急電車も装備していた腰掛け部分が前にせり出す、あの懐かしの『簡易リクライニング』だし、個人用ビデオモニタもないし、だいぶランクが落ちるぞ。編者の大嫌いな日航は、やっぱり期待を裏切らなかった。→レインボーシート
【ぐるぐる】《F》
レインボーセブンの名を持つ日本エアシステムのB777-200のこと。機体に緩く巻いた帯が回っているのでこの名がある。もうじきなくなるぞ。
【クルビット】
一定の高度を保ちながら宙返りをする大技。Su-27フランカーのみが可能と言われる。そんな変な飛び方がどんな飛行機でもできるなんて思いたくもないが…。プガチョフズ・コブラで知られるスホーイのテストパイロット、ヴィクトール・プガチョフが成功させた。これができるからって空戦で優位に立てるとか、そういうことはないと思いたいが…。
【けいきひこうくんれんちゅうのチャリ】[計器飛行訓練中のチャリ]《F》
ハンドルに大阪名物傘ホルダーを介して雨傘や日傘を装着し、この状態でケータイを操作しながら走行する自転車のこと。一見するとライトフライヤー以前の羽ばたき飛行機のようでもある。計器飛行訓練は訓練生の前にシェードを降ろし、前が見えない状態で行うのだが、それを大阪では自転車でやっているのである。もちろん飛行機の計器飛行訓練はとなりで教官がちゃんと前を見ているぞ。隣に教官のいない自転車の場合は前なんか殆ど見えていないので、スツーカのサイレンならぬブレーキ音とベルの音で歩行者を威嚇し蹴散らしながら突進してゆく。ついでに言うと、大阪の自転車は車道は絶対に走らない。どんなに狭い歩道でも躊躇なく歩行者に向かって突進するか、歩行者の未来位置を的確に予測してチキンランを挑んでくる、この勇猛果敢さは賞賛に値する。マリンコー(海兵隊員)もびっくりだ。夜間は灯火管制を布き、後ろから忍び寄って一気呵成に突撃してくる。シールズ(米海軍特殊部隊)も真っ青だ。長年にわたりひったくり件数日本一を誇る大阪府の面目躍如である。
で、こういうこと書くと、関西の商人文化がどうとか、いらちが何だとかいちびりがどうとか言って丸め込もうとするんだ。大阪人は…。せやろ?
【こうたいよくによるロールあんていこうか】[後退翼によるロール安定効果]
後退翼にはロール安定をもたらす効果がある。何らかの理由で機体が傾くと、機体は斜めに傾いた揚力と真下に向かう重力の合力によって、傾いた方向に横滑りを始める。横滑りによって後退翼に当たる気流は、左右それぞれ全く異なる角度で主翼に当たることになる。下がった方の主翼には深い角度で気流が当たり、上がっている方の主翼には浅い角度で気流が当たる。この気流を、25%翼弦線(翼端の前縁から後縁に向かって1/4にある点と、翼根の前縁から後縁に向かって1/4にある点を結んで得られる線、以下は単に翼弦線ということにする)と平行な成分と、翼弦線に対して垂直になる成分とで分けてみると、下がった方の主翼では翼弦線に垂直となる成分が強く、翼弦線と平行する成分は弱くなる。上がっている方の主翼では逆に、翼弦線と垂直になる成分が弱く、翼弦線と平行する成分が強くなる。翼弦線に垂直な成分は揚力の発生に大きな影響を与えるが、翼弦線と平行する成分は摩擦抵抗を無視すれば、ほとんど揚力を生み出さない。こうして下がっている方の主翼では大きな揚力が生じ、上がっている方の主翼で生じている揚力はそれより小さなものになり、機体は傾きから回復する。
ロール安定を得る手法としては他に主翼に上半角(前から見て主翼が翼端に向かって跳ね上がるような取り付け方)を付けるという方法もあるが、最近の後退翼機は後退角が大きく、それだけでも高いロール安定効果を持っているため、上半角は控えめにして旋回性能を確保するようにしている。安定性と旋回性能は表裏の関係にあり、うまくバランスを取らないと安定性はいいけど全然曲がらないとか、逆にくるくるよく曲がるけど不安定なんて機体ができてしまう。旋回性能を要求するのか、安定性を要求するのかは機体の役割も考慮して、うまくバランスを取るようにしている。
【コクーン】[Cocoon]
繭のことであるが、飛行機が自分で糸を吐いて作るのではない。ポリエチレンなどの樹脂を吹き付けて機体を覆い、風雨などから保護しておくこと。つい先頃まで東京・有明の船の科学館に展示されていた旧帝国海軍の二式飛行艇は、戦後アメリカに接収されていた一時期コクーンに包まれて保管されていたことがある。コクピット正面窓が茶色く汚れているのが、剥がれずに残ったコクーンの名残だそうである。
【こたいロケット】[固体ロケット]
固体燃料を燃焼させて、発生した燃焼ガスを一方向に向かって噴射させ、その反動を動力とする内燃機関の一種。固体燃料は燃料と、燃焼に必要な酸素を発生させる酸化剤が混合されて固形化されていて、外部からの酸素に依存せずに燃焼することができる。ロケットモーターと呼ばれるものは、この固体ロケットのこと。液体酸素や、毒性の高いヒドラジンなどの液体燃料よりは安全性が高いため、ロケットの中に燃料を入れっぱなしにできる。だから即時発射できる体制が必要なミサイルなど、軍事用にうってつけである。その代わり一度固体ロケットに火がついたら、出力制御どころか燃料が尽きるまでは燃えるに任せるしかない。
固体ロケットは人類が最初に作った動力つき飛行物体といわれ、14世紀末のイタリアが発祥という説が有力である。それ以前にも黒色火薬の燃焼ガスを利用して推力を得る飛行物体は中国などで研究されていたようだが、それが成功したと言える確たる証拠はない。特に唐代にロケットがあったとする説は、火箭(かせん)という、黒色火薬を使った火矢の一種をロケットと誤認しているものと思われる。元の時代とする説には「震雷天」とか「てつはう」といった武器が登場するが、これらは火薬を詰めた鉄や陶器製の球を投石機などで投擲し、爆発によって飛び散る破片で周囲にいる人馬を殺傷する兵器で、今風に言えば瑠弾である。ロケットではない。さらに時代が下がり、火龍経という1400年代の書物に紹介されるロケットは、どう考えてもまともに飛ばないだろ、ってシロモノが満載である。先端に龍の頭が付いて口から火を吐き、制御の効かない固体ロケットが3クラスター(三本のロケットを束ねたもの)二段式で飛ぶ(現在の宇宙ロケット以上の技術だ)なんて、そんなものがまともに飛ぶとお思いか?と小一時間問い詰めたい。どう見ても妄想の産物である。中国史の先生方が大いに盛り上がっているところに誠に申し訳ないが、ちょっと航空機やロケットに興味を持った人なら、安定性やら何やらで問題がありそうな形状だってことは素人でもわかる。アラブ・イスラム圏で使用されていたとされる卵形ロケットも、同様の理由でまともには飛ばなかったはずだ。
ヨーロッパでは元の侵攻をきっかけに火薬がもたらされ、まず爆薬として使用され、続いて銃砲が発明され、元のヨーロッパ侵攻から200年近くを経て、ようやくロケッタ(イタリア語で糸巻き器。ロケットの語源である)というものが文献に登場する。1379年のことである。城塞攻撃や突撃啓開兵器(…こけおどし、とも言う)として使われるようになり、200年かけて世界中に広まってゆく。
日本人がはじめてロケットの洗礼を受けたのは1592年。朝鮮出兵で知られる文禄の役のときのこと。ただそのとき、日本人はロケットに殆ど興味を示さなかった。朝鮮側が使用していたのは明らかなのだが、日本側ではロケットに関する記述は多くない。おそらくロケットによる損害は軽微なもので、脅威とは見ていなかったのだろう。日本人がロケットを手にするのは1600年に豊後(大分県)臼杵に漂着したオランダ船リーフデ号(三浦按針ことウィリアム・アダムスが乗っていた船だ)が積んでいた350本が最初。手にしたのは徳川家康。ところが家康はロケットの中に詰まっていた火薬を抜き取らせ、鉄砲・大砲の装薬にしてしまった。よって、関ヶ原の空にロケット弾が飛んだっていう記録はない。狼煙用ロケットは飛んだらしいが。日本は黒色火薬の原料である硝石が採れないから、火薬は貴重品だった。日本で硝石のあるところと言ったら、何と古い便所の土から耳かき一杯分、だそうだ。貴重な火薬を大量に使うばかりで使い物になるかどうかよくわからない新兵器より、威力も用法も知り尽くして数が揃っていた鉄砲に回したのだった。
徳川幕府が成立し天下太平の世になると、ロケットは龍勢と呼ばれ神様に奉納されるようになる。天の神様にお願い届け!ってわけだ。両国の大川(隅田川)川開きでも花火に混じって打ち上げられたが、火事の原因になるとかなったとかで、幕府は江戸市中での龍勢打ち上げを禁止している。龍勢の打ち上げは現在でも埼玉県吉田町、静岡県志太郡岡部町、静岡市清水草薙、滋賀県米原町で行われている。中でも埼玉県吉田町の椋神社で毎年10月第二日曜日に行われる龍勢祭りが有名だ。
ここまでのロケットはコングレーブ式ロケットという分類に属し、ロケットの後ろに長い棒が伸びているのが特徴。アメリカのテレビマンガにでてくる、とんがり帽子を頭に付け、後ろに長い棒が伸びているオレンジ色のあのロケットこそ、まさにコングレーブ式ロケットである。ロケットから伸びている棒をパイプに差し込み、パイプの向きや角度で発射方向・発射角を決める。飛行中はロケット本体と棒のバランスによって飛行姿勢を安定させている。玩具店などで花火として売っているロケットと同じである。
