-や-

【ヤーボ】[Jabo]
 ドイツ語のJact Bomber(ヤークト・ボマー)の略。戦闘爆撃機のこと。

【やかんせんとうき】[夜間戦闘機]
 ひらがなで書くと、やかんが湯気吹いて飛んでいるみたいだ…。日本では、航法士を搭乗させられるようにした多座戦闘機を指す。というのは、暗闇の中で航法を行いながら飛ぶだけならまだしも、空中戦を行うなどほとんど不可能だったから。ただし、何事にも例外があって零戦52型夜戦は単座機である。灯火管制下で一人で航法しな
がらの空中戦では操縦士はさぞ大変だったろう。
 日本軍の夜間戦闘機といえば、敵の腹の下に潜り込んで死角から土手っ腹に機銃弾を撃ち込む『斜銃』の装着がお約束だが、夜間戦闘機と称する上での必要条件というわけではないようだ。
 電線一つ満足に作れなかった大戦末期の日本はさておき、よその国ではレーダー装備で暗い夜でも敵を捉えることができる戦闘機が主流だった。米英は言うに及ばず、ドイツ空軍もレーダー搭載の夜間戦闘機が大活躍していた。同じ負け組でもえらい差だ。機首に八木アンテナやダイポールアンテナを大量に付けて昆虫の触角か猫のひげみたいな状態になっていて、機内に巨大な電子機器を押し込んでいるので大型爆撃機並の機体なのだが、戦闘機とほとんど変わらないくらいの運動性能(この並とかほとんど、というのは、戦闘機の世界では遠く及ばないと同義語であったりもするが、夜間戦闘機ならばそれでも充分な時代だった)を持ち、武装は12.7mm機銃でハリネズミ状態とか37mm砲とか…ここまでくるともう戦車が空飛んでるようなモノである。

【やきにくていしょく】[焼肉定食]《F》
 チャイナエアラインの貨物機に付けられた渾名。一時期機体に『華航貨運』と書かれていたのが焼肉定食の由来と言われるのだが、なぜ華航貨運が中華饅頭ではなく焼肉定食と結びついたかについては謎である。

【やしんてきなせっけい】[野心的な設計]
 海のものとも山のものともわからぬ最新技術を手当たり次第放り込み、要らぬ苦労の連続でようやく完成したはいいけれど、性能的にはさっぱりだった機体を、悪く言うわけにいかない場合に用いる苦肉の褒め言葉。本などで野心的な設計としか褒めていなかったら、それはもう褒め言葉ではなく「何を考えてこんなの作ったんだ」という意味である。

【やまぐちうべくうこう】[山口宇部空港]
 山口県の宇部空港、ではなく、山口と宇部の空港、である。燕三条駅とか三条燕インターチェンジみたいなもんだ。場所は宇部市にあって山口市ははるか彼方だ。山口市は明治時代の山陽本線計画時に住民が大反対してルートを変更させ、小郡経由にさせた経緯があり、山口の人はこれを百年の悔いなどと呼んでいる。とは言っても自業自得を棚に上げて先頃、隣町にある小郡駅を新山口駅と改名させたくらいだから、小郡より遙か遠くの宇部空港でも山口の名を冠させるくらいのことは朝飯前である。長州藩のご威光は今なお絶大なのである。

【やもとこうくうさい】[矢本航空祭]
 宮城県矢本町のお祭り。例年7月下旬に開かれる。航空ファンは松島基地航空祭と呼んでいる。2003年は地震と豪雨のダブルパンチで中止となってしまった。矢本町は松島と石巻に挟まれたイマイチ地味なところで、町おこしのネタが松島基地をホームグランドとしているブルーインパルスぐらいしかないし、町の住民は基地関係者が多い。よって矢本航空祭は町内の前日祭と松島基地祭の2日間にわたる大イベントとなる。松島や石巻あたりに宿をとって前日祭から堪能したいものである。ご当地の名物といえば牛タン、笹かま、萩の月が三種の神器(笹かまと萩の月は、ブルーインパルスが各地の基地に展開する際の手土産にもなっている)だが、ちょうど三陸沖で近海マグロ漁の最盛期なので、帰りに塩竃あたりでうまいマグロを食うのもお勧めである。仕上げはもちろん仙台夏の味覚、旬の枝豆をたっぷり使ったづんだ餅である。仙台駅一階にはづんだ餅の専門店もある。なおマグロをお土産に買う場合は、魚屋さんの店じまいが早いのでのんびりバイバイフライトなんか見ていてはいけないし、生の魚なので寄り道せずにさっさと帰るのが吉である。
-ゆ-