19世紀になるとニトロセルロースやニトログリセリンなどが開発され、火薬は大きく進歩した。推力が大きく長時間燃焼が可能になると、ロケットの射程が大きく伸び、代わって問題になったのが命中精度。安定性のあまり宜しくないコングレーブ式ロケットに代わって、1840年代に英国人ウイリアム・ヘールによって開発されたヘール式ロケットが登場する。翼をひねって付けたり燃焼ガスの噴射方向に角度を付けることでロール軸方向のスピン(進行方向を軸とする回転)を与え、飛行姿勢や方向を安定させるもので、これが現在のロケットの原型である。ただ、初速がはるかに速くスピン回転数の多い火砲に比べると命中精度はまだ遠く及ばなかった。よって大量のロケットをバカスカ撃ち込んで面を制圧するという、14世紀のロケッタと大して変わらない使い方しかできなかった。怪獣映画に出てきてトラックの荷台でバシュバシュ火を噴いてるあれだ。多連装ロケットランチャーって言うんだけどね。
ロケットが現在の地位を確立するのは飛行中の誘導制御技術が確立されてからのことで、実験が始まるのが1940年代。誘導弾の開発を諦めて大型のロケット弾に手っ取り早く人を乗せたのが、かの特攻機桜花である。のちにその桜花の固体燃料生産設備を使って、日本は宇宙ロケット開発の第一歩を踏み出してゆくのだが、それはまた、別のお話…。軽量で安定した誘導制御機器がシリコントランジスタの開発によって可能となり(その前に出たゲルマニウムトランジスタは、ロケット内部の高温で壊れてしまった)火砲を凌駕したとまで言われるようになるのは1950年代に入ってのことである。誘導制御が可能なロケット弾を、ミサイルと呼んでいる。
う〜ん、さすが600年の歴史を誇っているだけあって、話が長くなったぞ。
【こまき】[小牧]
日本における航空機産業の一大拠点。別名「日本のエバレット」…ってそういう言い方は恥ずかしいからやめなさい。「もしも!東京が直下型大地震で壊滅したとしたとしたら!そう!日本の中枢は名古屋に移り、瑞穂グランドが国立競技場に!小牧は国際空港に!そして!名古屋市役所が国会議事堂になるのだ!」って名古屋人は本気で思っているらしい。パリまで直行すると燃料が重くて離陸できないから成田に寄って燃料を追加しなきゃならない、あの小牧が国際空港…。おみゃ〜ら、そういうことゆ〜とるから名古屋がた〜けにされるんだで。
【サン・ダウナーズ】[Sun downners]
VF-111。沈む旭日旗をトレードマークとした米海軍の飛行隊。1942年10月10日にNASノースアイランドでF4Fワイルドキャット飛行隊VF-11として編成され、太平洋戦線に投入される。垂直尾翼やパッチにあしらった沈む旭日旗はこの時代からのもの。1946年にVF-11A、1948年にVF-111と改称。1959年1月19日、NASミラマーで解隊となり、戦歴にピリオドを打つ…と思ったらその翌日にVF-156がVF-111となって二代目サンダウナーズを襲名する、ってよくわからないことをやっている。朝鮮戦争やベトナム戦争にも投入され、1970年代終わりごろまでキティ・ホークに乗って臆面もなく日本にちょくちょく顔を出していたが、1995年3月30日、今度こそホントに解隊され、以後復活していない。やれやれ。50年にもわたってこんなトレードマークを使い続けていたところをみると、本音は日本が同盟国だなんて、思っちゃいないようだぞ。
【シートピッチ】
座席中心間隔。シートピッチが大きい(広い)という場合は、座席の前後間隔が広い、ということ。大概の旅客機の座席は、シートレールという前後方向に敷かれた部材を介して床に固定されていて、座席を固定しているボルトを緩めてシートレール上をスライドさせ、シートピッチを調整できるようになっている。同じ機種で同じ座席を使っていても、シートピッチが狭くて定員数の多い、安かろう狭かろうのすし詰め航空会社があれば、逆にシートピッチを広くしてゆとりを持たせた、ちょっと運賃のお高い航空会社もあるし、同じ航空会社でも、投入する路線や季節によって、貨物搭載量や燃料搭載量との兼ね合いでシートピッチを変えて定員を増減させていたりする。
【しゃしゅつざせき】[射出座席]
緊急脱出の際に、いちはやく機体から遠く離れられるように射出される座席。帰ってきたウルトラマンに、ワンダバダな曲と共によく出てくるね。第二次大戦中のドイツ空軍がゴムひもの張力を使って、座席をびょ〜ん!と飛ばそうとしたのが最初。はいそこ、ホントの話なので笑わないように。なお、アメリカがそれに対抗して、コイルバネを使ってぼよよ〜ん!と飛ばそうとしたって記録はない。ゴムひもやコイルバネではアメリカのテレビマンガみたいなので、圧搾空気だとか火薬の爆発力だとか、床板が抜けてポトンと下に落とす(それって、射出座席か?)とか、いろいろ試行錯誤した末、現在では固体ロケットを使用して、速度ゼロ、高度ゼロでも充分に高度を稼ぎ、安全にパラシュートを開くことができる(F-104は、キャノピーを吹き飛ばす都合で60km/h以上)ものがほとんどである。最近のロシア機に使用されている射出座席になるともっと優秀で、超低空で背面飛行に近いような状態で脱出しても、射出座席から突き出した安定翼で姿勢を修正しながら、パラシュートが充分に開く高度までロケットで上昇した上でパラシュートを開く優れものである。世界中のエアショーで、墜落するロシア機の射出座席がその性能を遺憾なく発揮しているので、ご存知の方も多いだろう。全くあの国は、飛行機の売り込みをしに来てるんだか、射出座席の実演をしに来てるんだか…。
【しゅうそくばくだん】[集束爆弾]
→クラスター爆弾
【シルキーランディング】
「ふんわりしなやか、シルクのような肌触り」の着陸。キッスランディングより上らしい。
【スーパーシート】
航空版グリーン車。ちょいと広い座席で、食事時のフライトで軽食が出るとか、機内でビール無料とか、到着空港でお預かり手荷物優先引き渡しとかってサービスがある。日本の国内線にしかなく、2004年5月末で日本航空のスーパーシートが終了し、全日空とスカイマークに残るのみである。運賃にスーパーシート料金を追加するので、運賃そのものがランク分けされているファーストクラスやビジネスクラスとはちょっと違う。スーパーシートの設定されている便で、空席があればスーパーシート料金を追加するだけで、どんなに高い割引率の運賃でも利用できるので、スカイメイトでスーパーシートなんて芸当も可能。だからスーパーシートに空席があると、チェックインの際に是非どうぞと勧められる。今や航空会社も必死である。それどころか空港内どこだろうとお構いなしに、是非どうぞって放送が流れる。如何なものか…。なお、全日空は2004年12月1日より従来の運賃に上乗せするスーパーシート料金を廃してスーパーシート運賃とし、普通席とは別建ての運賃となって事実上ファーストクラスとなるため、従来のような『スカイメイトでスーパーシート』なんて芸当はできなくなる。昔は主要な空港にはスーパーシート専用ラウンジってのがあって、出発前からソファにふんぞり返って酒でも飲みながらゆったりできた。だからスーパーシートに乗るときは、便出発の2時間前に空港到着即チェックイン、ラウンジ直行ってのは常識だった。日本航空のラウンジだと「何かお飲みになりますか」ってな調子のべったりのお接待があって、それはそれなりによかったのだが、編者はどっちかって言うと、全日空や日本エアシステムのラウンジの「勝手に冷蔵庫開けて御自由にど〜ぞ!」って雰囲気の方が、気楽でよかったな。
【スカイタイム】[SKY TIME]
キウイフルーツ果汁3%入りのエード(果汁100%のもの以外、ジュースと呼んではいけない)つまり清涼飲料水。製造はアサヒ飲料。販売はJALUX(昔の日航商事だ)キウイフルーツのほかに入っているのは果糖ブドウ糖液糖、ローヤルゼリーなどなど。日航機の機内で飲めるし、国際線だとこれでカクテルを作ったりもするらしい。最近はゆず風味のスカイタイムゆず、なるものも登場してキウイ味から切り替えが進んでいるらしいが、余り評判はよくないようだ。アサヒ飲料の名誉のために申し添えるとゆず味のメーカーは別の会社らしい。ゆずといったら鍋の付けだれだろう…。スカイタイムはJALCITYの客室冷蔵庫にも常備されている…ホテル日航那覇グランドキャッスルにはなかったので、ホテル日航には多分置いていないのだろう。サクララウンジにも多数実戦配備されているらしい。空港のJALUX売店で売っているし、家の冷蔵庫に常備したければJALUXで通販も承っているとか。編者も試しに飲んではみたのだが、まあ、うまいと絶賛する程ではないし、かといって、かつてJR東海が販売し、一部で話題を独占していたLiniタヒホビベータのような、壮絶な不味さもない。可もなく不可もなく、ってところが、強いて言えば弱点である。まあ、甘ったるいか舌が痺れるほど苦いかしかない缶コーヒーや、香料山ほどぶち込みまくったアールグレイもどきのヘタな缶入り紅茶に比べれば、はるかにずっとましである。200ml缶入り150円と、1リットル紙パック入り300円がある。でも200mlで150円ってのは、ちょっと高くないかね?
【せんしゅぼうえい】[専守防衛]
専ら守る防いで衛るって、二度も三度も同じような意味の言葉を並べた、真に麗しい日本語である。憲法解釈と現実の狭間の苦肉の策で、侵攻用の軍隊ではありませんってことを日本政府は言いたいらしい。今どき、侵攻用の軍隊です!って看板掲げた軍隊なんて、世界中探したってなかなか見あたらないのに…。この呪文のおかげで、航空自衛隊のF-4EJは、標準装備だった爆撃装備も空中給油装備も不要ってことになって、わざわざ付いてたものを外した上で配備された。今更もうそれはいいんだが、専守防衛の看板を掲げるからには、日本に攻め込もうと準備しているところ(軍事用語で、敵の策源地、と言う)を叩くってことも、日本に向かって発射されようとしているミサイルを撃破するってこともできない…つ〜か、しません、ってことである。専守防衛と言えば聞こえはいいけれど、本土決戦と同義語だということに気づいている人は、あんまりいないようである。
【そらのしょくよくまじん】[空の食欲魔人]
川原泉が、花とゆめ昭和59年1号に読み切りで発表したコミック。続編に『カレーの王子様』(昭和59年、花とゆめ22号掲載)がある。主人公一橋みすずはイラストレータ。みすずの幼なじみ、吉川弘文はB747の副操縦士。旺盛な食欲の持ち主である。
航空ものではお約束の「車輪が出ない!(…けど叩いたら出た)」「(食い意地の張った)片霧機長が食中毒に!」といったさまざまな危機を乗り越え、弘文がパイロットとして成長してゆく物語…では残念ながら、ない。んなわきゃ、ない。なぜなら川原教授の作品だから。ついでに航空ファン的にはツッコミ所も満載なのだが、これは言うだけ野暮なのでやめておこう。マーブルチョコにおける芸術論とか、なつかしのカンロ飴の前ならえといったギャグを堪能するのが本作品の正しい楽しみ方である。単行本は花とゆめコミックス『空の食欲魔人』(新書版)に収録され、現在では白泉社文庫『空の食欲魔人』に収録されている。川原作品はこのあと『陸の食欲魔人 アップルジャック』『海の食欲魔人 不思議なマリナー』『青い瞳の食欲魔人 ミソスープは哲学する』『宇宙の食欲魔人 アンドロイドはミスティー・ブルーの夢を見るか?』と食欲魔人シリーズが続く。現在新刊で入手可能な文庫版『空の食欲魔人』では、この食欲魔人シリーズを一挙に楽しめるので、古本屋で無理して新書版を探すよりお勧めである。
【そらべん】[空弁]
からべん、ではない。空港で売っている弁当のこと。言うまでもなく駅弁に対抗した名称である。地元の旬の特産品を詰め込んであって、お手軽に食べられると最近巷で話題である。密閉された機内で匂いがこもらないよう、匂いは控えめに作られる。そうでなくても日本の旅客機は醤油臭いって言われてるらしいからね(そう言ってるのが日本人ってとこが、なんか怪しいんだが…)最近話題の空弁って言っても、随分昔からあったもので、なぜ今更話題になるのかよくわからない。地方空港発の国際線が低調で、各地の機内食ケータリング業者が本腰を入れて空弁に参入しているからだろうと思うが。ともあれネタ切れマスコミが「今話題の空弁、一挙大紹介っ!」とかやってくれたおかげで、目当ての弁当が即売り切れってのが多くて、困ったもんである。
【たいくうせんしゃ】[対空戦車]
大砲の代わりに対空機関砲を装備した戦車。対空自走砲とか自走対空砲と言う場合もある。地上部隊を敵機による爆撃などから守るためのもの。東部戦線でお互いシュツルモビクとかスツーカとかの対地攻撃機に散々痛い目に遭わされたドイツ軍とロシア軍は、三つ子の魂何とやらで現在でも対空戦車にかなり力を入れているが、対して米軍は味方空軍力によるエアカバーが圧倒的ならば、敵機による攻撃を受けることはないという考えから対空戦車にあまり積極的ではないようだ。それどころか米陸軍が装備している対空兵器は、外国に売る商品見本ぐらいにしか見られていないようだ。陸続きで常に外敵の脅威にさらされていると感じる国と、大洋に囲まれて外敵の脅威を殆ど感じない国との差、なのだろうね。
【ダウンウオッシュ】
ヘリコプターのローターが起こす、吹き下ろしの強風。MH-53の巻き起こすダウンウオッシュになると小石が飛んでくるわ、飲みかけの缶ビールが泡噴きながら横っ飛びするわ、ベビーカーが宙に舞うわ、テントがバタついて怪我人出すわって、そりゃもう大騒ぎになって、全国ニュースのネタになっちゃう。…ってのは2004年5月5日の岩国基地での話である。もっとも、ダウンウオッシュによる地面効果を利用して、ホバリング限界高度を超える山岳地帯でもホバリングを行うことができるわけだから、そうそう悪者にもできない。
【タック・ネーム】[TAC name]
パイロットの部隊内での愛称。映画の中で戦闘機パイロットが無線で呼び合う『アイスマン』だの『GOKU』だのがTACネーム。コールサインとして使われるものなので、重複を避け、本人の希望も多少は聞き入れられるが、映画『TOP GUN』でおなじみの『マーベリック』が認可されることはない。だいたいの場合部隊長によって「岩○君、君のタックネームはロックで決まりだ」とか「猿に似てるからGOKUだ」などと安直に決定される。七曲署の刑事みたいだ…。余りに長ったらしいものは宜しくないとされ、アルファベット3〜4文字程度が理想とも言われるくらいである。故に『ロサ・キネンシス』ぐらいならまあいいとしても、『ロサ・キネンシス・アン・ブウトン』とか『ロサ・キネンシス・アン・ブウトン・プウティ・スール』なんて長すぎるタック・ネームは、如何なものかと思いますわ。お姉さま…。
【ダブラ】[doubler]
開口部などの強度や剛性が不足する場所や、応力の集中する場所に、外板に重ね貼りした補強板。開口部の周りを取り囲むように貼り、骨組みの上に当たる部分は大きく張り出させる。
また、外板に間隔を置いてダブラを配置しておくと、外板に生じたクラック(亀裂)をダブラの部分でくい止めることができる。これをクラックストッパと言う。
【つんどくモデラー】[積んどくモデラー]《F》
プラモデルを買ってきてそれっきり、箱に入ったまま棚や押入に積み上げているだけのモデラー。作らない理由というのが、限定品で貴重なものだから(…をい!)とか、細部のディティールを調査中だとか、ディティールアップパーツが手に入らないとか、賃貸で塗装ができないとか(わかるわかる)作る時間がないとか、完成品を置いておくところがない(…もう、何だかな)とか、いろいろである。そうこうするうちに新製品が欲しくなって買ってきてしまうから、いよいよ積み上げた山は高くなる。そうこうするうちに改良新製品が登場し、手持ちの旧バージョンには見向きもしなくなり…と果てしなく続いてゆく。それにしても6畳間に買ってきてそのままのプラモデルがぎっしり詰まっているというのは、いくら何でもやり過ぎである。限定品の貴重なデカールが経年変化でひび割れてしまったら、元も子もないぞ。
【ディスリガード】[disregard]
「送信内容を取り消す」といった意味。「あ〜っ!今のは無しっ!なかったことにしてっ!」である。航空ファンだと、このタイトルのメールはよく来るよな。
【デスクトップモデル】
1/144〜1/200ぐらいの縮尺で作られる旅客機模型。航空会社のカウンターなどに置かれるデスクトップモデルだと1/100ぐらいの大物もある。専用の飾り台の上に置かれ、やや機首を上げてあたかも上昇しているかのような姿で飾られる。この機首上げの角度は、テールの跳ね上がりが水平になる程度が一番見栄えが良いとされているらしく、どこの製品もみなテールの跳ね上がりが水平だったりする。
【でんぱへいき】[電波兵器]