【ゆうじそくおうたいせい】[有事即応体制]
(1)文字通り、何かあった時即座に対応できる体制を作り、これを常に維持するよう訓練と整備を行うこと。具体的には基地や駐屯地に居住する兵員のうち、外出できる人員数に制限を加えたり、基地や駐屯地外に居住する要員に定期的に呼集訓練を行ったり、有事の際に最初に対応する部隊が24時間の交代制で待機体制を取っていたりする。米軍が運営するラジオ放送のAFN(昔はFENと言った。新田恵利だったかの歌にFENを聞かせて、というのがあったが…
)も、外出中の将兵に呼集をかけるための手段。普段から聞いていてもらえないといざというとき役に立たないため、普段は音楽などの娯楽番組を流しているのである。
(2)法規の解釈上許されるギリギリのところまで準備して出動命令が下るのを待つこと。出動とは装備を持って部隊が基地や駐屯地を出発すること、というのが一応の解釈になっているので、所属人員を呼集したり、基地や駐屯地内で装備品を車両・艦船・航空機などに搭載し、人員が乗り込む段階までは、環境整備とか訓練とか演習とか何とか、基地や駐屯地の司令官が理由をつけて行っていいことになっている。だって、そうでもしないと出動命令を下す政治家や、それを伝達したり政治家を説得する役人がボンクラだと、手遅れになりかねないから。どこの国の軍隊でも、文官や政治家は平和ボケしていてやることがトロくて、現場をわかってない、ってことになっているのだ。

【ゆうた】《F》
 1992年にエールフランスに吸収合併され、今はなきUTAフランス航空のこと。UTAを『ゆうた』と読んでいる。

【ゆうどうこうりょく】[誘導抗力][induced drag]
 翼端渦によって生じる抗力。→翼端渦

【ユーユーユー】
 →トリプルユー

【ユニフォーム】
 UHF帯。「コンタクト・ユニフォームチャンネル・ツー」と言えば「とっととUHFの2chに逝って交信しろやゴルァ」という意味である。(…只今不適切な表現がございましたことを謹んでお詫び申しageます)
-よ-

【ようぐおさめ】[用具収め]
 海上自衛隊における『終了』の号令。「これで終わり、さあ、片付けましょう」という意味。片付ける物がなくても物事を終了する時は「用具収め」である。「訓練、用具収め」は訓練の終了、「着艦、用具収め」は着艦作業の終了、「宴会、用具収め」は宴会の終了、皆様のますますのご発展を祈って三本締めでお開きである。

【ヨーイング
 機体中央を上下方向に通る軸を中心として、左右にふらつくような動き。偏揺れなどとも言う。胴体の短い機体だとヨーイングが起こりやすいので、これを抑えるために垂直尾翼の設計には苦労する。ヨーイングが収まらず、何度も垂直尾翼の再設計をした飛行機ってのは意外に多い。B777みたいに胴体の長い飛行機ならば、方向安定のかなりの割合を胴体が受け持ってくれるので、小さな垂直尾翼でも十分だったりする。実際、B777の垂直尾翼は二周り近くり小さなB767のものの流用設計で、外観上は殆ど同じものである。

【ヨーセンサー】
 機首の方向と、実際の進行方向とのずれを検知するもの。F-14トムキャットの場合、コクピット前方のノーズに付いている『紐』が、ヨーセンサーである。片方の端を固定した紐が吹き流しの役目をして、まっすぐパイロットの方に伸びて流れていれば機首方向と進行方向は一致していることになる。原始的だがこれが一番間違いないらしい。

【ようとはいき】[用途廃棄]《F》
 読めば読むほど意味がわからなくなる珍奇な日本語だが、運行や任務に使用されない状態にある航空機のことを指すのだそうである。廃棄と言うからには部品取りやスクラップといった状態なのだろう。民間航空では聞かない用語なので、防衛庁関連の用語であろうと思われるが、編者は防衛庁勤務時代にこんな用語は聞いたことがないので、現場またはファンが用いていたスラングが、専門誌などで広まったと思われる。
 書類の『用途欄』に『廃棄』と記入された機体。つまり『用途:廃棄』が語源ではないかと思われる。→用廃