怪電波を発信して、地球侵略を企てる敵の宇宙船を撃破するパラボラアンテナ型兵器…ではなく、レーダーや通信機材、航法装置、ミサイル誘導機器などなど、電波を使用する軍用の機材のこと。アンテナも含まれる。まあ、そのうち、電磁パルスなどを発信して、敵の電子機器を破壊する兵器とか、強力なマイクロ波で敵をチン!してしまう電子レンジみたいな兵器などはホントに出てきそうだが…。
【どどめいろ】[どどめ色]《F》
1980年代前半頃から登場したアメリカ海軍機のロービジ塗装(明度差の低い灰色迷彩)を古い航空ファンはこう呼ぶのだが、実際のどどめ色とは暗い赤紫色のことで、インターネットで使われる16進数の色指定で言えば#330000が近い。…って全っ然!違う色じゃん!もともとは北関東(利根川より北)あたりの方言で、堤防の土止めに植えた桑を『どどめ(土留め)』と呼んだことから、完熟した桑の実の色をどどめ色と呼んでいるのだそうだ。
【ナローボディ】
機内通路が一列のみの旅客機。B737、DC-9、A320などの中・小型旅客機がこれにあたる。 機内通路が2列以上備わっているB747などの旅客機は、ワイドボディと呼んでいる。
【ぬ】
ぬで始まる航空用語ってどこにも見あたらないのだが、なんかあったっけ?インターネット上で以前見かけた航空用語辞典には『ぬの』って項目があったんだが、アレは羽布って言って、はふ、って読むんだけどな…。
【ノックダウンせいさん】[ノックダウン生産]
本来の製造元から部品、治具、専用工具などを一揃いの状態で買ってきて、機体を組み立てること。塗料は別売りである。技術力は殆ど要らない。ライセンス生産に先立って行われ、製造工程の検討や習熟に用いられることが多い。JR東日本新津車両所で作られている京浜東北線の209系電車も、東急車輌から部品供給を受けたノックダウン生産である。まあ要するに、ホンモノのプラモデル、つ〜か、スナップキットだな。
【ハーディー・バラックス】
六本木の赤坂プレスセンター敷地内にある米軍へリポート。米軍機関紙スターズ・アンド・ストライプス東京支社の裏手になる。このあたりの通りを星条旗通りと呼ぶのはここが語源。もともとは近衛師団歩兵第五連隊があったところを戦後米軍が接収したものだ。青山公園が隣接しているのでヘリ見物にはいいのだけれど、溜池の米国大使館に出入りする米政府のお偉方が使うヘリポートだから、時節柄すぐに警官がすっ飛んできて職質されるぞ。逃げると過激派か何かだと思われてマジで追いかけてくるから、逃げずにきちんと職質に応じよう。
【バイセンティニアル・バード】[Bicentennial bird]
1976年のアメリカ建国200周年を記念した塗装を施した機体。星条旗をイメージした赤・青・白のトリコロール塗装の超ド派手なのとか、ワンポイントで独立当時の13州を表す13個の星とか、'76の数字とか、200周年記念のシンボルマークとか、白頭鷲とか、リバティベル(打ち鳴らしすぎて亀裂が入ってしまった、いわゆる自由の鐘)が入ったものなどがあり、そのバリエーションは米軍の全航空部隊の数を凌いでいた(指揮官機と一般の機体で異なる場合があるため)とも言われ、誰もその全容を掌握できた者はいなかった。もうヤンキースピリッツ全開である。この頃試作されていたり、配備が始まったばかりのF-15やF-16にも記念塗装が施されていたのだが、あれから30年にもなろうというのに、今なお米空軍の主力機だったりするのだから、新型戦闘機の開発周期も随分長くなってしまったものである。
【バイセンバード】《F》
バイセンティニアル・バードの略。日本の航空ファンはこう呼んでいた、と今のうちに記録にとどめておかないと、もうそろそろこの頃の人々は草葉の陰に隠れてしまうからね…。→バイセンティニアル・バード
【はかいききゅうなんしょうぼうしゃ】[破壊機救難消防車]
空港用化学消防車の自衛隊での呼称。→空港用化学消防車
【はかばポイント】[墓場ポイント]《F》
飛行機の撮影ポイント。有名だったのは、大阪(伊丹)空港の墓場ポイント。伊丹市下水処理場の北側で、ターミナルからは滑走路を挟んで反対側。レンズは100mmもあれば充分楽しめた。過去形なのは隣の下水処理場屋上にスカイランド原田という公園ができて、閉園日の水曜日以外はほとんど変わらない条件でより多くの人が撮影できるようになり、航空機撮影目的での立ち入りは禁止となったため。そもそも墓地への立ち入りは今まで『大目に見てもらっていた』のだから、ここに眠る人々に感謝を捧げた上でスカイランドに移動するのが筋というものだ。真っ正面が接地帯で午後順光だが、バックが少々五月蠅く、タッチダウンする瞬間を狙って流し撮りというのが良かろう。伊丹へはじめて撮りに行く人は、墓場ポイントよりも、とりあえずRunway32エンド、通称『32エンド』の大迫力を体感されることをお勧めしよう。標準レンズでも楽しめる。離陸機の撮影や子供連れの飛行機見物なら反対側のRunway14エンドが公園として整備されているのでお勧め。32エンドのように、子供が飛行機に驚いて泣き出すということも少ない。まあ、伊丹はどこも楽しいぞ、関空は撮るとこなくてつまんないけど。
また、石川県小松基地のRunway24エンドにも墓場ポイントと呼ばれる場所がある。こちらは長いレンズが必要で、しかも腹気味。周りに邪魔なものが多いが、墓石に乗るのは御法度ですぞ。
さらにかつては、海を渡って香港啓徳空港にも墓場ポイントがあった。かの有名なRunway13へのアプローチを撮るのだが、撮影場所がかなり高い山なので、機体は目線の高さ、つまり飛んでいる真横から撮るというおいしいポイントだった。夕方、街明かりをバックに流し撮りが最高だったんだけどねぇ、墓場だけに額に札を付けた人がぴょんぴょん跳びはねながら出てきそうで、暗くなると怖さも半端じゃない…。
【パッチ】
(1)いわゆるワッペンのことである。但し、ワッペンと呼ぶのは素人さん丸出しである。通を気取るならパッチと呼ぼう。飛行服や作業服、ジャンパーなどに縫いつけるかまたはフックテープ(商標名、マジックテープ)で貼り付ける。部隊毎のパッチ、航空団のパッチ、艦船毎のパッチ、さらには作戦参加記念のパッチに競技会優勝記念パッチというのもあるし、ネームを刺繍して名札代わりに使うネームパッチというのもある。だから二つ三つパッチが付くのは当たり前。米海軍のエヴィエィターなどは、自分が渡り歩いた飛行隊のパッチを背中にずらりと貼り付けていたりする。『フライトジャケットはエヴィエィターの履歴書』と言われる由縁である。パッチのコレクションを紹介したムック本も数多く出版されている奥深い世界である。航空祭に行くと、テントの下で各部隊がパッチを売っていて、朝一番から飛行機そっちのけでレアもののパッチを探し歩くファンは大勢いる。とは言え、一枚3,000円近いお値段ともなると、なかなか…刺繍職人さんの工賃を考えると、あながち高いとも言い切れないのだが、何とかなりませんかね。昔はフェンスの外で写真を撮っていると、隊員さんが自転車でやって来て「パッチ買わないかい?」と声を掛けてきて、フェンス越しにやりとりするということもあった。懐かしいなぁ…つ〜か、端から見ると、それってめっちゃ怪しい…。
(2)機体にあいた穴を塞ぐ、いわゆるつぎ当てのこと。機体に穴があいたままだと雨漏りするし(全日空がその昔運航していたDC-3は米軍払い下げのC-47改造機で、大戦中に機銃弾食らった穴から雨漏りしていたそうだ)与圧掛けても空気がどんどん逃げてゆくし、外板を燃料タンクの壁にしているインテグラルタンクだと燃料ダダ漏れである。それよりなにより機体の強度が落ちるので穴の上から板を貼って塞いでしまう。このパッチあての接合処理をちゃんとしないと、パッチを当てた圧力隔壁が割れて、吹き出した空気でその上にある垂直尾翼が破裂したりするのだそうだ。でも垂直尾翼って、そんなに簡単に破裂するもんなのか?
【はふ】[羽布]
読んで字のごとく、飛行機の羽(翼)に用いる布、そのまんま。翼や胴体の骨組みの上に貼る布のことである。ライトフライヤー以前の羽ばたき飛行機の時代から始まり、飛行機が金属製になっても、方向舵や昇降舵、補助翼は金属製の骨組みに羽布張りだった時代が第二次大戦後まで暫く続いた。現在でもアエロバティックに用いられる複葉機や、グライダーの一部には主翼まるごと羽布ばりの機体がある。羽布には亜麻(あま)布が主に使われ、骨組みに縫い付けた後、ドープと呼ばれる酢酸繊維素系の透明塗料を十数回にわたって重ね塗りして、布目を塗りつぶし、張りを持たせて機体や翼を作っていた。
亜麻布は小アジア原産の亜麻科の一年草、亜麻の茎の繊維から作られる。亜麻は長く丈夫な繊維と、種子から油(亜麻仁油)が採れ、乾燥や寒冷に比較的強く成長が早かったため、人類とのつきあいが始まったのは非常に古く、紀元前7000年頃ともいわれる。古代エジプトでミイラを包んでいた布も、イエス・キリストの遺骸を包んだとされる布も亜麻布である。(マリア様のヴェールも、きっとそうですわ、お姉さま…)宗教的な用途だけでなく、亜麻は長い間人々の生活に深く関わってきた。これはシーツやタオル、テーブルクロスなどの布製生活用品の総称を、亜麻の英名であるリネンと呼ぶことからもわかる。糸やロープ、果ては路線を意味するライン(Line)も、下着のランジェリー(Lingerie)も、リネン(亜麻)を意味するラテン語Linumが語源である。
日本では明治以降北海道で主に生産され、生産量のピークは1945年、道内での作付面積は39,900haに及び、生産された亜麻布の多くは飛行機の羽布として用いられた。日本での亜麻生産は、敗戦によりまず羽布としての需要がなくなり、さらに生活用品向け需要も化学繊維や安価な輸入品などに取って代わられるようになり、1967年に生産を終了している。北海道各地にみられる『麻生(あそう)』の地名は、かつての亜麻の生産地だった名残である。
なお、大昔にヴィレッジ・シンガースが歌い、最近になって島谷ひとみがカバーしていた『亜麻色の髪の乙女』の亜麻色とは、この亜麻から取った繊維の本来の色。インターネットで使われる16進数の色指定で言えば#B09860が近い。この亜麻色の繊維を漂白して、白い糸になる。
【ハボクック】
第二次大戦中に英国が計画した氷山空母。パルプ繊維を混ぜ込んだ氷で船体を構成し、グリーンランド南沖の北大西洋に配備してUボート狩りの基地や、米国から英国へ送り込まれる飛行機への補給基地にするつもりだった。空母と言うよりどっちかって言うとメガフロート式海上空港に近いのかもしれない。ちょっとした思いつきが国家レベルで暴走しかかっただけのことで、溶けちゃうだろとか、動力はどうするつもりだったのかとか、艦内の霜対策はどうするつもりかとかって細かいツッコミはなしだ。
【パンプキン】
ナントカ学会が発行する育児と教育のための雑誌とか言いながら、妙に特定の勢力に対して好戦的なあの雑誌ではない。米軍が最初に実戦使用した核兵器、の模擬弾。要するに広島に投下した原爆を模した通常爆弾。原爆投下訓練として、愛知県岡崎市など数カ所に投下されたようだが詳細は不明である。
【ビューロ・ナンバー】[bureau number]
米海軍と海兵隊が装備する航空機に付けられる、納入順の通し番号。ビューロとは、お役所の部局のことで、ここでは米海軍航空局のこと。機種がなんであろうがお構いなしの通し番号で、同じ機種が連番になっている場合は、纏めて数機納入されたから。ただそれだけ。BuNos、あるいはb/nと略される。現用機の場合、水平尾翼の直下あたりに小さく書かれている6ケタの数字がそれである。垂直尾翼に4ケタ、あるいは5ケタの数字を入れた機体を見かける場合もあるが、それは大昔の機体ではなく、単に一万以上や、十万以上の位を省略しているだけ。天下の米海軍が、そんなに物持ちいいわけがない。よく探してみるとやはり水平尾翼下あたりに小さく6ケタのビューロ・ナンバーが書いてある場合が多い。 変わったところでは航空自衛隊のE-2Cホークアイにも、ビューロ・ナンバーが付いている。米海軍機として使用されている機体を輸出する場合、一旦米海軍に納入して、輸出禁止となっている装備やソフトウエアが含まれていないかどうかなどを確認した上で輸出しているから。高く売りつけておきながらこういうことをするのである。踏んだり蹴ったりだよなぁ…。
ビューロ・ナンバーのリストを掲載したウェブサイトによれば、歴史上ビューロ・ナンバーという名称が登場するのは1917年からで、A51のライト・モデルKシープレーンから始まって、途中1930年、9200あたりで頭のAが略され、9999のグッドイヤーG-1まで続く。これをファースト・シリーズ・オブ・ビューロ・ナンバー(first series of Bureau Numbers)と呼ぶ。A51から始まっているってことは、それ以前に、納入順序はもう忘れちゃってわからないけれど50機持っているから、その続きで…と考えていいだろう。この頃のアメリカ機ってのはあまりに地味で、形式を言われてもさっぱり形が浮かんでこない…飛行船や気球まで含まれているのが、時代を感じるね。この後、1935年から新たに0001ヴォートO3U-6から数え始め、7303のロッキードR50まで続くセカンド・シリーズ・オブ・ビューロ・ナンバー(second series of Bureau Numbers)が続く。この頃のアメリカ機もやっぱり地味でイマイチピンとこない…。現行のビューロ・ナンバーは1940年、00001のカーチスSB2C-1ヘルダイバー艦上爆撃機から数え直すサード・シリーズ・オブ・ビューロ・ナンバー(third series of Bureau Numbers )もしくはファイナル・シリーズ・オブ・ビューロ・ナンバー(final series of Bureau Numbers )と呼ばれるもの。ここらでようやく航空大国のエンジンがかかったという感じがする…アメリカの航空産業を叩き起こしちゃったのは日本だったんだね。第2次大戦で爆発的に数が増え、1945年に6ケタとなるもそのまま数え続け、現在166,500番台にまで達しようとしている。1945年後半から数年間は多くの欠番があるのだが、これは第二次大戦の終結で発注済みの機体をキャンセルしたため。
【フィンガーチップ】[Finger tip]
4機編隊で基本となる隊形。レフトフィンガーとライトフィンガーの2種類がある。左手の甲が見えるようにかざして、親指を隠し、残りの人差し指から小指までの爪の位置に機体が並ぶ感じになるのがレフトフィンガー。右手で同じように、人差し指から小指までの爪の位置に機体が並ぶ感じになるのがライトフィンガー。フィンガーチップを起点にするとアブレスト(横隊)トレイル(縦隊)ダイヤモンド(菱形隊形)エシュロン(斜めに一直線となる隊形)などに移行しやすい。ごくまれに6機のフィンガーチップ、って訳のわからないものもある。
【フー・ファイター】[who fighter]
1940年代後半に目撃例が急増した謎の飛行物体。光の玉が高々度を高速で飛び去ったとか、レーダーに反応のない円盤状のものが飛行機では絶対にできないような飛び方をしていたとか、いろいろな報告が残っている。今で言うならUFOってことだろう。でも多分それは極秘に開発されていた最新鋭ジェット機だったり、雲に映ったサーチライトとかじゃないのかなぁ…?最近ではこうした未確認飛行物体に関する目撃例ってのは殆どなかったりする。なぜかって言うと、そういう報告をすると、飛行機から降ろされて精神医の診断を受けさせられるからなのだが…。
【ふくえ・アカラコリドー】[福江・アカラコリドー]
福江から東シナ海を横切り中国本土へ至るA593航空路で、途中韓国の仁川FIRの空域を通過する部分、お肉からラーメンにかけての区間のことをいう。済州島の南沖あたりである。A593を航行する航空機の管制は東京FIRと上海FIRが直接調整を行い、間に挟まる仁川FIRはノータッチなのである。「素通りするだけでウリのところに来ない飛行機なんか、知らないニダ!」とか「あいつが加わると話がややこしくなるアルよ…」ってことはない。たぶん、それはない…んじゃないか、と思う。実際には話を一番ややこしくしているのは中国で、高度はメートルで指定される。普通はフィートなのだが…。ちなみにお肉とかラーメンってのはA593上にある地点の名前。A593は福江NDBを出てまずPOTET(ポテト)を通り、ONIKU(お肉)で仁川FIRに入り、NIRAT(ニラたま)を経てLAMEN(ラーメン)で上海FIRに入り、AKARAを経てNANHUI NDBに至る。ここでも韓国料理の出る幕はないが、謝罪はともかく賠償はご容赦頂きたいものである。
【ふはつだん】[不発弾]
文字通り爆発しなかった爆弾や砲弾。終戦直後の沖縄では落ちていた不発弾から中身の炸薬を抜いて、鍋とか釜とか作ったのだそうだ。これを爆弾鍋という。当たると死んじゃう河豚鍋じゃないぞ。東京でも米軍の焼夷弾はくず鉄として高く売れたのだそうだ。もっと高く売れたのが電車の架線とパンタグラフのすり板で、おかげで部品が盗まれて電車が客車になってしまった。二束三文は飛行機用のジュラルミンで、あれは弁当箱にもならなかったらしいぞ。梅干しで溶けちゃうらしい。当時、不発焼夷弾をバラしてくず鉄として売っていた少年(当時)の話によると、信管の中に入っている薬品は、なめてみるととても甘かったのだそうだ。
そういえば最近は富士の演習場に潜り込んで不発弾を掘り起こし、コレクションしているアホもいるらしい。死ぬなら一人で死んでくれよ、頼むから。穴を掘っていてガスボンベみたいなものとか、円錐形の金属製のものとかが出てきたら、風車を回したり先端の突起を叩いたりせず、ましてや信管の中の薬品の味を確かめてみようなどと思わず、とりあえず警察に通報しよう。都道府県庁を通じて自衛隊の不発弾処理班を呼んで何とかしてくれる。