【ようはい】[用廃]《F》
 →用途廃棄

【ようりょく】[揚力][lift]ボタン 解説画像を別ウィンドウで表示
 飛行機を空中へ持ち上げる力。飛行機が飛べるのは揚力の御陰である。難しく言うと一様な流れ(同じ方向へ、常に一定の速度での流れ)の中で、流れと垂直方向に働く、流体の影響による力と定義されている。水中翼船が水面上に船体を上げて走るのも、台風で屋根や瓦が飛ばされるのも揚力の影響である。フォーミュラカーのウイングは、ダウンフォースという下向きの揚力(何か変だが)を生みだし、車体が空へ飛ばないように押さえつけている。飛行船が葉巻型をしているのは、船体で揚力を生み出す必要からあのような形をしている。浮揚ガスは飛行船の比重を空気の比重に近づけるためのもので、飛行船は浮揚ガスで浮かんでいるわけではない。さて、余談はさておき、揚力はどのように生まれるのか…。
 飛行機の主翼の断面を、仮に『水滴型を縦割りにして、平らな面を下に、前が丸く後ろが尖った形で、丸い側(前)を若干持ち上げた状態』とすると(翼断面がこの形でなくても飛行機は飛ぶ。別に平らな板でもいい。単に説明がしやすい形、と思って欲しい)平らな下面と、膨らんだ上面ができる。翼が前に進むと、空気の流れができる。空気の流れは翼の上面と下面とに別れ、膨らんだ上面を流れる空気より、平らな下面を流れる空気の方が最短距離を行くことになり、先に翼の後ろ(後縁)にたどり着き、上面を流れる空気は距離が長いために後縁にたどりつくタイミングが遅れる(誰だ!翼の上面を流れる空気のほうが速くなる、なんて言ったのは)遅れるということは空気の『補充』が追いつかない、ということで、前進している翼の上面後方には負圧が生じる。下面を通って先に後縁にたどり着いた空気は、ここで上面後方の負圧の部分に巻き上げられる格好となるが、後縁は鋭角なので空気がうまく回り込めずに、進行している翼に置き去りにされ、後方で渦を作る。この渦を出発渦(Starting vortex、あるいは Departure vortex)と言う、渦は必ずペアとなるもう一方の渦を作り(渦の強さは保存される性質があり、全く渦の無い流れがあった場合に、何らかのきっかけで渦が生じると、その渦と同じ強さで反対方向に回転する渦が同時に生じている。つまりプラスの渦とマイナスの渦で総和は零となる。これをヘルムホルツの渦定理という。要はエネルギー保存の法則である)このペアとなる渦は翼を包むように反対方向に回るようになる。この『反対方向に回るもう一方の渦』によって、翼の上面を通る空気の流れが加速される。翼を包んだ渦によって加速された上面の空気の流れは、ここまでの長い話でようやく(実際には一瞬の出来事なのだが…)下面を流れる空気の流れよりも速くなる。ここで初めて、科学雑誌や図鑑でおなじみの『ベルヌーイの定理』が御登場だ。上面を流れる空気は早く密度は低くなり、下面を流れる空気は遅く密度が高くなる。こうして翼の上下で圧力差が生じ、翼の上面に生じた負圧に引き寄せられる力、揚力が生まれ、翼は…つまり飛行機は上昇を開始する。

【よくけい】[翼型][airfoil]
 翼を進行方向の真横から見た断面の形。乱暴な言い方をするなら、単に揚力を得るだけであれば、おおよそたいていの形のモノで揚力を発生させることはできるのだが、効率よく、また当然のことだが安全に飛行する(揚力を得る)ためには、それなりの形であることが必要で、この形は速度によって変わってくる。飛行速度に応じた最適な翼型を得るために、フラップなどの高揚力装置を使用する『可変キャンバー翼』が広く用いられる。

【よくけいちゅうしんせん】[翼型中心線][mean line]
 翼型の上面と下面との中点を順々に結んでゆくことで得られる曲線。キャンバー・ラインとも呼ばれる。直線になる場合は翼型が対称であると言える。こうした翼を『対称翼』と呼び、ジェット機などの高速機に使われる。

【よくげんせん】[翼弦線][chord line]
 翼の前縁と後縁を結んだ直線。翼型の基準となる線である。翼弦線と翼型中心線との距離はキャンバーと言う。翼弦線と翼型中心線が一致する翼を『対称翼』と呼び、ジェット機などの高速機に使われる。

【よくたんうず】[翼端渦][wing tip vortex]
 翼端部で生じる渦、そのまんまだなぁ…。誘導抗力を生じ、さらに翼端付近での揚力を低下させるので良いことは何もないようだが、翼幅以下の高度では『地面効果』という、揚力が大きくなる効果も生み出すので、一概に悪者にもできない。人力飛行機やグライダーのようにアスペクト比の大きい主翼で地面効果を得られるほどの低空飛行をした場合、誘導抗力はかなり小さくなるので、翼端渦減らしに余計なものを付けて重量を増加させるのは如何なものかとも思うが…。
 翼端渦ができるのは、圧力の高い主翼下面の空気が、翼端を回り込んで圧力の薄い主翼上面に向かって流れ込むことによる。飛行機は前進しているので、回り込んできた空気の流れは翼の後方で渦となり、この渦が誘導抗力となって、飛行機の前進を阻害する。
 では、この翼端渦をどうやって減らすか…。翼の上下で生じる圧力差は、飛行機が飛ぶ原理そのものなのでどうしようもない。ならば、上面に流れ込む空気の流れを遮ってやれば良いということになる。このために翼端部に軽く下向きのひねりを付けて上面への流入を軽減したり、翼端板で空気の流れを堰き止めたり、古いジェット戦闘機では翼端に燃料タンクを設置して空気の流れを阻害したりといった試みがなされてきた。最近ではウイングレット、あるいはウイングチップと呼ばれるもので、翼端渦のエネルギーを揚力と推進力に変えてしまうという手法が主流となっている。
 翼端部を折り畳むことができた零戦21型などは、折り畳んだままで飛べば、もっと航続距離が伸びたかも。(…まさか)

【よくたんえんごき】[翼端援護機]
 旧帝国海軍一式陸上攻撃機の派生型。迎撃機による損害が大きかった爆撃編隊の端の方に配置する目的で作られた。編隊の右翼・左翼両翼端に配置する目的だったので翼端援護機である。20mm機銃の搭載や燃料タンクの部分的な防弾強化が施されている。メーカーの三菱は「そんなの使い物になんないから止めてくれ」と言ったのに、海軍は「作れったら作れ!」の一点張りで無理矢理作らせてしまった。人の話はちゃんと聞け!案の定、重いわ巨大な銃座は空気抵抗が大きいわで速度はガタ落ち。ノーマルの一式陸攻と満足に編隊が組めなかった。幸い零式戦闘機が爆撃隊の護衛に付いてくれるようになったため、あっという間にお役ご免となり、一式大型陸上練習機を経て一式陸上輸送機にされてしまった。まあ、似たような話は時代も洋の東西も越えて山ほど転がっているんだけどね。

【よくたんしっそく】[翼端失速]
 
失速は翼全体で一気に起こるものではなく、条件の悪いところから始まり、迎え角が増えるに連れて失速箇所が増大してゆく。翼の平面型によって失速箇所は異なるが、矩形翼では翼の根元から起こる『翼根失速』後退翼やテーパー翼では翼端から起こる『翼端失速』の傾向がある。翼端失速の場合、補助翼が効かなくなる、横安定が悪化するなどの弊害があり、さらに後退翼機では翼端失速によって翼全体の揚力作用点が前方に移動し、機首上げモーメントを生じ、失速を促進するため非常に危険である。このため、実際の飛行機では翼端部前縁に前縁フラップや前縁スラットを設ける、翼型(翼の断面形状)を失速の起こしにくい形状に変化させる、あるいは翼の取付角を翼端に向かって小さくしてゆく『捩り下げ』を付けるなどして、失速の始まる箇所が翼の付け根付近になるよう設計される。

【よくたんとう】[翼端灯]
 主翼翼端に装備されている灯火。進行方向に向かって左翼側が赤、右翼側が緑(機首方向から飛行機に正対した場合、左が緑、右が赤になる)の灯火で、飛行中(タキシング中を含む)は常時点灯が義務づけられている。点滅はしない。灯火が視認できる範囲は機首方向から110°までの範囲と定められている。主翼翼端に燃料タンクを装備している機体では、翼端燃料タンクの外側に装備される。主翼翼端にミサイルを装備できる機体では、翼端に付けなくてもいいことになっている、っても、F-16やF-2のようにコクピット下にあるエアインテイク両脇に付けましたってのは、ちょっと反則じゃないか?もともとは船舶のブリッジから張り出したウイング(これは翼ではなく、接岸時などに用いる見張り台のこと)に付けられた舷灯が起源。同じく進行方向に向かって左舷側が赤、右舷側が緑である。