【フフフ】《F》
全日空のボーイング777-200のこと。導入当初、遠目では767と見分けのつきにくい777は、新機材の紹介もかねて、垂直尾翼の『ANA』ロゴの代わりに『777』と書いてあったのだが、いつのまにやら『フフフ』などと呼ばれるようになってしまった。そのせいかどうかは知らないが、最近になって垂直尾翼の『フフフ』…じゃない!『777』は『ANA』に塗り替えられてしまった。 最近になって判明したのだがこの『フフフ』は、777導入当時全日空商事が出していた風船ヒコーキが起源らしい。機首に顔が描いてあってにこにこ笑っていて、垂直尾翼にはどう見ても『777』ではなく『フフフ』と書いてあった。
【フライングボーイズ】
2002年10月1日にフジテレビ・関西テレビ系列で放映されたドラマ。つぶれかけた航空会社が起死回生の一手として、男性客室乗務員だけのフライトで女性客を掴もうと画策するコメディ。そんなアホなことをする航空会社が実際あったら嫌だ…と思っていたら、その翌年、実際にそれをやった航空会社が出現して笑った笑った。編者はそういう変な航空会社には乗りたくないぞ。どことは言わないが…。出演は遠藤章造(ココリコ)、山本圭壱(極楽とんぼ)山口智充(DonDokoDon)平畠啓史(DonDokoDon)といった吉本のお笑い芸人の面々…なのだそうです。すいません。編者はこの人達誰が誰だかさっぱりわかりませんでした。なんか遠藤って人はかなり熱烈な航空ファンらしいのですが…。憶えていたのは上原多香子が先輩格のキャビンアテンダントに扮していたことぐらいです。はい。
【ブレークマン】
トーイング(牽引)される航空機に乗って、コクピットでブレーキ操作を行う人。ブレィクメン、って発音すると通っぽい、ってそれホントか?電車と違ってトーイングトラクタと航空機の間はブレーキが連動していないので、牽引されている航空機にはブレーキ操作を行う人が乗っていなければならない。もっとも、草創期の鉄道だって直通制動なんてものはなかったから、客車や貨車数両おきに緩急車という車両を挟み、そこにブレークマンが乗って機関車の汽笛の合図で手回しハンドルぐるぐる回してブレーキ操作をしていたわけで、まあ似たようなモノだったんだけどね…。なお「♪あ・あ・あ秋葉原です…」は、モーターマン、電車の運転士のこと。機関車の運転士はドライバーと言う。昔は機関士の方が格上だっのだよ。
【プロップ・ジェット】[prop jet]
ターボプロップのこと。ロールス・ロイスの商標らしい。
【フロンタヴォイ・イストリヴィーテリ】[Фронтовой Истребитепъ]
前線戦闘機。ロシア(旧ソ連)の戦闘機で、空軍・海軍に配備された戦闘機のことを言う。空対空戦闘のほかに空対地攻撃、空対艦攻撃、偵察などにも用いることができるように作られた戦闘機という定義もある。ブガチョフズ・コブラでおなじみのSu-27フランカーはフロンタヴォイ・イストリヴィーテリにあたる。
【ベイパー】[Vapor]
一般的な意味としては霧とか霞のことをいうが、航空関連の用語でベイパーとは、主翼のまわりなどで気圧が急激に下がって大気中の水蒸気が飽和状態になり、霧状になって現れる現象。上昇に転じる時などに翼の上に生じる霧や、旋回時に翼端から糸状に引いている白い渦(翼端渦が目に見える!)のことである。湿気の多い時は空気が飽和状態になりやすく、ベイパーができやすい。前夜に雨が降り、朝から晴天という場合は、地上にいる機体を撮っても陽炎に埋もれてしまって散々である。こういうときこそベイパーを狙って写真を撮ろう。青空に白く尾を引くベイパーがいいアクセントになり、スピード感も強調される。
余談だが、ベイパーウェアとは、開発が長引いて発売時期の見当がつかないソフトウェアのこと。
【ペーパー・スコードロン】《S》
解隊されるなどして実体はなくなったが、書類上は存在していることになっている飛行隊。よって機体はおろか装備も人員もなく、看板や隊旗は倉庫に押し込まれていたりする(あるかどうかも怪しい)新規に飛行隊を作るとなると予算審査で手間を食ったりするので、既にある(書類上は、だが)飛行隊に装備・人員を配置する、ということにしてしまい、予算審査を何とか乗り切ろうと涙ぐましい努力をするのである。こういうのを軍事用語で有事即応体制と言う。路線免許維持のための一日一本きりのバス路線みたいなもんだと思ってくれ。ま、軍隊も一種のお役所だから…。財務官僚はそんなこととっくにお見通しなんだけどね。蛇の道は蛇ってやつだ。なお、機体をことごとく撃破され、可動機を失った飛行隊を『事実上のペーパースコードロン』と呼んだりもする。この場合、飛行隊が復活できる可能性はかなり低い。なにしろお国がひっくり返るかどうかの瀬戸際だから。
【ほしがたエンジン】[星形エンジン]
レシプロエンジンのシリンダ配置方法のひとつで、前から見るとクランク軸を中心としてシリンダが放射状に配置されたエンジン。全長を短くすることができ、気筒数が増えてもバランスよく冷却できるが、前面投影面積は大きくなってしまうし、コクピット前方に配置されると前下方はほとんど見えない。クランクを挟んで向かい合わせになるシリンダー配置は、ピストンの行程の関係上不可能なので、気筒数は奇数となる。星形エンジンを次々と重ねて一纏めにしたのが『複列式』で、P&W R-4360-49ワスプ・メイジャーというエンジンに至っては、7気筒の星形エンジンを4列重ねて28気筒にもなっている。このエンジンを積んだダグラスC-124グローブマスターは4発機だったから、全部合わせて、え〜と、112気筒…!飛行機のレシプロエンジンといえば、概ねこの星形エンジンと言って良いほどポピュラーだったのだが、現在は星形エンジンを必要とする程の機体ではジェットエンジンとターボプロップエンジンに取って代わられている。
かつては『ロータリーエンジン』とも呼ばれていたが、東洋工業(マツダ)が実用化したヴァンケル型ロータリーエンジンこそ本来のロータリーエンジンなので、意固地な一部の英国人を除いてこの呼び名は現在では使われていない。ごく初期に作られた星形エンジンで、シリンダーの冷却を均等に行うためにエンジン自体がクランク軸を中心に回転するようにしたものをロータリーエンジンと呼んでいる場合もある。
【マザー】[MUTHA]
米海軍戦闘飛行隊の中で、前年最優秀とされた飛行隊に授与されるトロフィー。戦技のみならず、あらゆる点で優秀であると認められることがマザー・ホルダーの条件である。最高の戦闘機乗りの魂とされ、授賞飛行隊がそれに相応しくないと思うなら奪取するのもアリ、という裏ルールがアメリカ人らしい。当然、奪取されるのは最大の恥とされ、マザー・ホルダーとなった飛行隊は奪取されないようトロフィーをケースに入れ、専門の警護担当者が手錠に繋いで(アタッシュケースを手錠で繋いだスパイ映画のクーリエみたいな感じだ)常時携行しているとか。それで仕事になるのか、ってツッコミはなしだ。で、実はそのトロフィーってのは、ある日本人が米海軍に贈った信楽焼の母子狸の置物なのである。アメリカ人のやることはよくわからん。信楽焼の狸を贈った日本人ってのもよくわからんお人だが…。
【マルダイぶひん】[マルダイ部品]
旧帝国海軍の外道兵器、対艦有人誘導弾、空技廠桜花11型の開発秘匿名。固体式ロケット機による特攻兵器を思いついた405航空隊偵察員、太田特務少尉の名を取ってマルダイとしたのだそうだが、一介の特務少尉の発案が採用されるほど旧帝国海軍ってのは柔軟な組織だったのかねぇ?ま、どなた様の発案にせよこんなものは、思いついたやつの頭の中だけに秘匿しておけ。 余談だが、人間魚雷回天の開発秘匿名は『〇六(マルロク)金物一型』だそうである。よりによって金物かい!
【マルチロール・ファイター】
強引に日本語に訳すと多目的戦闘機。空対空戦闘だけでなく、攻撃機や爆撃機、偵察機などにも使える戦闘機のこと。冷戦が終わって超大国同士の直接対決が起こる可能性が少なくなり、空対空戦闘専門の戦闘機なんてものは殆ど要らなくなってしまったので、今ある戦闘機は爆撃や偵察もできるように改造を施し、これから作る戦闘機は爆撃や偵察もできるように作ろうと、ごく簡単に言ってしまうとそういうこと。不採算事業から配置転換されるサラリーマンみたいだよな。搭載機数に限りのある空母艦載機では、今や情け容赦ないリストラの嵐が吹き荒れていて、名機トムキャットといえども今やTARPS積んで偵察やったり、ボムキャット改造されて爆撃任務に就いたり、スーパーホーネットに取って代わられたりと今や風前の灯火である。取って代わるスーパーホーネットだって、空中給油機の代わりまでやれと言われてるんだから、首切りからは逃れたけれど、休みが取れなくなったサラリーマンみたいだ。
【まるてん】《S》
○の中に転と書いて、まるてん。自衛隊の用語。保有すべき期限を迎え、代替となる補充品が入ってきたためにお余りとなった古い物資を別の用途に回したりすること。転用なので○転である。員数外なので識別用に○の中に転と書き込んだのが語源。会計検査のときは隠さなきゃいけないらしい。衣類などの布製品が多い。大概はよれよれのボロボロになってしまって、本来の役割には耐えられない状態になっているので、古い天幕(テント)や毛布を分解整備のときの敷物や資材の雨避けにしたり、古い作業服を汚れ仕事や新隊員の匍匐前進訓練専用にしたりとか、まあ、あんまり大したことには使ってないけれども、そうした物資を如何に活用するかという隊員の創意工夫は、大いに奨励されている。日本の防衛費は金額だけでみると世界でもトップクラスだが、それを帳消しにできるほど日本の物価は高いので、やりくりはとても大変、ものは大事に使わなきゃ、なのである。お父さんの給料は先進国の平均と大差ないのに、なぜ我が家の家計は…ってのと一緒だ。
【みかたしきべつしょう】[味方識別章]
昭和20年3月以降、陸海軍の航空機搭乗員が飛行服の右肩に付けていた長辺10〜15cmの日の丸のパッチ。本土上空で敵機に撃墜されて落下傘で脱出した搭乗員が「日本兵は機体を捨てて落下傘で脱出なんかしない!」と信じ込んでいた住民によって殺されたという、何というか、やりきれない事件をきっかけに付けられることになった。「生きて虜囚の辱めを受けず」って戦陣訓が、それを流布した軍上層部ですらどうにもならないところへ一人歩きしてしまっていたわけで、ま、なんて言うか、旧軍上層部ってのはつくづく阿呆の集団だったのだね。
【みこししゃげき】[見越し射撃]
夜店のコルク銃で御神輿を撃つ御輿射撃…ってそんな罰当たりな射撃ではない。移動している標的が、発砲から弾着までの間に移動する距離と方向を予測し、標的の未来位置に向かって射撃する射撃方法。もっと大雑把に言うと、移動している標的そのものを狙うと、弾着したときには標的はずっと先に行ってしまっているので、標的に当てるには「あしたのために、その一、標的より前方を狙い、撃つべし、撃つべし、撃つべし…」ってこと。最近の対空砲は賢いから、照準レーダーで追尾したデータを元にコンピュータが未来位置を予測して照準を合わせてくれる。標的の現在位置と弾着時に予想される標的の位置との差をリードという単位で表すが、照準器や照門の一目盛りをリード1とする場合と、標的の見た目の大きさをリード1とする場合とがある。標的が視界を横切ってゆくような動きだったり、標的までの距離が遠かったり、標的の速度が速ければリード量は多く取る必要がある。逆に、標的がこちらに向かってくるとか、遠ざかってゆくような動きの場合のリード量は少なくなるか、全く取らなくてもいい場合もある。まあもっとも、敵機がこちらに向かってきていて、リードを取る必要がない場合ってのは、敵機の標的に君が選ばれたってことだ。逃げた方がいいぞ。
【ミルスペック】[MIL spec]
米軍の兵器や軍需物資に求められている規格。核弾頭から飲料水に至るまで、米軍に納入されるものはすべてこのミルスペックに定める細かな規定に従い、厳格な審査をクリアしていないといけない。深夜の通販番組でハイテンションな司会者が「米軍も認める耐久性能!アウトドアに最適っ!」とか言ってるやつだ。ISO(国際標準規格)の元になったものも多い。もっとも最近は民需向けのほうが、はるかに高い性能と高い耐久性を求められることも多く、ミルスペックの方が要求が低いってこともあるけどね。
【むじるしりょうひん】[無印良品]《F》
日本航空の現行塗装機、いわゆるJAノL塗装のことを言う。但しムジラーとしてひと言言わせて頂くなら、塗装の赤はもう少し暗い臙脂で、客室乗務員は黒または白のカジュアルなパンツルックにウエストバックを巻き、名札はネックストラップでぶら下げていないと、MUJIとは言えないだろ。やっぱ。座席は『からだにフィットするソファ』機内で出る茶菓子は『輪切りバウム』で決まりだ。
【ヤーボ】[Jabo]
ドイツ語のJact Bomber(ヤークト・ボマー)の略。戦闘爆撃機のこと。
【やまぐちうべくうこう】[山口宇部空港]
山口県の宇部空港、ではなく、山口と宇部の空港、である。燕三条駅とか三条燕インターチェンジみたいなもんだ。場所は宇部市にあって山口市ははるか彼方だ。山口市は明治時代の山陽本線計画時に住民が大反対してルートを変更させ、小郡経由にさせた経緯があり、山口の人はこれを百年の悔いなどと呼んでいる。とは言っても自業自得を棚に上げて先頃、隣町にある小郡駅を新山口駅と改名させたくらいだから、小郡より遙か遠くの宇部空港でも山口の名を冠させるくらいのことは朝飯前である。長州藩のご威光は今なお絶大なのである。
【ゆうじそくおうたいせい】[有事即応体制]
(1)文字通り、何かあった時即座に対応できる体制を作り、これを常に維持するよう訓練と整備を行うこと。具体的には基地や駐屯地に居住する兵員のうち、外出できる人員数に制限を加えたり、基地や駐屯地外に居住する要員に定期的に呼集訓練を行ったり、有事の際に最初に対応する部隊が24時間の交代制で待機体制を取っていたりする。米軍が運営するラジオ放送のAFN(昔はFENと言った。新田恵利だったかの歌にFENを聞かせて、というのがあったが…)も、外出中の将兵に呼集をかけるための手段。普段から聞いていてもらえないといざというとき役に立たないため、普段は音楽などの娯楽番組を流しているのである。
(2)法規の解釈上許されるギリギリのところまで準備して出動命令が下るのを待つこと。出動とは装備を持って部隊が基地や駐屯地を出発すること、というのが一応の解釈になっているので、所属人員を呼集したり、基地や駐屯地内で装備品を車両・艦船・航空機などに搭載し、人員が乗り込む段階までは、環境整備とか訓練とか演習とか何とか、基地や駐屯地の司令官が理由をつけて行っていいことになっている。だって、そうでもしないと出動命令を下す政治家や、それを伝達したり政治家を説得する役人がボンクラだと、手遅れになりかねないから。どこの国の軍隊でも、文官や政治家は平和ボケしていてやることがトロくて、現場をわかってない、ってことになっているのだ。
【よくたんとう】[翼端灯]
主翼翼端に装備されている灯火。進行方向に向かって左翼側が赤、右翼側が緑(機首方向から飛行機に正対した場合、左が緑、右が赤になる)の灯火で、飛行中(タキシング中を含む)は常時点灯が義務づけられている。点滅はしない。灯火が視認できる範囲は機首方向から110°までの範囲と定められている。主翼翼端に燃料タンクを装備している機体では、翼端燃料タンクの外側に装備される。主翼翼端にミサイルを装備できる機体では、翼端に付けなくてもいいことになっている、っても、F-16やF-2のようにコクピット下にあるエアインテイク両脇に付けましたってのは、ちょっと反則じゃないか?もともとは船舶のブリッジから張り出したウイング(これは翼ではなく、接岸時などに用いる見張り台のこと)に付けられた舷灯が起源。同じく進行方向に向かって左舷側が赤、右舷側が緑である。
【よくめんせき】[翼面積]
おもに主翼の面積を言う。主翼の投影面積(機体の真上から平行光を当て、水平面にできた影を仮定した面積)で、主翼と胴体が重なる部分を含める。胴体と主翼の接合部を緩やかに繋いでいるフィレットと呼ばれる部分は、アメリカでは翼面積に算入しないが、ヨーロッパでは翼面積に算入しているケースが多い。
【ライセンスせいさん】[ライセンス生産]
本来の製造元に、契約(ライセンス)で定めた料金を支払って別のメーカーが製造を行う生産形態で、本来の製造元から部品供給を受けず、自力で調達する場合を言う。生産することができる数は契約によって定める。本来の製造元から部品の供給を受け、組み立てのみを行う場合はノックダウン生産と呼び分けているが、ライセンス生産とノックダウン生産の境目はとても曖昧。契約で一部部品の自力調達が認められなかったりする場合は、ライセンス生産とノックダウン生産のミックスってことになる。航空自衛隊のF-2戦闘機は胴体部分が主にノックダウン生産。主翼などがライセンス生産である。本来の製造元は自社工場のラインを動かさなくても知的財産権でおいしい商売ができるし、生産を行うメーカーは製造ノウハウを学べる。買う側(主に軍用機製造で行われるので、軍隊)にすれば普通に本来の製造元から買った方が安くつくが、自国メーカーに技術力を付けさせたいという思惑がある。こうした三者の利害が一致した場合に行われる。日本の戦闘機の多くはライセンス生産によって調達され、日本のメーカーが航空機生産のノウハウを得るのに大いに貢献しているが、そろそろ、お寒い開発環境の向上も目指してはどうかと思うぞ。飛行機はアメリカにお任せ、クルマと家電は中国にお任せでは、日本が作って世界に売る物がなくなってしまうじゃないか。
【ランダム・スティープ・アプローチ】[random steep approach]
地対空ミサイルなどで攻撃される虞がある場合、そういった地域は高々度で通過し、安全がある程度確保されている飛行場上空で旋回しつつ一気に降下。その間もランダムに機首を振ったり降下率を変えたりして自機の針路を欺瞞する着陸方法のこと。
最近新聞を読むと、立派な大学を出た(であろう)新聞記者が「地対空ミサイルの射程を避けて螺旋状に降下する着陸方法」なんて解説をしていたりする。半分正しいけど、空幕広報のプレスリリースを丸写しなんだろうね。じゃ、ランダムとスティープはどこへ行ったんだ?ランダムとスティープのどこが螺旋状なんだ?って疑問を持たないのが最近の記者だ。スティープ(steep)とは、急斜面、急勾配といった意味。ランダム(random)はご存知あのランダムだ。この二つの単語でどんなモノか想像して、プレスリリースにツッコミを入れるのが記者の仕事だろう。そのための記者会見だろう。有効に使われていない記者会見ならなくてもいいし、プレスリリースをもらってくるだけなら小学生でもできる。これじゃ大本営発表そのまま垂れ流しってのと同じ。いつか来た道ってやつだぞ。
【レインボーシート】
日本エアシステムのボーイング777に設定されていた、レギュラーシート(エコノミークラス)よりちょいと広い座席。運賃にレインボーシート料金千円を加算していた。真っ先にここから埋まってゆく人気商品だった。JALとの経営統合で一旦終了したが(座席自体は残っていて、ちょっとお得なエコノミーだった)2004年6月に、Class Jの名で復活することが決定している。追加料金もレインボーシートと同じ千円。日本エアシステムが遺した優れた遺産。いいものはいいんです。リクライニング角を小さくして、後席への圧迫感を緩和しましたとか、臆面もなく抜かしてるあたりは編者の大嫌いな日航らしいけどね。
【ローゼンジ】
第一次大戦中のドイツ機の迷彩。細かな六角形や五角形で色分けされたプリント柄の羽布で、赤や黄色など原色系のかなり目立つ色も使われているが、これはさまざまな色を使うことで、遠目にはグレーに見えるだろうという、印刷物の網点と同じ理屈による。それなら手っ取り早くグレーでも塗っておけばよかったんだろうに、なんでこんなややこしいことをしたのか、ドイツ人の考えることはよくわからない…。プリント柄だからできるのであって、塗装で表現するのはかなり大変。最近はローゼンジデカールなんてのもあるが、モデラー泣かせである。