【よくめんせき】[翼面積]
 おもに主翼の面積を言う。主翼の投影面積(機体の真上から平行光を当て、水平面にできた影を仮定した面積)で、主翼と胴体が重なる部分を含める。胴体と主翼の接合部を緩やかに繋いでいるフィレットと呼ばれる部分は、アメリカでは翼面積に算入しないが、ヨーロッパでは翼面積に算入しているケースが多い。

【よどごうじけん】[よど号事件]
 1970年3月31日、東京から福岡へ向かっていた日本航空351便、ボーイング727『よど号』が赤軍派によって乗っ取られた事件。日本初のハイジャック事件である。赤軍派は北朝鮮の平壌に行くことを要求。赤軍派は北朝鮮での軍事訓練ののち帰国し、日本で武装蜂起する計画であった。途中、福岡、ソウル金浦(キンポ)空港を経て平壌到着までに4日を要し、すべての人質と機体が日本に戻るまで6日を要している。福岡に降りたのは給油と北朝鮮の航空図を入手するためだが、このとき日航が用意した北朝鮮の地図というのが、中学生の地図帳の朝鮮半島のページをコピ−して、平壌に丸印を付けただけの代物一枚だった。北朝鮮の航空図なんか日本にあるわけないのだが、それにしても、もう少し何かやりようがあったろうに…。そればかりではなく、ド素人の福岡県警の要請に従って二つ返事で、機外から操作可能な燃料タンクのバルブを閉めようとさえした。配管に残った燃料で飛び立ってしまったら大惨事になるところだった。当時の日航って会社は、かようにいい加減な会社だった。金浦空港への着陸は、韓国当局が独自の判断で平壌を装い、誘導したことが最近になって明らかにされている。ただ、あまりに突然の事態に金浦空港は右往左往の大騒動で、平壌を装って誘導したのはいいが、『偉大なる首領様』の肖像写真はないし、ノースウエスト機や韓国軍のジープがあたりをうろうろしているし、シェルの石油タンクはそのままだし、犯人に面会した担当者に至っては、流暢な英語で「…日本の大使がまもなく来ます」と大ボケをやらかし、結局犯人側にバレてしまった。折角チマチョゴリを着せた歓迎役の女性兵士に花束まで持たせたのに…。韓国は日本のために良かれと思ってわざわざ面倒を背負ってくれたのだが…掘らんでもいい墓穴掘って自分で嵌っちゃったね。
 この事件をきっかけに、所謂ハイジャック特別法が制定されるようになるのだが、よど号事件に関しては特別法の制定前であるため、犯行グループの罪状は逮捕監禁など、ごく軽い罪にとどまる。
 北朝鮮当局に投降した赤軍派は、のちに北朝鮮の対外謀略の一翼を担うようになり、ヨーロッパで日本人留学生を騙し、北朝鮮に拉致するなどの非合法活動に従事する。彼らに拉致された人々は、数年を経ずして亡くなっていると北朝鮮当局は主張しているが…。

【よぼうちゃくりく】[予防着陸]
(1)ヘリコプターが、事故を避けるために適当な空き地などに着陸すること。機体の故障とか、天候の急変とか、理由はいろいろである。緊急着陸では聞こえが悪いので『予防着陸』と称しているようだ。ヘリコプターはどこでも着陸できるけど、着陸していいのはヘリポート(飛行場を含む)だけ。但し、墜落などの重大事故を避けるための緊急着陸ならば別である。ヘリポートを探すなんて悠長なことをしている暇があったら、とにかく降りられるところに降りて、最悪の事態だけは回避しなければ…。
(2)軍用機の緊急着陸を、米軍や自衛隊の広報は予防着陸と説明する。固定翼機の場合は、ちゃんと飛行場に降りる。それ以外の場所に降りた場合はただの『不時着』であり、天と地ほども意味が違うのだが、一部の政治団体やマスコミが、こうしたトラブルにつけ込んで、過剰な反応を演出するのは言うまでもない。

サーチエンジンなどからお越しの方へ このページはmia's web内、航空雑用辞典本文ファイルです。