【ロービジ】
ロー・ビジビリティ(Low Visibirity)の略。→ロー・ビジビリティ
【ロー・ビジビリティ】[Low Visibirity]
低視認性と訳される。グレーの機体に、それよりやや濃いグレーで国籍標識や所属表記、コーションデータ(注意書き)などのマーキングが書かれた機体塗色のことで、迷彩の一種。人目を引きやすい原色や蛍光色、光を反射するつやのある塗装、大きな明度差などを避ける。1980年代前半にアメリカ海軍から始まり、空軍がそれに倣い、その後全世界に広まってゆく。初期のロービジはライトグレーの機体に黒の書き文字とか、危険箇所や注意箇所の表示に赤や黄色のマーキングが残っていたりしたが、昨今ではごく僅かな明度差のグレーでマーキングされ、しかもかなり小さめに書かれている。明度差が低いので、オートフォーカスでさえ騙されてピンボケ写真を連発する上、出来上がった写真も立体感に乏しく、何とも印象の薄い、カメラマン泣かせの塗装である。
【ロケットエンジン】
液体式ロケットの燃焼室部分(エンジン本体)を指す。固体式ロケットの場合はロケットモーターと言う。
【ロケットモーター】
固体式ロケットのこと。ロケットエンジンとは液体式ロケットの燃焼室部分(エンジン本体)のことを言い、固体式ロケットは含まれない。固体式ロケットを液体式ロケットよりランク下に位置づけているのでこういう言い方をする。何しろ一旦火がついたら出力制御どころか、固体燃料が尽きるまで燃え続け、途中で火を消す手段がない、っていうとんでもないシロモノだ。しかも600年以上の歴史を誇る人類最初の飛行物体だ。
…でそのランク下のロケットのトラブルで打ち上げに失敗してるってんだから…。→固体ロケット
【ワイドボディ】
機内通路が2列以上備わっている旅客機。B747、A300、L-1011、DC-10などがこれにあたる。胴体が若干細く、床下貨物室にLD-3タイプのコンテナを一列でしか積めないB767はセミワイドボディと呼び分ける。機内通路が一列のみの旅客機はナローボディと呼ばれる。
【AFN】
American Forces Network。米軍放送網。米軍将兵向けのラジオ放送。基地内でのケーブルテレビ放送もやっている。以前はFEN(Far East Network。極東放送網)と言っていた。30代以上の人には「This is Far East Network in Tokyo」のアナウンスで始まるFENのほうがおなじみだろう。1945年(昭和20年)9月から放送が開始され、1997年(平成9年)10月、AFRTS(American Forces Radio and Television Services。米軍ラジオ・テレビサービス)との衛星中継回線が完成し、全世界で統一した放送が可能になったことから、放送局名をAFNと改称している。祖国を遠く離れて全世界に展開する米軍将兵やその家族に、24時間娯楽とニュースを送り続けているほか、有事の際に外出中の将兵に呼集をかけるという役割もある(実はこれが本来の役目)日本人にとってはお手軽に聞けるナマの英語ということで、駅前留学なんてものがなかった昔から、セサミストリートと並んで英会話の教材という役割も担ってきた。洋楽の最新情報も日本に最初に入ってくるのはAFN(つ〜か、FEN)からの情報だったので、インターネットラジオなんてものがなかった頃は、洋楽ファンも挙ってチェックしていたものである。横田送信所が810KHz、三沢・岩国・佐世保送信所が1575KHz、嘉手納送信所が648KHzとFMの89.1MHz。
【EVAC】
EVACuationの略で、緊急脱出のこと。旅客機の客室の扉には窒素ガスや炭酸ガスで膨張・展開するエスケープスライド(滑り台)が設けられていて、扉の寸法や数、通路幅などといった脱出設備の設計に当たっては、 夜間に満席で乗客の半数が老人と小児という条件下で、90秒以内に乗客乗員全員が機外への脱出を完了できるよう米連邦航空局の規定で要求されている。当然その条件で実証試験を行うことも義務づけられていて、乗務員役の航空機メーカー社員が、乗客役の実験参加者をエスケープスライドからバンバン突き落として実証試験をクリアするのである…って、あ、これ、言っちゃまずかったですか?
【FEN】
Far East Network。極東放送網。現在のAFN(American Forces Network。米軍放送網)→AFN
【FFP】
Frequent Flyers Programの略。いわゆるマイレージサービスのこと。FFPはマイレージカードと呼ばれる顧客カードを発行して顧客1人1人のデータを捉え、顧客を利用区間や利用頻度などによって選別し、サービスや特典を変えることによって個々の顧客に最も適したサービスを提供して、優良固定客の維持・拡大を図るマーケティング手法。1981年にアメリカン航空がマイレージ・ポイントを提供したのが始まり。ちなみに家電量販店などでおなじみのポイントカードもFFSと同じ考えに基づくもので、ポイントカードの場合はFSPと言い、Frequent Shoppers Programの略。
FFPやFSPといったマーケティング手法が登場する背景には、企業の売上の80%は顧客の上位20%によってもたらされるという定説があり、上位顧客ほど企業の利益に貢献している。また、新規顧客を獲得するコストは既存顧客維持にかかるコストの5倍以上という説もある。さらに、顧客カードを発行することによって顧客の個人情報を取得し、購入(搭乗)実績と組み合わせてデータベース化することで、顧客のニーズに合った商品を効率よく売り込むことができる。企業にとっては特典を還元してもおつりが来るほどいいことずくめ。昔の商人の教え「損して得取れ」は正しかったのだ。
【F-2】
航空自衛隊の支援戦闘機。日米共同開発と言えば聞こえは良いが、対米貿易収支を楯に、つ〜か、対米輸出を人質に、ロッキードマーチンF-16の設計図を主翼・電子機器抜きで押し売りされたのが実態。一説によるとF-16と同じ部品は垂直尾翼だけとも言われている。主翼下に対艦ミサイル4発と増槽燃料タンク2個をぶら下げるため主翼を新設計していて、F-16より一回り大きい。実際主翼に対艦ミサイル4発に増糟タンク二つ、対空ミサイル2発をくくりつけた『コミケ帰りの同人ヲタ』『アキバ帰りのPC自作ヲタ』みたいな姿を見ると、こんな状態でも飛行機って飛べるんだ…って感動ものである。 搭載しているアクティブ・フェイズドアレイ・レーダーが肉眼並みの性能だとか、主翼の強度に問題があるらしいとかいろいろ言われているが、三菱F-1の後継として配備が進められている。誰が呼んだか知らないが『平成のゼロ戦』なる二つ名を持つ。洋上遠くまで進出して4発のミサイルで日本に侵攻してくる艦船を屠るという目論見で作られているあたり『平成の陸攻』の方が相応しいようにも思うが…。
【G-LOC】
(1)G-LOss of Consciousnessの略。旋回やループなどによる加速度によって、脳への血圧が不充分となり、視野狭窄や意識喪失に至る一種の脳貧血である。耐G訓練を受けていない人は3G程度でG-LOCの前兆である視野狭窄や、目に見えるものから色彩が失われるグレイアウトという現象が起こり、さらに4G前後で目が見えなくなる、いわゆるブラックアウトに至り、5G前後で意識を喪失する。戦闘機では、後傾座席の装備、耐Gスーツの着用などでそれ以上のGに耐えられるよう工夫され、さらにパイロットの努力と根性が追加されるが、それでも8〜9G程度が限度である。但し、5G、6Gといった大きなGであっても、それがごく短時間であればG-LOCには至らない。以前富士急ハイランドにあったジェットコースター、ムーンサルトスクランブルは最大で6.5Gが掛かった(ちなみに現在の最高は、としまえんのシャトルループによる6G)が、こうした大きなGが掛かるのはごく短時間であるため、戦闘機パイロットや宇宙飛行士以外の人も安心して(…かどうかは人それぞれだが)乗ることができる。
(2)G-LOC AIR BATTLE。1990年5月に登場したSEGAのゲームセンター向け3Dシューティングゲーム。要するにゲーセンの空中戦ゲームである。なにしろ12年以上前のゲーム、飛行特性がどうとか失速が何だとか、そういう細かいことは一切考えず、敵機を追い回してガンガン撃ちまくるのである。同年11月にはR360という筐体に搭載されたG-LOC R360が登場する。360°ぐるぐる回る恐るべき筐体で、当時大いに話題となった。現在のコンバットシミュレーションゲームがあの筐体に搭載されたら、きっと大ヒット間違いなしであろう。G-LOCのプログラムは、のちに家庭用ゲーム機メガドライブにも移植されている。
【Kコンフ】《S》
日本航空のエコノミークラス客席に個人用ビデオモニタを装備したもの。コンフィギュレーション(機内配置パターン)Kという意味だと思われる。アメリカ東海岸、ヨーロッパなどの長距離路線に投入されている。元々狭いエコノミークラスのシートピッチにビデオモニタを追加(押し込む、と言うべきか)しているのでとても狭い。その上飛行時間は十時間以上。苦情が殺到したのも当然で、後席への圧迫感を緩和するためにリクライニングの角度を制限しました。…ってどっかの与太話みたいなことを本気で言っている。その上この航空会社は正規エコノミー運賃旅客を対象にした上級エコノミークラスというモノがないから、バカ高い正規運賃でも格安航空券でも、どっちも同じ狭い座席に押し込まれるのである。これでも日本航空に言わせると「もっと狭い航空会社はいくらでもあります」だそうだ…。それはそれは興味深い。じゃあその、もっと狭い航空会社ってのを後学のために教えてくれ。 |